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ロイヤル・バレエで活躍する日本人ダンサーたち

「眠れる森の美女」
「眠れる森の美女」 ブルー・バード
Photo: AK
英国最高峰にしてヨーロッパでも有数のバレエ団に数えられる英国ロイヤル・バレエ。約100人のダンサーを擁するバレエ団に、現在日本出身のダンサーが6人も所属しているのをご存知だろうか。主役を踊る最高位のプリンシパルである吉田都が日本での仕事と両立すべく客演ダンサーとなった今、正団員として在籍するのは5人。王子や貴公子、爽やかな若者役を得意とする佐々木陽平、貴公子からエキゾチックな役までを自分の色で見せる蔵健太、様々な役柄で観客を魅了する小林ひかる、将来が楽しみな崔(チョエ)由姫、長身とダイナミズムが映える平野亮一。今回は、この注目の5人を特別インタビュー。それぞれのバレエに対する想いやロンドン生活について語っていただいた。
(茉莉あんじぇりか)

佐々木陽平品格の高さと香るエレガンス
佐々木 陽平

1975年11月29日生まれ。
岩手県盛岡出身。
1993年、ロイヤル・バレエ団に入団。
ファースト・ソリスト。
ニューモルデン在住。


紳士の国、英国。その国の最高峰のバレエ団で「くるみ割り人形」の王子を踊る佐々木陽平。主演の女性バレリーナを引き立てることに常に心を砕き、品位高く踊る彼は、古き良き時代の英国紳士を髣髴とさせるダンサーである。スターでありながらロイヤル・バレエの異端児だった熊川哲也に対して、佐々木はいつもバレエ団が理想とする男性舞踊手を具現してきた。ロンドン生活16年、入団14シーズン。プライベートでは元バレリーナのマリアさんを奥様に、日伊ハーフの2児を持つ父でもある。


15歳で単身ロンドンへ

「盛岡でバレエを習っていた14歳の春休みに、旅行で2週間イギリスに来たんです。日本のお稽古場の冬季講習会で指導してくださったロシア人のスラミフ・メッセレル先生が、当時ロイヤル・バレエ・スクール(RBS)で教えていらっしゃったんですね。それでお会いしに行ったら、RBSのオーディションを勧められ、当時のRBSの校長先生からも留学したらどうかと言われました。ただ義務教育は終わらせてからということで、その時は日本に戻ったんです。翌年、(青少年の登竜門として有名な)ローザンヌ・バレエ・コンクールに出場し、奨学金を頂いてRBSで学ぶことになりました。

学校ではザミュエル先生に師事して、毎日肉体的にハードなレッスンをしていました。バレエ団には当時、熊川哲也さんがいらっしゃったんですよ。休みの日には、ドライブやレストランに連れていって頂いたり、一緒に焼肉をしたり、とてもお世話になりました。楽しくてホームシックになっている暇は全然なかったですね。ただ熊川さんはバレエには厳しかった。留学2年目の春、学校でのテストの結果が4位になってしまい、自分でもショックだったんですが、バレエ団に入団できるかできないかが決まる重要な時期でしたから『そんなことでどうするんだ!』とずいぶん怒られました」。

ロイヤル入団とキャリアを振り返って

「眠れる森の美女」
「眠れる森の美女」
ブルー・バード  Photo: AK

その後奮起した佐々木は無事ロイヤル・バレエ団に入団。日本人男性としては、熊川に次いで2人目の快挙であった。また入団2年目に、名振付家、アシュトンの「シンフォニック・ヴァリエーションズ」で、3人の男性主役のうちの1人に大抜擢される。他の2人は熊川哲也と、映画「リトル・ダンサー」で日本でも大人気となったアダム・クーパーだった。

「バレエ団での14年のキャリアを振り返ると2000年が区切りだったように思います。入団からの7年間は自分のバレエや人生を模索していた時代。その時代の終わりに結婚して、2001年にファースト・ソリストになり、団内でのポジションが築かれたわけです」。

夫として父として

私生活の伴侶であるマリアさんは北イタリアの出身。同じ年にバレエ団に入団した元バレリーナだ。足首の故障のために引退し、今は自宅で身体のコアを鍛えるピラーティスを教えている。2人は全く違う怪我でそれぞれ手術をしたにもかかわらず、同じ足に同じ位の手術の傷跡を持つ。

