ブロックチェーンと企業報告
最近よく耳にするブロックチェーンとは何ですか。
ブロックチェーンとは、記録(ブロック)が増加して暗号化され、鎖(チェーン)のように連結されて出来るリストです。各ブロックには、前のブロックを暗号化する数学的アルゴリズムとタイムスタンプ、取引データが含まれています。これが一種の共有データベース(分散型台帳)を構成し、取引の永続的な記録を作り出します。
それは、いったいどういうことでしょうか。
例えば、現行システムが報告書のドラフトを複数の同僚にE メールで送り内容の確認をしてもらい、E メールで送り返してもらうようなものだとしたら、ブロックチェーンは中央サーバーにあるワード文書のリンクを同僚に送り、各人が文書にアクセスして編集を直接できるようなものです。
実際的にはどのように役立つのですか。
関連する取引の関係者全員が記録にアクセスできるうえ、単一の関係者の支配を受けずに独自に処理を行うので情報の信頼度が高くなります。同様に、データに加えられたどのような変更でも参加者全員に明らかにされるので、データとネットワークが共に弾力性に富むものになります。こうした特徴があるため、複数の関係者がいて、そのうちの1人以上が何かについて現状と経緯を把握し、その状況を更新する必要がある場合には、ブロックチェーンが役立ちます。
企業報告関連ではどう役立てられますか。
例えば、サプライヤーとの取引が(適切に構築された)ブロックチェーンで処理されれば、別途確認する必要がなくなり、台帳は必要があれば直接的にリアルタイムで点検可能となります。同様に、連結決算のために数字を集めて照合し、グループ内の残高を相殺消去するのにもブロックチェーンを利用できます。またブロックチェーンは、監査の中で時間のかかる検査のかなりの部分を実質的に減らすことで監査の時間と費用を大幅に削減でき、監査人はブロックチェーン自体の信頼性の検討や、判断および見積りなどリスクを伴う分野に集中できます。
確かに企業報告のプロセスに役立ちそうです。ほかに何かありますか。
ブロックチェーンは、企業報告の提出と公表にも役立つかもしれません。例えば、それぞれ違った提出システムを持つ複数の管轄国に提出される情報を確実に反映した単一記録を提供するうえで、各当局のデータベースに合わせる必要がなくなります。また、業界やサプライチェーン、プロジェクトなどのデータの集約も容易になります。
この新しい方法に何か障害はありますか。
はい、大きな課題があります。例えば、適切に構築したブロックチェーンを開発するのは複雑で費用がかさむこと、全体のプロセスに統合させる必要があること、ブロックチェーンが最終的には問題に対する最善のソリューションではない場合があることです。ほかに比べて適したプロセスの場合もありますが、それは最小限必要な一定数の参加者がブロックチェーンを採用する場合だけです。
それでは、今後の予想はどうですか。
全体としてブロックチェーンは、様々な観点から長期的には企業報告に非常に大きな影響を与える可能性が高いと思われます。ブロックチェーンの利用拡大に向けた移行は徐々に進むと思われますが、一部のセクターや機能ではほかに比べて更に急速に進むことが予想されます。
ジョン・フィッシャー
パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。