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Fri, 29 March 2024

イギリスの教育制度① - 資格社会の国

イギリスの中学高校、専門学校や大学・大学院留学などの正規留学を考えていらっしゃる方は、一度は留学ノウハウ本や、学校のプロスペクタス(学校案内)に目を通されたことがあると思います。その中で、例えば「NVQ3 in Hair Dressing」「National Diploma in Business」といったコースに見られる「NVQ」や「National Diploma」などの資格名に気が付かれたでしょうか?その他には、GCSE、A-Level、Higher National Diploma(HND)などや、その前に更に資格授与団体名がついているものもありますが、いったい何が違うのか、どんなレベルのコースなのか、大いに迷われるのではないかと思います。

近年、こうした資格のバリエーションも幅広くなっており「イギリスの教育制度は複雑」と思われるかもしれません。実際に小中高教育においては、公立校と私立校では就学年齢や、学校の呼び名(プライマリー・スクールとプレパラトリースクール)が違います。また、イングランド・ウェールズとスコットランドにおいては教育制度が多少異なっています。しかしながら、イギリスの教育制度は意外に合理的でシンプルです。

まず一番の違いは、日本における「卒業制度」と比較してイギリスは「資格制度」である点でしょう。日本では小中高の教育においては、文部科学省が告示する「学習指導要領」に沿って、検定教科書の使用や単位数、必要な出席日数と一定の成績を修めたことを認定されることによって「卒業資格」を取得し、進学する場合は希望の高校や大学の入学試験を受けることになります。一方、イギリスでは「ナショナル・カリキュラム」と学習到達度をチェックする全国テストはあるものの、16歳の義務教育終了時に受験する全国統一試験(GCSE試験)と、高校に相当する上級課程終了時の18歳のときに受験する全国統一試験(A-Level試験)で一定の成績以上を修めることによって「修了資格」を取得できます。

進学する場合は、この試験結果(成績)が「入学試験」の役割を果たすというシステムになっています。イギリスの学校は入学より卒業が大変なので学生は良く勉強をすると言われますが、「どの学校を卒業したか」よりこれらの試験で「どのレベルの成績を修めたか」が、進学はもちろん一生の資格として意味を持つことになるので、「○○学校に入学して、単位さえ落とさなければ多少遊んでいても卒業できる」というわけにはいかないのもその理由の内の一つだと思います。一方、職業的な知識やスキルを身につけたい学生はGCSE試験の後、おもに継続教育機関と呼ばれるカレッジなどへ進学し、同じように職業分野で上級レベルへとステップアップするコースを進んでいくことになります。カレッジでは、A-Levelの取り直しコースや、資格によっては学士号などに編入できるコースなども提供しており、A-Level以外のルートとしてもその役割を果たしています。

イギリスでは中学・高校レベルだけでなく職業に関して国家的に「資格フレームワーク」が構築されており、教育機関はこのフレームワークに沿ったコースを提供し、個人の持つ資格はそのフレームワークに基づいて評価がされるといった「資格社会」であるといえます。大枠ですが、レベルでは①義務教育課程修了(低いグレード)と同等レベル、②義務教育課程修了(高いグレード)と同等レベル、③上級課程修了と同等レベル、④学士号と同等レベル、④修士号と同等レベルの5つに分けられます。更にアカデミック、職業分野、そしてその中間の3つの分野に分けられており、それぞれのレベルや、どんな内容の知識やスキルを学ぶのかによって、資格名がつけられています。

例えば、National Diploma とHigher National Diplomaは、アカデミックと職業分野の中間的内容で、レベルはそれぞれ上級課程修了とその同等レベル、学士号とその同等レベル(厳密には準学士レベルですが)と理解されます。また資格授与団体が違う資格試験の場合でも、5段階レベルは大体、把握できるようになっています。いろいろとコースがあって一見難しそうなイギリスの教育制度ですが、専攻や専門は異なっていても、コース名を見ればどんなレベルなのか、どんな内容なのかが大まかでも分かるとは、実はとても合理的でシンプルなシステムといえます。



アフィニティ
著者プロフィール
中畑 寿子
アフィニティ・エデュケーショナル 
留学・キャリアコンサルタント

ロンドンの語学スクール、カレッジ、大学留学で合計約5年間を過ごし、現在、この経験をもとに、イギリス留学、語学研修、帰国後の転職に関するセミナー、相談、サポートを行っています。

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