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Mon, 17 June 2019

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

ブレグジット、さてどうなる?「まやかしの戦争」状態続く

今年も、残すところあと2週間ほどになりました。この1年を振り返ると、英国にとって最大のニュースは何と言っても「ブレグジット」(英国の欧州連合(EU)からの離脱)でしょう。6月23日、EUへの加盟を継続するか離脱するかについての国民投票が行われ、結果は僅差で離脱派が勝利。世論調査やメディアの予測を裏切る、驚きの顛末となりました。

残留をプッシュしていたキャメロン政権が崩壊し、代わりに英国では史上2人目の女性宰相となるメイ氏による政権が誕生しました。英国の政治は表向きには大きく変わりましたが、国民投票から半年経った現在、生活面で大きく変わったという感じはしません。

それもそのはず。ブレグジットを実現するためにはEU離脱の規則を定めるリスボン条約第50条を発動させる必要がありますが、首相案ではこれが来年の3月末以降となっており、まだ離脱交渉が始まっていないからです。

そこで新聞メディアが持ち出してきたのが「まやかしの戦争」(Phoney War)という表現。第二次大戦に英国が参加したのは1939年9月、ドイツ軍のポーランド侵攻の直後です。翌年5月のドイツ軍によるフランス侵攻まで、ドイツと英仏軍との間に陸上戦が皆無状態となりました。このときのことを「まやかしの戦争」と呼んでいます。私たちはまさに「まやかし」の状態にいるのかもしれません。後に待ち受けているのは大きな犠牲だ、というのが新聞メディアの論調です。

ただし、ポンド安は既に現実化しています。国民投票実施前は1ポンド=170~180円でしたが、現在は140 円台半ば前後ですね。政府の最新の経済見通しによると、来年の国内総生産(GDP)伸び率は従来の2.2%から1.4%増と減速しています。

政府は何もしなかったわけではありません。ブレグジットの負の影響を和らげるため、包括的景気刺激策(8月上旬に金利を0.5%から0.25%に切り下げ、国債の大量買い上げなど)を講じてきました。先月末には、法人税率を現行の20%から2020年までに17%へ引き下げる、企業の先端技術に年20億ポンド(約2700億円)追加投資するなどの政策を発表しています。

来年に目を向けると、少なくとも2つの懸念があるように筆者は考えています。

1つは、政府がどのようなブレグジットを実現したいのかが見えてこないための不安定さです。例えば関税なしで貿易取引ができるEUの単一市場から出る(=ハード・ブレグジット)のか、出ない(ソフト・ブレグジット)のか。離脱派が強く望んだのは「EUからの無制限移民流入を停止する」ことでした。でも、EU側はEU単一市場に継続して加盟するには、「EU域内での人の自由な動きとセットだ」と主張しています。メイ首相が「よく眠れない」と「サンデー・タイムズ」紙に漏らしたのも無理はない、ジレンマがそこにはあります。

11月上旬、高等法院はEU離脱の正式な手続きの開始には議会の承認が必要という判断を示しました。政府が上告したため、今月上旬最高裁で集中審理が行われました。判断が下されるのは来年1月の予定です。議会でのやり取りが実現するでしょうか。

もう一つの懸念はEU市民に対する視線の変化です。 現在、英国に住むEU市民は約300万人。雇用人口の6.6%を占めています。国民投票後、多くのEU市民が英国での生活に不安を感じると述べており、ヘイト・クライムの件数も急増しています。既に英国に根を下ろしたEU市民がブレグジット後にどう処遇されるのかについては不透明な状態です。メイ首相は「EU域内にいる英国からの移民がブレグジット後も同様に扱われる」なら、「英国もEU市民にはこれまで通りの生活を保障する」とEU側に持ちかけてみましたが、「交渉が始まってから」と言われ、進展がないままです。再投票を求める声もあり、メイ首相にとっては眠れない夜が続くことになりそうです。

 
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