元ミスター慶応の帰国子女俳優、古川雄輝さんの悩み

By 編集部員(月)

来年1月から2月にかけてロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で上演される日英合作舞台「家康と按針」に出演する若手俳優、古川雄輝さんにインタビューするため、ロンドン南部はクラッパム・ノースにあるロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのお稽古場へ赴きました。

1600年に日本に漂流し、やがては江戸幕府の初代将軍、徳川家康に仕える侍となって日本でその人生を全うした三浦按針(ウィリアム・アダムズ)の半生を、家康を始めとする日本の人々との交流を通して描き出した「家康と按針」。古川さんが演じるのは、家康と按針の通訳として活躍する宣教師、ドメニコです。

海外生活が長く(カナダと米国合わせて11年!)、慶応大学理工学部卒(在学中はブレイク・ダンスやっててミスター慶応にも選出!)、おまけに容姿端麗という、世の中の不公平さを感じずにはいられない肩書きを見て、インタビューでは長い足を組んでふんぞり返ってガム噛みながら「Hey! How are you doing?」なんて挨拶されたらどうしようと密かに心配していましたが、実際にお会いしてみると、実に礼儀正しいナイスガイ。おまけに少し低めで心地良い声が、俳優の声には一家言もつ、なんちゃってシアターゴーアーの私の心の琴線をくすぐります。風邪気味ということで時折咳き込みながらも、「うーん、何て言えばいいんだろう……」と言葉を選びながら、真摯に話してくださいました。

古川雄輝さん

今年の8月と11月、2度にわたってロンドンで顔合わせやら稽古やらに励んでいた古川さん。8月は初の来英だったということで、まずはロンドンの第一印象を聞いてみたところ、「日本という国が大好きで、一生住みたいと思っているので、来てすぐにホームシックになってしまいました」と弱気な一言。バリバリの帰国子女らしからぬ発言で、しょっぱなからこちらが勝手に抱いていたクールでスノッブなイメージを吹き飛ばしてくれます。ちなみに所属事務所のスタッフの方いわく、来て早々オイスター・カードを紛失するなど、色々なハプニングにも見舞われて散々な思いをしたのだとか。実はかなりのおっとりさんなんでしょうか……?

英語がネイティブ・レベルというだけあって、コミュニケーションに困った様子は全くなく、稽古場でも楽しそうに英国人俳優たちと談笑。ホームシックが癒えた後にはロンドンの街を歩き回ったり、共演俳優とミュージカルを観に行ったりと、生き生きとロンドン生活を満喫していたようです。が、一つ、困ったことがあるそうで。それは……在英邦人誰もが通る道、「食」。一通りインタビューが終わった後、日本に戻ったら何を食べたいかという話になると、「牛丼を食べます。あとはラーメン」と即答。ロンドンで今まで食べた中で一番おいしかったのは「中華」、でも「昨日食べた春巻きはおいしくありませんでした……」と、食事には本当に苦労していたようです。ちなみにインタビュー直後にもレディーメイドのランチをもそもそ。稽古尽くしの毎日を過ごす古川さん、ゆっくり食事をする暇もないのでしょうが、在英邦人的には、こちらにもおいしいレストランはありますよ! とひっぱっていきたい衝動に駆られました。

来年1月から2月にかけての「家康と按針」上演期間には、ぜひともしっかり栄養補給して、毎日の舞台の活力にしていただきたいものです(なんならおいしいレストラン・リスト・イン・ロンドン、作成します!)。

日本人と英国人が共有する歴史のひとコマを壮大なスケールで描き出す「家康と按針」。舞台観劇とともに時代劇もこよなく愛する私は今から楽しみでなりません。日本の歴史をよく知らないお子さんや英国人でも十分楽しめるそうなので、イギリス英語を駆使する凛々しい古川さんの雄姿を、皆様ぜひご覧ください!

俳優 古川雄輝さん

リンク:
俳優・古川 雄輝 インタビュー(6 December 2012 vol.1376)

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