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Mon, 15 December 2025

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Life in the UKテストについて

7月1日付の「ガーディアン」紙は、欧州経済領域(EEA)以外の国籍を持つ人が英国で市民権や永住権を取得する際に必要な「Life in the UK」テストの内容を、今年の秋に一部変更する予定であるという、テリーザ・メイ内務相の見解を報道しました。「Life in the UK」は政治や宗教、生活など様々なジャンルにおける英国についての一般常識テストで、2005年11月から市民権申請者を対象に、2007年4月からは永住権の申請をする際にも必須とされている試験です。

新テストの内容は、ウィンストン・チャーチル元首相や詩人のバイロン卿、近代看護教育の生みの親とも言われるフローレンス・ナイチンゲールといった英国の偉人に関する記述や、英国国歌「God Save the Queen」(女王陛下万歳)の最初の一節に言及するなど、これまでよりいっそう英国史に関する設問が増える予定です。これは、市民権や永住権を希望する以上、基本的な英国の歴史を知り、英国に対し愛国精神を持つのは当然である、という考えに基づいているのではないでしょうか。その代わりに、現在のテストに含まれている人権擁護法についての基礎知識のほか、福祉手当の受け取り方、区役所への連絡方法といった、実践的な事柄についての設問が削除されると言われています。英国国境局のスポークスマンはこの変更に関し、「英国人」として英国で生活していくつもりならば、この国の文化や歴史の基本を知るのは当たり前で、ガスのメーターの読み方などという日常生活に関することよりずっと重要なはずだと主張。しかし一部では、英国の歴史に関する内容にかなり偏りがあるという批判も聞かれるため、今年秋の変更実施までにいくつかの見直しがある可能性も高いと思われます。どちらにせよ、英国滞在を希望する移民に対しハードルを高くするための措置であることに違いはなく、受験者は心してテストに望むべきだと言えるでしょう。

この「Life in the UK」と呼ばれるテストは、2005年に当時の労働党政府によって導入され、以来、毎年約8万人が受験しています。設問は、146ページからなる公認ハンドブックから出題され、24の質問に対し二択あるいは四択で解答するスタイル。75%正解すれば合格ですが、「合格=永住権 / 市民権の取得」ではなく、このテストに合格することで、申請の権利の一部が得られるということなのでご注意ください。多くの移民関連の法律改正が行われていることに加え、「Life in the UK」テストの制度自体にも数々の変更がなされています。申請を考えている方は、早めに専門家に相談することをお勧めします。また、テストを受けた結果、不合格となり、再試験が必要となった場合には前回受験したときから少なくとも7日間が経過していなければならないなど、留意すべき点も多くありますので、ビザ申請の時期を考慮した上で受験の計画を立てる必要があります。こうしたことなども、専門家のアドバイスを受けながら進めていけば後になってあせることもなく、安心できます。

ここ数年、移民法案は改正を繰り返しています。英国国境局によって現在も大小の様々な変更がなされており、EEA以外の国籍を持つ人にとっては厳しい時期であるといえるでしょう。確実なビザ取得のためにも、手続きは専門家と二人三脚で、取得のタイミングなどを熟慮しつつ、計画を立てて着実に進めることをお勧めします。

 

ビザの更新について

英国国境局は6月29日、オーバーステイ(ビザで定められた在留期限の終了後も、出国せずに英国に滞在すること)に関する現行の法律が改正されることを発表しました。これまではオーバーステイをしながらビザの申請をしても、審査をしてルールに則っていると判断されれば許可が下りる場合がありました。しかし、法改正後は、ビザの期限が切れてから28日を超えて英国内から提出された申請を一切受け付けません。つまり、法改正後、英国内でビザの申請を却下された場合は、28日以内に英国からいったん出国し、自国から再申請しなければなりません。(ただし申請をビザの期限が切れる以前に行い、申請を却下された時点でアピールした場合を除く。オーバーステイの詳細についてはケースによって多岐にわたりますので専門家にご相談ください)。この法律は10月1日から施行される予定です。

7月5日付のBBCウェブサイトによると、ビザの申請が却下された外国人のうち約15万人のその後の行方が分からないままであるとされ、その多数が英国内にいまだ滞在しているのではないかと考えられています。

