英国の新しい不動産課税と、
意見公募(パブリック・コメント)について
意見公募により、新しい不動産課税の提案が導入される可能性はありますか。
課税の導入は既に決まっています。意見公募は法規をどのように起草するかに関するもので、導入するかどうかを検討するものではありません。
英国の不動産売却は、既に課税対象でしたが。
居住用不動産だけが課税されていました。居住用不動産は2種類の課税制度の対象となっています。まず、①居住用不動産に対する年次課税(ATED)関連キャピタル・ゲイン制度では28%の税率が課せられますが、事業に使われる大半の不動産に適用される広範な免除規定がありました。一方、②非居住者キャピタル・ゲイン課税(NRCGT)は、すべての居住用不動産に課税されますが、ATED関連キャピタル・ゲインの対象となる不動産は除外されていました。新制度では、すべての英国の不動産が対象になります。
ATED関連キャピタル・ゲイン課税とNRCGTはどうなりますか。
新たな課税が2019年4月に導入されれば、この2つはいずれも廃止されます。5人以下が支配する企業に対しては、ATED関連キャピタル・ゲインとNRCGTの両方が2019年4月まで継続されますが、そのほかの企業に対しては2018年4月からNRCGTのみが適用され、2019年4月からは新たな制度に変更されると見込まれています。
企業を通じて英国の不動産を保有している場合はどうですか。
企業の総資産のうち75%以上が英国の不動産資産という「不動産リッチ企業」の場合、その企業の株式を現在、あるいは売却時点から5年前までのどこかの時点で25%以上保有していれば、その企業の株式売却は英国で課税されます。
日英租税条約では、この種の課税についてどのような取り決めがありますか。
日英租税条約の13条では、保有資産価値の50%以上が直接的、または間接的に英国の不動産に由来する企業の株式売却に対しては、英国で課税することを認めています。このため新税の提案は、日英租税条約でも許容されます。
新しい課税制度はいつから始まりますか。
新制度は、企業に対しては2019年4月1日から、非企業は同4月6日から施行されます。駆け込み対策規則により、英国の当局は、2019年4月1日より前に行われた取引の売却が国内外でも課税対象とならない場合、その売却に対し課税することができます。
新制度ではどのような税率が適用されますか。
新制度は、非居住者に英国居住者と同じ税率を課すため、外国企業に対する課税は、英国企業に対する税率と同じ19%になります。
現在保有している英国の不動産は、2019年4月に価格査定を受けるべきですか。
その不動産を長期にわたり保有するつもりであれば、4月に価格査定を受けることをお勧めします。不動産の過去の価格査定は何年後になっても取得できますが、価格査定の実効性のある時期と価格査定を行う時期の間隔が開くほど、歳入関税庁(HMRC)は、その価格査定の精度について異議を唱える可能性が高くなります。
アンディー・トール
税務ダイレクター
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R & D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M & Aの税務など幅広い経験を持つ。