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Tue, 17 March 2026

LISTING イベント情報

癒しのアイルランドを訪ねて

癒しのアイルランド

ケルト文化の影響から神話や妖精などの不思議な話がいまだに語り継がれているアイルランドには、聖なる「パワー・スポット」が数多く存在します。今回は、3月17日に迎えるアイルランド最大の祭日セント・パトリック・デーを記念して、同国に点在する数多くの神秘の場所の中からお勧めのスポットをご紹介します。エメラルドの国、アイルランドで心のエステをしてみませんか。(池田マキ)

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アイルランドの地図

スピリチュアル度満点
神秘の国アイルランド

北大西洋上でまるで英国に寄り添うように位置するアイルランドは、人口400万人ほどの小さな国。一歩郊外に出れば緑が延々と続くのどかな農業王国です。近年は好景気に沸き、人々の生活の都市化も進んでいますが、現在でも国中の至るところに神聖なパワーの宿る「パワー・スポット」が手付かずの状態で点在しています。

5世紀頃にキリスト教への改宗が行われる前のアイルランドでは、ケルト人の土着宗教であるドルイド教の影響から、アイルランド神話にあるような太陽の神や大地の神などのケルトの神々や女神たち、そして自然の中に存在する妖精などの精霊などを自然崇拝していました。そのため、ケルト式礼拝などに使われた「聖なる礼拝のためのスポット」は、現在でも「パワー・スポット」として自然の中に残っていることが多いのです。

またキリスト教への改宗が行われた際に、多くのアイルランド人たちが自分たちの本来の自然礼拝を継続するために、あえて元々のドルイド式の聖なるスポットを、キリスト教の聖なるス ポットに形式的に置き換えた場合も多いということです。つまり、古代からの聖なるスポットが現在はキリスト教の教会などの宗教的地点となって親しまれていることもあるのです。

こうした聖なる「パワー・スポット」は、アイルランド政府が把握しているだけでも国内に5000以上点在すると言われており、今なおその場所にエネルギーを秘めています。

ダブリン・ツーリスト・インフォメーション
St Andrew's Church, Suffolk Street,
Dublin 2
Tel: +353 1 605 7700
http://www.discoverireland.ie/
ヘリテージ・オブ・アイルランド
Brúna Boinne Vistor Centre Donore,
Co Meath
Tel: +353 41 988 0300
http://www.heritageireland.ie/

1 古代アイルランドの政治の中心地
タラの丘 / Hill of Tara

セント・パトリックの銅像
タラの丘で布教を行ったと伝えられる、
アイルランドの守護神セント・パトリックの銅像

アイルランド最強のパワー・スポットとして知られている丘。古代アイルランドの時代には、このタラの丘は霊的な聖地、そして政治の中心地とされていた。アイルランド王の決定がこのタラの丘で行われていたと言われ、将来のアイルランド王になるべき人物がここに集められ、丘にそびえる「運命の石」を触った際に石が震えた人物をアイルランド王に選定したと言われています。

また、ここはその聖なるエネルギーから、妖精が姿を現すスポットとしても知られていて、この丘の近くにある「聖パトリックの泉(Holy Well)」の水は、聖なるパワーが宿った聖水として有名になっています。

5 月中旬〜9月中旬までの観光時期には、敷地内のビジター・センターがオープン。それ以外の時期でも敷地内の見学は自由なので、いつでも気軽に訪れることができます。丘の上からは、アイルランド全土の4分の3を見渡せるので、スピリチュアルに興味のない人でも、この絶景を見るために足を運ぶ価値大ありです。

聖なる泉聖なる泉聖なる泉

「聖なる泉」と書かれた看板(中央写真) の側では、水が湧き出ている(右)

ダブリンから送迎ツアー有り。
詳しくは、ダブリンのツーリスト・インフォメーションまで。
車で: ダブリンから約40分。ダブリンからN3でNavanに向かって北上し、Dunshaughlinという町を過ぎた後に左折。

2 神々とつながる聖なる儀式の場
巨人のテーブル / Poulnabrone Dolmen

巨人のテーブル約4000〜5000年前の新石器時代の古墳には、ドルメンと呼ばれる「石のテーブル」が数多く残されている。アイルランド国内には、300以上のドルメンが存在すると言われていて、日本の神社にある鳥居のように、スピリチュアルな世界への扉を意味しているそう。数多いアイルランドのドルメンの中でも、このアイルランド西部のBurrenにあるものは巨人のテーブルという愛称で親しまれていて、天と繋がるための最高のスポットとしても知られています。

車で:ダブリンからまずはN6でGalwayを目指し、
そこからN67でBallyvaughanへ向かう。
Ballyvaughanに着いたら、Carranを目指しR480を走っていると右手に見えてくる。ダブリンからは4時間。
Galwayからは、1時間ほど。

3 ユネスコの世界遺産にも登録
ニューグレンジ / Newgrange

アイルランドだけでなく、ヨーロッパの重要な遺跡としても挙げられるニューグレンジは、ユネスコの世界遺産にも登録されている巨大古墳です。

紀元前3200年に作られたというこの遺跡は、1年に1度冬至の日にだけ、入口から入り込んだ太陽光が曲がりくねった19メートルの通路を通り抜け、一番奥の墓室にまで射し込むように設計された不思議な建造物です。また、ニューグレンジは単なる死者の埋葬地ではなく、太陽の神、月の女神、豊穣の女神などに祈りを捧げるための聖なる儀式の場だったとも言われています。

現在では「Bruna Boinne Vistor Centre」が運営を管理していて、ガイド付きのツアーが楽しめます。このビジター・センターでは、ニューグレンジのみならず、「カレンダー・ストーン」という月のサイクルを記した石の遺跡のあるナウス(Knowth)の見学もできるので1日時間を取ってゆっくりと楽しみたいスポットです。

ニューグレンジニューグレンジニューグレンジ

ダブリンから送迎ツアー有り。
詳しくは、ダブリンのツーリスト・インフォメーションまで。
車で: ダブリンからN2で北上し、約40分ほど。ダブリン北のDroghedaという町から南東に向かってすぐ。

4 子宝に恵まれる石
ラビー・ストーン / Labby Stone

ラビー・ストーン有名なアイルランド神話であるダームットとグローニャの物語に登場するのがこの巨大なドルメンの石。神話ではこのドルメンの石の下で眠ったダームットとグローニャが子供を授かったということからも、このラビー・ストーンは子宝に恵まれる聖なるスポットとしても知られています。ダームットとグローニャはこの石の下で眠ったそうですが、現在ではこの石に触ることによって赤ちゃんを授かるパワーがあると言われています。

車で: ダブリンから車N4でSligo方面に北上し約2時間進み、その後Castlebaldwinという村に着いたら、Cromleach Lodgeというホテルを目指して、案内に沿って田舎道を進む。ホテル駐車場に着いたら車を停めて、ハイキング・コースを進みます。

5 強力なパワー・スポットの泉
キランの泉 / St. Kieran's Well

キランの泉キランの泉 聖なる泉と呼ばれるパワー・スポットはアイルランド中に数知れずあるけれど、最もパワーが強いのはこの聖キランの泉に違いない。小さな農村の田舎道沿いに突然出てくるこの泉は、現在はキリスト教の泉とされていますが、昔はドルイド教の聖なる儀式が行われたスポットとのこと。敷地内には、頭痛、歯痛、腰痛が癒されるという数種類の湧き水があり、そのパワーは8月の第1日曜日に最も強くなると言われています。

ダブリンからは、バスでKellsまで行き、
そこからタクシーで約20分。
車で: ダブリンからN3で北上し、Kellsへ向かう。KellsからR163でOldcastle方面へ。田舎道を走りCarnarossへ。そこからは小さな案内板に従って進む。ダブリンから約1時間半。