また、今年の5月11日には、2014年からファミリー・ビジター・ビザ申請者に対して、ビザ申請が却下された際の裁判所への全面的不服申し立て(アピール)の権利が与えられなくなるとの決定も発表されており、ビザの再申請やアピールが次第に難しくなってきていることを感じさせます。上記の法改正については追って詳細を取り上げることにし、ここではビザ申請時期におけるいくつかの注意点を、英国内で行う学生ビザ(Tier 4 General)申請について英国国境局のウェブサイトに記載されている内容を例に取り、見ていきましょう。

申請時期

● スポンサーとなる学校からのConfirmation of Acceptance for Studies(CAS)番号を受け取った時点で、ビザ申請が可能になります。

● 手持ちのビザの期限日から1カ月以内に開始されるコースであれば英国内で次のコースへの申請を行うことができますが、1カ月を超える期間が経過した後に始まるコースを取る際にはいったん自国へ戻らなくてはいけません。更に、CAS番号を受け取ったあと6カ月以上ビザ申請せずに放置しておくと、そのCAS番号は無効になるのでご注意ください。

● 申請結果を受け取る前に現行のビザが切れてしまった場合でも、結果を受領するまでは滞在が可能です。ただこれは、ビザ期限終了前に申請していることが必須です。

待ち時間

●「申請日」とは、郵送の場合は投函した日(スタンプにポスト・マークが印された日)、バイク便の場合は配達受領日のことを指します。

●プレミア・サービスとして、自分で国境局のオフィスへ行く場合は、予約が必要です。予約を取る作業自体に時間がかかる可能性もあるため、どちらにしても早めの準備が必要と言えるでしょう。

ただ以上に関してはあくまでも一例であり、学生ビザの手続き一つをとっても申請を行う場所やコースの期間、学校の種類によって、必要とされる手続きは異なります。また待ち時間に関しても、英国国境局側の見通しと実情の間に大きな差が見られる場合も多いようです。これらの理由から、手続きは専門家と二人三脚で計画を立てて着実に行うことをお勧めします。

 

配偶者を含む 扶養家族向けビザに関する大幅な変更

6月10日付「ガーディアン」紙(電子版)は、テリーザ・メイ内務相がテレビ番組内で語った談話の一つとして、「英国人が欧州経済領域(EEA)以外の国籍を持つ人との婚姻を望む場合、英国人の最低年収が1万8600ポンド(約228万円)以上であることを条件の一つにする」という方針を政府が持っていることを紹介し、読者から大きな反響を引き出しました。その翌日である6月11日には、英国国境局が扶養家族向けビザに関する大幅な変更を正式に発表。その全容が明らかになったため、ここに紹介します。これは英国人との婚姻だけに留まらず、昨年7月に政府が発表した扶養家族向けビザの取得条件変更案を一歩前進させたもので、今年の7月9日以降の申請者に対し適用されます。

昨年、ダミアン・グリーン移民担当閣外相は、「外国人の配偶者やパートナーを養う力を持たない人のために、ほかの納税者がその穴埋めをすることはあり得ない」と述べており、今回の発表は「生活保護」と「移民」という、現在政府が頭を悩ませている2つの内政問題を同時に解決しようとする試みであるともいえるでしょう。

今年の7月9日以降に扶養家族向けビザ(配偶者、婚約者、市民パートナー、家族を含むビザ)を申請する場合の主な変更点は以下の通りです。下記の内容は現在も引き続き協議中であるため、今後随時変更が行われていく予定です。

● 扶養者の生活が保証されるよう、スポンサー(英国人、EEA国籍保持者、英国永住権保持者)は最低年収が1万8600ポンド以上あることを証明しなくてはいけない。もしも扶養者に18歳未満の子供が1人いた場合は2万2400ポンド、2人以上の場合は1人ごとに2400ポンドが上乗せされる。(例: 妻と子供2人ならば、2万2400+2400=2万4800ポンド)

● 婚姻関係に偽りがないことを証明する手段として、配偶者や市民パートナーとして英国に在住した上で、永住権を申請できるようになるまでの期間を、これまでの2年から5年に延ばす。

● スポンサーと英国外で持っていた婚姻関係は、すぐに永住権申請には結びつかない(これまでは4年間の婚姻関係が証明できれば申請できた)。これは扶養者が国民健康保険(National Insurance)の支払いを始めとする納税の義務を英国に対して果たしていないのに、英国入国後すぐに福祉給付を受ける権利を得るのは不当だという考えから。

● 2013年10月から、配偶者やパートナー、及び65歳未満の扶養家族は「Life in the UK」テストに合格すること、更に、一定(Common European Framework for LanguageのB1レベル)以上の語学力を所持することの両方が要求される。

