ニュースダイジェストの制作業務
Wed, 10 December 2025

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苦学生はつらいわ from France

本誌1072号(11月23日発行) 大学生イコール貧乏というのは万国共通、今も昔も変わらぬならい。読者の中にも親からの仕送りだけでは足りなくて、家庭教師や喫茶店のウエイトレスなどのアルバイトでしのいだ、なんてウン十年前の懐かしい思い出がよぎったOGや、現在も講義の 後はすぐさまバイト先に直行なんていう現役 生がいらっしゃるのではないだろうか。いかに学費の安いフランスとて、それは例外では ないが、なんと、生活の苦しくなった女子大 生の一部が学費や生活費を稼ぐために風俗業 に従事し、その数が年々増えているというショッ キングな事実がこのほど明らかになった。

南仏学生会(Syndicat SUD-Etudiant)の 調べによれば、全大学生のうち約22.5万人が 生活費に窮している上、約4万人が風俗業を 生活の糧としているというのだ。その多くは バーのホステスなどが主流だが、インター ネットを通してマッサージの仕事を請け負っ たり、中には街に出て売春行為までやってし まう女子大生までいるという。

この問題の背景に横たわるのは、近年のイ ンフレによる急激な物価や家賃の上昇と、そ れにも関わらず、何年間も据え置かれたまま の奨学金。ある心理学専攻の21歳の女子大生 は、限られた時間でのファストフード店や飲 食業でのアルバイト代では学費や家賃を払い 続けられず、学生専用の求人掲示板で見つけ た「下着姿で掃除をする仕事」をやっていたと いう。

その上、一度は足を踏み入れるのを余儀な くされたこの世界も、必要なくなった時点で めでたく「卒業」できればいいが、インター ネットとウェブカムを利用したプライベー ト・ストリップで稼いでいた学生のように、 「嘘のように簡単にお金が手に入るので、生活 費のためにしばらく続けていたが、その後な かなか足を洗うことが出来ず、精神疾患にな り、入院してしまった」なんてケースもある。

同じような問題がみられるポーランドでは、 売春を意味するプロスティチュートをもじっ た「ユニベルスティテュート」という言葉が生 まれつつあるようだが、こんな援助交際みた いな現象がフランスで当たり前にならないこ とを願いたい

「Figaro」紙 “La prostitution gagne les bancs de la fac”他



 

にっちもさっちも行かないアブラモビッチ from UK

英国人の皆様、おめでとーございまーす!! 世界史上最高額の離婚費用を支払うことになった英国在住のロシア人大富豪、ローマン・アブラモビッチ(40)のことである。16年連れ添った妻イリーナさん(39)に、ロシアや欧州各国にある豪邸から自家用ジェット機、豪華ヨットなど総計60億ポンド(約1兆3000億円)相当もの資産を譲渡するというニュースが、世界中を駆け巡ったのだ。

アブラモビッチ氏は世界長者番付で11位、英国内に限ると第2位というまさに正真正銘の大富豪。そして何よりも英国では、サッカーのプレミア・リーグで頂点を争う強豪クラブ、チェルシーを買収したオーナーとして認知されている。

ところがこの男、英国のサッカー・ファンの間ではあまり評判が芳しくない。まずは金にものを言わせて、地元のファンが大切に育ててきたサッカー・クラブを強引に乗っ取ったというイメージがあるのが1つ。次にサッカーに関しては全くのド素人であるにも関わらず、選手の起用法など現場の方針にうるさく口を出すことで有名で、ジョゼ・モウリーニョ監督とはしょっちゅういさかいを起こしている。さらにはネクタイを締めずに、ヨレヨレのYシャツを着ながらヘナヘナとニヤける、あの一見ナメた外見が英国生まれの硬派なフーリガンたちの気に障るのであろう。

アブラモビッチ氏はパリで25歳のロシア人モデル、ダリア・ズコワさんとの密会が報じられた直後の今月13日に、イリーナ夫人との離婚を発表。これまで、じくじたる思いを抱えていた英国人たちが、トラブルの予感いっぱいの離婚劇の行方を固唾を飲んで見守っていた矢先に発表されたのが、このウルトラ級の金額であったわけである。

何でも、かつてスチュワーデスとして働いていたイリーナさんと出会った当時のアブラモビッチ氏は、一文なしであったそうな。そんな過去の負い目もあってか、アブラモビッチ氏の全資産の実に半分が離婚費用となって消えることになった。

こんなスキャンダル、野次ることでは世界一のフーリガンたちが放っておくわけがない。スタジアムに「60億ポンド」の合唱がこだまする日が、しばらく続きそうだ。

「Daily Express」紙
£ 6 Billiion That's the REAL cost of divorce for Abramovich



 