6 七不思議の奇跡の村
フォー・ ビレッジ / Fore Village

フォー・ ビレッジフォー・ ビレッジ時代から取り残されたようなForeという村の中にたたずむパワー・スポット。ほとんどが森の中に点在していますが、7世紀頃にキリスト教の聖人によって作られた教会の周辺には儀式のための聖なるスポットがあります。またここには「フォーの七不思議」と呼ばれている沸騰しない水や燃えない木などの奇跡の言い伝えが残っており、現在でも多くの人々が祈りを捧げにやってきます。木に色々な物が結び付けられているのは、アイルランドでは神木崇拝の文化の影響で、こうした「聖なる木」に白い布や紙などを結び付けて祈りを捧げるのです。

車で: ダブリンからN4でSligo方面に北上。
Mullingarに着いたらR394でFore Monastic Site方面に進む。
ダブリンから車で約1時間半。

エイデン・ストーリー

神秘の国アイルランドには、サイキックとして親しまれている占い師がたくさんいます。インタビューに応えて頂いたエイデン・ストーリーさんは、エンジェル・セラピー・プラクティショナーとして知られていて、アイルランドのみならず米国などでも人気があるサイキックです。今回は、エイデンさんにエンジェルや妖精についてお聞きしました。

Aidan Storey(エイデン・ストーリー)
ダブリン在住のサイキック(占い師)、エンジェル・セラピー・プラクティショナー。アイルランドのみならず、英国や米国にも根強いファンを持つ人気のサイキックで、常に3カ月先まで予約で一杯。勇気付けられるような優しい鑑定で、エンジェルや守護霊からのメッセージを伝えつつ、未来の方向性を示してくれます。
メール: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
www.aidanstorey.com

エイデンさんは、天使や妖精の世界を見ることができるそうですが、どのような感じなのでしょうか。

天使の世界の場合、もちろん目でも見えますが、天使からの声が聞こえることが多いと思います。もちろん、美しい愛に満ちた天使の世界を見せてくれることもありますが、視覚的に「見る」というよりもメッセージで伝えてくれることが一般的です。反対に妖精たちの世界は、とても視覚的だといえます。まるでおとぎの世界のような感じですね。

そういった世界が実際にどのように見えるのか、具体的に教えていただけますか。

私がよく目にするのは、まるで蛍のように光り輝く小さな生き物が、庭などの緑の中に飛び交っている様子です。妖精の存在などには興味のない私の姉が、私の家に遊びに来た際に夕暮れの庭先を眺めながら不思議そうに言ったのです。「庭に小さい灯があちこちにポツポツと見えるような気がするんだけれど、私の目がおかしいのかしら」と。私が笑いながら「それは妖精たちだよ」というと、姉はとても信じられないといった顔をしていましたが(笑)。そんな風に、妖精たちはよく姿を現します。妖精たちが庭に現れると、まるでそこの空気だけ周りと違う空間かのように、その辺りの空気が澄んで透明感があるように見えます。そして彼らのいたずらっぽい笑い声なども聞こえることがあります。

妖精を見るためのスポットなどはありますか。

自然さえあれば、妖精を見ることができます。部屋の中に飾った植木鉢にも妖精はいるのです。でも妖精が見えやすいスポットというのはあります。例えば、パワー・スポットなどの聖なる場所では、妖精も見えやすいですね。ダブリンの近くならタラの丘など、朝早くや夕暮れ時などに現れやすいようです。

妖精を見るための秘訣などはありますか。

妖精は自然の精霊ですから、オープン・マインドで心の中で自然に語りかけたり、植物の手入れをしたりしていると、ある日突然妖精が視界に入ってくることがあるでしょう。キラキラしたものが飛んでいたり、灯のようなものが飛んでいるように感じるのなら、それが妖精だと思っていいでしょう。

エイデンさんに鑑定してもらいました!
体験者: Iさん
エイデンさんに観てもらったのは、約10カ月ほど前です。主に仕事のこと、恋愛のことなどを観てもらったのですが、その時には、言われたことで「当たってる!」とピンとくることは全くありませんでした。しかしその翌日に、エイデンに言われた通りの仕事のオファーが舞い込んできたのです。この仕事は自分の専門とは異なる分野の仕事で、自分では全く予測できないような内容だったので驚きでした。仕事面では、その後も何もかもといっても過言ではないほど、エイデンに言われた通りになっています。恋愛面では当分動きはなくて、2007年の4月と8月に何かがあると言われましたが、こればかりはまだ未来のことなので……。どんなことがあるのか楽しみです。

手が全てを語っている
エスナ・サンプル
Eithne Semple

話をするよりも手を観ただけですぐに全てがわかるというのは、今年80歳になるエスナおばあちゃん。人の手相からその死までも見通してしまう彼女は、一時期は手相を鑑定するのが辛くて止めていた時期もあったそう。でも、病気を事前に察知して予防のためのアドバイスを与えることもできるということに気付き、それからはまた手相を観るようになったのだとか。とにかく、驚くほど当たります!

パトリシア・マーフィ伝統的なサイキック
パトリシア・マーフィ
Patricia Murphy

ダブリンの街中に店を構えるサイキックの中でも、特にお勧めなのがパトリシアさん。アイルランドの伝統的サイキックの彼女は、手相、タロットカードなど様々な鑑定に熟練していて、希望の鑑定法を選んで観てもらえる。何も話さなくて、いきなり彼女が的確に要点を伝えてくれるという方式なので、鑑定時間は短くても満足すること間違いなし。

おすすめホテル

Devondell B&Bアイリッシュらしさ満点!
Devondell B&B

Galwayの街中から徒歩圏にあるこのB&Bは、チャーミングな女主人、バーナが作る美味しくヘルシーな朝食がご自慢。毎年彼女の宿を訪れるというファンが世界中にいるほどの人気を誇っている。昔ながらのアイリッシュ・ホスピタリティを満喫するには最適の宿。

47 Devon Park, Salthill, Co. Galway
Tel: +353 91 528 306
*春〜晩秋まで営業
www.iol.ie/%7Edevondel

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パワースポット至近の料理宿
The Station House Hotel

The Station House Hotel

タラの丘に程近いこのホテルは、もともとあった鉄道の駅を改造して作られた家族経営のフレンドリーな宿。田舎っぽくて温かいホスピタリティと美味しい料理に心が癒されるよう。可愛らしい庭園もあるロマンティックな環境なので、カップルや女性におすすめ。

Kilmessan, Co. Meath
Tel: +353 46 902 5239
http://www.stationhousehotel.ie

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Marble Hall B&Bダブリンの定宿に!
Marble Hall B&B

ダブリン市街の住宅地にある宿。ホテルなどのサービスをチェックする機関で働いていたという女主人のシーラが切り盛りしているので、かゆい所に届くサービスが期待できる。部屋数の少 ない小さな宿だけれど、アフタヌーン・ティー、美味しい朝食などリーズナブルに最高のもてなしをエンジョイできる。清潔でとても綺麗な部屋もポイントが高い。

81 Marlborough Road, Donnybrook, Dublin 4
Tel: +353 1 497 7350
*春~晩秋まで営業
homepage.eircom.net/~marblehall

おすすめカフェ・レストラン

Avoca Cafe味もボリュームも満点
Avoca Cafe

アイルランドに昔からある毛織物のお店が始めたカフェ。1号店が出来たのは約10年前のことだけれど、今ではアイルランド国内8カ所に支店を構える人気店に成長した。自然でヘルシー、そ して当たり前だけれど美味しいのが人気の秘密。スイーツもインテリアもとても可愛らしく、特に女性に大人気のカフェです。ダブリン市内、そして郊外にも支店有。

ダブリン市街店: 11-13 Suffolk Street, Dublin 2
Tel: +353 1 677 4215
www.avoca.ie

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アイルランドらしさにこだわる
O'Connell's Restaurant

O'Connell's Restaurant

この店のこだわりは、なんと言ってもアイルランドらしさ。アイルランドの伝統料理に精通したシェフがシンプルな調理法と新鮮な食材を用いて作り出す料理は、ヘルシーでボリューム満点。食材の風味も生きていて本当に美味しい。リーズナブルでカジュアルなのに味は一流店にも負けず劣らず。ぜひお試しを!

