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第34回 ヘンリー・フィールディング
ヘンリー・フィールディング

これはまた、恥も外聞もなく厚顔もここに極まれりとでもいうか、或いは赤裸々なる人間観察の吐露とでもいうか、恋を語りながらおよそロマンティシズムのかけらもなく、だがそれでいて、ウィッティであり、また何がしかの真実を穿った言葉の力がある。

イギリス小説の父と言われ、長編小説「トム・ジョーンズ」で知られるフィールディング。性格描写の正確さと風刺のきいた機知の豊かさでは定評があるが、なるほど、今回の名言もご多分に洩れず、人間心理の一面を乾いたユーモアとともに抉(えぐ)り出している。

さて、ここで考えねばならないのは、文頭に挙げられた「Love」=「恋」のありかである。すなわち、恋はお茶を飲む当人の胸を焦がすものなのか、それとも他人の色事を言ったものなのか――。この名言は、このふたつの可能性を孕(はら)んでいるところが、なかなかに奥が深く、妙味があるのである。

「恋」に続く言葉が「スキャンダル」であるから、まずは同列に他人のことと考えるのが妥当だろうか。この場合、「恋」はほとんど「ゴシップ」と同義と化す。誰と誰が怪しいの、くっついたのといった話は、文字通りの茶飲み話として、昔から定番中の定番であろう。単に「くっついた」が「出来ちゃった」となるようなら、ただちに「恋」が「スキャンダル」に移行する。さすればお茶の方も、ずいぶんとお代わりが必要になるに違いない。

だが、ひょっとすると、この「恋」は茶を飲む当人同士のものなのではないだろうか。想像してみたい。カップルがテーブルを挟んでお茶を飲んでいる。ティーカップをひとくち啜るたびに、テーブルの向こうの相手にうっとりとした秋波を送る。茶を含んで、しっとりと濡れた唇。熱い茶が喉を通るごと、白い首の喉仏がなまめかしく動く。砂糖を取ろうとした手と手が思わず重なる。アールグレイの優雅もいいが、この場合、ラプサンスーチョンのような薫り高い茶も刺激的だ。芳香に高まる官能。なるほど、茶とは恋の媚薬でもあったのだ!

フランスならば、茶ではなく、確実にワインがその役割として語られるところだろう、恋のときめきに欠かせぬ芳醇のワイン。恋はワインの最高の友とでも言い得よう。さて、相手を思う気持が真剣なら、己の恋をスキャンダルと同列にしてしまう物言いはいただけないように思わぬでもないが、フィールディングのこの言葉は、恋を語った名言というより、イギリス人と茶の切っても切れない独特の関係を語るものとして味わった方がよいのかもしれない。


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