学生ビザや労働ビザに続き、いよいよ家族にまつわるビザの改正が始まろうとしているわけですが、これはいまだに出口の見えない英国経済の状況や、政府の予算削減案などとも呼応した内向きの改正だとも思われ、いずれにしてもEEA以外の国籍を持つ者には厳しい時期が続くと言えそうです。

扶養家族向けビザについては、上記以外にも年金、貯蓄額など金銭にまつわる様々な煩雑な取り決めがあるので、ご自分の家族やパートナーのためにも、専門家と相談し、最善の道を選択することをお勧めします。

 

学生の英国滞在

先月24日、昨年9月までの1年間に記録された移民総数の発表が行われました。結果は、政府の目標である「10万人以下」を大幅に上回る「25万2000人」。そんな中、早々と記録的な下降傾向を見せたのが、学生ビザの発行数です。4月に行われた大改革前の数字であるにもかかわらず2012年第1四半期における数字は62%減という結果からは、政府の移民政策がいかに学生たちの入国を締め付けているかが見て取れます。

昨夏にインターンとして就労した学生への救済措置

しかし、ここへ来て若干の救済措置も取られています。先月24日の政府発表によると、英国内で昨夏インターンとして就労した学生が、同インターン先で正式な就職を望む場合は、通常Tier2(General)で設定されている「クーリング・オフ」の制度から免除されることとなりました。「クーリング・オフ」とは、今年2月に新たに導入された制度であり、許可された滞在期間が終了した後、12カ月間は同様のビザの再取得を禁止するものです。

本年度10月31日まで有効とされるこの措置を享受するには、主に以下の条件を満たす必要があります。

★ 2011年度の夏にインターンとして就労した会社がスポンサーとなること。

★ 昨夏の就労時、インターンまたは夏期の臨時職員として、Tier2の下で4カ月以内の勤務を行うことを雇用主から保証されていたこと。

★ 申請から遡さかのぼる18カ月以内に学士を取得していること。

★「Graduate Training Scheme(大卒研修生制度)」で英国に戻ること。

★ Tier2の申請書上に記入される雇用先のスポンサー証明の開始日が、本年度10月31日以前の日付であること。

教育機関の提言

また、学生にとってさらなる朗報だったのは、政府の強硬な移民削減政策を受け、英国内の教育機関が懸念を表明したことです。先月には70の大学が共同声明を発表し、政府に対し移民総数から学生数を除くことを提言しました。これは、学生ビザの厳しい取り締まりを行うことで優秀な学生までもが英国で就学することがなくなってしまう可能性を恐れてのものです。また同提言内では、留学生がもたらす経済効果についても触れられており、英国の抱える不況の是正策を模索中の政府がどういった回答を寄せるか、注目されていました。

しかし、ダミアン・グリーン移民担当閣外相はこの提言を一蹴。今後移民数の算出方法に変更を加えるつもりはないと断言しました。また政府は、前述のインターンに関する救済措置の一方で、措置の終わる11月以降、「クーリング・オフ」の制度が雇用主の負担となることを想定し、今後インターンの雇用を考える場合には、学生ではなくTier5の保持者を候補とするよう雇用する側に促しています。

救済策や教育機関の提言などは、学生にとって明るい話題だと言えます。しかし、政府の強硬姿勢にはやはり注意が必要です。先日発表された統計が芳しくなかったことから、欧州経済領域(EEA)外出身者への締め付けは、今後もますます厳しくなっていくと考えて良いでしょう。せっかくの渡英のチャンスをふいにしないために、手続きは慎重に、専門家と二人三脚で行うことをお勧めします。

 

バイオメトリック・レジデンス・パーミット (BRP)について

英国に6カ月以上滞在しようと計画している欧州経済領域(EEA)以外の国籍を持つすべての人に対し、今年の2月29日から、生体認証情報を含む滞在許可証「バイオメトリック・レジデンス・パーミット(BRP)」の取得が義務付けられるようになりました。これは2008年11月から段階を追って徐々に導入されてきたクレジット・カード・サイズの滞在許可証で、証明写真のほかに指紋情報が入ったチップが記載されています。このBRPは現在、既にビザを保持し英国内に滞在している人が、滞在延長を申請する場合や、永住権を申請する際にも取得が必須です。