「子供は2人で、長男のジョゼフが4歳、次男のウィリアムが3歳になります。子供には本を読んであげたり、一緒に工作したり。2人にバレエを強制するつもりはないですね。ただジョゼフは踊るのが好きみたいです。お絵かきも上手で、僕より芸術の才能はあるみたいですよ。買い物はキングストンに行くことが多いですね。子供の物中心のショッピ ングです。今だったら冬物のコートや靴とか。子供のサイズはすぐ変わりますからね」。

「くるみ割り人形」作品の魅力と王子役裏話

ロミオとジュリエット
「ロミオとジュリエット」
ベンヴォーリオ役(右)を踊る  Photo: AK

12月8日から翌年1月19日まで上演の「くるみ割り人形」では、1月11、19日に王子役を踊る。去年は同役を怪我で降板し、地元のファンを嘆かせた。

「腰を悪くしてしまったんですよ。『フォー・テンパラメント』という作品のリハーサルで、一つのリフトがどうしても上手くいかなくて何度も持ち上げていたら腰にきてしまったんです。それに小さい子供がいると、抱いたり、子供が床に落としたものを拾うのに、しゃがんだりするじゃないですか。そんな無理が積み重なって腰にきてしまったんでしょうね。

今回上演される「くるみ割り人形」はクリスマスに観る作品として最適ですし、誰が観ても楽しく、そして感動できるバレエです。冒頭のクリスマス・パーティーの場面では、バレエ学校の子供たちもたくさん出ています。主人公のクララがソリに乗る『雪の国』のバレリーナたちは美しいですし、最後の幕の『各国の踊り』も楽しいです。

僕が出るのは一番最後ですから、1幕のパーティーの場面の音楽を聴きながらヘアやメイクをしてもらって、『雪の国』の場面あたりでウォーム・アップをしています。普通のバレエ作品の場合、踊り始めて随分たってからグラン・パ・ド・ドゥ(GPD=主役男女の見せ場)ですが、この作品はいきなりGPDですから、自分のテンションを高めるのに神経を使いますね。純粋な古典バレエですし、王子役は技術的にも難しいんですよ」。

子供にも雪で遊ぶ楽しさを教えてあげたい

バレエ・ダンサーにとっては最も忙しいクリスマス。佐々木はどのように過ごすのだろうか。

「我が家では24日の夜にプレゼントを開けます。妻がイタリア人ですから25日の朝はパネトーネを食べて祝います。2月初めにやっと休暇がもらえるのですが、この冬はイタリアのスキー・リゾートに行って子供たちをソリで遊ばせてやるつもりです。僕は岩手の雪で育ったので、子供たちにも雪で遊ぶ楽しさを味わってもらいたいと思っているんです」。

日本人男性にはまれにみるエレガンスをそなえ、ヨーロッパの大バレエ団に君臨する佐々木陽平。現在在籍する日本出身の他の4人のロイヤル・バレエ団正団員を陰で見守り、支えているのもまた彼である。この冬、そして今後の佐々木の活躍に期待したい。

蔵健太気品とダイナミズム
今が旬の踊り手

蔵 健太

1978年8月2日生まれ。
北海道旭川出身。
1997年入団、 ソリスト。
イズリントン在住。


1995年にモスクワで開催されたローザンヌ・コンクールに出場。足を剥離骨折しながらも踊り抜き、見事スカラシップ賞を獲得する。2年間ロイヤル・バレエ・スクールに留学し、入団。現在は主に準主役を踊る。白人並みのプロ ポーションと優れた音楽性を持つ、華のあるダンサーである。この冬は「くるみ割り人形」の花のワルツとアラビアの踊り、「ピーターラビットと仲間たち / ザ・バレエ」ではカエルのジェレミー、「スケートをする人々」ではブラウン・カップルを踊る。


ロイヤルは歴史のあるバレエ団で、良い作品は長く守り、繰り返し上演します。そんな歴史を守っていくのが僕たち団員の役目ですし、新作を踊る場合は、僕たちがバレエ団の新しい歴史になるわけで、身が引き締まる思いがしますね。

これまでのダンサー人生を振り返ると、剥離骨折、膝の手術、腰を痛めたりとケガが多かったと思います。そこで2年前にバレエ団でのキャリアを真剣に考え、バレエの基本をじっくり稽古したり、食事を変え、ジムに通って美しい身体づくりに励むようになりました。

