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知られざるマン島
島の名前を耳にしたことはあるが、実際にどんな場所なのかはよく分からない。大半の在英邦人にとって、マン島の存在とは、「知っているようで知らない場所」といった ところではないだろうか。今回の特集では、英国とは実はかなり縁の深い、マン島の隠された魅力に迫ってみよう。 (取材・執筆: 三上義一)
地図

秘境知られざる秘境

英国は日本と同じく島国だが、日本同様、本土の周辺にはいくつかの島があり、夏の旅行地としては最適である。中でもプチ旅行の行き先としてお勧めなのがマン島(Isle of Man)ではないだろうか。単なる海と山の避暑地ではなく、映画、バイク、鉄道、マンクス猫、そして税金を軽減できるオフショアとしてなど、この島の魅力は尽きない。またあまり知られていないことだが、この島は英国よりも長きにわたって景気拡大を続けていて、今、金融関係者以外からも注目を集めつつある。実際、この島はいかなる旅人にも、楽しさと驚きを提供できる、英国本土とは一味違った別天地なのである。

一方で、日本人にとっては馴染みが薄い場所であることも確かだ。名は聞いたことはあるが、訪れたことはない・・・・・・ほとんどの日本人にとってマン島とは、そんな知られざる秘境といってもいいだろう。

交通ロンドンから1時間半

さて、そのマン島はいったいどこにあるのかというと、英国本土とアイルランドを隔てるアイリッシュ海のちょうど真ん中に位置している。人口約8万人で、淡路島ほどの小さな島。マン島へは、ロンドン中心に近いシティー空港から飛行機を利用するのが一番便利であろう。約1時間半でマン島に着くはずだ。

ロンドン以外からも飛行機が出ているし、フェリーで行くことも可能である。もし自転車・バイク・自家用車などでのツーリングを計画されているなら、フェリーが便利だろう。

英国?英国のようで英国でない

この島はいわば英国であって、英国ではない。つまり、英国の一部ではないが、自治権を持った英国の属国であり、外交・軍事は英国政府に委任している。ちなみに、欧州連合(EU)には加盟していない。またマンクス・ポンドと呼ばれる独自の通貨があるが、英国ポンドも問題なく利用できる。英語以外にも、マンクスという独自の言語が話されている。

とりあえず、ここまでくればマン島に関する基礎的な知識は得たといっていいだろう。それではさっそく、現地の見所を探ってみよう。

マン島関連の便利なウェブサイト

● マン島観光局
www.gov.im/tourism/guide
オフィシャル・ガイドブック閲覧も可能。メールでの問合せも受け付けている。
● マン島に関する日本語の便利なサイト
www.visitbritain.jp/destinations/Isle-of-Man
● レストラン検索
www.isleofmanrestaurants.com
● フェリー情報
www.steam-packet.com/SteamPacket/search

レストラン旅する前にまずは腹ごしらえ
現地のおすすめレストラン

Millennium Saager東西の味を融合させた
Millennium Saagar

本場のスパイスと地元の食材を融合させたオリジナル料理が自慢のインド料理レストラン。
Broadway House, Sherwood Terrace, Douglas
TEL: 01624 679871 www.millenniumsaagar.co.uk
Ciappelli's現地のビジネスマン御用達
Ciappelli's

良質のモダン・ヨーロピアンを提供するレストラン。地元のビジネスマンで賑わっている。
12 Loch Promenade Douglas, Isle of Man IM1 2LX
TEL: 01624 677442 www.aperitivo.co.uk
La Cucina見ても食べても美味しい
La Cucina

ダグラス市内中心に位置する、イタリアン・シーフード店。料理のプレゼンテーションが見事。
54 Bucks Road, Douglas, Isle of Man IM1 3AD
TEL: 01624 623959 www.lacucina-iom.com

Peel Castle マン島の西側に位置するピール地区にある古城Peel Castleは、11世紀に建てられた

 

映画ジョニー・デップも好きな島

マン島と言ってもなかなかイメージしにくいだろうが、実はここ10年ほど、その美しい景色を映画で目にする機会が増えてきている。例えば、「ミス・ポター」だ。世界で一番愛されているうさぎ「ピーターラビット」の女性作家、ビアトリクス・ポターの恋と半生を描いた映画だが、その中に登場する美しい田園風景の一部がこのマン島で撮影されている。レニー・ゼルウィガーやユアン・マクレガーといったスターが主演し、日本でもヒットしたので、観た方も多いのではないだろうか。

また、ハリウッドの大スター、ジョニー・デップが主演した映画「リバティーン」は中世に実在した放蕩の詩人ジョン・ウィルモットの波乱の生涯を扱ったものだが、このロケ地もマン島。そして昨年ヒットした14歳の少年スパイ、アレックスを主人公にした痛快アクション映画、「ストームブレイカー」もこの島で大々的にロケを行った作品である。