このカードは、所有者が英国から適切な許可を得て英国に滞在していることの証明です。カードの表には、所持者の顔写真 / 氏名 / 滞在有効期限 / 発行年月日 / ビザの種類 / 就職の可否 / 証明番号 / 所持者のサイン、裏面には生態情報チップや所持者の生年月日、国籍などが記されています。現在のところ、既に永住権を取得した人に対し、生体認証情報を求める動きなどは出ていません。ただ、フランスを始めとするほかの欧州国のように、すべての国民が生体認証情報を含むIDカードを所持するべきだとする政府案(2010年の施行直後、わずか2カ月で廃止)が存在したことなどから、今後どのように制度の変更が起こるとも限りません。勘違いや思い込みなどで、自分では気付かないうちに違法な立場になっていた、などということにならないよう、専門家のアドバイスを仰ぎつつ、常に最新の情報を入手することが大切です。

BRPの取得については、ビザの申請書が受理された時点で、ホーム・オフィスから登録に関する通知が来るので、ホーム・オフィスか、最寄りのバイオメトリック・エンロールが可能な郵便局で生体認証情報を登録することになります。今年の4月10日までに、全国104カ所の郵便局が指紋を読み込む機械(証明写真のブースのようなもの)を局内に設置しており、予約無しの登録が可能です。ただし、曜日に寄っては混み合う日もあるので余裕を持って準備されることをお勧めします。なお、この時点でBRP申請とは別途に料金が発生するので注意が必要です。

郵便局で行った申請はホーム・オフィスに送られ、生体情報の入ったチップが記載されたBRPカードが後ほど届きます。BRPは常時携帯する必要はありませんが、英国外に出る場合は必ず持参してください。英国、及び渡航先の国で、出入国の際に提示が必要です。ただし、パスポートの代わりにはならないのでお気を付けください。出入国以外にBRPの提示が求められる場面は、新しい雇用主、就学先機関への提示のほか、銀行口座の開設時などが挙げられます。取得したら念のためカードの裏表のコピーを取ることをお勧めします。盗難や紛失といった被害に遭ったときに役立ちます。また、次回、別のビザを申請する際に、オリジナルの提出が必要になるため、コピーを所持しておくのが賢明です。更に、住所の変更や学校のコース変更の際などは、速やかにホーム・オフィスへ連絡しなければなりません。

BRPの取得自体はご自身で行うことが原則ですが、これは滞在期間の延長や永住権申請の際に手配が必要になる事項の一部であり、ビザ申請自体にも、様々な手続きが必要です。最近ではクロイドンのホーム・オフィスでシステム障害が発生し、1000名を超すビザ申請者に影響を与えたなどというトラブルも聞かれます。こうした出来事による思わぬ遅延に慌てぬよう、確実なビザ取得のためにも、手続きは専門家と二人三脚で、取得のタイミングや計画管理などを熟慮しつつ、着実に進めることをお勧めします。

 

学生ビザ取得のための予備知識

4月13日付「ガーディアン」紙は、学生ビザを利用して英国に入国し、現地で就労しようと考えるパキスタン人を取り締まるため、同国の学生ビザ申請者には、事前にパキスタンの英国領事館で英語の面接テストを実施するという内務省の計画を報道しました。これまでに試験的な調査を実施した結果、パキスタンからの学生ビザ申請者の約40%が、学生として英国に暮らすにはあまりに語学力が不足していたことから、就労目的で渡英したことが明らかになったという経緯によります。この調査はインドや中国などほかの13カ所でも実施され、平均でおよそ17%の申請者が学生としては不適格であることが確認されました。

 ポイント制度のもとで発給されるビザのうち、約3分の2を学生ビザが占めると言われます。しかし昨年には、学位レベルではない語学学校などの生徒の実に7人に1人が、就労を目的として英国に滞在しているという調査結果が発表されました。このため政府は、学生ビザ制度の厳格化によって偽学生の摘発に一層力を入れて行く方針を打ち出しており、今年4月6日に施行された改革は、この点についてより一層強化されたものになっていると言えるでしょう。

今回は、学生ビザの悪用を取り締まるべく強化された点について説明します。まず、学生ビザのスポンサーとなる学校はすべて、「信頼度の高い学生ビザ・スポンサー(Highly trusted sponsors)」として国からの認定を受けなければなりません。それに加え、これから新たに登録する学校は、教育水準監査院(Ofsted)などの監査機関からの評価も併せて必要となりました。さらに、2012年末からは、新旧を問わずすべての学校機関がこの二重証明を行うことが必要となります。これは上記のような偽学生たちの受け皿として存在する、名前だけで実際は機能していない学校が、多く存在することが明らかになったことから、昨年から段階的に変更されている改革の一つです。

