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Fri, 20 July 2018

「大人の半数が小学生レベル」との統計も
英国人の算数・数学の学力について

日本人に比べて、英国人は暗算など計算が苦手であるという印象を持ったことがある人は少なくないかもしれない。ある統計によると、イングランドの大人の半分は算数・数学の学力が小学生レベルにとどまっており、深刻な問題として捉えられている。

経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA*1)の
「数学的リテラシー」の順位(2009年版)

1位 上海
2位 シンガポール
3位 香港
4位 韓国
5位 台湾
6位 フィンランド
7位 リヒテンシュタイン
8位 スイス
9位 日本
10位 カナダ
11位 オランダ
12位 マカオ
13位 ニュージーランド
14位 ベルギー
15位 オーストラリア
16位 ドイツ
17位 エストニア
18位 アイスランド
19位 デンマーク
20位 スロベニア
21位 ノルウェー
22位 フランス
23位 スロバキア
24位 オーストリア
25位 ポーランド
26位 スウェーデン
27位 チェコ
28位 英国
29位 ハンガリー
30位 ルクセンブルク

(*1) PISAは、3年ごとにOECDが実施する世界各国・地域の15歳児を対象とする学習到達度調査。15歳児が持つ知識や技能を、実生活の様々な場面でどの程度活用できるかをみる。調査は、「 読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野に分かれ、2009年度は、65カ国・地域を対象に実施された。

「イングランドの大人の半数近くは、
算数・数学の学力レベルが小学生程度」であることを証明する調査*2

学力レベル各レベルの程度全調査対象者に
占める割合
イングランド在住の
15〜65歳の全人口に
換算した場合の人数
エントリー・レベル1
またはそれ以下
5〜7歳程度 6.8% 49.1% 230万人
エントリー・レベル2 7〜9歳程度 16.9% 580万人
エントリー・レベル3 9〜11歳程度 25.4% 870万人
レベル1 GCSEのD〜G程度 29.0% 990万人
レベル2 またはそれ以上 GCSEのA*〜C程度 21.8% 750万人

Source: “2011 Skills for Life Survey” (BIS)

(*2)2010年5月〜2011年2月にかけ、イングランドに在住する約6000人を対象に、算数・数学の学力判定テストを受けさせた結果。調査対象者の年齢は16〜65歳。
「エントリー・レベル1」などは、スコットランドを除く英国で使用されている教育資格の統一的枠組みである「全国資格枠組み(National Qualifications Framework)」で規定されたレベル。

算数・数学は「できなくて当然」との風潮

数学子供及び大人の算数・数学の学力向上を目的とする英国初の団体として、「英国数学協会(National Numeracy)」が最近、設置された。同協会は、組織立ち上げに当たり、「イングランドの大人の半数近くは、算数・数学の学力が小学生程度」であるとの統計を引用し、この分野における取り組みの重要性を訴えた。この統計はもともと、昨年12月にビジネス・改革・技術省(BIS)が発表した「スキルズ・フォー・ライフ(Skills for Life)」と題する報告書で明らかにされたデータであり、簡単な買い物の計算やバス・電車の時刻表の理解に困難がある大人が英国に少なからず存在することを意味する。  

こうした事実の背景には何があるのだろうか。同協会のクリス・ハンフリーズ会長は、英国人の間に、算数・数学の学力不足を、恥じるどころか、むしろ「栄誉の印」であるかのように「自慢」する風潮があることを指摘している。同会長は、こうした傾向を、ほかの国には見られない「奇妙な英国病」と呼んでいるが、実際のところ、英国人2000人を対象に調査会社ユーガブ社が最近実施した調査では、「読み書きが苦手」と他人に言うのを恥ずかしいと思う人が80%に上ったのに対し、算数・数学では56%にとどまっていた。同協会は、今後の活動を通して、こうした「算数・数学はできなくて当然」といった考え方を変えたいと述べている。  

また、算数・数学を教える側の人材不足を懸念する声もある。クイズ番組「カウントダウン」の番組アシスタントを長期にわたって務めたタレントのキャロル・ボーダーマンさんがリーダーを務める作業部会が保守党の委託で実施した算数・数学教育に関する調査の報告書(昨年8月発表)は、小中学校で算数・数学を教える教師が、必要な専門知識に欠けることを指摘していた。

成績不振者に18歳まで数学履修義務付けへ

では政府の取り組みはどうなっているか。現政府は既に昨年、GCSE(中等教育終了試験)の英語及び数学で「C」以上の成績を取れなかった生徒に対し、18歳までこれらの科目を学ぶことを義務付けるとの方針を明らかにしている。BBCによると、この方針は、2015年に義務教育の修了年齢が18歳まで引き上げられるのに合わせて導入される見込みである(ただし、義務教育修了年齢の18歳までの引き上げはイングランドのみ。関連キーワードも参照)。

算数・数学の基礎学力不足で国庫に負担

英国数学協会のハンフリーズ会長によると、算数・数学の能力が劣る人は、そうでない人に比べて、失業や貧困などの事態に陥ったり、犯罪者として刑務所に入る割合が高い。また、慈善団体「すべての子供への機会提供財団(Every Child a Chance Trust)」が2009年に発表した報告書では、個人の算数・数学の基礎学力の不足に起因する英国の国庫への経済的負担は、毎年24億ポンド(約2880億円)に上ることが明らかにされていた。ゴーブ教育相は昨年夏、「王立協会(Royal Society)」で行った講演で、10年以内に、「大多数の」若者に18歳までの数学の履修を義務付けたいとの考えを明らかにしているが、英国の現状を考えると、そうした措置に賛成する人も少なくないかもしれない。

School leaving age

「義務教育修了年齢」を意味する英語。イングランドでは、「2008年教育・技術法(Education and Skills Act 2008)」の規定により、義務教育修了年齢が2013年に17歳に、2015年に18歳に引き上げられる。これは、同法の施行で、すべての若者が18歳までフルタイムで学業を続けることを義務づけられることを意味するわけではない。しかし、大学への進学を希望しない場合も、18歳までは、 全日制の職業訓練コースに通ったり、徒弟制度(apprenticeship)での職業実習を行うことなどを求められる。週20時間働きながら、教育または職業訓練を受けるという選択肢もある。

(猫山はるこ)

 
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