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HOME arrow 最新のオススメ特集 arrow 特集バックナンバー arrow 「英国の女たち」シリーズ 第3回 UK音楽業界の女たち

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容姿、実力、キャラ、すべてが濃い!UK音楽業界の女たち

英国が世界に発信する音楽といえば、すぐに思い浮かぶのがインディーズ系のロック・バンド。でも最近それに負けじとチャートに色を添え、記録破りのヒットを飛ばしているのが女性ソロ・アーティストたちだ。アイドル・グループの一員じゃないと売れなかった時代は終わり、ようやく日の目を見ている英国の歌姫たち。英国を語る上では外せない、そして今年大注目のアーティストたちをご紹介しよう。

(本誌編集部: 國近絵美)


不幸が最高のスパイス人生も「ジャズ」な姐御肌
エイミー・ワインハウス
Amy Winehouse

1983年9月14日生まれ
ロンドン出身

本名:Amy Jade Winehouse
ジャンル:ソウル、ジャズ、R&B
担当:作詞・作曲も手掛ける
Amy Winehouse

血だらけのバレエ・シューズ、剃刀の切り傷だらけの腕、マスカラが流れ落ちた頬。自傷行為にドラッグ中毒、そして投獄中の夫。もしエイミー・ワインハウスに歌がなかったら、彼女は一体どうやって生きていたのだろう。そしてもし彼女がいなかったら、英国のタブロイド紙は毎日どうやって紙面を埋めるのだろう──そんな心配をしてしまうほど、あらゆる種類の不幸を煮詰めたような濃く重い問題を抱え、そしてそのほとんどが現在進行形で大々的に報じられている彼女。それでもエイミーのCDが売れ、世界各国で賞を受賞し続ける理由は、まさに「才能」という一言につきるだろう。

03年にアルバム「Franc」でデビューし英国だけで67万枚のセールスを記録、ブリット・アワードやマーキュリー・プライズの候補入りを果たす。そして06年に発表したセカンド・アルバム「Back to Black」ではグラミー賞5冠を始めとする、ありとあらゆる賞を総なめに。先日発表された英国の30歳以下の音楽業界長者番付では資産2000万ポンド(約44億円)で堂々の10位に輝いた。トレード・マークであり「ハチの巣」と呼ばれる後頭部もっこりヘア・スタイルは知名度と共に人気を集め、あのシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドをも魅了し「彼女こそミューズだ」といわしめるほど。最近ではギャラが1億円を超えるライブの依頼も続いているようで、まさに英国が世界に誇る「歌姫」に成長した。

とはいえ、エイミーには凡人離れした不幸がよく似合う。名字をもじった「Wino(安酒飲みのアル中)」という愛称そのままに、酒もドラッグも倒れるまでとことん楽しみ、去年11月から収監中の夫とは「21世紀のシドとナンシー」 ともいうべく激しい愛憎劇を繰り広げる。頬っぺたに根性焼きを入れようと、オーバードーズで入院しようと、ライブをどたキャンしようと天下御免。でも、「天城越え」をカバーさせたら天下一品、そして極妻が誰よりも似合うに違いないエイミー姐さんの激しさ、これからは音楽活動一 本に絞って欲しいところだ。


UK音楽業界を進化させた悪ガキ娘
Lily Allen
リリー・アレン

1985年5月2日生まれ
ロンドン出身

本名:Lilly Rose Beatrice Allen
ジャンル:ポップ
担当:作詞・作曲、ギター
Lily Allen

ひらひらのドレスにスニーカーという出で立ちで颯爽とUK音楽業界に登場したリリー・アレン。オンラインのコミュニティ・サイト「MySpace」でデモ音源を公開しデビュー前からファン獲得に成功した、その後に続く「ネット出世型アーティスト」の先駆けだ。小鳥さんのような可憐な声とは裏腹に、日常生活を毒舌たっぷり、コックニー訛りもろ出しで唄うその姿はまさに「近所のネエちゃん」。男勝りで飾り気のないイメージと、アイドル系セレブとの口喧嘩やサイズ・ゼロ批判も手伝って、一躍全国に浸透した。

個人的な好き嫌いはともかく、リリーの英音楽業界への一番の貢献は「べったり濃厚、どこまでも追いかけます失恋女」系、あるいは「私って超セクシーでしょ」アイドル・グループ系といった、それまでメジャー受けしていた女性アーティストの枠をぶち壊したことだ。バンドが主流の英音楽界に、ポスト・リリーとして口達者な女性歌手が多く登場したのもまさに彼女が切り開いた道のおかげ。音楽もキャラも好き嫌いがはっきり別れるのはこの際ご愛嬌といったところだ。