W杯効果で出産ラッシュ? from Germany

ドイツ中を感動の渦に巻き込んだ昨年のサッカーW杯。「夏のメルヘン」のあの余韻を今だ引きずっている人は、もうさすがにいないと思うけれど、あれからそろそろ9カ月、国内にちょっとしたベビーブームが到来している。そう、あの熱い夏の一夜に生を授かった、まさに「W杯ベビー」たちの誕生だ。マスコミ各紙によれば、ドイツでは今月から来月にかけ、出産ラッシュの波が押し寄せるという。

ヘッセン州に住むジェニファーさんと恋人のトビアスさんは昨年6月24日、ドイツ対スウェーデン戦を一緒に観戦した。忘れもしない、強豪国を相手に、それまでノーゴールで今一乗り切れていなかったポドルスキ選手が一挙2得点をたたき出し、ドイツがベスト8一番乗りを決めた一戦だ。その後、興奮冷めやらぬ2人は、その勢いのままベッドに直行、その夜ジェニファーさんは赤ちゃんを身ごもった。専門家によれば、「試合観戦で熱狂的に応援をしたりして気分が盛り上がっているときは、ホルモンの影響で妊娠しやすい状態になる」と言うから、この2人のパターンはまさにそんな感じだ。

各地の産婦人科や大学病院はといえば、ここ1カ月ほど、出産を間近に控えた妊婦たちの診察でスケジュールはいっぱい。出産準備コースなどへの申込みも殺到し、すでに満員で予約を締め切ったところもあるという。中にはこの時期、通常よりも出生率が15%も高くなると予想する病院もあるというから、少子化対策が急務となっているここドイツで、まさにこれは思わぬW杯効果といったところか。実際にどれほどの「W杯ベビー」が生まれたかは、今後の統計で明らかになるというから注目大だ。

それにしても、ちらっと気になるのが「W杯ベビー」たちの名前。先頃発表された「昨年最も人気のあった子どもの名前ランキング」では、前年とあまり変わり映えもなく男の子では「レオン」や「アレキサンダー」などが上位入りしてたけど、「W杯ベビー」が男の子だったら、やっぱり人気の代表選手たちにあやかって「ルーカス」とか「イェンス」なんて名前が付いたりするのかなあ。「ユルゲン」なんてちょっと古風なのも、もしや復活?

「Bild」紙ほか
Baby-Boom nach Fußball-WM



 

雑誌「Bravo」が50周年 from Germany

ポップスター 表紙には日本人女性も顔負けの自慢の黒髪をなびかせ、アイシャドウばっちりの瞳でスマイルを決めるボーイズ・バンド 「Tokio Hotel」のボーカル、ビルと、今話題のオーディション番組「ポップスター」に演する10代の女の子たちがずらり。人気連載「Dr.ゾンマー」のテーマは「彼氏がコンドームを使ってくれない!」。ここまで言えばもうおわかりでしょう。そう、人気アイドル雑誌「Bravo」だ。ティーンエージャーの認知度ナンバー1のこの雑誌が今年、創刊50周年を迎えた。先頃には民放TVが特番を組み、ドイツの若者向け雑誌の先駆けとなった同誌の華麗なる歴史を振り返った。

「Bravo」が誕生したのは1956年8月26日。「Die Zeitschrift für Film und Fernsehen(映画とテレビの雑誌)」というお固いサブタイトルつきで、キオスクに並んだのが始まりだ。記念すべき創刊号の表紙を飾ったのは、マリリン・モンロー。50ドイツ・ペニヒ也。その後も、スカーフで決めたエルビスや長髪がりりしいジョン・トラボルタ、マライアからブリトニーまで、時代を象徴するアイドルたちが続々登場、流行のファッション情報や等身大ポスターのおまけもたっぷりついて、あっという間にティーン必読の一冊となった。ビートルズ全盛期の1966年にハンブルク、エッセン、ミュンヘンの3カ所で行われた「ドイツ電撃ツアー」の仕掛け役となったのも、何を隠そう、この雑誌なのだ。

「Bravoの50年」と題して放送された特別番組では、今をときめく人気バンド「ローゼンシュトルツ」や「ジルバーモント」(メンバーの顔が浮かばないあなたはBravoをチェック!)らが往年アイドルのヒット曲をカバーアレンジ。また、女性ファンの黄色い声なしにはもはや登場できない(?)「Tokio Hotel 」のメンバーは、表紙登場回数が28回と最多を誇る大御所ネーナとトークに花を咲かせ、会場を盛り上げた。

