企業やトラストにより所有される居住用不動産への課税
国外の企業やトラストによる投資不動産の所有には、どのような租税の影響がありますか。
非居住者が、税を軽減しようと「非自然人(非個人。企業またはトラスト)」を使って居住用不動産を購入・所有することが多かったため、これを抑える目的で、ここ数年で新たな法規が導入されました。
大きな改正点は、①土地印紙税(SDLT: Stamp Duty Land Tax)の新しい税率の導入、②居住用不動産に対する年次課税(ATED: Annual Tax on Enveloped Dwellings)の導入、③キャピタル・ゲイン税(CGT: Capital Gain Tax)です。
SDLTについて教えてください。
2014年の財政法により、50万ポンド(約7042万円)を超える英国の居住用不動産の購入に対して、15%のSDLTが課せられるようになりました。
ATEDの課税とは何ですか。
購入日が2016年4月1日、またはそれ以降の場合は、購入時点で50万ポンドを超える住宅に毎年ATEDが課せられます。課税額は不動産の価値に基づく区分により定められており、5年ごとに不動産価値を査定する必要があります。前回の査定は2017年4月でした。
ATED関連のCGTもまた一律28%課されます。
ATEDは誰が支払うのですか。
ATEDを支払う必要があるのは、不動産の所有者が以下の場合だけです。
企業が受動的な受託者として不動産を所有する場合、ATEDを支払う可能性があるのは実質的な所有者)
ATEDの課税額 (2017年4月1日から2018年3月31日までの期間) | ||||||
不動産の価値 | 年間課税額 | |||||
50万ポンド超 100万ポンド以下 | 3,500ポンド | |||||
100万ポンド超 200万ポンド以下 | 7,050ポンド | |||||
200万ポンド超 500万ポンド以下 | 2万3,550ポンド | |||||
500万ポンド超 1,000万ポンド以下 | 5万4,450ポンド | |||||
1,000万ポンド超 2,000万ポンド以下 | 11万100ポンド | |||||
2,000万ポンド超 | 22万350ポンド |
第三者に商業ベースで貸し出された不動産の場合、及び不動産開発事業者の場合は、控除を利用できます。
非居住者に課せられるCGTとは、どういったものですか。
2013年4月6日からは、企業を通じて所有する200万ポンドを超える居住用不動産の売却に対してCGTが課せられています。この課税は英国内外に登録された企業に適用され、売却益に対する法人税に取って代わるものです。
売却時の価格と2013年4月6日時点の不動産価値との差額に対して、税率28%のCGTが課せられます。50万ポンドの最低基準価格を超える不動産の売却益には、段階的な控除(テーパー・リリーフ制度)が適用されます。
2015年4月からは、英国の居住用不動産を売却する、個人の非居住者の売却益にも英国のCGTが課されています。これは、CGTの課税対象を高額不動産を所有する企業だけでなく非居住者全体に広げたものです。
ジョン・フィッシャー
パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。