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伝統的な英国料理を作ってみよう

「英国料理はまずい」という定説が流れる中、「本当においしいものは家庭にある」という声もチラホラ。そもそも伝統的な英国家庭料理は、その名前や生い立ちにユニークなエピソードがあるものが多く、昔の庶民も作ること、食べることを楽しんでいたのだということが伝わってきます。家で過ごす時間が長くなる季節、「おいしくて、温かいイギリス」を自分で作ってみませんか。(武智陽子)

ヨークシャー・プディング&
トッド・イン・ザ・ホール
「穴の中のヒキガエル」という、何ともおかしな料理名は、大きく焼いたヨークシャー・プディングからはみ出すソーセージの先が、カエルのように見えることから付いたとか。ヨークシャー・プディングとグレービー・ソースは、ロースト・ビーフなど他の肉料理にも合うので、ぜひ作り方を覚えておきたいもの。

材料
4人分
ヨークシャー・プディング
・薄力粉
(Plain Flour)
・牛乳
・水
・卵
・塩
120g
 
150ml
150ml
中3個
一つまみ
フィリング
・ソーセージ
・玉ねぎ
・マッシュル-ム
・乾燥ローズマリーまたはタイム
8本
中1個
5~6個
小さじ1
グレービーソース
・にんにく
・肉汁
(あれば)
・固形スープ
・水
・赤ワイン
・片栗粉又は
コーンフラワー
1かけ
50~100ml
 
1個
100ml
100m
小さじ2
①ヨークシャー・プディングの生地を作る。薄力粉と塩をボールに入れ、真ん中をくぼませる。ここに卵を1個づつ割り入れ、泡だて器で混ぜる。さらに牛乳と水を合わせたものを少しずつ加え混ぜる。滑らかになったら冷蔵庫で1時間ほど寝かせておく。

②その間にフィリングを作る。フライパンに油を熱し、ソーセージとみじん切りにした玉ねぎを炒める。さらにみじん切りにしたマッシュルームも加えて炒め、油(記載外)を塗った耐熱皿に均等に広げる。

③②の上に①の生地を流し入れ、ローズマリーまたはタイムをふりかけ、200度に熱したオーブンで約30分、表面がきつね色になるまで焼く。

④グレービー・ソースを作る。みじん切りにしたにんにくと赤玉ねぎを油で炒め、赤ワインを加えて煮立たせ、固形スープと水、あれば肉汁を加えて再び煮立たせる。仕上げに同量の水(記載外)で溶いた片栗粉を加え、とろみがついたら出来上がり。ソース入れに入れて食卓に出し、食べる直前に料理にかける。



丸ごと食卓に出して、皆の前で切り分けるのがお約束。

ローストビーフ
英国家庭料理の定番と言えばロースト・ビーフ。日曜昼に教会の礼拝から家へ戻って家族で食べる「サンデー・ディナー」として知られています。牛脂(=Suet。お肉屋さんで分けてもらえます)を乗せて焼くことでほどよい脂分がまわり、ジューシーに仕上がります。

材料
4-5人分

・牛ロース
かたまり肉
・たこ糸
・塩・胡椒・
ナツメグ
・にんにく
・ローリエ
・クローブ
・薄切り牛脂
(省略可)
・玉ねぎ
・セロリ
・にんじん
600g
 
適量
各少々
 
3かけ
3枚
6粒
2-3枚
 
1/2個
1本
1本
付け合わせ
ヨークシャー・プディング
※トッド・イン・ザ・ホールのレシピを参考に生地を作り、ヨークシャー・プディング型またはタルトレット型などで8~10個程度に小さく焼く。
茹で野菜、ホースラディッシュのすりおろし
グレービーソース
※トッド・イン・ザ・ホールのレシピを参考に。肉を焼く時に出た肉汁を利用する。また肉を焼く時、下に敷いた野菜を一緒に煮立たせると風味が増す。
①室温に2時間程度置いた肉に塩、こしょう、ナツメグをすりこみ、形を整え、縦横2cm程度の間隔でたこ糸を巻く。

②糸を切らないよう肉の表面に切り込みを入れ、スライスしたにんにく、ローリエ、クローブをところどころに挟む。

③天板に金網を敷き、ザク切りにした玉ねぎ、セロリ、にんじんを敷き、肉を乗せる。肉の上に牛脂をかぶせるように置き、250度に熱したオーブンで7~8分、表面に色が付いたら200度で約40分焼く。途中、天板に落ちた油をすくって、肉の上からかける。

