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第35回 C.S.ルイス
C.S.ルイス

「ナルニア物語」の作者として知られるC.S.ルイスが、読書について語った言葉である。ルイスは、作家であると同時に、オックスフォードやケンブリッジで教鞭をとる英文学の学者であり、また宗教学者でもあった。

私が今回の名言に出会ったのは、こちらの図書館で見つけた読書キャンペーンのちらしに、この言葉が記されていたからだった。私は別にルイスの著書のファンではないが、読書というものの本質を言い当てた言葉として、心が温まるような気がした。

読書によって自分が孤独でないことを知るという人は、人生がいかに孤独であるかを熟知している人である。表面的な付き合いなら、日々話を交わす会社の同僚もいる。隣り近所の住人とも挨拶を交わす。友人であると人には語る知己もいるだろうし、そもそも、ほとんどの人が好むと好まざるとに関わらず、家族のなかに生まれ育つ。ロビンソン・クルーソーのように、絶海の孤島に独り住むわけではなくとも、人は孤独を感じるものだ。自分を真に理解し、共感してくれる人の存在を、人の心は求めてやまないのである。

不思議なもので、世に名著と言われるような本は(といっても小説など文学に限られるだろうが)、必ずやもうひとりの自分を与えてくれる。ヒーロー、ヒロインが自分とは性別を異にしようと、またピカレスクロマンのように悪党を主人公とするものであろうと、読書という体験は、自分の分身となる主人公と対話し、喜怒哀楽、心を通わせながら時間をともにしていくものだ。思想も感情も、身の回りの人間と交わす日常の言葉とは違う次元で語られ、自己のなかに反芻される。その結果、自分自身というものが確実に彫りを深くする。映画やテレビも同じだと思われがちだが、共感共鳴はあっても、自己を深くするような叡智にはなかなか結びつかない。

実は最近になって、ルイスが違うところで、似た言葉を残していることを知った。「We love to know that we are not alone.」後半はうりふたつの同文だが、「自分が独りではないことを知る」ために、「私たちは愛する」というのだ。まるで兄弟のようなこの言葉に出会って、読書を語った名言の価値が、更に上がるように思った。

本を読むとは、愛することと同義なのだ。書は愛を満たす。知は情に通ずるのである。人は孤独であって、孤独ではない。英文学者が宗教学者でもあった如くに、本を読むことで、私たちは愛の至福に導かれる。今回の言葉を、読書週間のキャッチコピーにのみ収めてしまうようでは、あまりにもったいないのである。


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