Bewleys Hotel Merrion Road, Dublin 4
Tel: +353 1 647 3304
oconnellsrestaurant.com

アイリッシュ・ブレックファストアイリッシュ・ブレックファスト
アイルランドではどこの宿に泊まっても、ものすごいボリュームの朝食がでてくる。フルーツに始まり、シリアル、ヨーグルト、ハム、スモーク・サーモン、そして最後にベーコンや卵などがてんこ盛りになった温かいメイン料理がでてくるのだから、まるでコース料理!普通の胃袋にはなかなか過酷だが、これはもともと農業などの肉体労働の仕事に備え、1日の始まりにしっかり食べる習慣の名残だという。こんな朝食を食べたらランチは不要かも?

*本文は掲載当時のものです。

 

イアン・ダンカン・スミス議員 インタビュー

イアン・ダンカン・スミス議員 インタビュー

これまで約10年間にわたって労働党政権を率いてきたブレア首相が1年以内に辞任する意思を昨年9月に表明して以来、英国の政治情勢が大きく変わろうとしている。後に英国政治史の過渡期と記されるであろうこの時期に本誌との単独インタビューに応じてくれたのが、かつてブレア首相のライバルとして君臨したイアン・ダンカン・スミス元保守党党首。実は日本人の祖先を持つという意外な過去を持つ同議員に、ブレア政権の功罪から保守党の展望、そして日英外交の比較まで国会議事堂内の議員室で話を聞いた。(取材・文: 長野 雅俊、写真: 赤塚 麻衣子)


「ビッグ・ベン」の愛称で知られる時計台と共に、英国議会政治の象徴としてそびえ立つ国会議事堂。ゴシック建築独特の高い屋根と重厚な装飾に彩られた内部で迎えてくれた秘書に連れられエレベーターで上階へと赴くと、議員室に案内された。そこで待っていたのが、部屋の奥にある机の前に立ちながら電話をしていたイアン・ダンカン・スミス議員。まだ話し中にも関わらず、「やあ」と独特のダミ声を張り上げてこちらに手を振ってくれた。会話を終え受話器を置くと、「ニュースダイジェストってどんな新聞なんだ?」「君は英国にずっと住みたいと思うか」などと興味津々に質問を投げ掛けてきたので、元党首にしては随分と気さくなんだな、というのが第一印象。取りとめのない会話が一段落すると、我々には接客用のソファに腰を落ち着けるよう促し、続いて自身も反対側の席に勢いよく座り込む。そして早速インタビューが始まった。


イアン・ダンカン・スミス

一一 ダンカン議員の祖々母が日本人と聞きました。また19世紀に活躍したアイルランドの著名作家ジョージ・バーナード・ショーが祖先だとも。興味深い家系ですね。

祖先については物心ついた時から色々と聞いていました。確かショーという名前の祖々父が、船員として19世紀半ばに英国からタイや中国などのアジア諸国へと旅していたのです。やがて彼が南京と呼ばれる場所に落ち着き、そこで私の祖々母にあたる日本人女性と出会った。祖々父の最初の奥さんは既に亡くなっていて、2度目の結婚でした。

一一 自分に日本人の血が流れているという事実は政治活動に役立ちますか。かつて自分の血筋を例に挙げて多文化主義をアピールしていたようですが。

へえ。そんなことを言った覚えはないですけどね。(過去の新聞記事を見て)本当だ。いや、インタビューを今までの人生の中で何本もやり過ぎていて、1つ1つの発言まで覚えていないので。ただ別に極秘情報ではないので、機会があれば自分のルーツについては思い付くままに色々と話しているのかもしれませんね。

一一 2003年11月に党首の座を降りてからもう3年以上経ちましたが、現在はどのような活動を行っていますか。また典型的な1日のスケジュールを教えてください。

私の現在の政治活動は大きく分けて2つ。まずは社会正義をテーマとした研究を行うシンクタンク「The Centre for Social Justice」の設立者として、同組織を運営していくこと。もう1つは「Social Justice Policy Group」と呼ばれるデービッド・キャメロン現保守党党首が発足させた機構で議長を務めています。こちらは保守党議員としての活動で、英国社会における貧困問題などのテーマを中心に取り組んでいますね。私にとって「典型的な1日」なんて存在しない。週7日にわたって各関係者との会議、街頭演説、国会での討議など激務に追われています。

一一 ダンカン議員は政治活動を行う際、よく「社会正義」という言葉を掲げていますね。数ある政治・社会テーマの中で、社会正義を強調するのはなぜですか。また貧困問題の解決に向けても取り組んでいると仰いましたが、企業活動の促進が主目的であるようなイメージを持つ保守党を率いてきたあなたが言うと、何だか皮肉に聞こえてしまいますね。

まず「上流階級=保守党」「庶民=労働党」といった構図はあくまでもステレオタイプです。次に現代の英国では貧困に関連した諸事情、例えばアルコール中毒、低年齢での妊娠、失業などの問題が山積みなのです。このまま何も手を打たなければあと10年もしないうちにこの国をコントロールすることなどできなくなるでしょう。これらの問題に対処しようとする際、社会正義が論点となります。都市では既に自然発生的な共同体が崩壊してしまっている。一方で政府が大きな権限を振るう福祉国家への需要も減っている。そこで異なる背景を持つ市民たちが皆で一致団結して協力し合うだけの下地、つまり社会正義が必要になるのです。

一一 それではあなたにとって「完璧な世界」とは? 社会正義に溢れた世界でしょうか。

「完璧な世界」ですか。考えたこともないですね。人々がお互いに関わり合える世界でしょうか。すなわち国家と国家が関わり合える世界。そして変化を受け入れることができる社会。完璧に作り上げられても変化がない世界なんて、きっと退屈でしょうからね。後は対立を安易に武力で解決しようとしない社会。言い訳せずに自分の行動に責任を持つ社会。そんな所でしょうか。

イアン・ダンカン・スミス

一一 その他の政策面について話すと、ダンカン議員はユーロ導入に対しての懐疑派として知られています。1990年代に首相だったユーロ導入派のジョン・メージャー保守党党首(当時)と対立する造反組として有名でしたものね。

ええ。今でも考え方は基本的には同じです。超国家なんて要らない。EUに正統性などない。中央集権化にかかるコストも莫大なものです。ユーロ導入が取り沙汰され始めた当時は、皆国家の統一という幻想に酔っていた。でも誤解だったのです。また相手が自党の党首だろうと何だろうと、主張すべき時には主張するのが政治家の任務であり、当然の仕事です。別にメージャー元首相の人格そのものを否定したわけではない。あくまで政策論における対立でしたから。

一一 私の母国の話になりますが、経済政策において日本は今、転換点を迎えています。市場の自由化が進み、規制が取り払われていく一方で、「勝ち組」と「負け組」に分かれてやがては英国のような階級社会に移行しつつあるとの批判も出ています。

部屋
赤いじゅうたんが敷かれた議員室の窓のすぐ下には、 テムズ河が流れていた

だからこそ「社会正義」の概念が必要なのです。まず、貧しい人を救っていくだけの富を得るために自由市場は必要です。でもそれだけでは社会は成り立たない。そこで社会正義という概念が上手く機能することで、市場自由主義から生まれる過当競争という負の部分を和らげることができる。あと英国が階級社会であるとの意見には賛成できないですね。現代の我が国では、才能とかやる気といったもので人は評価されていると信じています。