④肉が焼けたら牛脂を取り除き、室温で2時間以上味をなじませる。

⑤薄切りにして付け合せと共に皿に盛り、グレービー・ソースを添えて出す。

たこ糸を巻くのは型崩れを防ぐためなので、小さめの肉なら省略してもOK。



シェパーズ・パイ
昔、お金も時間もなかった羊飼い(Shepherd)たちが、身近な材料で考えたごちそう。手のかかるパイ生地の代わりにマッシュ・ポテトを使ったところが彼らの知恵。羊肉の代わりに牛肉を使ったものは「コテージ・パイ」と呼ばれます。。

材料
4人分

フィリング
・ラムひき肉
・玉ねぎ
・にんにく
・トマト
・薄力粉
(Plain Flour)
・ナツメグ
・ウスター・ソース
・冷凍グリンピース
・マッシュルーム
・塩・胡椒
・固形スープ
・水
・ワイン
500g
小1個
1かけ
中2個
小さじ2-3

少々
大さじ1
80g
5-6個
少々
1個
1カップ
100ml
マッシュ・ポテト
・じゃがいも
・牛乳または
・生クリーム
・バター
・塩・胡椒
・粉チーズ
500g
大さじ3

大さじ2
少々
少々
①鍋に油を熱し、みじん切りにした玉ねぎとにんにくを炒める。

②玉ねぎが透明になったらひき肉を加え、ほぐすように炒める。

③さらにナツメグ、薄力粉を加え、粉っぽさがなくなるまで炒める。

④水、固形スープ、ワイン、一口大に切ったトマト、ウスター・ソースを加え、焦げつかないよう時々かき混ぜながら、弱火で「水分がやや残っている状態」まで煮詰める。火を止める2~3分前に、グリーンピースとみじん切りにしたマッシュルームを加え、塩・こしょうで味を調える。

⑤マッシュ・ポテトを作る。じゃかいもの皮をむき、適当な大きさに切ってゆでて水気を切り、バター、牛乳、粉チーズを混ぜながら、熱いうちにつぶす。塩・こしょうで味を調える。

⑥④を深めの耐熱容器に入れ、⑤の表面を均一にならして入れ(絞り出し袋で模様を付けるようにしても良い)、220度のオーブンで約20分、表面にややこげ色が付くまで焼く。

マッシュ・ポテトに粉チーズを混ぜても美味。


バブル&スクィーク
Bubble(グツグツ)& Squeak(キーキー)というこれまたおかしな名前は、この料理を作る時の音から来ているのだとか。ロースト料理を作った翌日、残り野菜と肉から出た油を使って作る、いかにもこの国らしい合理的で経済的な「英国版お好み焼き」です。

材料
4人分

・じゃがいも
・キャベツ
・塩・胡椒
・肉を焼いた時に出た油(なければ普通のサラダ・オイル)
600-800g
150-200g
少々
適量
その他、残り物のゆで野菜、ロースト野菜など。ベーコンを入れても良い。
①じゃがいもは皮をむいて適当な大きさに切り、ゆでて水を切ってからフォークなどでつぶして、粗めのマッシュ・ポテトを作る。

②キャベツはゆでて水を切り、他の野菜と共に細かく刻み①に混ぜ、塩・こしょうで味を調える。

③フライパンに油を熱し、タネをお好み焼きのように形づくって両面をこんがり焼く。


野菜が多くてタネがまとまりにくい時は、つなぎに卵を入れてもOK。

アップル・クランブル&
カスタード・クリーム
フルーツやスポンジ・ケーキにカスタード・クリームをたっぷり添え「ワン・ランク上のおやつ」にするのは英国人の得意技ですが、何といってもこの濃厚なクリーム、甘酸っぱいリンゴとサクサクのクランブルとの相性がピカ一。リンゴをあらかじめ煮ておく方法もありますが、いきなり焼いてしまう手抜き版の方が、むしろ歯ざわりが残って美味しいかもしれません。

材料
直径18cmの丸形1個分

フィリング
りんご
(料理用)
・グラニュー糖
・レモン汁
・シナモン
3-4個
450g
大さじ1
大さじ1
少々
クランブル
・薄力粉
・グラニュー糖又は黒
・バター
120g
60g

120g
カスタード・クリーム
・卵黄
・牛乳
・薄力粉
・コーンフラワー
・グラニュー糖
・バター
・バニラ・エッセンス
中2個
200ml
大さじ1
大さじ1
50g
15g
少々
①クランブルを作る。ボウルに薄力粉を振るい入れ、砂糖とバターを加え、手で混ぜてポロポロのそぼろ状態にする。

