テニスのウィンブルドン選手権当日券待ちの列に並んでみた(後篇)

2015年07月01日 by 編集部(籠)

ウィンブルドン選手権当日券待ちの列で徹夜したお話の続きです。

時間が経つにつれて、テントを張った近くの人たちとの交流を深めていきました。まあそばにいる人と話す以外にほかにやることが特になかったというのもあるのだけれど。

まずは僕のすぐ後ろにテントを張ったスティーブンさん。普段は会計士として仕事をしているという恐らく30代の男性で、テニスの主要な大会を観戦するために世界中を飛び回っているというこれぞテニス・オタク。僕が悪戦苦闘したテントの設営を手伝ってくれました。一つ前には、50代いやもしかすると60代に達しているかもしれない女性のヘレンさん。テントの前で長いこと柔軟体操をしていた僕に、「ちょっとは座って休みなさい」と言って小型の椅子を貸してくれた。あとは名前を聞くのを忘れちゃったけど、そこら辺の人たちにとにかく話し掛けまくって時間をつぶしていた、アンディー・マリーの大ファンだという20代の女の子2人組。2人ともすごく可愛かった。

そんな風に過ごしていたら、あっという間に夜になってしまって。日が暮れると、さらにやることがなくなってしまい、夜10時には就寝。たくさんの人と頑張って英語でくっちゃべって疲れてしまったこともあって鬼の爆睡しました。翌朝に周囲の人たちは「夜、騒いでいる人たちがいたね」なんて言っていたのだけどごめんなさい。僕は約7時間の睡眠中一度も起きなかった。そして早朝に聴こえた小鳥のさえずりが美しかった。

テニスのウィンブルドン選手権当日券待ちの列

ウィンブルドン・パークの夕焼けが奇麗だった


テニスのウィンブルドン選手権当日券待ちの列

朝の6時半ぐらいになると案内係の人がテントを揺すって起こしてくれるのですが、乱暴に揺すっていたからウケた


ちなみにトイレは早朝から大混雑でーす。朝食食べたり、歯を磨いたり、テントを片付けて荷物置き場に預けたりしているだけでまた時間はあっという間に過ぎていく。それからまた当日券待ちの列に戻り、ひたすら待機。その間も列の前後の人とお話しながら時間を過ごすわけです。皆さんさすがにテニスの話題となると尽きない。そうやってまだ眠気眼のままテニス話を通じて覚醒しようとしていたときに案内係がやってきて、センター・コートへの入場を許可するリスト・バンドの配布を開始。このバンドが僕の手首に巻かれた瞬間、ついに「ウィンブルドンのセンター・コートで観戦」という夢が叶った! スティーブンさんと固く握手を交わしました。
ウィンブルドンのセンター・コートで観戦

興奮し過ぎて写真がぶれちゃった


しかもコートのすぐ側、前から6番目という特等席のチケットをゲットしたんです。実際にセンター・コートに入場するとまた感動。1万5000席を有する巨大な空間、じゅうたんみたいに美しい芝、おめかしした人がたくさん座っているロイヤル・ボックス、基本的にざわついているのに選手がサーブを打とうとした瞬間に「ゴクッ」と唾を飲み込む音が聞こえるまでに静かになる会場。「ああ今、僕はウィンブルドンのセンター・コートにいるんだ」と実感しました。

しかも世界王者のジョコビッチ(ちょい悪なイメージがあるけど空のペット・ボトルをきちんとごみ箱に入れたりしていて意外と善良な人なんじゃないかと思った)、ロシアの妖精・シャラポワ(試合後に投げキスしてくれた)、先日の全仏オープン優勝者バブリンカ(思っていたより太めだった)らまさに一流選手たちの試合をここで続けざまに観られたのだから言うことない。苦しゅうない。

最後に余談を少し。当日券待ちの列で徹夜していた人たちは観客席でも近くに座ったのですが、自分を含めて皆やや臭かったです。だってお風呂入っていないし、汗もいっぱいかいちゃったもんね。夢のセンター・コートの中に臭い人がこんなにいっぱいいるとは夢にも思わなかった。

それと前日入りしたキャンプ場での交流を通じていわゆる「人慣れ」しちゃったせいでしょうか。ゲーム間やセット間でも近くに座った観客たちとの社交を大いに楽しんじゃいました。試合の感想を言い交わしたり、名物のイチゴを皆で分け合ったり。世界レベルの選手たちによるテニスの試合にはもちろんめちゃくちゃ興奮。でも見ず知らずの人たちと、ほぼ丸2日にわたってテニスについて語り明かしたことこそが、もしかしたら一番うれしかったのかもしれない。夢心地って、ああいう状態のことを言うんだろうな。

間違いなく我が人生最良の思い出となった2日間でした。ウィンブルドン万歳。(籠)

センター・コート

夢のセンター・コート。この中にいたんだなと振り返るだけで幸せな気持ちになる
Photo: AELTC / CHRIS RAPHAEL

前の記事:
次の記事: