蜷川インタビューの裏側

2007年4月24日 By 編集部員(月)

少し前の話になりますが、1092号掲載、蜷川幸雄インタビューの裏側について語ろうと思います。

もう皆さんご存知かと思いますが、私は演劇ファン。自由になる時間とお金はほぼ演劇に費やしている私にとって、演劇人へのインタビューというのは至福の時であり、また異常なまでの緊張を強いられる時でもあります。見た目は冷静に見えるそうなのですが、とーんでもない! インタビュー数日前から思い出すたびに背筋を冷たいものが流れ、当日ともなると頭が真っ白。ペンを持つ手はがっくんがっくんに震えています。ましてや今回は電話でのインタビュー。相手の気持ちを表情から読み取って、方向転換することもできません。そして極めつけは蜷川幸雄、その人であります。

蜷川さんと言えば、演劇界では泣く子も黙る、「世界のニナガワ」。巷に流布する噂では、稽古中には役者に灰皿や靴を投げつけることもあるという熱血漢なのだとか。電話だから灰皿は飛んでこないとしても、叱責のひとつやふたつは飛んできそうです。おまけにPR担当者からは、リハーサル中の稽古場に電話するようにとの指示。う、リハーサル中っていうのは、素人目から見ても危険な匂いが漂う……。かくして緊張でがちんがちんになったまま、インタビュー当日を迎えたのであります。

ニュースダイジェストのオフィスでは、音声が聞き取りづらいであろうという考えから、今回電話をかけるのは社長室から。前日には電話コードの具合も確認、準備は万端です。さあ、電話だ! そう思って受話器を取り上げると、「……」。う、何の音も聞こえない!! すでに表面張力状態にまで高められていた私の緊張は爆発寸前。あわてて地べたを這いつくばり、ぐるぐるうねっているコードの先をたどります。あ、ゆるんでる……。しっかりはめ直すと無事、音声が流れてきました。このハプニングで逆にちょっと緊張が緩和された私は、(それでも)震える指で電話をかけたのでした。

さあ、いよいよご対面(ご対声?)。まだリハーサル中だったらどうしよう……、リハーサルはうまく進んだのだろうか……。と余計なお世話なことを思い巡らせていた私の耳に届いたのは、余裕に満ちた穏やかな蜷川さんの声。どんな質問を投げ掛けても淀みなく、ユーモアを交えた口調で答えてくださるその声のトーンから、ゆるぎない自信が伝わってきます。さすがは蜷川幸雄。一日本人として、世界に誇れる演劇人を持つ喜びを感じたひと時だったのでした。

いよいよ今週から始まる「コリオレイナス」。蜷川さんは英国の観客相手に、どんな世界を見せてくれるのでしょうか。(月)

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