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日経電子版Pro
Fri, 27 November 2020

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

新型コロナ危機で膨らむ公的支出 - GDPは大幅下落へ財務省、賃金負担制度を延長

新型コロナウイルスへの感染を防止するため、外出禁止令が敷かれたのは3月23日のことでした。その後、感染者数および死者数の伸びが減少の兆しを見せ、5月13日からようやく段階的に解除されつつあります。

禁止令発令後、多くのビジネスが停止状態となり、繁華街から人が極端に減りました。ビジネス活動が止まれば企業は収入を得ることができなくなります。人員解雇をせざるを得ない場合も出てくるでしょう。しかし失業者が大量に出ると、消費行動にも影響しますし、たとえウイルスを駆逐できたとしても、回復できないほどの経済上の打撃が発生する可能性があります。

そんな状態に陥らないよう、リシ・スナク財務相は総額3300億ポンド(約44兆円)の緊急経済対策を打ち出しました。その目玉は資金繰りに苦しむ企業のための融資保証枠の設定です。これに加え、企業が人員削減をしないよう、「一次帰休」(Furlough)として雇用を維持した場合、従業員1人につき給与の最大80%(月額では最大2500ポンド=約33万円)を政府が肩代わりする制度「雇用維持スキーム」を設けました。自営業者にも同様の支援が提供されます。当初は6月末までのスキームでしたが、5月12日に10月末までの延期が決まりました。ただし、8月からは企業側の負担を求める可能性があるそうです。例えば、最大80%の政府肩代わり分を60%に減少し、20%は企業が負担する形です。月内には詳細が発表されることになっています。

日本では、4月1日から6月30日まで、以前からあった雇用調整助成金制度に特例措置を加え、より利用しやすい形に変えました。たとえば、対象事業主や労働者の枠を広げ、助成率を拡大させ、事前提出とされていた休業の計画書を事後でもよいことにしました。また、日本では国民1人につき10万円が支給されますが、英国では全国民への一括した資金援助は今ところありません。

スナク財務相によると、雇用維持スキームを利用した人は、750万人だそうです。一方、低所得者層向けの福祉手当「ユニバーサル・クレジット」の申請者(3月1日~5月5日)は250万人となりました。約1000万人が政府の財政支援を受けようとしています。

一連の支援策は緊急策として企業や従業員にとって大きな助けになるのですが、国の負債が大きく膨張してしまうのが懸念です。英予算局(OBR)のデータを基にした「フィナンシャル・タイムズ」紙の試算によると、緊急支援による拠出や経済活動の停滞化による税収入の減少の総額は3500億ポンド(約45兆円)にも上るそうです。リークされた財務省文書には今年度「3370億ポンドの赤字が出る」という文言が入っていました。スナク財務相は膨らむ赤字をどう解消するのかについて、ほとんど発言をしていません。

OBRによると、今年第2四半期(4月~6月)はマイナス35%の成長率となり、失業者が200万人増加すると予想されています。国家統計局による第1四半期(1月~3月)の成長率の伸びは前期比で2%の減少でしたが、今期は「20~30%に下がる」という予想(BBC ニュース、13日付)も出ています。

政府支援策のもう一つの懸念は、停止直後の状況です。雇用維持スキームで一次帰休となっても、今から数カ月後、「戻る」職場はまだ存在しているでしょうか。ロックダウンの完全解除後、合理化を選択した企業に結局解雇される可能性も否定できません。経済が活気を取り戻すのを待つ間に、特別融資枠で借りたお金を返せなくなってつぶれる企業も出てきそうです。

少し明るい話を最後に紹介しましょう。イングランド銀行によると世界経済危機(2008年)からの回復には5年掛かったそうですが、今回のコロナ危機では回復は2年間で可能、とのこと。予想が当たるといいですね!

キーワード

Furlough(一次帰休)

従業員を解雇するのではなく一時的に休業させるなどして、雇用を維持すること。源泉徴収税を払う勤労者(フルタイム、パートタイムほか、さまざまな勤務体系も含む)を対象とする。4月20日申請が開始されたが、3月1日までさかのぼって計算され、給与の最大80%を国が負担する。雇用主は継続して国民保険料、年金積立金を支払う。一時帰休の期間終了後、企業側はその従業員を継続して雇用する義務はない。

 
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