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日経電子版Pro
Wed, 25 November 2020

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

新型コロナウイルスでワクチン開発競争 - オックスフォード大学で欧州初の臨床試験が開始

新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、ロックダウン状態が続いています。この状態から抜け出すためにも、ワクチンや治療薬の開発・実用化が待たれますが、4月23日、オックスフォード大学で欧州初の「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)予防ワクチンの臨床試験が始まりました。英国は世界に先駆けて開発に成功する国になるでしょうか。

「ワクチン」の英語「vaccine」は、ラテン語で雌牛を意味する「Vacca」に由来しています。世界初のワクチンが雌牛から取られたためだそうです。

そもそもワクチンとは、毒性がなくなったあるいは弱められた「病原体」(細菌やウイルスなどさまざまな病気を引き起こす原因となる微生物)をあえて体内に注入することで抗体を作り、対象となる感染症にかかりにくくする医薬品を指します。人間の体には外部から侵入した細菌やウイルスを異物として攻撃することで、自分の体を守る働きする免疫という仕組みがありますよね。このとき、異物の特定の目印である抗原に結合して、その異物を生体内から除去する分子、「抗体」ができます。そのため、2回目に同じウイルスが入ってきても、すぐに大量の抗体が作られるので、症状が重くなりません。この状態を人工的に生じさせるのがワクチンです。

18世紀、史上初のワクチンの開発に成功したのが「近代免疫学の父」といわれる英国人エドワード・ジェンナーでした。当時、天然痘ウイルスによる感染症が流行し、患者から抽出したウイルスを健康な人間に接種する人痘法が生み出されていましたが、危険性が高く、ジェンナーは天然痘にかかった牛から採取したウイルスを人に接種する予防法を発見しました。そのおかげもあり、1980年に世界保健機関(WHO)は天然痘の根絶宣言を出しています。

現在、世界各地で新型コロナ用ワクチンの研究が進んでいます。BBCによると、少なくとも80の研究チームが取り組み中。政府はオックスフォード大学の遺伝子組み換え技術を使ったワクチン開発に2000万ポンド(約26億6000万円)、インペリアルカレッジ・ロンドンのワクチン開発には2250万ポンド(約30億円)を拠出しています。遺伝情報などを使ったワクチンは開発期間を大幅に短縮できるといわれています。

気になるのはいつから予防ワクチンが使えるかですが、専門家の意見を集約すると、「早くても来年半ば」と言われています。

時間がかかるのは、ワクチンを利用するまでにはいくつかの段階を踏む必要があるからです。まずワクチンの安全性を確認し、次に臨床試験によって人体に免疫を作れるかどうかを試します。その後も、世界のニーズにこたえられるほど量産する体制が整うかどうかが問われますし、市場に出す前に、医薬監査機関が使用を許可する段階も踏まなければなりません。最後に、世界の隅々にまでどうやってワクチンを届けるのか、誰が先に使うべきか。もし開発・研究に巨額資金をつぎ込むことができる裕福な国の国民が優先され、貧困国の国民が後回しになったら、これを当然視して良いのでしょうか。

こうしたさまざまな問題を調整するため、4月24日、英国を含む20カ国とWHO、医療関係の民間団体などがテレビ会議を開き、世界規模でのワクチンや治療薬の開発と分配で協力する「アクセス協定」を結ぶことで同意しました。すでに開発支援費用として70億ポンド(約9270億円)を目標とする資金集めを開始しています。また、WHOの指揮の下、90カ国以上が参加する治療薬の臨床試験プロジェクト「連帯トライアル」では、4種類の治療薬の研究が行われています。

ロックダウンによる経済的打撃の大きさが日々明らかになるなかで、研究者の尽力が続いています。

キーワード

COVID-19 Vaccine Clinical Trial(COVID-19ワクチンの臨床試験)

4月23日、オックスフォード大学で新型コロナウイルス感染症(COVI D-19)予防ワクチン開発のため臨床試験が始まった。約1100人を対象とし、半数は新型コロナのワクチン、残りの半数は髄膜炎のワクチンの接種を受ける。前者はチンパンジーから取った風邪のウイルスを弱めたものを利用。被験者は18~55歳の健康な成人で、どのワクチンを接種したかは知らされない。最終結果は数カ月後に判明する。

 
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