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第72回 コソボ独立宣言に帝国主義と日本を思う

コソボ独立宣言

コソボ自治州が2月17日、母国であるセルビア共和国の同意なしで一方的に独立宣言をした。以前から独立の意向を示していたが、昨年7月の国連安全保障理事会での独立決議案に対してロシアが事実上の拒否権を行使したためその計画は頓挫していた。

一方、セルビア・モンテネグロ紛争以来セルビアに批判的な米国と英仏独は即座に承認した。サブプライム問題をきっかけに、共産圏崩壊の帰結である経済のグローバリゼーションの影の部分がはっきりしてきた現在、これまで経済発展を遂げた英米や旧共産圏、新興国などが政治力を持ち、第一次大戦以前の帝国主義の復活状況が明確に見えてきたように思える。帝国とは米国、中国、EU、ロシア、イスラムである。


帝国の利害

コソボは、トルコと西欧と東欧の境界であるバルカン半島の付け根に位置する。歴史的にはアジアから来たブルガリア人が支配し、ついでスラブ系のセルビア人と古代印欧語族の末裔であるアルバニア人が混在して住むようになった。12世紀になるとオスマントルコが支配し、イスラム教徒のアルバニア人を軍人として重用、ブルガリア人とセルビア人を追放した。このため住民の多数はアルバニア人である。オスマントルコが第一次大戦後に消滅すると、ユーゴスラビアの一部になり、チトー大統領の下で政治は安定した。しかし、共産圏崩壊で複数民族の不満を抑えていたイデオロギーが消滅し、代わって民族主義が台頭した。ユーゴでは、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、モンテネグロが独立して、最後にコソボが残る問題となっている。

民族、宗教のみでも歴史的に骨肉の争いがあって厄介なのに、帝国主義では資源、地政学が絡んでくる。コソボでは鉱物資源が豊かで、特に同国内にあるトレプチャの亜鉛鉱山はヨーロッパで最大級の規模を誇る。ギリシャの鉱山会社がセルビア政府から資源の3分の1を販売する権利を買っており、セルビア政府の大きな収入源となっているので簡単には手放せない。またコソボには20年間にわたり米国全体の消費量を賄うことのできる170億トンの石炭が埋蔵されており、「バルカン半島のクウェート」と呼ばれることもあるそうだ。その他にも、石炭・銀・アンチモン・鉄・ボーキサイト・クロムなどが産出される。亜鉛は、自動車部材や電子部品の製造に不可欠であり、クロムはレアメタルとして、ハード・ディスクやスティールに使われる。

そして何より米国、欧州にとってコソボは、カスピ海に近いアゼルバイジャン油田から、ロシアとその息のかかった東欧諸国を通らずに地中海に原油をパイプ輸送する最短距離に位置している。さらにグローバリゼーションの中で、希少資源であるレアメタルの国家的な囲い込みが中国などで始まっていることは広く知られている。ロシアの悲願はユーラシア帝国を築くことであり、バルカン、アゼルバイジャン、アフガニスタン、カザフスタン、モンゴルに至る南境界での勢力拡大策を取ることは目に見えている。戦争になるまでは時間があると思うが、露骨な資源確保策を「民族自立」、「宗教的寛容」など正統性主張のための題目で包んだ「殴り合い」があちこちでみられる。


日本の政治外交

EUの中でもバスクを抱えるスペインは独立反対だ。コソボは安全保障問題に直接かかわるため欧州では高い関心が持たれているが、日本からは地理的な距離が ある。しかし、中国経済が悪化し共産党政権の基盤が弱まったときに、チベットや東トルキスタンで同じ問題が起きるのではないか。さらに北朝鮮、台湾問題となると日本は真っ先に覚悟を問われる。偶然にも時を同じくして中国が日米中の3国定期対話を呼びかけてきた。台湾併合への布石であることは確実だ。

帝国主義の復活の中で、帝国になるにはあまり小さい日本の政治力、一方で大国につくのみではあまりに大きな経済力。だとすれば、親日国を味方にすることが王道ではなかろうか。米中露という大国とはいずれにせよ付き合わねばならないので、そのパイプはもっと太くしてよい。しかし、それだけでは小国は生き残っていけまい。中小の親日国とのパイプ強化こそ日本外交、安全保障を強くすると思う。まずは隣国である韓国との団結こそ不可欠。ロンドンでの付き合いで、日本に好意的な国をあくまで私見で挙げてみると、近いところから、フィンランド、トルコ、エジプト、パキスタン、モンゴル、インドネシア、タイ、ブラジルといった国々なのだが、どうだろうか。

(2008年2月24日脱稿)


筆者プロフィール
Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。


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