それと同時に、学生の就労規定を厳格化しています。学位レベルの学生は週20時間、学位レベル未満の学生は週10時間の就労が認められていますが、学位レベル未満で公立の継続カレッジ(ディプロマ・コースなど)以外の学生、つまり私立の語学学校などに通う学生の就労を禁止しています。また、学位レベルの学生が学生ビザで滞在できる期間は、一部のコースの例外を除き、最長5年までと制限されることになりました。

そして、学生ビザを申請するに当たり証明が必要となる、1カ月に必要とされる資金(学費以外の生活費など)の提示額が、2008年以来の上昇となっています。これは物価の高騰もありますが、就労せずとも自立して暮らしていけるだけの資金を持ち、学問に励むべきというメッセージでもあるでしょう。

現在、日本人に対して学生ビザ申請の際、領事館での面接が課されるようになるというニュースはありません。しかし、いずれ欧州経済領域(EEA)加盟国以外の国のすべての申請者の身に降りかかることかもしれず、どちらにせよ、偽学生などと疑われないよう、準備を整えることが大切です。準備不足や理解不足でせっかくのチャンスをふいにすることがないよう、常に最新の情報を入手し、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。

 

4月6日以降の変更点あれこれ

今月6日、ダミアン・グリーン移民担当閣外相により、現在のビザ取得に関する複数の変更点が発表されましたが、いずれも想像通り、政府の移民削減案に基づいた厳しい内容でした。前回お伝えしましたように、政府は移民総数を「通常レベル」に戻す、すなわち英国が維持できると考えられる人数にまで削減するとしており、数十万人単位から数万人単位への削減が計画されています。この計画に沿い、Post Study Work(学業修了後の就労スキーム)の廃止、Tier2保持者の最長滞在期間の変更に伴う、永住権取得の制限など、在英日本人にも大きな影響を与える変更が次々と始動していることは、皆様もご存知の通りです。

今回の発表によると、キャップ制に基づいて発行されるTier2(General)の数は、2014年4月までは昨年と同様、年間2万700件に据え置くとされていますが、同枠内で就労可能とされる職業のリストに変更が見られます。同枠内での就労希望者は、その希望職業が政府の設定する「国内で不足している職務」リスト内に含まれていなければなりませんが、この内訳が昨年とは変化しているため注意が必要です。例えば、IT技術者に加え、医療系技術者、セキュリティー・マネージャー、カスタマー・サービス・マネージャーといった中間管理職なども、今年度は「不足している職務」には該当しておらず、従ってこの職種ではTier2(General)の申し込みはできないことになります。

一方で、博士課程レベルの研究職に関しては締め付けが若干緩和されます。通常ならば企業は、適切な人材が欧州経済領域(EEA)諸国内に見つからなかったことを証明するため、一定期間、公共の職業安定機関(JobCentrePlus)や新聞などの広告媒体へ求人を出す「Resident Labour Market Test」と呼ばれる過程を踏むことを定められています。しかし今回より、博士課程レベルの研究職については、JobCentrePlusへの告示に限り省略することが可能となりました。また、Tier2保持者が永住権の申請を希望する場合、通常はその職業が年収3万5000ポンド以上でなければいけないとされていますが、博士課程レベルの研究職については、上記の金額に満たなくとも、永住権を申請することができるようにもなっています。このような微調整を通じて英国政府が繰り返し言おうとしていることは、英国が求めているのは単なる労働力ではなく、英国経済に貢献できる優秀な人材であるということでしょう。

更に、今回の変更に伴いビザ申請費にも若干の変更がなされています。グリーン移民担当閣外相は、入国管理にまつわる問題をスムーズに解決するために使われている英国民の税金を、少しでも軽減するための手段だと説明しています。平均しておよそ2%程度の値上がりとなりますが、申請するビザの種類によって値上がり額もそれぞれ異なるため、申請前の再確認が必須となるでしょう。

また、4月6日からビザ申請のための申し込みフォームが一新されています。同27日までは旧申請フォームを受け付けるものの、それ以降は申請自体が却下される恐れもありますので注意が必要です。