50年後、創刊100周年を迎える頃には、どんなスターが表紙を飾っているだろう。 「Tokio Hotel」は、黒髪にうっすら白いものが混じっても歌い続けているだろうか…。 Bravoよ、永遠なれ。

「Spiegel」ほか Jugendzeitschrift feiert mit Stars von gestern und heute



 

旅行者症候群にご用心 from France

パリ 世界で最もオシャレな街といえばなんたって、パリ!「芸術の都」「華の都」などパリを形容する言葉は様々だけど、「美」が溢れるこの街に憧れ、やって来る旅人は今も昔も引きをきらない。日本のガイドブックや女性誌を開けば、そこには素敵なパリジャン、パリジェンヌの姿とまるで映画のような風景が手招きしている。となれば、日本人が海を渡ってやってくるのも納得できるというもの。

でもちょっと待った。来てみたはいいが、思い描いていたパリと実際のギャップにショックを受け、「旅行者症候群」という精神科医の治療を必要とする症状にかかった日本人観光客の事例がいくつも報告されているのだ。

在仏日本大使館の関係者が処理した具体的なケースには例えば、宿泊先の部屋が盗聴されており、電子レンジが発する電磁波によって自分は攻撃を受けていると訴えたり、自分がルイ14世であると思いこみ、同行の日本人観光客に命令していた観光客がいるという。

ノートルダム寺院近くのオテル・ドュー病院に勤務する精神科医の話では、これらの症状は、想像と余りにもかけ離れた現実に遭遇した時に起こる症状の一つで、フランスに滞在し始めてから3カ月ぐらいで発症するパターンが多いらしい。また患者の3分の1はすぐに回復するが、3分の1の人は一旦回復するものの再発し、残りは精神病になると答えている。

異文化によるショックを和らげるため、高級ホテルの中には、日本人観光客用に浴衣や日本茶などを用意し、日本のホテルのようなサービスを提供しているところもあるという。

確かに、客が王様のように振る舞える日本 と、売ってやるといわんばかりのパリの売り子の態度にギャップを感じるのはもっともだが、 文化も言葉も違う異国の地で「日本」を探すのも無茶な話である。

「郷には入れば郷に従え」とまでは言わないまでも、せっかく訪れた異国の地、日本では味わえない経験も楽しみの一つと考えられるゆとりが生まれれば、旅行もきっと楽しくな ることだろう。

「Le Journal du dimanche」紙 Quand Paris fait déjanter les Japonais



 

アフリカにフランス移民が流入!? from France

2033年の不法滞在者はフランス人−。そんな衝撃の見出しが高級紙「リベラシオン」を飾った。しかも、記事についているのは、なにやら行列をなしている白人の写真と「セネガル大使館の前で行列するフランス人」とのキャプション。これは一体!?と思って読んでみたら、現在公開中の映画「Africa Paradis」(アフリカ・パラダイス)の話だった。日本の某スポーツ新聞のごとくタイトルにだまされて読んでしまった負け惜しみではないが、「な〜んだ、作り話か。ハハハ」と一笑出来ないような内容なのだ。

作品の舞台は2033年のフランス。米国に追いつけとばかりに発案された欧州共同体は崩壊し、失業率は年々悪化するばかり。その間、なんとアフリカは米国並みの発展を遂げ、就職難に辟易したフランス人は連日、職を求めビザを申請しにアフリカ各国の大使館前に行列を作るのだった…。

産業革命以降は、ところかまわず工場を建設し、売れや造れやで一大発展した欧州だが、今や経済的には中国にも追い抜かれそうな始末。各国とも年々上昇するインフレに悩んでおり、企業も重くのしかかる人件費のせいで、少しでもコストの安い東欧に移転が進んでいる。フランスでも政府は失業率を減らすために、フランス人の雇用を促進するものの、企業は安い賃金でも働いてくれる移民を採用するため、職にあぶれたフランス人が至るところにあふれかえっているのはご存知の通り。フランスにいても未来はないと考え、新天地を目指す人も実は徐々に増えていたりするのだ。

ここ数年羽振りの良い企業は全てIT関連企業。少ない出費で大きな金を生み出す、まさに魔法の事業で、インドなどは今や世界一のIT関連事業国家にのしあがった。広大な土地と安い人件費に安い法人税のアフリカ諸国がその内インドに次ぐIT国家となったとき、この映画のようにフランス人は職を求めてアフリカに旅発つことだろう。そして、密入国した挙句に、アフリカから強制送還されるフランス人労働者のニュースが連日報道されるのも決して絵空ごとではなくなる日が来るのかもしれない。