一一 日本では米国との関係の保ち方についてもよく論じられています。

それは英国でも最もよく取り上げられるテーマです。私の考えでは、英国は米国と良き友人であり続けるべきでしょう。そして彼らの意見を聞き、時には修正を促す必要がある。歴史的、文化的な背景から、英米関係は特別な意味を持っています。これ以上強く深い2国関係はあり得ない。そういった意味では、多くの批判を受けながらも親米的なスタンスを取り続けるブレア首相の考え方は理解できます。

一一 2003年まで保守党党首を務めていらっしゃいましたね。党首に就任されている間は随分とメディアに叩かれて、最後は保守党内の信任投票に敗れた末に辞任という結末を迎えました。当時はどんなお気持ちを抱えて毎日を過ごしていましたか。

そう、私はかつて保守党の党首だったのです。 一番偉かったんです!(笑) 今はもう違いますけどね。当時は私の妻に関するデタラメをメディアに書き立てられました。気持ち良いものではないけれど、慣れてしまうものです。私が重圧に押しつぶされるような人間に見えますか。社会正義を広めて、英国をもっとより良い国にしようという思いが今でも私を駆り立てています。

一一 党首時代、どうして国民や保守党党員の支援を取り付けられなかったのでしょうか。

非常に難しい時期でした。党首就任直後に米国で同時多発テロが勃発し、以後はアフガニスタン、イラク問題に振り回っされぱなし。さらにブレア首相も人気絶頂の頃でした。野党党首が成功するには運も必要です。与党の人気に左右される部分がありますから。そういった意味では、ブレア首相の人気が凋落している今は保守党のチャンスですね。今や誰も政府の言うことを信じないですし。

一一 ブレア首相への支持が低下したのは、多くのメディアが報じているようにイラク政策の失敗が大きな理由だとお考えですか。

イラク問題に限って言えば、ブレア首相に対してある程度は同情を感じます。というのも、彼が決断したイラク制圧という行動自体には問題はなかったと思うから。ただ「大量破壊兵器を保持しているから」という大義が良くなかった。あんな嘘をついていなければ、現在の状況は随分変わっていたと思います。

イアン・ダンカン・スミス

一一 翻って、保守党のキャメロン党首についてはどのような印象をお持ちですか。保守党の先輩から見て、特筆すべき長所や短所などありますか。

彼のことは昔からよく知っています。まず何よりもフレッシュなイメージを持っている。アイデアにも富んでいる。社会正義にも関心を払っている。今のところは言うことはないですね。彼の短所? そんなもの知っていても教えません(笑)。

一一「フレッシュなイメージ」「甘いマスク」などのように、人々が語るキャメロン党首についての好意的な評価のほとんどが、政策とは何の関係もありません。一般市民は彼の政策になんて興味がないのでは、とも思うのですが・・・・・・。

確かに政治の形態が変わってきているのかもしれません。しかし一般市民の政治に対する態度というより、人々が政治家を判断するための情報を十分に与えられていないことにむしろ問題があるのです。例を挙げるならば、今世界で最も成功している保守系の政治家といえばオーストラリアのジョン・ハワード首相でしょう。彼はいつも時代遅れのスーツを着ている。演説に適したよく通る声を持っているわけでもない。はっきり言って、第一印象は及第点以下です。でも彼は既に4期も首相を務めるほど国民に信頼されている。オーストラリアの有権者たちは見てくれだけでなく、政治家がいかに市民の懸念や関心を共有しているかを判断するだけの材料を持っているからです。

一一 最後に1つ質問です。保守党はまた与党の座を奪い返すことができると思いますか。

政治の世界で予想は禁物ですよ。次の総選挙が行われるまでにはまだ時間があり、政治情勢もさらに変化していくと思うので。ただ労働党が弱体化していることは確かなので、少なくとも2005年に行われた総選挙よりは有利に政治活動を進めることができるでしょう。


ダンカン議員
主宰するシンクタンク「The Centre for Social Justice」の会議で議長を務めるダンカン氏

取材班は後日、ダンカン議員が主宰するシンクタンク「The Centre for Social Justice」の会議へ招待された。この会議にはかつてブレア首相と対立し電撃的な辞任劇を繰り広げたクレア・ショート元労働党議員、チャールズ・ケネディ元自民党党首、「イーストエンダーズ」などのドラマに出演していた女優のパッツィ・パーマーなどを始めとする著名人が出席し、社会正義の必要性を訴える演説を行っていた。他党の実力者を含むこれら各界の著名人との関係を構築し、当日は議長として会議全体をまとめあげていたのがダンカン議員。政治家は閣僚ポストを退いてから本当の価値が分かるというが、保守党党首の座を降りた今でも精力的な活動を展開する彼の政治家としての意思は、本物であろう。ブレア首相が辞任していくに伴い英国政治が変動していく中で、彼の存在に再びスポットライトが当てられる日がまた来るのかもしれない。

イアン・ダンカン・スミス保守党議員 プロフィール
イアン・ダンカン・スミスIain Duncan Smith - 1954年4月9日生まれ、エディンバラ出身。2001年9月12日から保守党党首。2003年10月29日に行われた信任投票に敗れ8日後に党首の座を明け渡す。2005年12月7日、デービッド・キャメロン保守党党首に任命され「Social Justice Policy Group」議長に。保守党党首時代は痛烈な批判にも全く動じないことから「Quiet Man」などのニックネームで親しまれた。
 

初心者によるドッグ・レース潜入レポート

ドッグ・レース潜入レポート

 

「ギャンブル」。私たち日本人がこの言葉を聞くと、何となく違法? というか悪いイメージを感じてしまうもの。でもここ英国では一定の規定の下、競馬、カジノ、ブックメーカーなど、さまざまなギャンブルを健全に楽しんでいる人々がいっぱい。そう、英国は知る人ぞ知るギャンブル王国なのだ。今回はその中でも日本人には馴染みの薄いドック・レースに注目。また階級意識の残る英国ならではの古今東西ギャンブル事情もご覧あれ。(本誌編集部: 村上 祥子)


ドッグ・レースとは

競馬と同じように、犬を競争させてその順位を競うレース。まずはトラックの1番外枠に設けられたレール上に取り付けられたルアー(疑似餌。通常ウサギのぬいぐるみやニンジン)が動き出し、それを競争犬たちが一斉に追いかけていく。客は単勝、複勝などを予想し(詳細は本文参照)、犬券を購入。レース結果により配当金が出るという仕組みだ。通常ドッグ・レースで使われるのはグレイハウンド犬。小顔で無駄の一切ない筋肉質な体、細く長い足を持つグレイハウンドはまさに「生まれながらのレース犬」(ポールさん談)だ。


いざ、ウォルサムストウ・グレイハウンド・レーシング・スタジアムへ!

