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2008/09/02 Tuesday 13:00 BST |
経済システムの矛盾問う
9/2UP
英国の至宝、ローチの新作
現実世界と向き合う真摯(しんし)な人間ドラマで知られる英国のケン・ローチ監督。日本メディアの取材に応じる機会が少ない名匠に、新作「この自由な世界で」の日本公開に合わせて、ロンドンで話を聞いた。
「今の経済システムは、より安い労働力を冷酷に求め続けるという、危なっかしさが基盤にある。私たちはこの事実を見据える必要がある」
前作「麦の穂をゆらす風」がカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールに輝いた「英映画界の至宝」ローチ監督はこう話す。「この自由な世界で」では、移民労働者問題を通じて、自由経済の裏面を描いた。
主人公はロンドンで移民労働者を工場などに送り込む人材派遣会社を設立したアンジー。息子との幸せな生活を夢見るシングルマザーの彼女は、移民を法定賃金以下で派遣し、ピンハネし、事業を拡大していく。
ロンドンではここ数年、欧州連合(EU)拡大を受け、東欧からの移民労働者が急増した。「移民問題は欧州全体の大問題。アンジーは、移民労働者を搾取するシステムのほんの小さな機械にすぎない」と、監督は柔和な表情で語る。
アンジーの父親は娘に、安い労働力を企業に供給することで「ボスどもは笑うが、ほかは誰も笑えないんだ」と諭す。アンジーは反発する。「違うわ。消費者が笑っているもの」。安い労働力は安い商品を生む。これを喜ぶ消費者は自分の味方だとアンジーは訴える。
しかし監督は、アンジーや消費者を裁こうとしているのではない。断罪しているのは市場経済や自由競争の在り方だ。
「産業界は自己変革できないと思う。それは常に新しい市場を探すものだし、安い資源や労働力を得ようとする。しかしそれでは(移民労働者と彼らを送り出す)家族を壊し、社会を壊し、やがて地球を壊す」
人件費削減のため派遣労働や外国人雇用が当たり前になった日本社会にとっても、ローチ監督の問い掛けは重い。(共同) |