食事については(日本人の)妻がいろいろ考えてくれ、魚中心の和食にして体重を10キロ落としました。日本人の場合、やっぱり白人の何十倍も努力しないとダメだと気付いたんですね。その結果ソリストになることができました。頑張れば何かを得られる街、それがロンドンの魅力ではないでしょうか。

蔵健太 「眠れる森の美女」 ガーランド・ダンスー左下に蔵健太と小林ひかる(左写真)
「ヴォランタリーズ」(右写真)Photo: AK

小林ひかるオールマイティーな魅力で
観客を魅了

小林 ひかる

1976年9月19日生まれ。
東京都出身。
2003年入団、ソリスト。
クラパム・サウス在住。


大きな瞳とスリムな肢体が、少女マンガの主人公のような小林ひかるは、古典バレエから現代作品まで幅広いレパートリーを持つ。パリ・オペラ座バレエ学校に留学してバレエを学び、その後スイスのチューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団で活躍。4年前に私生活のパートナーであるイタリア人ダンサー、フェデリコ・ボネリ(プリンシパル)とともにロイヤルに移籍してきた。インタビュー当日、左手薬指に光る指輪について尋ねると、9月に婚約されたのだという。この冬は「くるみ割り人形」の花のワルツとスペインの踊り、「ピーターラビッ トと仲間たち / ザ・バレエ」のベーチャー・ブラック・ピッグを踊る。


「ラ・バヤデール」
「ラ・バヤデール」影の王国ソリスト
Photo: AK

「くるみ割り人形」は、クリスマス・ツリーや家の内部のセット、衣装など、イギリス独特で小さな子供が求めるファンタジーで一杯のバレエです。この冬上演する「ピーターラビットと仲間たち / ザ・バレエ」も大人から子供まで楽しめる作品だと思います。

趣味はガーデニングです。家に庭はないんですが、ベランダで植物を育てています。今は季節的にパンジーとシクラメン。

バレエ団では、1週間に3作品のリハーサルや舞台に追われることもありますから、体調管理は大切です。普段は毎日ビタミンCを1000ミリ摂っていますが、風邪気味だな、思ったら1500ミリに増やします。ブーツで買えるオール・デイ・ディフェンスC+Zingや、ファースト・ディフェンス(ネーザル(鼻腔)スプレー)などがお勧めですね。

平野亮一将来が楽しみな長身ダンサー
平野 亮一

1983年9月5日生まれ。
兵庫県尼崎出身。
2001年入団、
ファースト・アーティスト。
フィンチリー在住。


ローザンヌ・コンクールにおいて、海外の著名バレエ団で1年間働くことができる研修賞を獲得し、ロイヤル・バレエ団にやって来た平野は、ロイヤルの中で最も長身。母はバレリーナで、バレエ教室を経営。兄の啓一もバレエ・ダンサーというバレエ一家の出身。この冬は「くるみ割り人形」のねずみの王様、スペインの踊り、アラビアの踊り、花のワルツを、「ピーターラビットと仲間たち / ザ・バレエ」ではカエルのジェレミー、「スケートをする人々」ではブラウン・ボーイを踊る。関西人らしい明るさの持ち主だが、実は肺の病気にかかり、現在は薬を飲みながら舞台に立っている。


「背の高さは役を得る上で有利か」とよく聞かれますが、僕自身はそうは感じていないですね。背が高いとどうしても貴族の役など後ろで立っているだけの役をもらいがちですから。

(今回の抜擢は)ダンサーとして人間として、バレエ団や仲間に信頼された結果なんだと思います。1年目は言葉も分からず、いっぱいいっぱいでしたが、2年目からは慣れてきて、今では友達も多くできて毎日を楽しんでいます。

趣味はいろいろありますが映画鑑賞かな。忙しいので家でDVDを観ています。好きな映画は繰り返し観ますね。「スター・ウォーズ」と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がお気に入りで、毎年クリスマスはこの2本を観て1人で過ごすんですよ。

