spacer spacer
Eikoku News Digest
France Germany
UK
search
2008/10/12 Sunday 21:02 BST
-
HOME
NEWS
英国発ニュース
今週のタブロイド
英国における日本報道
ヨーロッパ三面記事
CLASSIFIED
求人・求職
貸家・貸部屋
マーケット
レッスン
エトセトラ
お申し込み / Apply now
ENTERTAINMENT
今月の星占い
当たる!ロンドン占い
隠れ家ストリート
UKグルメ・レストラン
読んで・見て・聞いて
SPECIAL
最新のオススメ特集
BLOG
セレブの部屋
ダイジェスト編集日記
COLUMN
バスカー土門の人生相談
木をみて森もみる
この言葉 名言に想う
知って楽しい建築ウンチク
LIFE
UKビザ必勝法
Mr.Cityの世界経済
マネー教室
在英日本人の本音
ARCHIVE
過去の連載
CURRENCY
Exchange rate on 2008.10.10

GBP GBP  JPY JPY
1.00  168.77
0.000 %

Edit - About - More

 
HOME arrow 木をみて森もみる arrow 第25回 1976年のほうき星


24 July 2008 vol.1157

第25回 1976年のほうき星

この7月、2年半ぶりに日本へ戻った。英国への赴任後、初の一時帰国である。そして、札幌も東京も大都会だと、改めて実感した。

なにしろ、夜になっても星が見えない。東京はともかく、札幌もこんなに夜空が明るかっただろうか。日本の夏に特有の、あの湿った空気のせいかもしれないが、間違いなく、ロンドンの方が星はよく見える。

◆ ◆ ◆

私は星が大好きで、子供のころは本気で天文学者になりたいと思っていた。

夜ごと、天体望遠鏡を庭に運び出した。反射式望遠鏡を自分で作ったこともある。望遠鏡で土星の輪や三日月型の金星を初めて見たときは、心底、驚いた。星雲や星団も目にしたし、表現のしようがないほど美しい連星も瞼(まぶた)に刻んだ。

そして、彗星である。

彗星は「ほうき星」とも言う。冥王星よりも遠い、太陽系の遙か向こうから、彗星は太陽をめがけてやってくる。彗星自体は、氷とチリが固まった、雪だるまのような天体だ。太陽に近づくと氷は解け、走行中の蒸気機関車の煙が後ろにたなびくように、長い尾となって、宇宙空間を流れて行く。

そのころ読んだ天文書には、過去の大彗星の話が続々登場した。「彗星の頭の部分が地平線の下にあっても、その尾は頭上を越えて反対側の地平線にまで伸びていた」とか、「6本に分かれた尾が湖面に映し出されていた」とか。とくに1858年10月に現れた「ドナチ彗星」の話は、心をとらえてはなさなかった。

ドナチ彗星は史上初めて、写真に撮られた彗星として天文ファンに知られている。写真の舞台はパリ。セーヌ川沿いのパリ市庁舎をシルエットにして、その尖塔の上に、巨大な彗星が横たわっている。牛飼(うしかい) 座の一等星の横で、彗星の頭部が輝き、幅広の尾がゆるく南側にカーブしている。当時のパリの夜は暗く、そして彗星は、まばゆく、神秘的だった。

◆ ◆ ◆

彗星を見たい。

そう願っていたころ、「世紀の」と形容するにふさわしい大彗星が現れた。忘れもしない、1976年の春3月のことだ。「途方もなく大きな彗星が太陽に接近している」という話を知り、私は大いに興奮した。彗星は、最初にそれを発見した人の名前が付く。この大彗星は「ウエスト彗星」と呼ばれた。

明け方の空で最も長い尾を引いて、見やすくなると言われた日。私はふとんに入ったまま、興奮して眠れなかった。ところが、明け方を前に、つい、うとうとしたのだと思う。目覚まし時計の音に気付かず、しかし、突然、ガバッと目が覚めた。布団から飛び出す。そして、窓に駆け寄った……。

あんな空は、もう二度と目にすることがないと思う。

空は少しだけ白み始めていた。2階の窓から身を乗り出すと、近所の土蔵の瓦屋根はまだ黒い夜の中にあった。その屋根の向こうの空に、サーチライトのような明るい光が、まっすぐに立ち上がっているのだ。見事な尾である。頭の部分は、まだ屋根に隠れているのに、尾は見上げるほどの高さに伸びていた。

私は大急ぎで着替え、裏山を駆け上がった。

そのときの光景をどう表現すればいいのだろうか。

朝焼けが近い東の空は、黒色からブドウ色、白色から朱色へと、グラデーションのように色が変わっていく。その中に、白色とも金色ともつかぬ彗星が視界いっぱいに広がっていたのだ。手にしたカメラのシャッターをほとんど切ることもなく、ただただ、荘厳な姿に見とれた。

湖や大きな池のある場所に立ったとしよう。風のない夜なら、月が水面に映る。暗い場所なら、明けの明星や宵の明星も映る。原生林に囲まれた北海道東部の湖は、風のない新月の夜なら、天の川を映すと言われる。天にも地にも星がある。裏山からの帰り道、この大彗星も、近所の池に大きな姿を見事に映し出した。空に、地に、彗星は長い尾をひいていた。

◆ ◆ ◆

地球は1年をかけて、太陽の周囲を回る。彗星のそれは、ほとんどが数百年から数万年である。

この原稿を書いている夜が明ければ、私はロンドン行きの飛行機に乗る。地球の正反対に位置する両国の、なんと近いことか。


高田 昌幸
北海道新聞ロンドン駐在記者。1960年、高知県生まれ。86年、北海道新聞入社。2004年、北海道警察の裏金問題を追及した報道の取材班代表として、新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。
  spacer  
eBOOK THIS WEEK
木をみて森もみる
バックナンバー
PROMOTION
英国および日本での就職、雇用コンサルタント - センターピープルアポイントメンツ Ltd.
from News Digest
ご意見・ご感想
リンクダイジェスト
定期購読のお申込み
WEATHER
LONDON
17°C
spacer spacer