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ロンドンのゲストハウス
Sun, 30 April 2017

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

新自治政府発足に向けて、話し合いが続く北アイルランド

北アイルランドで今月上旬、自治政府議会選挙(定数90)が行われ、プロテスタント系の民主統一党(DUP)とカトリック系シン・フェイン党がほぼ同数の議席を獲得しました。DUPが28議席で第1党の座を守りましたが、シン・フェイン党は27議席。わずか1議席の差です。今回の選挙から定数が108から90に削減されたのですが、選挙前はDUPがシン・フェインに10議席の差をつけていたので、DUPにとっては「大敗」と言えそうです。

これからプロテスタント系とカトリック系の最大政党となる両党が、自治政府の正・副首相を選出して連立政権を作るのですが、シン・フェイン党はDUP代表で元自治政府首相アーリーン・フォスター氏のDUP党首辞任を要求しています。DUPは同意していません。両党が妥協案を見つけないと、自治政府の機能が英政府に移管され、北アイルランド地方の自治が停止する可能性があります。

ここで、北アイルランドの現状を理解するために、アイルランド半島の歴史を振り返ってみましょう。

12世紀、イングランドによるアイルランド半島の植民地支配が始まりました。1801年、プロテスタントの国である英国がカトリック教徒の住民が住むアイルランドを併合。1916年、ダブリンでは独立を求める武装蜂起「イースター蜂起」が発生しますが、英国側に鎮圧されてしまいます。1919~21年の独立戦争を経て、1922年、アイルランド南部が英連邦内の自治領「アイルランド自由国」として独立しました(49年にアイルランド共和国に)。このとき、北部の6州はプロテスタント系住民が大部分で、英国の一部として残ることに決めたのです。

過去の歴史から、北アイルランドではプロテスタント系が大多数、カトリック系が少数派という人口構成が長く続き、警察や政治家など支配層の大部分はプロテスタント系住民でした。1960年代、互いの民兵組織によるテロや武力抗争が始まります。「ザ・トラブルズ」とも呼ばれた戦いの結果、3000人以上が命を落としました。

1998年、北アイルランドの帰属を住民の意思に委ねる和平合意「ベルファスト合意(聖金曜日協定)」が調印され、かつては敵同士だったプロテスタント、カトリックの政治家がともに自治政府を構成する現在に至っています。

今回の選挙の直接の引き金を引いたのは今年1月、シン・フェイン党の重鎮で副首相だったマーティン・マクギネス氏の辞任です。きっかけはDUPが主導した再生エネルギー計画でした。

一体どんなものだったのでしょう。話は2012年にさかのぼります。再生エネルギーの利用促進のため、自治政府は利用者を募りました。利用者には補助金を出すことにしたのですが、希望者が増えず、補助金は出さない方針を決めました。ところが、補助金停止が実行される前の2015年秋、急に希望利用者が増えていきます。

なぜ希望者が急増したのか、人々の間で疑問が湧きます。また「補助金が無駄に使われている」という情報が内部告発者から寄せられました。そこで調査会が設置されたのですが、調べてみると計画のずさんさが次々と明るみに出ました。 2012年当時、この計画を運用していたのが企業・貿易・投資省(現在は経済省に)で、フォスター氏がこの省の大臣だったのです。

計画によれば、10億ポンド(約1385億円)の資金が今後20年間に利用者に支払われるのですが、10億ポンドのうち財務省が出す6億ポンドを除いた金額は自治政府が捻出することになっています。北アイルランドにとっては大きな負担です。フォスター氏が辞任を拒否し続ける中、DUPとシン・フェイン党の間の信頼感は崩れてしまい、マクギネス氏による抗議の辞任となったのです。

DUPとシン・フェイン党は選挙から3週間以内に交渉を終え、正副首相を選出していかなければなりません。合意がまとまらず2002年から06年まで自治政府が停止したこともあります。3月末までに両党はまとまることができるでしょうか。(13日脱稿)

 
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