また1995年以降、80作以上の映画やテレビ・ドラマが、この島で撮影されている。というのも、マン島政府が産業として映画事業の育成に力を入れ、積極的に共同製作・出資してきたからである。この島はそれだけ風光明媚で、観光資源が豊富だということでもあろう。映画ファンがこの島を訪れたなら、どこかで観たことがある景色に出会い、嬉しい既視感を覚えるかもしれない。あのジョニー・デップも、すっかりこの島が気に入っていたという。

マンクス・コテージ

プロムナード

上写真)マンクス・コテージと呼ばれる伝統的な一戸建て小家屋。
右写真)海に面したプロムナード。ダグラス地区近郊は現在、「化粧直し」の最中だが、このプロムナードは散歩に最適。是非歩いてみたい。


バイクバイク・レースの聖地

多くの人がマン島と聞いて、まずピンとくるのが、5月末から6月上旬にかけて行われるバイク・レース(TTレース)ではないだろうか。事実、このマン島は、バイク・レースのファンにとっては「聖地」とまで呼ばれている。

同レースは世界で最も歴史が長いレースであり、今年で101回目を迎える。期間中の約2週間は、花火や野外コンサートなどのイベントが目白押しで、島中がお祭り騒ぎになる。第1週が練習で、第2週が本戦となり、その中にはバイクにサイド・カーを付けた一風変わったレースなどもある。また公道を使って行われるため、パブでビールを一杯やりながら観戦することもできて、たっぷりと臨場感を楽しめるはずだ。

レース開催中にマン島を訪れたい方は、早目にホテル や交通機関を予約することが必須となる。何しろ世界中からレース関係者や観光客が訪れるだけあって、1年前からの予約もザラだという。またホンダの創設者、本田宗一郎氏もこのレースで優勝することを夢見ていたと伝えられており、毎年日本のファンも多く詰めかけている。

TTレース公式サイト: www.iomtt.com

バイクレース 世界的に有名なTTレース


鉄道鉄道ファンが泣いて喜ぶ

バイク・ファンではない方のためには、鉄道の旅はいかがだろうか。現在でもマン島では保存鉄道が走っていて、鉄道ファンでなくとも必見。まず乗りたいのが、Isle of Man Steam Railway と呼ばれる蒸気機関車だ。1874年に開通し、今日でも首都ダグラスからポート・エリン(Port Erin)を結ぶ15.5マイル(約25キロ)を走っている。その間、美しい田園と海辺の風景を満喫でき、蒸気機関車の旅が楽しめる。冬は運行していないので要注意。

また、かわいい路面電車、Manx Electric Railwayも見逃せない。1893年に開通、ダグラスからラムジー(Ramsey)までを1時間15分程で走る。

それに1895年から走っている登山鉄道、Snaefell Mountain Railway にも是非乗ってみたい。ラクシーから標高2036フィート(約621メートル)のスネーフェル山へと登り、30分程で山頂に着く。晴天の日、ここからは7つの王国──つまり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、マン島、そして天空と大海を見渡すことができるという。

Isle of Man Steam Railway 公式サイト www.iombusandrail.info

左写真)世界最大の木製水車、レディ・イサベラ。ダグラスからManx Electric Railwayに乗り、ラクシー駅から徒歩で行ける。
上写真)1893年に開通したManx Electric Railway

The Gaiety Theatre ダグラスにあるThe Gaiety Theatre。こけら落としは1900年というから、すでに1世紀以上の歴史を持つ


猫ノアの箱舟でしっぽを失った猫

マン島といえば、日本の猫愛好家の間でもよく知られているマンクス猫が有名だ。マン島固有の猫で、しっぽのない、うさぎのような歩き方をする猫である。

ある伝説によると、マンクス猫はノアの箱舟に乗ろうとした最後の動物であったが、慌てて箱舟に駆け込もうとすると、ドアが閉まり、しっぽがちぎれしまったのだという。また、箱舟の中で犬がマンクス猫のしっぽを噛み切ったので、マンクス猫は箱舟の窓から逃げ出し、海を泳いでマン島にたどり着いたという神話もある。

他にもマンクス猫は猫とうさぎのあいだにできた子で、その結果、しっぽがなくなり、後ろ足が長くうさぎのような歩き方をするようになったという、もっともらしい説明もある。これほど伝説が多い猫も少ないのではないかと思えるほど、他にも諸説紛々。ちなみに実際のマンクスは人なつっこい性格の、かわいい猫である。