ロンドン北東部ウォルサムストウ。地下鉄のウォルサムストウ・セントラル駅からバスで15分ほど行くと、何もない暗闇の中に突如派手なネオンに彩られたドッグ・レース場、ウォルサムストウ・グレイハウンド・レーシング・スタジアムが見えてくる。思ったより小さめで地味な入り口には、いかにも常連という雰囲気の中高年男性たちが1人また1人と集まってくる。「やっぱりディープな感じ……」と恐る恐る近付くと、係員に「ここから入ると入場料は安いけれども、レースの様子は見にくいし、レストランやバーにも行けないよ」と教えられる。そう、ここは一般客ではなく、いわゆる常連専用の入り口だったのだ。入場料は安いものの、スタート/ゴール・ラインから離れた席で、レストランなどの施設を利用することはできない。改めてレース場左手にあるメインの入り口に行くと、カップルや20〜30代の男女グループなどが楽しそうに語らっているのが目に付いた。両入口の雰囲気の違いに英国らしさを感じつつ、いよいよスタジアムへ。6ポンドを払うと、チケット代わりとなるプログラムを手渡される。

レース場はトラックを四方に囲むように観客席やレストランなどの建物が並んでいる感じ。正面から見て右手は常連が集う「Popular Enclosure」で、観客席以外はほとんど何もなく、左手の「Main Enclosure」にレストラン、バーなどの各施設が揃っている。外に出ると、競馬場をそのまま小さくしたようなかわいらしいトラックと観客席、そして予想屋の屋台が並ぶ。とはいえ冬の寒い最中。外の観客席で観戦しようという人はほとんどいない。

観客の大部分が集まるのは2階、または3階にあるレストランやバー。すっきりとしていて清潔感のある店内は、暖かくて居心地も抜群。ガラス越しにトラックもよく見えるし、店内の至るところにモニターも置かれているから、くつろぎながらレース観戦を楽しむことができる。

今回私たちが陣取ったのは、1番人気だという「Stowaway Bar & Stowaway Restaurant」内のテーブル。ここで人生初のギャンブルにチャレンジだ。






高級感溢れるレストラン。ここでは店員が賭けの注文を取ってくれる(?)ので、わざわざレースごとに犬券を買いに行く必要もない。6週間前には予約が必要というほど土曜日には大混雑だそう。




一流クラブと見紛うばかりのVIPスペース。2つのボックスに分かれていて、各スペースを貸し切ってレース観戦を楽しむ。主に企業の接待に使われるゴージャスな場所だ。




1階にポツンとある小さなカフェ。トラックには面していないので、観戦には適していないと思いきや、常連っぽいおじさんたちがモニターとパンフレットを見つつ、ひたすら賭けに興じている。ここには何やら真剣な雰囲気が……。




広々としたバー & レストランは、最も多くの人たちが集まる場所。チケット売り場も設置されている。お酒の種類は豊富だが、レストランにはホット・ドッグ、フィッシュ・アンド・チップスなど数種類しか置かれていないのがちょっと寂しい……。




屋台ごとに賭け金や配当が異なるので要注意。以前はトラックの隅から隅まで並んでいたらしいが、今ではゴール付近に数人いるだけ。




寒いのでさすがに人の姿もまばら。




ゲートは2カ所。レースの距離によって場所が変わる。




レース犬たちの小屋。冬場は寒いので、ここから出てきてスタートするまでの間は暖かそうなコート(?)を着ている。


スタジアムPR、ポール・ウィンさんに聞く

このウォルサムストウ・スタジアムは1933年にオープンした老舗のドッグ・レース場。規模も英国最大級、いえヨーロッパでも指折りのスケールの大きさです。とは言っても英国以外、ヨーロッパにドッグ・レース場はそれほどありませんけどね(笑)。レースに使われているのはすべてグレイハウンド。その他1年に1回、チャリティー・イベントを開催しています。過去にはグレイハウンドの小型版とも言えるウィペットや、アフガン・ハウンドを使ったレース、近年ではポニー(ジョッキー付)・レースもやりました。

50〜70年代、ドッグ・レースはギャンブルの要素が非常に強かった。でも80年代に入ってからブックメーカーが進出し、さらに最近ではオンライン・ギャンブルの影響もあってギャンブル以外の部分に力を入れるようになりました。レストランや企業用ボックス・シートをつくり、エンターテイメントとしてのドッグ・レースへと変化してきたのです。今ではギャンブルそのものよりも、レストランなどの収益が収入の大部分を占めています。

その昔、競馬に行く経済的余裕のない労働者階級の男性が楽しむギャンブルというイメージが強かったドッグ・レースですが、今では学生からビジネスマンまで、様々な人たちが気軽に楽しむスポーツとなっています。ブラッド・ピットやクラウディア・シファーなど、有名人も数多く訪れているんですよ。

Walthamstow Stadium
住所: Chingford Road, London E4 8SJ
Tel: 020 8498 3300
E-mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
入場料: Main Enclosure: 6ポンド(月、金は無料)
Popular Enclosure: 1ポンド(月、金休み、土は3ポンド)





19時45分。さあ、いよいよレース開始だ。ちなみにレース場は月、火、木、金、土曜日オープン。火、木、土は18時30分開場、19時45分レース開始(土のみ19時30分)で、月曜日は13時15分開場、14時18分開始。金曜日は10時30分開場、11時11分開始となっている。最終レースまでの約3時間で計13〜14レースが十数分置きに行われる。通常、このレース場で行われるのはグレイハウンドの6頭立てレースのみ。中にはハードル・レースもあるのが驚きだ。

曜日別、客層の違い
労働者階級の男性が多かった昔と比べ、今では様々な人たちがレースを楽しんでいます。と言っても曜日によってその客層にはかなりの違いがありますね。火曜日の夜(平均400〜700人)にはグレイハウンドを知り尽くしたコアなファンが多くて、木曜日の夜(平均750〜1000人)にはビジネスマンが多いです。彼らは接待などでボックス・シートを借り切って優雅に観戦を楽しんでいますよ。週末は家族と過ごすもの、というポリシーを持っているから、木曜日になるんでしょう。初心者の方にお勧めなのはやっぱり土曜日(平均1800〜2500人)。20〜30代の若い世代の方たちがぐっと多くなるし、パーティーなども開かれて、とても楽しい雰囲気になるんです。



賭け事と名の付くものは一切やったことのない私たち2人。まずはパンフレットを見て勉強をすることに。ポールさんに簡単な見方を教わる。レースごとに6頭の犬たちの名前、過去数レースの順位とタイム、そして各ページの左上にはレースのレベルも記されている。数字が少ないレースほどタイムの速い犬が揃っているのだとか。観客はこのパンフレットをにらみつつ、トラックを試し走りする犬を眺めて賭け方を検討する。

「良い犬」の見極め方ってあるの?
これは難しい質問ですね。僕はこのレース場で3年間働いていますが、未だに勝ち犬を当てることはできません。人によって基準は色々。犬の体型を見て決める人もいれば、レース直前の走りを見て決める人もいます。極端な話、犬の名前で選ぶ人だっているくらいですからね!



賭ける犬を決めたら今度は実際にチケットを購入。チケットの購入方法は2通りある。1つは「Tote Betting」というレース場正規の窓口で買う方法。そしてもう1つがトラック前に陣取っている予想屋から購入する方法だ。予想屋の場合は賭け金や配当が定まっていないし、最低賭け金が5ポンドからと高めだったので、初心者としては前者を利用することにする。ちなみにTote Bettingでの最低賭け金は20ペンス。重くなった小銭を減らす感覚でレースに参加できるのが嬉しい。

トラックに置かれている巨大掲示板や至るところに設置されているモニターを見て、刻一刻と変化するオッズをチェック。上図を例にとってみると、第4レースの1番人気は2の犬。この時点では「ウィン」で10ペンス賭けると配当金が21ペンスになるという具合だ。

初心者があまり色々考えていても仕方がない、ということでまずは「ウィン」に挑戦。私は過去のタイムを見て速そうな4の犬、バリニール・ライトを、もう1人は自分のラッキー・ナンバー3の犬、スパルタ・マスターを選ぶことに。ちまちまと50ペンスずつ賭ける。

チケットの種類
ここでチケットの種類をご説明。
「Win」(単勝): 1着になる犬を予想する
「Place」(複勝): 1着または2着になる犬を予想する
「Forecast」(連勝単式): 1着と2着の犬を順番も含めて予想する
「Reverse Forecast」(連勝複式): 1着と2着の犬を順不同で予想する
「Trifecta」(3連勝単式): 1、2、3着の犬を順番も含めて予想する