ケアレス・ミスによる再申請などで、準備のための貴重な時間を取られることのないよう、二重三重の確認が肝心です。また、今回の改革案は現在も引き続き協議中であるため、今後随時変更が行われていく予定ですので、常に最新の情報を入手し、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。

 

Tier2保持者の永住権取得制度にピリオド

政府が着々と推し進める移民削減政策は、欧州経済領域国(EEA)の出身ではない私たち日本人のビザ取得をますます難しいものにしています。昨年夏には、政府は諮問機関とのコンサルテーションを開始。特に就労ビザ保持者の永住権取得制度などについて、今後の方針を話し合ってきました。

そして先月末、ダミアン・グリーン移民担当閣外相は、ポイント・ベース制Tier2を保持し5年間英国に滞在した場合に認められていた永住権への切り替えを、2016年4月以降、一部の例外を除き受け付けないとの発表を行いました。

これにより、Tier2から永住権への切り替えを希望する場合、政府が示した一定金額の年収が保証されていることなどが必須条件となります。

以下は、今回発表された改革案の主旨ですが、下記の内容は現在も引き続き協議中であるため、今後随時変更が行われていく予定です。現段階の改革案であることをご了承ください。

* Tier2から永住権の申請を希望する場合、3万5000ポンド以上の年収、もしくは歩合制でそれを上回る給与額が望めることが条件となります。

* Tier1(Exceptional talent)、(投資家)、(企業家)については、今後も永住権の申請が認められます。ただし、投資家については英国内で100万ポンドの投資を行った場合、また企業家については10人の正社員を雇い、500万ポンドの収益を上げた場合に限られます。

* 政府が設定した「不足している職務」に就いている場合、また博士課程レベルの科学者と研究者については、設定された最低年収の金額を満たさずとも、永住権を申請することができます。

* Tier2の延長によって許可される英国滞在期間が、最長で6年となります。

* Tier2については、許可された滞在期間が終了した後に12カ月間の「クーリング・オフ期間」が課され、その間は同様のビザの再取得ができなくなります。

若い企業家や中小企業の取締役たちにも、チャンスが与えられます。卒業後に、英国内で5万ポンドを投資できる場合は、英国に滞在する許可が下ります。

英国に滞在中の学生と就労移民は、自立して暮らしていくための十分な資金があることを証明する必要がありますが、この提示金額が、2008年以降初めて、上乗せされることになります。

グリーン移民担当閣相は発表に際し、以下のように述べています。

「英国に永住できることは、『特権』です。我々は、英国で就労しさえすれば永住する権利が得られるといった考えを一掃し、この重要な権利を最も優秀な人材のために確保することにしました。

「この改革は、英国に入国してくる人々についてだけでなく、滞在が許される人々に関しても、我々が選択的でいられることを保証するのです」

政府は、10万人単位から1万人単位への移民総数削減に向け、すべての入国ルートの見直しを図るとしています。日本人を始めとするEEA諸国外からの移民に対しては、既に様々な厳しい改革が実行されていますが、特に今回の大胆とも言える変革は、永住を夢見て英国内で就労してきた人たちに、大きな打撃を与えるのが確実です。

移民削減政策によってますます狭き門となるビザ獲得への道。しかし、確固たる目的を持ち、心から渡英・在英を望む人たちにとってはチャンスとも言えます。準備不足でせっかくの機会をふいにしないよう、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。

 

学生ビザ改革を4月より実施

学生ビザの悪用を払拭し、優秀な学生たちだけが英国内で就業できるようにするのを目的として、現在、政府は学生ビザの大幅な改革を推し進めていますが、この4月から、ついにその大改革が実施されることとなります。

現在、英国での学業を終えた学生たちは、Tier1(Post-study work)の制度の下、2年間の滞在が許可されていました。しかしこの4月6日をもって、新しい制度が採用されることになります。この施行により、大学を卒業した上で、英国国境局の承認を得た信頼できる企業から、年間給与額2万ポンドかそれ以上が保障される高度技術職のポジションをオファーされた学生のみが、引き続き英国での滞在と、就業が許可されることになります。

同改革の実施を発表したダミアン・グリーン移民担当閣外相は、この変革が学生ビザの大幅改革の一環であり、この改革にはほかにも次の4つの特色があるとしています。

成長を促す

「卒業生向け企業家」ルートが最高1000枠まで新設されることにより、Tier1(企業家)ルートの条件に満たないながらも世界レベルの革新的なアイデアを持つ学生たちは、英国にとどまってプロジェクトを発展させることができるようになります。