コメディー俳優のキース・アレンを父に持ち、映画プロデューサーの母親に、弟も最近注目株の俳優という芸能一家出身のリリー。とはいえ、酒やドラッグの使用が見つかって13校もの学校を転々とし15歳でドロップアウトしたお転婆娘でもある。その同じ年には、母親に友人宅に泊まると嘘をついてイビサ島でドラッグを売って生活したり、恋人との別れを苦に自殺未遂を図り、監視つきの施設に4週間入院したりしたという、エイミー・ワインハウスもびっくりのエピソードも隠し持つ。今年初めに当時恋人であったエド・シモンズ(ケミカル・ブラザーズ)との子どもを流産してから元気が無いとはいえ、現在2枚目のアルバムを製作中。BBCにトーク・ショー「Lily Allen and Friends」を持ち、演技の世界にもかなり興味を示しているといわれる彼女、しばらくはリリー節でお茶の間を賑わしてくれることだろう。


削って磨いて商品化  人生もダイヤモンドの原石
Duffy
ダフィ

1984年6月23日生まれ
ウェールズ出身

本名:Aimee Anne Duffy
ジャンル:ソウル、ポップ
担当:作詞・作曲
Duffy

モータウン風な60’sサウンド、スモーキーな声に拳を利かせた独特の歌い方、小柄ながらプリプリしたセクシーさ ──古いアルバムから取り出したような、洗練されつつも肌なじみの良い「ヴィンテージ」な雰囲気をかもし出すダフィ。そしてそれらのイメージと、ウェールズの村出身という「田舎者=素朴」なギャップが彼女の売りだ。

人口約2500人という村で10歳の頃までウェールズ語を母国語として育ったダフィは、歌手を夢見ていたものの全く手ごたえがなく、夢を諦めかけていた。だが手当たり次第に送ったデモ・テープが名インディーズ・レーベル「ラフ・トレード」の創立者に気に入られ、ロンドンに移動。元「スウェード」のバーナード・バトラーをプロデューサーに迎え、デビューするや否や大ヒット、英国ではすでにレオナ・ルイスのチャート記録を更新する勢いだ……。

こう聞くとまるで英国版シンデレラ・ストーリーだが、 ダフィの事務所が打ち出すイメージは、マドンナも所属する広報事務所という「プロ中のプロ」によって、盆栽のようにきれいに剪定されている。例えば13歳の頃に母親が再婚した際、元妻が3000ポンドで義父の暗殺者を雇っていたとか、19歳の時にオーディション番組「Wawffactor」(ウェールズ版「Xファクター」)に出場して準優勝していたとかいう話は、全く聞こえてこないのだ。そのうちダフィのソウルフルな歌声と共に、レーベル契約からデビューまでの謎の準備期間4年間の話も、聞こえてくるかも……?


ただ抱きしめて欲しい 毛布のような歌声
Adele
アデル

1988年5月5日生まれ
ロンドン出身

本名:Adele Laurie Blue Adkins
ジャンル:ソウル、ジャズ
担当:作詞・作曲、ギター
Adele

「男に不自由しない限り痩せようと思わない。で、不自由してないから痩せない」。そう豪語する、日本では滅多にお目にかかれないタイプの、しかしとっても英国人らしい歌手、アデル。先月恋人がバーバリーのモデルに乗り換えた時も「絶対に痩せない」と言い切った彼女は、現在、英国音楽業界が最も注目している新人の1人だ。

「第2のエイミー・ワインハウス」として売り出されたアデルの魅力は、なんといっても圧倒的な包容力を持ち「トラフィック・ストッパー(思わず立ち止まってしまう声)」と称される声音。「お母ちゃん」と呼びかけたくなるオバタリアン・キャラも、歌い出すと一転、19歳(5月5日で20歳)とはとても思えない、酸いも甘いも知りつくした憂い漂う歌姫に激変する。シングル・デビューする前に老舗音楽番組「レイター・ウィズ・ジュールズ・ホランド」でTVデビュー、そしてアルバム発表もしていないうちから08年度のブリット・アワードで、批評家たちが最も有力な新人に贈る「Critics Choice」賞を受賞するなど、異例のラブコールを受けているのも頷ける。

一方で、タバコと下ネタとゴシップ雑誌が大好きというアデル。業界には珍しく、スパイス・ガールズやガールズ・アラウドといったバリバリのガールズ・ポップも大好きと認める正直者でもある。「将来はポップ歌手に曲を書いて、印税で暮らしていきたい」というから、意外な場所で彼女の名前を目にする日も近いかもしれない。


英国初の 「いい子」歌姫誕生
Leona Lewis
レオナ・ルイス

1985年4月3日生まれ
ロンドン出身

本名:Leona Louise Lewis
ジャンル:ポップ、R&B
担当:作詞・作曲
Leona Lewis

オーディション番組「Xファクター」に出場し、審査員から「スターとしての素質がない」など厳しい意見を言われながらも見事勝者となったレオナ。「英国版『ASAYAN』出身ということは、英国版『モーニング娘。』ってこと?」という疑問は全くの杞憂で、「第2のマライア・キャリー」 と称される、歌唱力が売りの正統派ディーバなのだ。

06年に発表したデビュー・シングルが30分で5万人にダウンロードされ世界記録を樹立して以来、英国、米国のみならず全世界で様々な記録を打ち立てている、「英国の星」となったレオナ。これまで米国からの輸入に頼っていたR&Bやポップのジャンルで、米国チャートを駆け上ってぎゃふんと言わせてほしいところだ。ただ問題は、家族受けの良い「いい子ちゃん」イメージがこれから吉と出るか凶と出るか。9歳の頃から仲が良い彼氏と同棲中というのも、今の英国音楽業界では逆にちょっと浮きすぎな気も……。


