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住宅ローンと関連保険について

9 April 2009 vol.1193

不動産価格がいよいよ下落してきました。この機会に住宅購入を検討し始めた方もいらっしゃると思います。円がポンドに対し上昇しているのも追い風です。そこで今回は、昨今の住宅ローン市場とそれに関する保険についてのお話です。


不動産価格は今どれくらい下がっているのですか。

Land Registry(不動産登録局)の統計によりますと、2009年2月末の英国平均住宅価格は15万7000ポンド(約2200万円)。2008年1月のピーク価格である18万4725ポンドより15%程度の下落で、2005年3月のレベルまで戻っているようです。また大手銀行Halifaxの統計によりますと、今年2月は前月対比マイナス3.3%(年率マイナス18%)と、1983年以来の大きな下げになっています。


それは朗報ですね。住宅ローン金利も下がっているのですね。

英国中央銀行は3月上旬に政策金利を0.5%へと引き下げました。固定金利を除いて、通常は中央銀行の金利が下がりますと住宅ローン金利も下がるので、資金を安く借りられることになります。特に「Tracker」と呼ばれる金利は中央銀行金利などのベンチマークに一定金利を上乗せ(スプレッドといいます)しますので、金利低下の恩恵を直接受けられます。

ただ信用収縮によりこのスプレッド分が従来より大きくなっています。例えば、去年の今頃は中央銀行金利プラス0.5%の金利(合計金利1%)のモーゲージ(住宅ローン)が利用できましたが、現在は良くてプラス2%超(同2.5%)といったところです。固定金利も下がってきてはいるものの、ローンを借りての不動産購入が可能か否かは結局、どのくらいの頭金を用意できるかによるでしょう。別途表をご参照ください。

【モーゲージ金利用語解説】

*Tracker:
ベンチマーク金利(中央銀行の金利など)プラスX%の金利が一定期間適用される。変動金利。例: 中央銀行金利(0.5%)+2%=2.5%。ローン支払い金額は金利に応じて上下する。

*Fixed Rate:
一定期間固定金利が適用され、返済額は上下しない。例えば4%が3年間など。 上記どちらの金利も通常別途「Arrangement Fee(手数料)」が課せられ、期間中の返済や他のモーゲージへの乗り換えの場合はペナルティが課せられる。

*Standard Variable Rate:
通常の変動金利。市場金利 に連動するが、銀行がモーゲージ金利を決定するので、例えば市場金利が2%下がっても、この金利は1%しか下がらないこともある。TrackerやFixedなどの特別な金利の期間が終了すると、自動的にこの金利が適用される。


通常いくらほどモーゲージを借りられますか。

信用収縮により金融機関のローン提示条件がとても厳しくなっています。これまで不動産購入価格の100%を借りることもできましたが、現在は最大限で85%程度となっています。この比率を「Loan to Value(LTV)」といい、このLTVが低ければ低いほど、つまり頭金が多いほど条件の良い金利でローンが借りられます。例えば75%、60%のLTVであれば、かなり安い金利が提示されるということです。

言い換えますと、モーゲージを借りて不動産を購入するには、少なくとも購入価格の15%、できれば25%の頭金を用意しなければならないことになります。例えば、20万ポンドの不動産を購入するには、最低3万ポンド(約420万円)、できれば5万ポンド程度の頭金が必要ということになります。頭金の他にStamp Duty(不動産購入税)、モーゲージ手数料、弁護士費用などの支払い分を用意する必要もあります。上述をクリアできましたら、年収の3~4倍までの住宅ローンを借り入れることができるようです。


私が現在利用しているモーゲージの固定金利が、数カ月で終了します。その後は別の条件のより良いモーゲージを探した方が得策ですよね。

ローン提示条件が厳しくなっているので、必ずしもそうとは言えないと思います。特にLTVが85%を超える場合は、新しいモーゲージを申し込むのがかなり困難な状況にあります。不動産を購入した際のLTVが85%だとしても、その分母に当たる不動産価格が下がっているので、現在のLTVはより大きくなっている可能性がありますよね。まずは現行の銀行に固定金利終了後どのような金利(Tracker, Fixed, Standard Variable Rateすべてについて)を利用できるか打診してから、他のモーゲージと比べてみましょう。別のモーゲージに乗り換えますと手数料や弁護士費用などが発生するので、金利がかなり安くない限り、現行維持した方が良い場合が多々あります。


