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年金の受け取り方

13 August 2009 vol.1211

長年大事に積み立ててきた年金を受け取る方法は様々です。安定した定年生活を送るために、効率よく、また最大限の年金を受け取ることがとても大事になります。今回は年金の受け取り方について分かりやすく説明します。


加入中の企業年金の仕組みが分かりません。

企業年金は受け取り年金金額の決定要因により、大きく分けて、①確定給付型と②確定拠出型があります。①は本人の給与と勤続年数、②は雇用者と被雇用者の拠出金とその運用利回りにより受け取り年金金額が決定されます。日本では、①は厚生年金、②は401k年金に該当します。

確定給付型年金では雇用者が、確定拠出型は被雇用者が運用リスクを負います。個人年金も確定拠出型です。年金債務の増加により確定給付年金を停止、確定拠出型に変更する雇用者が毎年増加しており、昨今設定の英国の企業年金はほぼ確定拠出型となっています。


確定拠出型の年金の仕組みについてもう少し詳しく説明していただけますか。

企業年金・個人年金(グループ個人年金を含む)とも同様の仕組みです。雇用者と被雇用者の拠出金(毎月・一括)が通常年金加入者の選択する投資信託により運用されます。また定年時には蓄積された年金原資の25%までを非課税一時金(Tax Free Cash)として、残りを一生涯の年金として受け取ることができます。

年金は個人の税率により課税されますが、ナショナル・インシュランスはかかりません。非課税一時金を受け取る場合には、年金受け取りが少なくなります。定年年齢は企業年金の場合は会社が決定、個人年金の場合は個人が55*~75歳の間で選択します(変更可能)。

確定拠出年金の仕組み


受け取り年金の金額や条件などはどのようにして決定されるのですか。

通常、蓄積された年金原資を用い、保険会社が提供する「Annuity」という確定終身年金を購入することになります。保険会社は年金原資を受け取るとともに、加入者に生涯にわたる年金を保証します。

Annuityの受け取り条件は、本人が決定します。条件には、年金金額を一定とするか、インフレ連動とするか、本人死亡時の配偶者の年金の比率(0%、50%、67%、100%から選択)はどうするか、月払いか年払いか、などが含まれます。企業年金でも個人年金でも、確定拠出型の年金の加入者には「Open Market Option」という権利があり、最も有利なAnnuityを提供する保険会社と取引することができます。

言い換えますと、必ずしも年金を積み立ててきた保険会社からAnnuityを購入して年金を受け取る義務はないということです。年金受け取りの際には、様々な保険会社のAnnuityを比較し、最も有利な条件で年金を受け取りたいものです。同金額の年金原資による年金受け取り額の最高額と最低額(保険会社が異なることで差が生じます)を、受取人の年齢別に提示した下の表をご参照ください。見方ですが、65歳の男性、年金金額は一定、本人死亡時に配偶者が66%の年金を受け取るとした場合、最高額が毎月534ポンド、最低額が418ポンドです。

10万ポンドの年金原資による年金受取額の最高額と最低額


Annuity(終身年金)金額の決定要因は何ですか。

主に①本人の年齢②健康状態③長期金利④平均寿命などが挙げられます。高齢になるほど受け取り額が増えます。また糖尿病の傾向がある、コレステロールが高いなど健康上特記する条項があると、「Impaired Life Annuity (健康障害終身年金)」が適用できるかもしれず、その場合は受け取り額が増加します。尚、保険会社は受け取った年金原資を長期国債で運用するため、金利が高いときほど多くの年金が受け取れることになります。


今は金利が低いので、Annuityを申し込む時期ではないということですね。

現在の金利は歴史的に見て確かに低いので、これから金利が上昇すると予想するのであれば、今はAnnuity購入の時期でないかもしれません。しかし日本の例のように、ますます金利が低くなるかもしれず、その場合にはチャンスを逃したことになります。