リリーも絶賛のミニ・アレン
Kate Nash
ケイト・ナッシュ

1987年7月6日生まれ
ロンドン出身

本名:Kate Marie Nash
ジャンル:ポップ、ロック
担当:作詞・作曲
ギター、キーボード、ベース
Kate Nash

13歳のころから作曲を始め「歌う物語作家」と呼ばれるケイトは、落語家のような機転やトンチの利いた歌詞が人気。類稀なる人間観察力と、それを歌詞に置き換えキャッチーな曲をつける才能は、まさに「第2のリリー・アレン」の謳い文句がぴったりだ。

でも実はケイトが夢見ていたキャリアは女優で、高校は演劇学科だったという。卒業後に演劇学校のオーディションに行き失敗し、失意を紛らわそうと映画を観に行ったら階段から転がり落ちて足を骨折。3週間寝たきり状態になった時に両親からエレキ・ギターをプレゼントされ、足を動かせるようになるとライブを決行した。MySpaceで発表した音源をリリー・アレンが褒めちぎったことから爆発的に人気が出て、あれよあれよという間にレーベルと契約へ。才能さえあれば「棚からぼた餅」もこんなに上手くいくものか……とため息ものだ。


逆輸入ヒットで吼える孤高の獅子
Estelle
エステル

1980年1月18日生まれ
ロンドン出身

本名:Fanta Estelle Swaray
ジャンル:ヒップホップ、R&B
ラップ、ソウル
担当:作詞・作曲、プロデューサー
Estelle

04年にデビューしながらもひっそりと消え去り、今年3月にシングル「アメリカン・ボーイ」のヒットで堂々のカムバックを果たしたエステル。自身のレコード・レーベル「Stellar Ents」を持ち、20代とはとても思えない貫禄に溢れる彼女は、現代のUK音楽業界に1人立ち向かう獅子のような存在だ。「黒人女性アーティストよりも白人女性アーティストが優先されている」とか、「英国人ヒップホップ・アーティストの市場がない」とか至極まともなことを言うかと思えば、大きく的外れするのが玉にきずでもある。

アデルとダフィを名指しで「彼女たちは『黒人音楽』を歌っているっていうけど、彼女たちの音楽なんて私には何の意味もない」と罵倒。ダフィに「才能と願望さえあれば、肌の色なんて関係ない」とまっとうな反論をされている。英国に見切りをつけて米国に移動し、今回逆輸入という形でようやくヒットしたのだから、鼻息荒くなる気も分かるけれど。


ディーバたちの関係図

「世界は狭い」というけれど、UK音楽業界は本当に狭い!というわけで、今回紹介した歌姫たちの人間関係やつながりを覗いてみよう。

関係図


ブリット・スクールとは

「The BRIT School for Performing Arts & Technology」、通称「ブリット・スクール」。BRITとは「The British Record Industry Trust」の略で、所在地はロンドン南部のクロイドン。助成金を得ているが政府からは独立した機関で、パフォーマンス・アートとメディアの教育のみに焦点を絞った英国唯一の無料学校である。

英国のグラミー賞と称される「ブリット・アワード」は、学校の資金集めとして開催されていることで有名だ。ヒット・チャートを同卒業生が独占してしまいそうな、今最も勢いのある英国の「タレント養成学校」で、インディーズ系バンド「フィーリング」やグラミー賞候補入りも果たしたイモジェン・ヒープも同校の卒業生。


なぜ「第2の○○」が多いのか

ドイツ生まれのふわふわの天使、北極グマのクヌートが世界中で熱狂的な人気を集めると、その後別の北極グマが生まれる度に「新生クヌート」として大々的に紹介される今日この頃。そう、これこそが音楽業界でも顕著に見られる「便乗してしまえ現象」なのである。

例えば、エイミー・ワインハウスが爆発的に人気となると、彼女のファンたちは「同じジャンルの音楽をもっと聴きたい」という欲求を持つようになる。するとレコード会社はここぞとばかりに同類の新人を売り出しにかかり、彼女たちが好もうと好まざろうと、同じジャンルのアーティストだと分かり易いよう「第2のエイミー」と呼び大々的に宣伝するのだ。


MySpaceヒット・チャート

アーティストたちの生の声を聞くことはもちろん、今やセールスにも影響を及ぼす業界の「広告ツール」となったMySpace。今回登場したアーティストたちのヒット数で、ファンの注目度を見てみよう

1位 リリー・アレン
1570万ヒット
2位 レオナ・ルイス
1381万ヒット
3位 エイミー・ワインハウス
1250万ヒット
4位 ケイト・ナッシュ
888万ヒット
5位 アデル
295万ヒット
6位 ダフィ
225万ヒット
7位 エステル
171万ヒット

*数字は全て4月29日現在。万単位以下は省略


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