暗いヨーロッパの冬を乗り切るには、「1日を楽しむ」「友達と話し、笑う」ことかな。やっぱり「笑い」が一番ですよ。

平野亮一 「レクイエム」ー右端に平野亮一、左から4人目に蔵健太(左写真)
「ラ・バヤデール」婚約披露宴の踊り(右写真)Photo: AK

平野亮一可憐と優美
─ 将来期待のバレリーナ

崔 (チョエ) 由姫

1984年3月29日生まれ。福岡出身。
2003年入団、
ファースト・アーティスト。
コベント・ガーデン在住。


ローザンヌ・コンクールで研修賞を獲得し、ロイヤル・バレエ団に入団。可憐な容姿と繊細にして芸術性豊かな踊りで将来が期待されるバレリーナだ。ロンドンに来る前は、パリでバレエを学んでいた。米国のボストン・バレエ団入団の話もあったが、年齢的に若すぎることが問題となり、最終的には入団できなかった。その後、コンクールに出場し、ロイヤル・バレエへ。この冬は「くるみ割り人形」1幕の人形、2幕の雪の精、3幕の芦笛の踊りを、「ピーターラビットと仲間たち / ザ・バレエ」や「スケートをする人々」でも目立った役を踊る。


以前はパリ・オペラ座バレエ団入団を夢見たこともありました。パリは街のすべてが絵に描いたよう。古典的で芸術的、美しい街で雰囲気があります。ただフランス語をしっかり話せないと相手にされませんし、何よりも治安が悪いんです。ロンドンの街は古典的な部分と、近代的な部分の両方があって面白いと思います。フランスのバレエは「型」があって、崩せないのですが、イギリスのバレエには「遊び心」があってそれが自分には合っていると気が付きました。

ロイヤル・バレエ団では、皆ダンサーである前に人間なんだなと思います。ロイヤル版の「くるみ割り人形」も、1幕のパーティーの場面から人間味に溢れているんですよ。

将来はキレイなだけの踊り手ではなく、お客様に感動を与えるバレリーナになりたいです。でもその前に一人の女性として、素敵でありたいです。ジュリエット役を踊るのが夢なんですよ。

崔由姫
「ラ・バヤデール」影の王国ソリスト(左写真)
「眠れる森の美女」リラの精のおつき(右写真)Photo: AK


この冬のロイヤル・バレエ上演作品とその魅力
ヨーロッパの冬がその暗さを最も増す12月から1月にかけて、ロイヤル・オペラ・ハウスに点る灯は、ひときわ暖かく光り輝いて、人々を誘い迎え入れる。特に今年の冬は、大人から子供まで楽しめる作品が目白押しで、バレエ初心者や、家族連れが大いに楽しめる内容になっている。

ロイヤル・バレエ

くるみ割り人形

クリスマス・バレエと言えばこの作品。謎めいたドロッセルマイヤー氏からクリスマス・プレゼントに醜いくるみ割り人形をもらった、少女クララ。パーティーの場面に始まり、クララが旅する雪の国、お菓子の国のセットや衣装、踊りのカラフルで素晴らしいこと。バレエ団のダンサー、バ レエ学校の生徒たちが、様々な役で活躍する。

見所は1幕、ドロッセルマイヤー氏が子供たちを集めて見せる人形たちの踊り、ねずみの王様率いるねずみ軍とくるみ割り人形率いる軍隊の戦い、3幕の各国の踊りと、主役である金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ。

日本出身のダンサーでは、吉田都と佐々木陽平が、主役の金平糖の精と王子を踊るほか、今回ご紹介したダンサーたちも、全員出演予定。

The Nutcracker Main Auditorium
2007年12月8日~2008年1月19日
Box Office: 020 7304 4000
* スケジュールの詳細は、ウェブを参照
http://info.royaloperahouse.org

ピーターラビットと仲間たち / ザ・バレエ

ピーターラビット、リスのナトキン、アヒルのジェマイマなど、ベアトリクス・ポターの絵本の登場人物が大活躍する楽しいバレエ。可愛い着ぐるみを着て踊るダンサーたちに注目だ。

見所は大きな跳躍を見せるカエルのジェレミーと、トウ・シュースで巧みに踊る子ブタちゃんたちの踊り。

今回ご紹介したダンサーたちでは、蔵健太、平野亮一がカエルのジェレミーに抜擢されているほか、小林ひかる、崔由姫も出演予定。今回10年ぶりの上演となる英国ならではのバレエをお見逃しなく。

スケートをする人々

古き良き時代の冬のスケート・リンクに集まってくる若者たちを描いたバレエ。得意のスケート技術を披露するブルー・ボーイ、ロマンティックな恋人たちであるホワイト・カップルなど、ある者は元気で快活に、ある者は優美に踊る、心に残る小品である。