「リベラシオン」紙ほか
En 2033: Les sans papiers sont les français



 

ビン・ラディンを探せ! from UK

米国をはじめ各国政府が血眼になって行 方を追う、テロ組織アルカイダの黒幕 オサマ・ビン・ラディン。アフガニスタンの山 岳地帯に潜伏中と伝えられていたが、どうやら最新情報によれば、ロンドンのど真ん中、バッキンガム宮殿に潜入して警備兵に身をやつし、バグパイプに見せかけた銃で女王を狙っているらしい。

ご心配なく、もちろんこれは架空の話。10月に英国で出版された「Where's Bin Laden?(ビン・ラディンを探せ!)」の中の1ページだ。無数の群衆が描き込まれたイラストの中から謎の青年ウォーリーを探し出す「ウォーリーを探せ!」シリーズは世界中で大人気を博したが、このパロディ本ではなんとビン・ラディンが主人公。ビン・ラディンはロンドン以外にもパリのエッフェル塔、アムステルダムの飾り窓地帯、シドニーのハーバー・ブリッジといった世界各国の名所で神出鬼没ぶりを発揮している。

しかし、この本、実際にアルカイダのテロの標的となったロンドンやニューヨークを舞台にしたページを含んでいるため、「何でも金儲けの対象にしていいのか」と批判する声もある。先に出版されたオーストラリアでは、相次ぐ抗議を受けて大手デパートの本棚からその姿を消してしまった。01年にニューヨークで発生した9・11同時多発テロの犠牲者になった人々の家族は、「怒るというよりも悲しくなります」と語る。

だが英国での出版元であるニュー・ホランド出版は「クリスマスにぴったりの楽しい本です。なにしろ英国人にはヒトラーさえも風刺するというユーモア精神がありますからね」と余裕のコメント。「皮肉としてみてくれるので、反応は上々ですよ」とのことだ。

世界に名だたる各国の諜報機関が巨額の資金と人材を投入し、それでも見つけられないビン・ラディン。その捜索メンバーにこれからはイラストにじっと目を凝らす子供も加わることになる。紙の上だけとはいえ、あなたも世界で最も「WANTED!」な人物の第1発見者になってみる!?

「METRO」紙ほか “Where's Bin Laden?”



 

壁に耳あり、電話に罠あり from UK

会議に演説に国会答弁と激務の日々を過ごす政治家にとって、気の置けない同僚との会話はちょっとした息抜きの時間に違いない。さもなくばメディアに向けて爆発しそうな暴言を防ぐガス抜きか。だがそこに罠が仕掛けられていたのであった…。
 「プレスコット副首相(当時)はいない方がマシ」、有力政治家のそんな暴言がしっかり録音されてしまったのだ。それも、ものまね芸人がゴードン・ブラウン財務相の声音をまねてかけた電話で、というから始末が悪い。

この罠に見事に引っ掛かったのが、ブレア内閣の古参メンバーであるマーガレット・ベケット外相。長きにわたって政権を支えてきた同僚の喋り方くらいもちろん知り尽くしている…はずだったが、電話線の向こう側の人物がまったくの別人だったなんて、まさか思いもよらなかったようだ。

「偽ブラウン財務相」の正体はものまねタレントのロリー・ブレムナー。2年前に録音されたテープをこの度「サンデー・タイムズ」紙が入手、紙面を飾ったというわけである。
時は2005年の総選挙直前、ブレムナーは当時の環境・食料・農業大臣を務めていたベケットの番号をダイヤルした。彼の第一声は「やあマーガレット! ゴードンだよ」。「あらゴードン、どうしたの?」という返答から始まった会話は、選挙後の内閣改造の話題にまで及んだ。

爆弾発言が次々に飛び出したのはその後だ。バイヤー元閣僚の再入閣について「彼はちょっと危ないわよ」、労働党の選挙運動担当だったミルバーンを「仕事をうまくやっているとは言えないわね」と斬りまくる。しかしブレア首相の腹心、プレスコット副首相への一撃はさらに強烈。「彼がいなければ、物事がもっと効率的になると思うけど」ときたものである。

この一件で怒り心頭のベケット、「そんな会話に覚えはないし、仮に事実だとしても、ひどいプライバシーの侵害です」といった内容のコメントを出したが、今ごろは今後のための防御策を張り巡らせていることだろう。ひょっとしたら閣僚ごとに合言葉を決めていたりして。例えば「ハロー、トニーだよ」「あらトニー、ところで、おとといの私のスーツの色を覚えてる?」「…(ガチャン)」なんて風に。

「The Sunday Times」紙
Beckett duped by "Chancellor" Rory Bremner



 