年金受け取り中に私が死亡した場合、年金の扱いはどうなりますか。

配偶者受け取り額の比率に従って配偶者へ年金が支払われます。配偶者も死亡した場合には、Annuityは消滅し、払い込んだ年金原資は返金されません。例えば、10万ポンド(約1600万円)の年金原資を用いて年5000ポンド(約78万円)の年金を受け取り、3年後に本人・配偶者が死亡した場合、受取年金は合計1万5000ポンドしかありませんが、払い込んだ10万ポンドは戻ってこないということです。

これは保険会社が儲けているからではありません。逆に本人が30年間存続した場合は、保険会社は15万ポンドを支払うことになります。Annuity決定要因の一つが平均寿命であるのはこのためです。尚、年金受け取りの最低額を保証させるために、本人・配偶者が死亡しても、開始後5年間は年金支払い保証などの条項をつけることも可能です。


私と妻が死亡したら年金消滅というのは好みません。ほかに年金受け取りの方法はありませんか。

「Drawdown(Unsecured Pension)」という年金運用プランを利用することができます。このプランでは、本人死亡後、年金をそのまま配偶者が引き継ぐことになります。配偶者死亡の場合はご子息などの相続人へそのときの年金原資価値(現金)から35%の税金を差し引かれた額が支払われます。

配偶者は年金原資を現金として受け取る場合は35%の税金がかかりますが、年金として受け取る場合はかかりません(年金に対する所得税はかかります)。このプランは75歳まで利用可能ですが、それ以降はAnnuityか「**Alternative Secured Pension」を購入することになります。


良いアイデアですね。「Drawdown」の仕組みについて、もう少し詳しく教えてください。

このプランは年金原資を運用しながら年金を引き出していくプランです。前述のような利点はあるものの、Annuityのように一生涯の年金を保証されることはありません。引き出し可能な年金金額は、受け取り可能な年金金額***の0~120%となっています。例えば、本人のAnnuity受取額が5000ポンドならば、0~6000ポンドまで引き出し可能です。運用利回りを超える金額を引き出す場合、元本を削ることになるかもしれません。


Drawdownは、どのような場合に利用されることが多いのでしょう。

このプランでは、25%の非課税一時金のみを受け取る(年金引出額は0)ことも可能なので、定年年齢(55~75歳まで)に達した際にモーゲージを返済することなどに利用されることがあります。まずは一時金だけを受け取り、残りの年金はしばらく運用しておくというシナリオです。

上述のとおり、年齢を増すほどAnnuity受け取り額は多くなりますし、金利が高くなるまで待つことが可能になるわけです。また、半引退をする方などが、減額された収入を補うためDrawdownから少しの年金を引き出す場合もあります。ただし、当プランは運用リスクを伴い、Annuityと比べハイリスクといえます。検討に際しては必ず専門家に相談されることをお勧めします。


前の会社で加入した(確定拠出型)年金がいくつかあります。一つにまとめることは可能ですか。

前会社が「年金トランスファー」に異存がなく、特に不利な条件がなければ、トランスファーにより年金を一つにすることは可能です。

通常本人の個人年金を設定し、前会社の企業年金をトランスファーする形をとります。企業年金は基本的に会社の年金なので、個人の都合により設定内容を容易に変更することは困難です。一方、これが個人年金にトランスファーされれば、あくまでもご自分の年金ですので、定年年齢の変更や一時金受け取りの時期など本人が独自に決定・コントロールすることができます。年金のトランスファーはとても複雑なので、専門家にご相談なさることをお勧めします。


*) 2010年4月5日までは50歳
**) 今回は紙面の都合上説明は省略
***) 政府発行の年齢別Annuity 表により決定



次回のマネー教室は10月8日に掲載致します。


当コラムは2009年7月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。ご自身のファイナンシャル・プラニングに関しましては専門家にご相談なさることを強くお勧めいたします。



和枝 ドゥルーリー FPC
日本人ファイナンシャルアドバイザー(FA)。
十数年間の米英系投資銀行勤務を経て、FAとして独立。日英両方の資格を有する。大手独立系FA会社に所属。
e-mail: info@kazuedrury-ifa.co.uk
URL: http://www.kazuedrury-ifa.co.uk
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