spacer spacer
Eikoku News Digest
France Germany
UK
search
2008/07/04 Friday 20:20 BST
-
HOME
NEWS
英国発ニュース
今週のタブロイド
英国における日本報道
ヨーロッパ三面記事
CLASSIFIED
求人・求職
貸家・貸部屋
マーケット
レッスン
エトセトラ
お申し込み / Apply now
ENTERTAINMENT
2008年 Happy Astrology
当たる!ロンドン占い
隠れ家ストリート
UKグルメ・レストラン
読んで・見て・聞いて
SPECIAL
最新のオススメ特集
BLOG
セレブの部屋
笑福亭笑子のがんばり漫談
ダイジェスト編集日記
COLUMN
バスカー土門の人生相談
木をみて森もみる
お遍路さんがゆく
この言葉 名言に想う
知って楽しい建築ウンチク
LIFE
UKビザ必勝法
Mr.Cityの世界経済
マネー教室
在英日本人の本音
CURRENCY
Exchange rate on 2008.07.04

GBP GBP  JPY JPY
1.00  211.57
0.000 %

Edit - About - More

 
HOME arrow 木をみて森もみる arrow 第11回 「正義」と「独善」の聖火リレー。


17 April 2008 vol.1143

第11回-「正義」と「独善」の聖火リレー。

4月6日の日曜日。朝8時ごろに起きると、雪が激しく降っていた。家の前の道路も裏手のテニスコートも、真っ白である。湿って重い、いかにも春らしい雪が、後から後から降ってくる。

北京五輪の聖火リレーは、そんな雪の中で始まり、異様な雰囲気の中で続けられた。。

◆ ◆ ◆

沿道の至るところに、チベット旗が翻り、「中国はチベットから出て行け」「チベットに自由を」といったプラカードが並ぶ。ランナーに向かって、同じようなスローガンが浴びせられた。聖火を奪い取ろうとした人がいたし、自転車ごと聖火ランナーに体当たりを試みた人もいた。チベット旗を手に乱入を試みた人がいて、消火器で聖火を消そうとした人も現れた。

妨害を封じ込めようと、ロンドン警視庁の警察官と水色のスポーツウエアを着た中国人警備員が、ランナーを幾重にも取り囲む。後で空撮の写真で人数を数えたら、双方合わせて41人もいた。場所によっては、もっと多かったに違いない。

もう、聖火リレーと呼べる代物ではなかった。「まるで障害物競走」と書いた新聞があったが、翌日のパリでは、混乱はさらに拡大。車いすのランナーも襲われ、リレーはとうとう中止になった。

チベットに対する中国の強圧姿勢は、実にひどい。批判は当然だと思う。しかし、リレーの混乱を見ながら、私は別のことを考えていた。

◆ ◆ ◆

サッカーのスペイン・FCバルセロナ所属のディフェンダーに、リリアン・チュラムという選手がいる。フランス代表として、1998年のワールドカップ・フランス大会に出場し、ジダン選手らとともに、フランス優勝に大きく貢献した。現在もフランス代表として、最多出場試合数を更新中である。

チュラム選手は、カリブ海のグアドループ諸島の出身だ。ここは、かつて仏の植民地であり、現在は仏の海外県という位置付けだ。

黒人のチュラム選手は、人種差別や人権問題に関する積極的な発言で知られる。数年前、パリ郊外で移民の暴動が起きた際は、虐げられる移民の側に立ち、サルコジ内務相(現大統領)に格差是正などの申し入れも行った。「サッカー界の哲人」「賢人」とも呼ばれ、以前、私がインタビューした際も、こんなことを話していた。

「1789年にフランスの人権宣言があったのは、知ってるよね? 人間すべて、法の下に自由と平等である、と。その年、僕の故郷には奴隷制度が厳然と続いていたんだ」

1931年には、仏のアルジェリア支配120年を記念し、パリで植民地万博が開かれた。

「そこでは、僕ら黒人が『展示』されたんだぜ。当時はもう、人権や自由が当たり前のこととして、西欧社会で語られていたのに。ほんの80年足らず前の話さ。第二次世界大戦後の1948年には国連で世界人権宣言が採択されたけど、(英系白人などが支配層だった)南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)はその年に法制化されたんだよ。それに当時、英や仏は世界中に多くの植民地を抱えていた。この意味が分かるかい? 僕の言いたいことが分かるかい?」

言っていることと、実際にやっていること。その落差を、いわゆる先進国の人たちは、どれほど認識しているのか、と。ほかにも数多くの例を出しながら、チュラム選手は、それをこんこんと語り続けた。

◆ ◆ ◆

世界人権宣言が採択された1948年は、ロンドン五輪が開催された年でもある。ナチス・ドイツのヒトラーが1936年のベルリン五輪で採用した聖火リレーは、このロンドン五輪が2度目だった。そして2012年、五輪は再び、ロンドンにやってくる。

五輪の注目度や位置付けも違うから、前回のロンドン五輪では、例えば植民地の人々が聖火を妨害することはなかった。しかし、仮に2012年にも世界を巡る聖火リレーがあったとして、行く先々で、例えばイラク戦争の責任を問う人々が、プラカードだけに飽きたらず実力で聖火を妨害したら、英国はどんな反応を示すだろうか。今回のロンドンでの妨害に比較的好意を見せた多くの英紙は、どう伝えるだろうか。

「正義」と「独善」は、いつの時代も紙一重である。


高田 昌幸
北海道新聞ロンドン駐在記者。1960年、高知県生まれ。86年、北海道新聞入社。2004年、北海道警察の裏金問題を追及した報道の取材班代表として、新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。
  spacer  
eBOOK THIS WEEK
木をみて森もみる
バックナンバー
PROMOTION
最新物件情報はこちらから
from News Digest
ご意見・ご感想
リンクダイジェスト
定期購読のお申込み
WEATHER
LONDON
19°C
spacer spacer