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第85回 英国経済の特色と今後

英国の景気変動の歴史

英国の景気は一段と悪化し、成長率は2%近くまで落ちてきている。一方、物価は5%近い伸びを続けているので、個人の生活水準または企業の実質収益は3%近く下落しているということになる。5%賃上げがあればその負担は全部企業が被るし、賃上げがそれ以下なら個人が被ることになるわけだ。

今知りたいのは、こうした事態がいつ下げ止まるのかということだろう。このような問題を考える際には、経済の構造そのものに立ち返って考えるのが良い。それは経済の悪化に際して、いかに個人や企業が高い所得や好業績を残せるかを考えることにもつながるであろう。

グラフは、英国経済の過去50年位の成長率の変化(四半期毎の前期比をピンク線、その平均的な趨勢を黒線で表示)に、1970年以降における経済協力開発機構(OECD)加盟国の成長率、つまりは世界経済の成長率との近似値変化(前年比を青線で表示)を書き足したものである。見て分かることは次の通り。

1)英国の経済成長率のピークとボトムは、世界経済のそれとほぼ一致している(黒線と青線の山谷がほぼ一致している)
2) 英国の経済成長率の変動は、サッチャー改革が起きた80年代以降安定し、特に90年代後半からは非常に安定している(赤い線の変化が小さくなっている)
3) 90年代以降、英国の経済成長率の変動カーブと世界経済のそれとが相似性を強めている(黒い線と青い線の動き方が、以前と比べ90年代以降はより連動してきている)

つまり英国経済は昔から世界経済の動きと深く関連しており、この点は今でも変化はない。しかしサッチャー改革以前は、そうした世界経済の動きをより増幅させる何らかの要因を抱えていたが(不安定な財政や、第二次産業の衰退を見越したポンド相場の投機的な変動など)、改革以降はそれまでの第二次産業ではなく、ウィンブルドン方式*によって金融や法人に対するサービス(法律、会計、調査など)を産業の主軸に据え、世界経済の変動に同期する形とした。そして世界経済が安定したために、英国経済も同じくその恩恵を受けていたのだ。足許の景気は悪化しているとはいえ、達観すれば英国経済はいまだそうした安定圏内にある。

何も手を打たなければ、今後の英国経済はこのまま世界経済と動きを共にするだろう。だから世界経済が復調するなら何もしなくとも良いということになる。ブラウン政権の鈍い動きも、世界経済の拡大を中期的には信じているからであろう。筆者もそれで良いと思う。

今後と対応策

ただ短期的にはどうか。無策でいる間に政権への政治圧力が高まり、政権は余計なことをせざるを得なくなる確率も高そうだ。中期的に中印や新興国、アフリカの成長はまだまだ期待できるし、IT需要は先進国でも尽きるところはないが、短期的に米中の減速ははっきりしている。特に米国での消費の落ち込みは深刻で、これが中国経済を直撃している。回復に3年はかかりそうだ。その間に政府が財政規律を緩めればポンドの対ドル、対ユーロでの下落は必至で、ここがブラウン政権の頑張りどころとなろう。

一方、個人や企業にとっては、こうした経済構造を踏まえての投資の仕方を考える必要が出てくる。構造を知れば百戦あやうからず、経済が落ち目であってもやることはいくらでもあるというか、落ち目だからこそやれることがある、というのがシティの常識だ。ITの変化に伴い不要となる商品を作っている企業株の先物売、不要となる商品で使われている貴金属(デジカメ発展で不要となった写真感光紙の銀が好例)の売却、新興国への長期間にわたる投資、3年程度のポンドの買戻条件付売却などなど、いろいろと工夫の余地はありそうだ。

* 市場開放し、外国資本を誘致することで自国民を富ます政策

(2008年8月21日脱稿)


筆者プロフィール
Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。


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