②りんごは皮をむき、4等分して芯を取り、さらに薄くスライスする。

③型にサラダ油かバター(記載外)を薄く塗り、②を並べ、レモン汁と砂糖、シナモンを振りかける。

④③に①を均等に乗せ、180度に温めたオーブンで約30分、表面がきつね色になるまで焼く。

⑤カスタード・クリームを作る。小鍋に牛乳と、分量の半分の砂糖を入れて火にかけ、沸騰直前まで温めて火を止め、粗熱をとる。

⑥ボウルに卵黄を入れて泡だて器でほぐし、残りの砂糖を加え混ぜる。さらに粉類を振るいながら加え混ぜる。

⑦⑤を、⑥のボウルに少しずつ加え混ぜる。一度に多量に加えると卵黄が固まるので注意。

⑧牛乳を温めた鍋に、⑦をこし器でこしながら戻し、木べらで絶えずかき混ぜながら、とろみがつくまで弱火で煮る。火からおろしてバター、バニラ・エッセンスを加える。

⑨焼き上がったアップル・クランブルに、クリームを添えて供す。



カスタードの代わりにアイスクリームや生クリームを添えても

メイズ・オブ・オナー
ヘンリー8世らが好んだ宮廷菓子として知られていますが、お城のメイドさんたちが晩餐の後に残ったこのお菓子を争って食べたことからその名が付いたそうで、実は庶民好みの味なのかも。昔ながらのレシピでこのお菓子を作っているお店は今ではロンドンに1軒しかありませんが、家庭用にアレンジされたものもポピュラーになりました。

材料
タルトレット型10個分

市販のパイ生地
・ラズベリーまたはアプリコットジャム
・カッテージチーズ
できればこす
・全卵
・レモンの皮
すりおろし
・グラニュー糖
・カラント
・アーモンド粉
・バター
・ブランデー又はラム酒(好みで)
225g
適量

225g

1個
1個分

70g
50g
15g
15g
少々
①ボウルにパイ生地とジャム以外の材料をすべて入れ、よく混ぜる。

②パイ生地を3mm位の厚さに伸ばし、サラダ油(記載外)を薄く塗ったタルトレット型に敷き詰める。

③②の上にジャムを薄く塗り、①を6~7分目ぐらいまで入れ、200度のオーブンで約20分、表面がきつね色になるまで焼く。

フィリングを入れすぎると焼いた時あふれるので注意。




ランカシャー・ホットポット
Lancashire Hotpot(ランカシャー)

ホットポットとは、身近な具を何でもかんでも入れた「ごった煮」のこと。ランカシャー地方のそれは、地元産のラム肉や羊の内臓、玉ねぎ、にんじんを材料ごとに層になるように入れ、スライスしたじゃがいもで表面を覆ってスープを注ぎ、オーブンに入れて低温で1日中「焼煮」にするスタイルが伝統。古くから綿工業や羊毛工業が盛んで誰もが家族ぐるみで忙しかったこの地方で、材料を切ったらあとはオーブンに放り込むだけ、しかも一皿でボリュームたっぷり、大量に作れるから大家族でもOKのホットポットがよく作られたのはうなずける。英国のご長寿テレビ・ドラマ「コロネーション・ストリート」にもたびたび登場する料理だ。

ベークウェル・タルト

Bakewell Pudding(ベークウェル・ダービーシャー)

ベークウェル・プディングとも呼ばれるこの有名なカスタードのタルトは「失敗」から誕生した。19世紀中頃、ある貴族がベークウェルの町のホテルでイチゴのタルトを注文したところ、コックがケーキに混ぜるはずの卵液を、間違えてタルト生地に塗ったジャムの上から注いでしまった。ところが貴族はそれをすっかり気に入り、それが町じゅうに広まっていつの間にか名物となってしまったというわけ。この失敗には「いや、本当はカスタードの上にジャムを乗せるはずが逆になってしまったのだ」など諸説あるが、いずれにしても偶然が生み出した傑作であることは確かなようだ。

コーニッシュ・パスティ

Cornish Pasty(コーンウォール)

Cornish(=コーンウォール地方の)の名の通り、この地方出身のコーニッシュ・パスティは、炭鉱で働く人たちのお昼ごはんとして19世紀初頭に生まれた。小さく切った肉と野菜がたっぷり入ったパイ料理だ。通常のパイより脂分が少なくベトつかないこと、そしてこれまた通常のパイのように大きく作って切り分けるのでなく、具をパイ皮で完全に包んで1食分ずつ独立した形になっているのは、お昼休みもなかなか現場から外に出られない炭鉱夫たちが、ポケットに入れて持ち運べるよう工夫されたからだそう。現在ではその手軽さとボリュームから全国的にポピュラーになり、コーニッシュ・パスティ専門のチェーン店も各地に点在している。

