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英国はやっぱり優しい
「英国のいいところ、好きなところって何?」
これまで日本の友人や知人から何度この質問を受けたでしょう。今、これを読んでくださっているあなたなら、なんと答えますか?
実は、私の答えについて、ほかにも同じように感じている方が少なくないのだというのを先日、私の住むエリアの日本人の方たちが集まるオフ会に参加したときに感じました。
もったいつけずに言うと、私の答えは「英国の人たちの優しいところ」ということです。そして、在英の日本人の多くの方が同じように感じているようです。
この連載の100回記念のときに「優しい英国人」というテーマで、英国の人々が次に来る人のために、ドアを開けて待っていてくれる、というお話しをしました。でも、英国の人々の優しさは、それにとどまりません。オフ会で出てきたのは、子どもを連れていると、周りの人がバスや地下鉄の乗車を手伝ってくれた、とか、駅の階段でスーツケースを持ってくれたなどの経験をほとんどの人がしていました。私も特に双子が幼いころには、バギーを運んでもらったり、買い物の荷物を運ぶのを手伝ってもらったりといった親切を受けた経験は数えきれません。バスや電車の中では、高齢者や子ども連れの人が乗ってくると、1度に2、3人の人が腰をあげて席を譲ろうとする、という場面も何度も目にしています。
また、先日、カントリーサイドに住む知人のところに行ったときのこと。知人によれば、バスがほとんど運行していないそのエリアでは、高齢の方がどこかへ移動したいときには、ボランティアの方が車で連れて行ってくれるマッチング・サービスがあり、運転できなくても不自由なく暮らせるくらい助け合いが行き届いている、と言っていました。
英国はよく「個人主義の国」といわれたりしますが、「個人主義」というのは「自分勝手」という意味ではありません。それぞれが個人として独立し、自分のやりたいことをやるからこそ、他人を尊重し、共感し、助け合えるというのが英国の良さ。子どものころから、親や社会の人たちがそうするのを見て育つので、その価値感がまた子どもたちへと受け継がれていくのだとも思います。私自身も英国の人に受けた優しさから大いに学びました。
公共交通機関の運行不順や、郵便や宅配のいいかげんさなど、日本と比べて多くのことが思い通りにならない英国の生活には不便を感じることも多いです。それでも、人に対して優しい、あるいは寛容なところを考えると、私はやっぱり、この国の人たちの優しさが好きだから、この国が好きなのだと感じています。