辻井伸行さんのリサイタルに行ってきました

暖かく晴れた4月1日の土曜日、ロンドン中心部にあるウィグモア・ホールで開催された、辻井伸行さんのピアノ・リサイタルへ行ってまいりました。これは夏まで続くエイベックス・リサイタル・シリーズの第1弾となるもの。英国暮らしの長い私にとっての辻井さんは、世界最大の音楽祭「プロムス」での演奏が大好評だったアーティスト、ですが、昨年はNHKの大河ドラマ「真田丸」の主題曲を演奏されており、日本での人気が増々高まっておられる模様。その証拠に、開演前の会場周辺は着物姿を始め、このリサイタルのためにおしゃれをしてきた日本人でいっぱいです。ウィグモア・ホールの隣りにある英ファッション・ショップ、マーガレット・ハウエルの入口では、店員さんたちが「誰か有名な日本人が来たに違いない」と話しているのが聞こえました。

世界有数の音楽家たちが演奏するウィグモア・ホールは、音響が優れていることでも有名だそうですが、かまぼこ型にカーブした天井を持つ美しい内部は雰囲気も独特なものがあります。古風な木製のボックス・オフィスのあるロビーを見学して、席に着いたときには既にほとんどのお客さんが着席しており、開演のベルが鳴るのを待っているところでした。

やがて盲目のためスタッフに付き添われた辻井さんが登場。何度か座り直して位置を調整したかと思うと、バッハの「イタリア協奏曲 BWV971」が始まりました。明るく速く華やか。そして、モーツァルト「ピアノ・ソナタ第17番 変ロ長調 K.570」のあとはベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調『月光』」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調『熱情』」。辻井さんはロマンティックで激しい気性の方なのではないでしょうか、ベートーヴェンの曲がとってもお似合いです。観客のノリも最高潮に。そしてアンコールは同じくベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13『悲愴』」、そしてリスト「ラ・カンパネラ」。

辻井さんの「ラ・カンパネラ」は、なんというのでしょう、波間に揺られているような、または宇宙空間にいるようなサイケデリックな浮遊感覚さえ感じられました。ブラボーの声があがり、椅子からぴんと立ち上がってお辞儀をされた辻井さんは、旅を終えて地球に戻って来た宇宙飛行士のよう。そして、最後にショパン「エチュード第3番ホ長調作品10-3『別れの曲』」でお別れです。何度か客席の方を向きながら退場され、何だか名残惜しそうにも見えました。

コンサート後のレセプションに出席されファンの方々に囲まれた辻井さんは、意外にも物静かでシャイといっても良いくらいの印象。しかしあのようなベートーヴェンを弾かれるということは、恐らく本当はロックなお方なのではないでしょうか。

次回ウィグモア・ホールで開催される、エイベックス・リサイタル・シリーズの第2弾は6月17日(土)。辻井伸行さんとともに2016年NHK大河ドラマ「真田丸」テーマ音楽を担当した、ヴァイオリニストの三浦文彰さんが登場します。(徒)

 

辻井さんと三浦さん、プライベートでも親交があるというお二人の対談はこちら。

http://www.news-digest.co.uk/news/features/15967-fumiaki-miura-and-nobuyuki-tsujii.html

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