ハギス

Haggis(スコットランド)

スコットランドの名物料理と言えば誰もが思い浮かべる「ハギス」(他に思い浮かべるものがない?)。羊の肉と内臓、血、脂にオートミールと野菜、スパイスを加え羊の胃袋に詰めたソーセージ状のもの。スコットランドの主要な栄養源であった羊を余すところなく食べ尽くそうということで考え出された経済的な料理だが、現代では家庭で一から手作りされることは少なく、缶詰が出回っている。スコッチ・ウイスキーをかけて食べることも。ちなみにスコットランドには「ハギス」と呼ばれる伝説上の動物もいて、食べ物のハギスはその特殊な味とグロテスクな形から「ハギスの肉だ」と信じている子供も多いとか。

ウェルシュ・レアビット

Welsh Rarebit(ウエールズ)

「Rarebit=Rabbit」、つまり「ウエールズのうさぎ」。なのだが、うさぎの肉は使われていない。薄切り食パンに、チーズ、マスタード、エール・ビールまたはリンゴ酒、スパイスなどを混ぜて作ったソースをたっぷりと盛り、トーストにしたもの。なんでもこの複雑なソースがうさぎの肉にそっくりな味で、肉が買えなかった貧しい庶民がうさぎを連想しながら食べた、という説や、うさぎ狩りに出かけて獲物がかからなかった日のディナーに食べた、という説がある。地元では、ウエールズ語で単に「Stobhach Gaelach」(焼いたチーズ)と呼ばれることも。

アイリッシュ・シチュー

Irish Stew(アイルランド)

アイルランド語で「Stobhach Gaelach」。スコットランドのハギスと同じく、地場の食材を利用しようと、具にはたっぷりのマトンまたはラム肉とじゃがいも、ターニップ、パースニップなどの根菜が使われ、スープもこれまた羊の首の骨やすねなどからとる。地酒のギネス・スタウトが隠し味に使われることも。ブリテン本島の、羊の少ない土地に移住したアイルランド人が、羊肉の代わりに牛肉や鶏肉を使って故郷の料理を作り始めたことから、今では材料にかかわらず、アイルランド人が作ったシチュー料理なら何でも「アイリッシュ・シチュー」と呼ぶ傾向も。
行事と料理の深ーい関係
日本で節分に海苔巻き、端午の節句には柏餅を食べるように、英国にも行事と食べ物にはつながりがある。例えば「ShroveTuesday」(懺悔の火曜。今年は2月28日)。キリスト教ではその翌日(Ash Wednesday=聖灰の水曜)から栄養のある食事を慎む習慣があり、火曜日に家にある卵や牛乳、バターなどを整理するためパンケーキを焼いたのが始まりで、今では「パンケーキ・デー」としてポピュラーに。
イースターの定番である、十字架模様の付いた菓子パン、ホット・クロス・バンズは14世紀、この祝日に食べるものがない貧しい人々のために、ある神父が焼いて配ったもの。
クリスマス・プディングは元々、十二日節(1月6日)に豆を1粒入れて作り、その豆に当たった者が次回のクリスマスのリーダー役を引き受けたといういわれがあり、今でもプディングの中にコインなどを焼き込み、当たった者が幸せになれるというゲーム的要素を受け継いでいる。
やっぱりまずいの? 英国料理
元々料理に味を付ける概念がなかったのと、食べ物をくたくたに煮てしまう習慣から、まずいということで定着してしまった英国料理。逆に言えば、きちんと味付けし、煮過ぎに注意すれば問題ないわけで、人々の味覚も発達した現代では、美味しいものがいくらでも食べられるようになった。とはいえ、古代ゲルマン人の料理法に基づいているとされる英国料理。大昔より与えられてきた「まずい国」の不名誉は、そう簡単に覆せるものではない。自虐的で皮肉屋の英国人は、今日でも自国の食べ物に関するジョークを自ら飛ばしまくっている。「フランスに行ったらフランス料理、イタリアに行ったらイタリア料理を食べろ。英国では中華料理を食べろ」、「世界3大“薄い本”は、ドイツのジョーク集、イタリアの戦勝記、英国の料理全集」、「大英帝国が栄えたのは、自国の料理のまずさに英国人が世界へ逃げ出したためである」などなど。「英国料理全集」は世界一薄いかもしれないけれど、「英国料理ジョーク集」は、相当厚い本になりそうだ(実際存在するらしい)。


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