データ: The Sunday Times 2009年3月22日付
BOE: 英国中央銀行金利、現在0.5%


モーゲージを借りたら生命保険への加入を強く勧められました。私は現在独身なので必要ないと思いますが、どうでしょうか。

モーゲージを借りたからといって生命保険に加入する義務はありませんし、加入するにしてもモーゲージの借り入れ先となった銀行を介する必要はありません。まずはご自分にどのような保障が必要かじっくり検討することが大事です。「生命保険」は通常、本人が死亡した際に財政的に困る家族がいる場合に検討の価値大です。お一人であれば、事故や病気で収入が途絶えるか、または失業した場合の保証を検討された方が良いかもしれません。また「Critical Illness(疾病保険)」ではがん、脳卒中、心臓発作などの疾病と診断されるとローン残高に該当する保険金が支払われ、結果としてローンを全額返済することができます。


やはり銀行で「Accident, Sickness, and Unemployment」保険を勧められました。ではこちらに入った方が良いのですね。

この保険は「Mortgage Payment Protection(MPP)」とも呼ばれ、事故や病気、また失業により収入が途絶えた場合にローン返済の肩代わりをしてくれます。ただし保険金(ローン返済金額)の支払いは通常12カ月間のみ、多くても24カ月間のみとなっています。また「Deferred Period」といって、病気などになって収入が途絶えてから保険金申請までの待ち期間が設けられています。

独身の方であれば、MPPの方が生命保険よりも重要といえるかもしれません。しかし問題は、保険料が毎年見直しとなっているので年齢を増すごとに保険料が上昇する可能性が大きいこと、また前述のように保険金の支払いが通常最長12カ月間までということです。つまり、長期間病気になった場合の保障が得られないことになります。


長期間保障、保険料一定の保険はありますか。

「Mortgage & Lifestyle Protection(MLP)」という保険が最近利用できるようなりました。上述MPP同様、事故、病気で勤労不可能になった場合に毎月保険金が職場復帰か保険満期時まで支払われ、モーゲージ返済や生活費を肩代わりしてくれます。保険期間中に失業した場合は1回の失業に付き12カ月まで、最高3回保険金を申請/ 受給(合計36カ月)することが可能です。MPPと違い、保障期間は長期(モーゲージ期間と合わせることが可能)にわたり、保険金は一定に保障され、年齢を増しても上昇しません。また保険期間中であれば、病気や事故のため就労不可能になった場合は何度でも保険金を申請・受領することができます。MPPは主にモーゲージ返済のための保険ですが、こちらの保険はモーゲージがなくても、単に生活費や家賃の支払いをカバーするために利用することが可能です。


勤務中の会社がリストラを実施するらしいのです。すぐにこのMLPに入った方がいいですね。

残念ながら同意できません。失業保険は保険加入時に本人がリストラのことを既に知っていた場合、保険金は支払われません。そのような事実を知らずに、本人の意思に反して解雇になった場合のみ支払われます。加えまして、保険加入から3カ月間は失業しても保険金が払われない場合がほとんどです。もちろん、景気が悪いなどの理由で失業する場合に備えて加入するのならば問題ありません。いずれにしましても、保険への加入を検討される場合は、事前に除外事項などの項目をパンフレットなどで熟読なさるか、専門家にご相談なさることをお勧めします。


*就業不可能になってから3カ月後の支払い。
非喫煙者で健康な方の場合。保険料・保険金は満期まで一定。
データ: Liverpool Victoria 2009年3月10日付



次回のマネー教室は6月11日に掲載致します。


当コラムは2009年4月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。ご自身のファイナンシャル・プラニングに関しましては専門家にご相談なさることを強くお勧めいたします。



和枝 ドゥルーリー FPC
日本人ファイナンシャルアドバイザー(FA)。
十数年間の米英系投資銀行勤務を経て、FAとして独立。日英両方の資格を有する。大手独立系FA会社に所属。
e-mail: info@kazuedrury-ifa.co.uk
URL: http://www.kazuedrury-ifa.co.uk
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