イギリス的出会い系広告批評2011 ~出会い系はロマンが命編~

By 編集部員(籠)

皆様、こんにちは。大学時代に書いた卒論のテーマは、「イギリス的出会い系広告批評の観点から眺める近現代史」だった(籠)です。

今回の講義のテーマは、「イギリス系出会い系広告はロマンが命」です。前回、そして前々回の授業に出席いただいた方には分かっていただけると思いますが、いくら異性に飢えているからって、出会い系広告で「若くてお色気ムンムンのお姉ちゃんと会いたい」とか「男はやっぱ金持ってなきゃ」といった本音をぶっちゃけた文面を出してしまっては、読む方はドン引きしてしまいます。

じゃあ、広告には何を書けばいいのか。それは、ロマンです。ここ大事なところなので、皆で復唱してみましょう。「出会い系広告はロマンが命」。はい、よくできました。

引き続き、「ガーディアン」紙の別冊「guide」に掲載されている「soulmates」を参考にして例を見ていきます。

Intelligent, sexy blonde, 55, seeks tall, brainy M to make her heart beat a little faster
(知的で、セクシーな55歳のブロンド女性が、興奮で私の心拍数を上げてくれる、背が高くて、頭の回転が速い男性を求めています)

55歳の女性でも、いやだからこそ、心臓の高鳴りを求めているわけです。お金なんて要らない。社会的成功も必要ない。彼女が欲しているのは、興奮と情熱。つまり、ロマンです。ここで「きっと病気持ちで、万が一のときは心臓マッサージで蘇生してくれる人を求めているんだな」と早合点してしまうと、自身はセクシーなブロンドとして若々しく頑張っているだけに、後で面倒なトラブルが生じてしまうことになります。読み手にも、ロマンを解する心を持つことが求められるわけですね。

自身を映画のヒロインになぞらえた、こんな例もありました。

REMBEMBER CELIA JOHNSON IN BRIEF ENCOUNTER? ――I’m said to resemble her-except I’m still alive! Only 51 & still foxy. If you’re not married like Trevor Howard in the movie, we could meet at a railway station
(名作映画「逢びき」の主演女優、シリア・ジョンソンを覚えていますか。私は彼女の生き写し。しかも本物は20年ぐらい前に死んじゃったけど、私はほらこの通り、まだ生きているんだから。まだ51歳。なおかつセクシー。もしあなたが、同じく「逢びき」に出演していたトレバー・ハワード演じる男性みたいに配偶者を持ちながら道ならぬ恋に進むような男性ではなかったら、あの映画のシーンと同じように、駅で待っている)

いやー、盛り上がってますねー。ロマンですよ、ロマン。ここで、「白黒映画の女優の生き写しだって、ぷっ」とか噴き出したりするのはNG。「僕と一緒に銀河鉄道に乗って旅立とう」とロマンで返すのが正解です。あ、でもそれだと日本人じゃないと分からないか。

本日の締めとして、最後に男のロマンを取り上げます。

Tall, educated gentleman, 50s, would like to meet a lady of similar characteristics, 40-60. Location is no object-I have always considered myself a Vasco de Gama. Anywhere
(背が高い、教養のある50代の紳士が、同様の性格を持つ40代から60代の女性との出会いを求めています。どこにお住まいでも結構です。何てったって、俺はバスコ・ダ・ガマだから。どこへでも行きます)

バスコ・ダ・ガマ

バスコ・ダ・ガマ

バスコ・ダ・ガマと言えば、大航海時代の探検家ですね。海は、男のロマンなり。来週に続きます。(続く)

実践で使える! イギリス的出会い系広告の言葉

今週の用語「50s」「50-something」「50ish」「quinquagenarian」
日本語訳: どれも「50代」を意味する単語。英国の出会い系広告でよく見かける年代です。といっても、50歳と59歳では10歳分の年齢差があります。「50歳後半の人が正確な年齢をボカすことで結果的にサバ読んでいる」と思わせといて、実は平気で70歳だったりするので気をつけましょう。

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