それぞれの役名は、着ている衣装の色からとられている。崔由姫、蔵健太、平野亮一らが出演する予定だ。

Tales of Beatrix Potter / Les Patineurs
Main Auditorium
2007年12月23日~2008年1月8日
Box Office: 020 7304 4000
* スケジュールの詳細は、ウェブを参照
http://info.royaloperahouse.org

12月放映予定のロイヤル・バレエ関連テレビ番組

実際、劇場に足を運ぶには忙しすぎるという方は、テレビで今回ご紹介したダンサーたちの活躍をご覧になってはいかがだろう。

ITVの人気芸術番組、サウスバンク・ショー(SOUTHBANK SHOW)では、12月中に「くるみ割り人形」特集を放映予定。佐々木陽平とラウラ・モレーラの練習風景を観ることができる。

BBCはクリスマスにロイヤル・バレエ版「ロミオとジュリエット」を放映予定で、佐々木陽平がロミオの友人、ベンヴォーリオを踊るほか、小林ひかる、崔由姫がジュリエットの友人、蔵健太がマンドリン・ダンス、平野亮一もヴェローナの若者役で出演している。

ロイヤル・バレエ団とは

1931年設立。創設者は、元バレリーナで振付家でもあったニネッタ・ド・ヴァロワ。当時はロンドン北部のサドラーズ・ウェルズ劇場を本拠地に、ロンドン南部オールド・ヴィック劇場でも公演したことから、ヴィック・ウェルズ・バレエ団と呼ばれていた。

世界の著名バレエ団の中では、比較的若いロイヤル・バレエ団が世界的に注目されたのは、振付家フレデリック・アシュトンとケネス・マクミランによる優れた作品群と、優美でたぐいまれなるスター性を持ったバレリーナ、マーゴット・フォンティーンの活躍によるところが大きい。

フォンティーンは10代でデビュー。「眠れる森の美女」のオーロラ姫役が圧巻の、バランス能力に優れたダンサーだった。創設者、ヴァロワ女史の助言により、晩年にはロシアから亡命した直後のルドルフ・ヌレエフとパートナーを組み、後には「世紀のパートナーシップ」とまで呼ばれるようになる、一世を風靡した息の長いバレリーナだった。

アシュトンは、物語バレエ、抽象バレエの双方に優れ、作品の「美」に何よりもこだわった名振付家。代表作には「シンデレラ」「真夏の夜の夢」「シンフォニック・ヴァリエーションズ」「ラプソディー」などがある。

一方のマクミランは、人間の心の闇にこだわり、ドラマティックな作品を多く手がけた。代表作は「ロミオとジュリエット」「マノン」「マイヤリング、うたかたの恋」「大地の歌」など。中でもマクミラン版「ロミオとジュリエット」と「マノン」は世界中で愛され、各国のバレエ団がこぞって上演している。

Royal Opera House
Bow Street
Covent Garden
London WC2E 9DD

ロイヤル・バレエ団ダンサーの階級について

ロイヤル・バレエ団に在団している約100名のダンサーは、主役を踊るプリンシパルをピラミッドの頂点に、5段階6種類の階級=ランクに分けられている。ランクによって踊る役が違うのはもちろん、給与もまた違ってくる。

プリンシパル・ダンサー
主役、準主役を踊る
現在、女性11名、男性8名
プリンシパル・キャラクター・アーティスト
王様、王妃様、キャピュレット夫人(ジュリエットのお母さん)など、物語バレエの主だった役を演じる  
現在、女性3名、男性4名
ファースト・ソリスト
主役、準主役を踊る 
現在、女性4名、男性7名
ソリスト
1人で踊る(ソロ)準主役や、2~3人で踊るような目立った役を演じる
現在、女性9名、男性8名
ファースト・アーティスト
群舞の一つ上。明日のスターが隠れているランクである。平野亮一や崔由姫のようなスター候補生はソロ、または2~3人で踊るような役に抜擢されている
現在、女性12名、男性12名
アーティスト
コール・ド・バレエとも呼ばれる。いわゆる群舞で、女性アーティストの場合、「白鳥の湖」ならば白鳥の群の1羽を踊り、「ロミオとジュリエット」ならば女性はヴェローナの街の娘、男性ならば街の若者や、舞踏会の場面などで大勢で踊るグループの1人となる。通常はバレエ学校から入団して1~4年の若手が在籍する
現在、女性13人、男性6人


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