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第43回 ジョナサン・スウィフト
ジョナサン・スウィフト

日本人は古来「無常」という概念に馴染んできた。鴨長明 (かものちょうめい)の随筆「方丈記」の冒頭「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」や、「平家物語」の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」は、現代日本人が耳で覚え、諳(そら)んじることのできる数少ない古典の詩句である。

従って、今回のスウィフトの言葉も、特にショッキングな真実を知らされるという動揺もなく、自然に受けとめることができる。スウィフトの文体は、「nothing ~ but」のひねりを効かせた構文に、「constant(一定した)」に「inconstancy(不定)」という対比を絡ませて、力強い効果をあげているが、英国人には衝撃をもって響くこの言葉も、私たち日本人の耳には、聞き馴染んだ昔語りのように聞こえなくもない。すべて世にあるものは、常ならず。無常は、生あるものの宿命なのである。

スウィフトは、悲観主義者のニヒリストとして知られる。春の盛りのような美しい麗人を見ても、その魅力に恍惚となるより、何十年後かの寄る年波を夢想して、意気阻喪してしまうような感性の持ち主であった。ものごとの否定的側面から目をそらさず、神経症的なほどに、その負の部分にこだわり、増幅拡大して、絶望の淵に溜め込んだ憤懣(ふんまん)をバネに、乾いた諧謔(かいぎゃく)の笑いを放ったのだった。代表作「ガリヴァー旅行記」は、そのようにして書かれた、負の裏返しの哄笑に満ちた幻想譚である。

我らが先祖は「無常」を感じてこの世の空しさを嘆き、スウィフトは冷厳な現実認識を極めて「inconstancy」を断じた。どちらも、盛んなるものが衰え、やがて死を迎えるという、運命の大八車が転げ落ちる下り坂がイメージされていた。

だが私は、同じように時の移ろいの絶対性を認めながらも、もうひとつ違った形で感じとることを知っている。春夏秋冬、季節は必ず移ろい行くが、すべてが死の眠りにつく冬が過ぎれば、再び春の息吹を迎えることになる。寒くて暗い冬の後には、必ず春の歓びが巡ってくるのである。

人の一生には、一見すると季節の循環などないように見える。だが、例えば命が最も輝く時である恋というものを見ても、青春の恋以外にも、壮年男女の成熟した恋もあり、また老いらくの恋という味なものもある。

時は移ろう。ものに一定なるためしはない。が、そのことを嘆き悲しむばかりでなく、もう少し、人生とうまく調和を図りながら、変化や巡り合わせの妙を楽しみつつ時を重ねていくことも可能なことだと思う。一生を四季に喩えれば私は既に秋だが、それでも小さな春の訪れをどこかに信じて、生きていたいと思うのである。


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