美術館に巨大滑り台が登場 from UK

テート・モダンに出現した「アート」な滑り台 テート・モダンが、なんと遊園地に?! ロンドンが世界に誇る現代美術館にこのたび、思わず子供心を掻き立てられるオブジェが出現した。話題となっているこのオブジェは、建物の5階から地上までを繋ぐ巨大ならせん型のスライダー。人々は歓声とともにパイプの中を猛スピードで滑っていく。しかし誤解なきように。ここはテート・モダンで、当然ながら滑り台はアートなのだ。

このインスタレーションは、ドイツ出身の芸術家、カールステン・フラー氏(44)の作品。フランスの文芸批評家、ロジェ・カイヨワの言葉である「さもなくば明快すぎるだろう精神における、官能的なパニック」を体現しているという滑り台は、もちろん一般の鑑賞者も実際に体験可能だ。摩擦防止用の大型バッグの中に両足を揃えて横たわり、地上55メートルの高さから12秒かけて半透明のチューブ内を滑り降りる。「喜びと狂気の間の精神状態を体験するための装置です」とフラー氏は豪語する。

移動遊園地のアトラクションか、はたまた緊急脱出路か……といった声も聞こえてきそうだが、テート・モダンの館長を務めるニコラス・セロータ卿は「身体性、そして重力というものに気付かせてくれる作品」と力説。実際に体験した感想は「滑り始めた瞬間、恐怖はかき消された。こいつは君を完全に飲み込むんだ、そう、他のあらゆる偉大な芸術作品と同じようにね」だそうだ。

だが、一般公開前に招待された批評家やジャーナリストの中には「これは事故が起きるのを待っているようなものだ」と眉をしかめる面々も。それもそのはず、栄えある最初の鑑賞者となった彼ら、出口から飛び出してきた時にはアザや打ち身、摩擦による火傷で散々な状態。そんな反省を受けて、急降下地点には急きょ、ぶ厚いマットが設置された。おかげで一般客向けの安全性は向上したが、批評家たちはいい実験台となってしまったともいえる。

インスタレーションは来年4月まで展示の予定。万が一、事故が起こって使用中止……なんて事態になってしまう前に、ぜひ一度お試しあれ?

「Times」紙 “Art-or accident waiting to happen" ほか



 

サルコに直撃! from France

「メトロ」紙によれば、フランス国民のおよそ60%は、テレビの政治討論番組に参加してみたいと思っているそうだ。そんな、国民の願望を知ってのことかどうかはわからないが、民放局のTF1に市民参加型の生放送の政治討論番組が誕生した。その名もズバリ、「J'ai une question a vous poser(あなたに質問したいことがあります)」。
 パトリック・ポアーブル=ダボールが司会進行役を務めるこの番組は、毎回注目の政治家を招き、スタジオに招待された市民100人の疑問に答えてもらうというスタイル。初回は、今をときめく大統領選最有力候補のニコラ・サルコジ内相(通称サルコ)が登場した。
 弁舌の巧みさにかけては定評のあるサルコジ氏だけあって、大統領になったあかつきには誰を首相にするかという素朴な疑問や失業者対策、物価問題などに関する定番クエスチョンは難なくクリアし、レベル1を突破した。
 レベルアップして、人種と同性愛にテーマが移ったところ、ホモセクシャルや外国籍の参加者がサルコジ氏を糾弾し、一時はスタジオのムードも加熱気味に。「サルコの形勢危うし!」と思ったら(この局面はレベル3というところだろうか)そこはどっこい、「私を差別者呼ばわりすることは許さない。私は内相として職務を全うしており、何よりもこれまで内務省がこの国のムスリムに対して様々な計らいを行ってきた」と持ち前の冷静さで相手をねじぶせて、これもまたまたクリア。なかなかやるなサルコ。さらに回答の随所で、賛同の拍手も起こり、サルコジ圧勝といった感じで番組はゲームオーバー。
 ライバル、ロワイヤル女史への盗聴疑惑や息子のバイク盗難事件で内相の職権乱用を糾弾されるなど、支持率は明らかに低下傾向にあったサルコジ氏。しかし、今回の番組出演でみせた対応ぶりに各メディアは高い評価を与え、名誉挽回となった形だ。
 「J'ai une question a vous poser」の次回の出演者は、まさに同じ時の人、ロワイヤル女史。サルコ同様、難なく100人斬りをこなし、一気に人気を抜き返せるか。いえいえ、市民もパワーアップして政治家をお待ちしております。

「Le Figaro」紙ほか
Le grand oral de Sarkozy



 
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