経済成長を促進する

若い企業家や中小企業の取締役たちにも、チャンスが与えられます。卒業後に、英国内で5万ポンドを投資できる場合は、英国に滞在する許可が下ります。

自立を促す

英国に滞在中の学生と就労移民は、自立して暮らしていくための十分な資金があることを証明する必要がありますが、この提示金額が、2008年以降初めて、上乗せされることになります。

不正を取り締まる

学位以下のコースで就学中の留学生の就業時間を、コース自体の3分の1に制限することで、英国に来る学生たちが学業に専念できるよう方向づけます。また、同レベルのコースで就学できる期間を、最長5年間と定めます。

グリーン移民担当閣外相は、この変革に関して次のように述べています。

「これまで通り、最も優秀な留学生たちを英国に誘致していくことは極めて重要ですが、誰が入国の許可を得て、どれだけの期間滞在するかについてを、さらに絞り込んでいく必要があります。

過去、学業ではなく就業を目的とする留学生が多く入国し過ぎたという経緯があります。こういった不正は、払拭されなければなりません。我々は新しいルールの適用によって、移民制度を英国の益となるよう、変えていきます」

移民削減政策によってますます狭き門となるビザ獲得への道。しかし、確固たる目的を持ち、心から渡英・在英を望む人たちにとっては、またとないチャンスとも言えます。準備不足でせっかくの機会をふいにすることがないよう、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。

 

持続可能な選り抜き移民制度

キャメロン政権に移行して以来、政府は厳しい移民削減政策を敢行しており、欧州経済領域(EEA)国の出身でない私たち日本人は、その政策に多大な影響を受けています。

そして先月2日には、ダミアン・グリーン移民担当閣外相が、新たに「持続可能な選り抜き移民制度」を構築していくことで、最も優秀な人材だけが移民として英国に受け入れられるよう、今後も移民削減政策を推し進めていくと改めて明言しました。

同相はこの席で、移民関連の討論がさらに盛り上がりを見せることを望んでいるとともに、移民制度がどういった形でなら英国の国益となり得るのか、といった議題について、世論がますます形成されていくべきだとしました。

さらに、英国が必要としない移民の流入を制限すると同時に、英国が望む優秀な人材を引き付けるため、彼らにさらなる選択肢を用意できるよう改革を進めていくとし、次のように話しました。

「我々は、適切な数の移民を受け入れていくということだけでなく、どんな人々が入国してくるのかを常に把握していなければなりません。これは、英国で生活することで自らの益を得る移民たちについてだけでなく、英国の国益となる移民についても言えることです。

我々は、移民数を削減した上で、今後もこの数をさらに縮小していくことが可能なシステムの基礎を構築しました。移民政策を、英国のためになるものへと変えるときが来たのです」

政府は現在、移民の年間総数を10万人単位から1万人単位に減らすための政策を推し進めています。最近発表された四半期の統計では、EEA諸国以外からの労働者と学生らに対しとった削減政策の結果が、既に出ているとされます。

そして今後まもなく、扶養家族に関するビザにも変更を加えるほか、短期滞在者と永住者の明確な差別化を図る目的で、定住権についての改革も行うとしています。

さらに、学生ビザの悪用を完全に払拭する方針であるほか、高度技能移民の年間総数についても再検討中であるとのこと。また、この政策を長期的に推し進めていくとともに、現在の「ポイント・ベース制」は、今後、英国への「貢献度ベース制」に改められるべきだとしました。

こういった新たな改革は既に始まっています。既に存在する、エンターテイナー、研修生、リサーチャーなど向けのルートと同様に、企業家、投資家、類まれな才能を持つ人材向けには、さらに選択的なルートが考案されています。

また同相は、海外からの留学生向けに、新たなルートを開設することも認めています。このルートは、在学中に革新的な活動を行い、卒業後もその活動を続けることでビジネスを展開していきたいと願う学生たちのためのものです。このほかにも、世界トップクラスのビジネス・パーソンを英国へと誘致するため、短期の就業者及び企業家についても同様の改革を実施するとしています。

移民削減政策によってますます狭き門となる渡英への道。しかし、確固たる目的を持ち、心から渡英を望む人たちにとっては、またとないチャンスとも言えます。準備不足や理解不足でせっかくの機会をふいにすることがないよう、申請手続きは専門家と二人三脚で、着実に進めることをお勧めします。

 
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