そしてレース開始。直前になるとレストラン内の照明が消え、それまでビール片手にテーブルで語らっていた人たちがいきなり立ち上がり、一斉にレース場に向かって体を乗り出す。トラックではまず1番外枠のルアーが動き出し、それを追いかけるように犬たちが一斉に走り出す。まるでヒョウのようにしなやかなフォルムで走る犬たちは軽やかで美しい。一方レストラン内ではギャーギャー雄叫びを上げ、観客たちが盛り上がっている。男性よりも若い女性の叫び声が耳につくのが面白い。「カモーン!」「ヘイヘイヘイ!」先ほどまでの静けさはどこへやら。ここがギャンブル場なのだということを実感する。レースは平均475メートル。小さいトラックを1周半弱だから、あっという間に終わってしまう。トップの犬がゴールした瞬間、「Yeah! Win!!」やら「Oh my god…」やら悲喜こもごもの声が場内を埋め尽くし、レースが終了。これが1日10数回、繰り返されるわけだ。

ちなみに私たちの結果はというと……。一応タイムなどをチェックして購入した4はコーナーで他犬に接触後失速。しかしラッキー・ナンバーを元に選んだ3の犬が圧倒的な強さを見せて1着になった。やはりデータは当てにならないのか。



50ペンスとはいえ勝利は勝利、とにかく換金だといそいそとTote Bettingへ。チケット購入だけではなく、現金を受け取るのもこの窓口だ。チケットを渡すとジャラジャラとコインを渡される。50ペンスが2ポンド75ペンスへ。もう少し賭けておくんだったとちょっと後悔しつつも、喜びを隠し切れない私たちなのであった。その後もう1レース、今度は「リバース・フォーキャスト」にチャレンジしたもののあえなく敗退。やはりビギナーズ・ラックは1回切りだった……。

特別な夜をレース場で!

最近では大人数のグループでの誕生日パーティーやヘン/スタッグ・ナイトを「Stowaway Bar Stowaway Restaurant」で行う人も多いのだとか。誕生日の場合はレースを買う(?)ことも可能。プログラムに「Happy Birthday ○○」と記載され、レース終了後は犬たちとの記念撮影もできる。取材当日もモニターに「Happy Birthday Mum! From ○○」などのメッセージがしょっちゅう流れていた。こんなユニークで楽しいプレゼントを贈られたらちょっと嬉しいかも!?



リタイア後の犬はどうなる?


動物愛護団体からは、リタイア後のレース犬に対する扱いで批判されることもあるドッグ・レース。ここウォルサムストウ・スタジアムでは、リタイア後の犬に里親を見つけるエージェンシーと提携を結んでいる。もともと温厚な性格で順応性も高いというグレイハウンドは飼い犬としても適しているのだとか。興味がある人はwww.wsgreyhound.co.uk をチェックしてみて。

 

人生初のギャンブル体験。おまけに以前は「上流階級の競馬、労働者階級のドッグ・レース」と言われていたうちの「ディープ」な方のギャンブルにチャレンジということで、レース場に向かう時には女性2人でドキドキしていたのだが、そんな私たちを迎えてくれたのは清潔感漂う近代的な施設としなやかな体躯を持つ賢そうな犬たちだった。ブックメーカーやインターネットという新しい波に揉まれて、その存在意義を変えつつあるドッグ・レース。常連らしき年配の男性たちが熱心にパンフレットを眺める姿と、イベントとして大勢で笑い騒ぐ若者たちの楽しげな姿に、現代英国のギャンブル模様を垣間見た1日だった。

 





隠れギャンブル王国の英国。でもさすがは英国人、「英国らしさ」は忘れない。ジェントルマンのたしなみ、「紳士クラブ」から近い将来誕生する「スーパーカジノ」まで、英国情緒漂うギャンブル模様をざっとご紹介しよう。


英国全土、誰もが気軽にギャンブルを楽しめる場所、それが政府公認の賭け元「ブックメーカー」、通称「ブッキー」だ。とにかく高級住宅地であろうと少なくとも1軒はあると言えるほど至るところにあるこのブッキー、「ウィリアム・ヒル」や「ラドブロークス」などの有名チェーンなどは見た目も小奇麗でパッと見は銀行にも見えなくもない。生真面目そうに見える英国人だが、実は世界でも類を見ないほどの賭け事好き。ブッキーには平日の昼間でも賭け事に精を出す人々が常にいっぱいだ。とはいえやっぱり堅実な国民性を反映してか、その楽しみ方は地味。賭けの対象は日常生活におけるありとあらゆる事象。サッカーや競馬はもちろんのこと、リアリティー番組の勝者が誰になるか、クリスマスには雪が降るか、などというのまでが取り上げられるのがある意味すごい(何といっても元手がタダ!)。賭け金は最低25ペンス前後。物価高の英国、25ペンスで買えるものなど他にあるだろうか?

ここまでお気軽に楽しめてしまうと、誰も彼もがギャンブルにはまってしまうのでは、と他人事ながら不安に感じてしまうというもの。実際、ブックメーカーでは政府から受け取った失業手当を元手にギャンブルを楽しむ失業者の姿も目に付く。そこで政府が考えたのは、ブックメーカーの廃止、ではなくギャンブル依存者救済キャンペーン。ギャンブルを推進する一方で、依存者に対してはギャンブルの悪を説き、カウンセリングを受けるよう必死に訴えかける。タバコのケースに「Smoking Kills」表示を義務付けるのにも似た政府の苦肉の策に、ギャンブルに対する人間の飽くなき欲望を感じずにはいられない。


店に入ると、平日のお昼にも拘らず、賭け事に勤しむ大勢の男性の姿が。何せ何も分からない初心者のため、しばし観察してみることにした。競馬やドッグ・レース、サッカーなどのスポーツ関連、「ビッグ・ブラザー」などのリアリティー番組や政治家などの有名人関連を窓口で、その他ポーカーやルーレットなどのゲーム関連をマシンでやるのが定番らしい。
さあいよいよ挑戦だ、と今度は窓口で質問攻めにする。窓口の男性はとてもフレンドリーで、賭け方や種類、賭け率などを詳しく説明してくれた。「どれかすぐ結果が分かるものをやってみたいんだけど」と伝えると、ホース・レースを勧められた。大きなレースだと事前に買う人もいるが、大体みんな当日になって馬の調子や様子を見て買うらしい。
そして、ついに馬を選ぶときが来た。うーん……。勝率とかで決めるべき? でもここは一つ名前で決めてみよう。そう思った私は「Sound of Cheer」を選択。何か縁起が良さそうな良い名前だったから。実際に競馬が始まると3分もしないうちに終了。私は結局Cheerを上げることなく終わった。でもおじちゃんたちと一緒になって行く末を見守っていた自分は、すっかりその場に馴染んでいた。みんな1人でやって来ているのだけれど、自分が賭けた馬が負けた時の「Oh my god」の言い合いには、ちょっとした仲間意識が垣間見える。実際に競馬場に行ってみたら上流階級の雰囲気を味わえそうだけれど、巷に溢れたブックメーカーに行ってみるのも英国ならでは、なのかもしれない。


常連のおじさんにインタビュー

ここには毎日来ているよ。賭け事が好きかって? そりゃ好きだから来てるんだよ。賭け事をやっていると時間が経つのがあっという間なんだ。え? 成功した例なんて教えられないよ、今日の運が逃げるからね。何と言っても毎日できる競馬が1番。サッカーなんて俺はやらないね。やり方が分からないって? 簡単だよ、好きな馬の番号を紙に書いてお金を払えばいいんだから。お金をいくら払うかは自分のポケットのお金次第さ。25ペンスだって2000ポンドだってかまいやしない。安いのでやってみたらいいよ。でも稼ぎたい時には勝負をしないと。あー、ほら俺の馬はまた負けたよ。何てこった! 今日はまだ勝ってないんだ……。



今、賭けてみるならこれ!?

