日曜日の電車の中で見た光景

by 編集部員(籠)

皆様こんにちは。英国ニュースダイジェスト編集部の(籠)です。最近、自分の中でもどう咀嚼というか扱っていいのか分からない、でもとりあえず誰かと共有したいエピソードが発生したので、筆を取らせていただきました。

* * *

ほぼ毎晩というくらい、ロンドンの帰りの通勤電車で見かける光景。車両間をつなぐドアが「プシュッ」と音を立てて開いた後で、スピーチが始まる。

「皆さんのお邪魔をして申し訳ありません。私はホームレスです。今夜はいつも泊まっているホステルが一杯となってしまい、このままだと今夜は路上で一晩を過ごすことになってしまいます。どなたか小銭を恵んでくれたら、ホテルに宿泊することができるので、寄付のほど宜しくお願い致します」。

ロンドンにお住まいの皆様なら、似たような光景を何度も見たことがあるのではないでしょうか。

もちろん僕なんかには計り知れない様々な事情があってのことなんだろうけど、いつも同じ路線の、同じぐらいに出発する電車の中で、同じ人がこの募金活動を行っているので、正直に白状すると、いつもその光景からただ目を背けていました。

でも、この間の日曜日はちょっと違った光景に出会いまして。

たぶん、その人は英語が話せないんだと思う。想像するに、誰かに代わって英文を書いてもらったのではないか。その「誰か」が良い人なのか、悪い人なのか、想像もつかないのだけれど。

日曜日の昼間のガラガラの車両内で、座っている席の横に黙ったままこんなものを置いていったのです。

電車の中で見た光景

写真ではよく見えないかもしれないけれど、ポケット・ティッシュとともに、こんなメッセージが書かれた紙が置かれていました。

「お邪魔をして申し訳ありません。私は物乞いではありません。私には2人の兄弟がいますが、両親がいません。私に仕事を提供してくれるか、もしくはこのティッシュを購入してくれたら、大変助かります。ありがとうございました。あなたと、あなたの家族に神のご加護を」

電車の中で見た光景

その車両内にいる乗客に配って、1分ぐらい経っても関心を全く示さない人からはティッシュと紙を回収。でも乗客たちの多くが、ティッシュを購入していたな。僕がジェスチャーで、「この写真撮っていい?」と尋ねたら、上の写真を撮らせてくれました。

何か、上手く言えないけれど、狐につままれたような、そんな気持ちになった出来事でした。(籠)

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