マンクス猫 マンクス猫。しっぽのない、うさぎのような歩き方するこの島原産の猫。なぜ、しっぽのない猫がこの島にいるのかは謎であり、数々の伝説を生んできた。


タックスヘイブン税率0%の島

マン島は英国であって英国ではないという、まさにオフショア=沖合いの利点を生かし、英国本土よりも税率を低く設定している。つまりマン島に資金を移せば、資産や投資にかかる税金が節約できるのだ。巨額な資産を持つ投資家や、財テクをしたい企業などは、こういうオフショアのタックス・ヘイブン(税金回避地)を利用することで節税できるというわけである。今日、本社はロンドンにあるが、節税目的で子会社をマン島に置き、工場はベトナムにあるというような経営体制は決して珍しくない。

具体的には、マン島では相続税(遺産税)はなく、キャピタル・ゲイン税もない。法人税も0%か10%という2段階区分しかなく、個人の所得に対する税も0%、10%、18%と3段階に分けられているが、最高税率が18%というのは英国よりもはるかに低く、あらゆる面において税制優遇措置が設けられている。

マン島風景 左写真)船が転覆した際の避難所として建てられたという「refugehills」。
右写真)マン島の最南端に位置する「The Sound Visitor Centre and Restaurant」。ガラス張りのレストランからは、小島が見渡せる。


成功物語「隠された成功物語」

マン島最大の産業はやはり金融業であり、銀行や保険などの金融サービス業が経済の柱となっている。しかし、最近では経済の多角化を積極的に進めていて、eビジネス・映画・ハイテク産業の育成などにも力を入れている。その努力は報われているようで、なんと景気は、過去25年間連続して拡大。好景気を誇っているアイルランドの影に甘んじてきたため、「フィナンシャル・タイムズ」紙はマン島を「隠された成功物語」と呼んだほどだ。

いずれにしろ、英国に住んでいる日本人にとってすら、マン島はまだまだ馴染みが薄い、知られざる秘境であることは確かであろう。もちろん、既にマン島の金融機能を利用している日本企業もあり、当政府としてはさらに日本からの客──観光客はもちろんのこと、企業、投資家、そしてスーパーリッチな日本の方々の訪問を待ち焦がれているのである。

マン島風景 左写真)マン島の北部に位置する古都、キャッスル・タウンの風景。
右写真)マン島の浜辺と小さな灯台。マン島ではシーカヤックや、ヨット・セイリングなどのマリーン・スポーツも盛んである。


英国周辺にあるその他の島々

ワイト島  Isle of Wight

英国本土の南岸に浮かぶ小島。夏のロック・フェスティバル、「ワイト島ロック・フェスティバル」で世界的に有名な島。1970年、ジミ・ヘンドリックスがこの島のロック・フェスティバルに出演したのはもはや伝説、というよりは神話か。この島が世界的に知られるようになった一因は、このときのジミヘンの名演が余りにも凄まじく、またこのコンサートの3週間後に彼がこの世を去ったからでもある。

この年のコンサートの衝撃が余りにも強烈だったのか、次にロック・コンサートが開かれたのは32年後の2002年。実際には70年のコンサートが膨大な赤字を出したことが主因だとも言われている。

ロック・フェスティバル以外にも、この島は変化に富んだ海岸線や海水浴に適した砂浜がある。また内陸には緑が多い森やなだらかな丘陵地帯が広がり、夏のプチ旅行には最適。さらにワイト島は、世界的なヨット・レース「アメリカス・カップ」の発祥の地としても知られており、ヨット遊びが盛んな島でもある。

ワイト島に行くには、フェリーが便利。いくつかの港からフェリーが出ているが、ポーツマスからフェリーで30分ほどで行くことができる。

ワイト島観光局サイト
www.iwight.com
ワイト島ロック・フェスティバル公式サイト
www.isleofwightfestival.com

チャネル諸島  Channel Islands

Channel Islands英国とフランス間の英仏海峡にあるチャネル諸島。英国でありながら、距離的にはフランスに近く、フランス的な雰囲気が漂っている。その中でも代表的なのが、ジャージー島とガーンジー島。両島ともマン島と同じく、オフショアのタックス・ヘイブンで、税金の優遇処置を提供している地としても知られている。

同諸島で最大の島がジャージー島。冬は温暖、夏は涼しく、ビーチも豊富で、サイクリングやウォーキングには最適。ショッピングも、VAT(付加価値税)がないためロンドンなどよりも割安。レストランも多く、金融関係者やリッチな人々が多いせいか、世界からトップ・クラスのシェフが集まり、グルメも充実している。

ガーンジー島はジャージー島の北にあり、ハーム島、サーク島、アルダーニー島の小島からなっていて、英国とフランスの双方の影響を受けているが、第二次大戦中はナチス・ドイツが島を占領していた。その後はヨーロッパのリゾート地として発展し、ジャージー島同様、英国本土のVATが適用されないため、ショッピングを楽しめる。また、小さな島なので自転車で島をのんびりと散策するのも妙案であろう。

チャネル諸島観光局サイト
www.visitchannelislands.com


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