あなたも審査員気分になれる
第79回アカデミー賞結果予想
2月25日に行われる第79回アカデミー賞の発表に向けて、ブックメーカーでも同賞の作品賞ノミネート作品をラインアップ。授賞式の前日24日の正午まで受付中だ。オスカー像を手にするのは誰か、審査員になった気分で真剣に選んでみては? ブックメーカーの倍率では、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」が5作品中4位。助演女優賞でノミネートされている菊池凛子の出演作「バベル」は3位。日本人としてはどちらの行く末も気になるところだ。もしそのどちらかに賭けて予想が的中すれば、彼らもハッピーだが自分もハッピーになれること間違いナシ。



円のレートを常にチェック!
為替の動き予想
海外に在住している人間にとって為替レートは気になるもの。物価の高い英国にいるのだから尚更だ。株をやっていなくてもレートの変動には敏感な人は多いのではないだろうか。そんなレートに注目した賭けがある。その名もまさに「マーケット」。5分置き、1時間置き、日ごとにレートが上がるか下がるかを賭けるという、至って簡単なものだ。結果が5分ごとに出るのでいつでも挑戦できる。日本円のレートが出ているのはユーロとUSドルのみ。ポンドと直接比較できないのが残念だが、ユーロやドルから換算できる。世界経済の動きに敏感になれて一石二鳥!?



カジノと聞いた時、どのような光景を思い浮かべるだろうか。米ラスベガスのゴージャス・カジノ? それとも犯罪の匂いがプンプン漂う怪しげな小部屋? 英国カジノの歴史はやはりというべきか、上流階級の人々の集う「紳士クラブ」から始まった。

フランス、パリのカフェやサロンなどで広まっていた、カードを中心としたギャンブルが英国に伝わったのは、大英帝国が全盛期を迎えていた19世紀のこと。暇とお金を持て余していた上流階級の男性たちがタバコや酒を楽しむ女性厳禁の会員制クラブ内であっという間に広まった。

当時と異なり、現在ではいくつかの制限はあるものの、基本的には上流階級でなくとも(そしてもちろん女性でも)気軽にカジノを楽しむことができる。しかしそこは英国。古き良き時代の情緒を今に残す老舗カジノの姿を現在でも目にすることができる。

ロンドン中心部のピカデリー・サーカスからグリーン・パークにかけての一帯は19世紀、「紳士クラブ」が数多く存在した高級エリア。今でも英国を代表するカジノが威風堂々とそびえ立っている。その中でも特に知名度が高いのが「ザ・リッツ・クラブ」。あの高級ホテル、「リッツ・ホテル」内部にあるカジノで、設立は1978年(あくまで正式には、ということらしいが)。ホテルで以前ボールルームとして使われていた場所を使用しているこのクラブは内装も絢爛豪華。会員になるには今でも厳しい審査を通過し、1000ポンドの会員費を払わねばならない。

近い将来、スーパーカジノや大型カジノが全国につくられることになる英国。カジノへの敷居は低くなるが、その一方でこれら老舗カジノの伝統と美学は、少しづつ形を変えながらも脈々と続いていくことだろう。



あらゆる階層の人々に愛され続けているギャンブル。ギャンブルに関しては寛容であることで知られる英国だが、その背景には政府のせつないまでの試行錯誤があった。政府は一昨年の賭博法改正でギャンブルの規制緩和を打ち出したが、英国ギャンブルの歴史はこれまで規制、緩和、規制、緩和をひたすら繰り返しているのだ。

近年、徹底的なオンライン・ギャンブル規制に乗り出した米国とは対照的に、英国では一定の規定の下、オンライン・ギャンブルは政府公認で行うことが可能だ。昨年10月31日にはロンドン、アスコット競馬場に約30カ国の代表を招き、オンライン・ギャンブル事業の国際的容認と利用者保護を目的とした規制づくりを訴えたというから涙ぐましい努力と言える(しかし競馬場で国際会議というのがスゴイ)。

以前は国内でのオンライン・カジノ開設は禁止されていたものの、賞金を持ち込むことは可能だったため、合法の国で会社を設立・運営するというのが主流だった。しかし2005年賭博法により、国内による営業も許可制に。オンライン・ギャンブルならば高い入会金を払う必要もなく、自宅で心ゆくまで本格的なカジノを楽しめる。今後さらにオンライン・ギャンブルの人気が高まるのは必至と言えよう。

つい先日には米ラスベガス形式の巨大カジノ「地域カジノ」(スーパーカジノ)の建設推薦地が決定。数年のうちに、これまで以上に気軽にカジノ体験ができるようになる。ギャンブルの持つ社会的悪影響に戦々恐々としつつ、世界有数のギャンブル保護国として知られる英国。今後どうなるかは神のみぞ知る、といったところか。

 

英国スーパーマーケット総比べ

英国スーパーマーケット総比べ

 

大小含め10以上のスーパーマーケットがチェーン店展開を広げるスーパー激戦地の英国。安売り専門店から高級志向ショップまで、各スーパーは様々なスタイルで顧客の獲得に努めている。その中でも比較的街中でよく見かける4つのスーパーマーケットを選び、比較調査を実施。身近なものだからこそ、徹底的に研究してワンランク上の快適な生活を送りたい。(宮田さち)



取り扱う全ての商品が自社ブランドという特徴のある高級スーパーマーケット。衣料品販売なども展開しており、その分野においては売上額英国一の座を誇る。M&S、マークスなどとも呼ばれ、英国民に親しまれているスーパー。世界30カ国に450の支店を持つ。食品の広告に使われるキャッチフレーズは「This Is Not Just Food, This Is M&S Food」。

ロシア生まれのユダヤ系ポーランド人の移民、マイケル・マークスが1884年、リーズにM&Sの原点となる会社を創立したのが起こり。1894年には、英北西部マンチェスターに最初の店舗をオープンさせた。店名は、マークスと彼のパートナー、トム・スペンサーの苗字に由来する。1997、98年に英国小売業界にて頂点に立った後、数年間の経営難に陥っていたが、経営方針の見直しなどにより売上は徐々に回復している。

M&Sは利用客に大変寛大な商品の返品サービスを行っており、レシート持参での90日以内の返品の場合はすぐに返金、レシートがない場合でも、返品後12カ月有効なストア・クレジットとして返してもらえる。

また企業の社会的責任を重要視し、自然環境の保護を考慮して製造された健康的な商品を、スタッフの働きやすい環境で販売する、という理想を追求している。ビジネス・イン・ザ・コミュニティーの2006年度カンパニー・オブ・ザ・イヤー、RSPCA(王立動物虐待防止協会)のオータナティブ・アワーズを受賞。コーヒー・紅茶は全てフェア・トレード商品、卵はフリーレンジのみ、と厳しく正しく商売しているスーパーだ。




上・中流階級の客層をターゲットに、高品質の食品とサービスを良心的なお値段で提供する高級スーパーマーケット。やはり優等生のイメージのあるデパート、ジョン・ルイスの傘下グループであり、エリザベス2世のロイヤル・ワラントを持つ、王室御用達のスーパーである。英国民の好きな小売店としても、ジョン・ルイスに次いで2位に選ばれている。スローガンは「Quality food, Honestly Priced」。従業員は皆シェアホルダーであり(パートナーと呼ばれる)、売り上げは彼らの給与に直接反映されるというユニークな経営方針を採っていることでも知られている。

