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Wed, 09 October 2024

信長に仕えた
アフリカ人の侍
「弥助」YASUKE に
魅せられた英国人 「弥助」に関する書籍を複数出版したロックリー・トーマス氏にインタビュー

米ハリウッドで映画の製作が決定するなど、海外から注目されるヒーローへと進化を遂げている実在のアフリカ人侍「弥助」。16世紀に宣教師の傭兵として日本を訪れ、織田信長に謁見した弥助は、その黒い肌を信長に大層驚かれ、後に武士として家臣に召し抱えられた。本能寺の変にも居合わせるなど、波乱に満ちた生涯とは裏腹に、その史料の少なさから、弥助はこれまで身分にとらわれず実力で評価する信長の気質を表すエピソードの一つとして紹介されてきただけだった。そんな中、限られた文献からさまざまな考察を試み、謎多き弥助の人物像をリアルに浮かび上がらせ、日本、米国、そして英国で書籍を出版したロックリー・トーマス氏。ここでは、ロックリー氏に書籍を出版するに至った経緯や苦労話などを伺ってみた。

Thomas Lockley
ロックリー・トーマス
日本大学法学部准教授。研究分野は言語学習。担当教科は歴史で、国際的視野に立った日本史を主に扱う。初の著作「信長と弥助 本能寺を生き延びた黒人侍」に続き、米国、英国でも弥助についての書籍を出版。英国出身、日本在住。
YASUKE: The True Story of the Legendary African Samurai YASUKE: The True Story of the Legendary African Samurai
著者: Thomas Lockley and Geoffrey Girard 
発行元: Sphere 定価: 20ポンド

なぜ弥助に興味を持ったのでしょう。そのきっかけと、書籍を出版するに至った経緯を教えてください。

2009年か2010年ごろ、オンラインで「弥助」について書かれたリンクに偶然たどり着きました。クリックしてすぐ、私はこの実在の人物に魅了されました。フィクションかと思うほどに、ロマンス、冒険、戦争、情熱、苦悩が盛り込まれとても神秘的だったのです。私はこの人物のことを忘れることができず、その約1年後、自分の楽しみのために弥助を題材にした小説を書き始めました。仕事や家族など、日々の生活を優先したため一度は中断しましたが、2015年に再び筆を執った時は、真実を追求するため学術的な方向へシフトすることにしました。取り組む前は非常に短いものになると思っていましたが、知れば知るほど長くなり、論文として発表はしたものの、同時に本を書くに値する深いテーマであると気付きました。やがて、日本語版の書籍「信長と弥助 本能寺を生き延びた黒人侍」(2017年 太田出版)が出版の運びとなりました。また、日本以外の国の人々にも弥助の存在を知ってほしいと思ったので、米ノンフィクション作家ジェフリー・ジラード氏とチームを組み、英語版も執筆しました。

弥助が生きた時代が数百年前であり、また傭兵として雇われた奴隷だと伝わっている弥助ですが、執筆にあたり、苦労した点を教えてください。

弥助が仕えた2人の男性、織田信長とイタリア人司祭アレッサンドロ・ヴァリニャーノに関する文献はたくさん残っています。しかし、弥助本人に関する史料はほとんどないため、弥助について書くということは、歴史をなぞる探偵のような作業でしたね。当時の都市や城がどのように見えたのか、食事や服はどのようなものだったか、どんな戦法だったのかなど、遠い昔、けれど確実に存在した時間を再現することで弥助を浮かび上がらせようと試みました。

難しかった点は、400年前に生きている自分自身を想像することでした。その当時生きていた人々は、私が知らないことを見聞きしていますよね。逆も然りで、例えば、当時の「奴隷」の立ち位置は、契約労働者に近いもので、今のネガティブな意味合いとは少々異なりました。弥助が奴隷だったとしても、高い戦闘能力を保持していたため、かなりの地位を与えられたと言われています。

17世紀初頭の狩野派の屏風絵欧州の使節と思われる集団に従じ、やりを持つアフリカ人の護衛。
17世紀初頭の狩野派の屏風絵

国境を越えて活躍した弥助は、今後ますます注目される存在になっていくと思います。この本を読めば弥助や、弥助が生きた時代を想像することができますか。

コンピューター・ゲーム、マンガ、アニメなどに登場していた弥助を、その世界観も含め学術的に突き詰めたことで、より立体的で身近に感じられるキャラクターになったと思っています。

この本は歴史ノンフィクションですが、読み進めていくうちに、弥助と共に生き、弥助自身の視点で世界を共有できると思います。歴史が嫌いな人でも楽しみながら読み進められるように書かれていますが、同時に文献を参考にした事実の背景も伝えているので、出来事が起こった理由など重要なことも理解することができます。日本の歴史や文化をよく知らない人がこの本を通じて、日本への扉を開き、さらに興味を持ってくれる、また、日本の歴史に精通している人には、これまでと異なる視点から歴史を見られるように願っています。

 

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