創業は1904年。ウォレス・ウェイト、アーサー・ローズ、デービッド・テイラーの3人が西ロンドンに小さな食料品店をオープンしたのが始まりだ。1937年にジョン・ルイスの傘下に入り、1955年にはロンドン南部のストレッチャムにスーパーマーケットとしての1号店を開店した。

メリルボーン店のマネージャー、エド・バートンさん(勤続年数10年)によると、「ウェイトローズの自慢は、素晴らしいスタッフ(パートナー)たち」。各店鋪ではスタッフ一人一人が、ウェイトローズの一員であることに誇りを持ち、責任感溢れる態度でお客様にサービスを提供しているという。また、「商品に関しては、国際性豊かな品揃えが自慢」とのこと。店のモットーは『高品質を良心的価格で』だが、バートンさんはこれに『専門的なサービス』の一言を付け加えたいそうだ。確かにウェイトローズでは、スタッフに商品の場所を尋ねると、その棚までわざわざ案内してくれ、さらには商品を手渡ししてくれることが多い。こうしたちょっとしたサービスを徹底させ、他スーパーとの差別化を図っているのだ。




人気シェフ、ジェイミー・オリバーが登場するCMでお馴染みのこのスーパーは、実は長い歴史を持つ老舗だ。95年にテスコにその座を奪われるまで、食料品売り上げナンバー1を誇っていた。現在はアスダに次いで第3位。スローガンは「Try Something New Today」。

創業者のジョン・ジェームズ・セインズベリーが1869年、ロンドン中心部のドルーリー・レーンに妻と共に乳製品を扱う小さな店をオープンさせたのが始まり。彼は店舗を4つに増やした後、1882年にクロイドンに最初のスーパーマーケットを開店させた。高級感の漂う内装に高品質の商品とサービスで安売り店とは一線を画したのが、中流階級の顧客に受け人気となった。1950年に初のセルフサービス形式の店舗を開店し、20世紀の英国スーパー業界をリードするが、安いだけでなく、品質も向上したテスコに追い越されてしまった。巻き返しを図るため、2000年にジェイミー・オリバーを広告の顔として起用して若い客層にアピール、さらに2004年には最高責任者にジャスティン・キング氏を迎え大改革を行った。

国際色豊かな幅広い品揃えが特徴で、パスタ、チーズなど、グルメ食材が充実している。和食素材もオリジナルで販売しているのはセインズベリーだけ(でもこれが結構高いのだが)。

セインズベリーのウェブサイトによると、よりよい生活作りのため、健康、安全、品質面において、利用客が期待する以上のサービスを食卓に届けることを目標としているようだ。



今回取り上げたスーパーマーケットの中で、最も幅広い層からの支持を得ているチェーン店。労働者階級と中流階級の両方をターゲットにし、成功を収めている英国では珍しいスーパーマーケットである。英国食品販売専門誌「ザ・グローサー」が優れたスーパーに贈る「英国民に最も愛されているスーパー」賞、「ベスト・オンライン・ショップ」賞ほか計3冠を手にしている。英国内最大、世界規模で見ても売上第4位の座につく超大手で、事業も食品、衣料品、電化製品などの販売にとどまらず、保険やローンなどの金融サービス、DVDレンタル、音楽ダウンロード、インターネット・プロバイダー、電話会社など幅広く展開している。英国外においてもヨーロッパはもちろんのこと、日本を含むアジアの計11カ国でも事業を営む。スローガンは「Every Little Helps」。

ユダヤ系ポーランド人の仕立屋の息子、ジャック・コーエンが創業。1919年、ロンドン、イーストエンドの屋台で始めた食品販売が成功し、10年後にエッジウェアに初の店舗、「テスコ」をオープンさせた。90年代に入り、強引とも批判される方法で店舗数を増やし、業界1位の座に付く。また、ロイヤリティー・カードやオンライン・フード・ショッピングなど、数々の業界初のサービスを導入してきたことでも知られている。

1997年最高責任者に就任して以来、テスコを成功に導いてきたテリー・リー卿は、「Treat People How We Like To Be Treated」などをモットーに掲げ、カスタマー・サービスに力を入れている。



今回取り上げたスーパーマーケットそれぞれに個性があると分かった所で、さらにいくつかのテーマ別に(勝手に)比較検討してみました。スーパー選びの参考にどうぞ。まずは、ポッシュ度と便利度(5段階評価)のグラフから。



ポッシュ度では女王御用達のウェイトローズと、品質と製造過程にこだわったオリジナル商品をそれなりのお値段で販売するM&Sに満点を付けたい。分かりやすい広告で庶民に値段の安さをアピールするテスコはちょっとポッシュ度には欠ける。セインズベリーはその中間といったところ。
便利度はほぼ反比例と言ってもよいが、幅広い客層のニーズに応えて様々な商品展開とサービスを提供するテスコを評価。しかし大満足とはいかないので、ちょっと引かせてもらった。逆に(生活にゆとりのある)特定の客層をターゲットにしたM&Sは、それ以外の客層にはちょっと使いにくい。



1 テスコ
2 セインズベリー
2 ウェイトローズ
4 M&S

ダントツでテスコが1位。基本的に安い価格設定の商品が多い上、半額などのプロモーションもよく行っている。テスコ独自の「Price Check(毎週テスコ、セインズベリー、アスダ、モリソンの4大スーパーの商品について販売価格を調査、ウェブサイトで公開している)」によると、アスダと比べてテスコの方が安い商品が1547点、高い商品が1177点となっている(2007年1月8〜10日調べ)。しかしながら、「ザ・グローサー」誌が実施した33商品の値段調査によるとアスダが最安スーパーということになっているので、ちょっとナゾではあるが……。2位はセインズベリーとウェイトローズ。セインズベリーは安いラインのオリジナル・ブランドを出しており、安いものは安いのだが、逆に高いものは極端に高い。ウェイトローズは、全般的に見ると意外に高くはない。ということで4位はなんでも高めのM&S。


1 ウェイトローズ
2 セインズベリー
2 テスコ
4 M&S

一概には決められないが、イタリアン、フレンチといったお洒落な香りがする食品類に関しては素晴らしい品揃えを誇るウェイトローズが1位か。パスタ、チーズ、加えてワインの種類の多さは拍手モノ。ちなみに「ザ・グローサー」誌によるとウェイトローズは品切れ度が一番低いスーパーでもある。ほぼ同じ路線のセインズベリーは僅差で2位。同じく2位のテスコは、アジアン・カリビアンというように店舗のある地域の住民の文化を反映した品揃えに強い。両店とも、オリジナル・ブランドに安いラインと高級ラインを展開し、これも選択の幅の広さにはつながる。4位はまたまたM&S。元々オリジナル・ブランドしか販売しないので、バリエーションにはちょっと欠ける。サンドイッチやレディ・ミールは種類が豊富だが、例えばウェイトローズでは30種類もあるドライ・パスタがわずか8種類とはちょっと寂しい。


1 テスコ
2 セインズベリー
3 M&S
4 ウェイトローズ

どんなに素敵なお店でも遠ければ行きにくい、開いてなければしょうがない。さて、行きやすいスーパー第1位の座を射止めたのは、テスコ。英国内で合計1897店舗と圧倒的な店舗数を誇り、カバー・エリアは広い。また、郊外型の店舗は週日24時間営業を行う一方、コンビニ型のエクスプレスは、午前7時から午後11時まで営業している。同様の経営スタイルを持つが、752店舗展開と店舗数で負けたのがセインズベリー。3位はM&S。637店舗のうち、187店舗あるコンビニ型の「Simply Food」は英国内の主要駅構内に設置されていることも多く、旅行中のスナックやお勤め帰りの夕食の購入などに、お役立ち度が高い。4位はウェイトローズ。184店舗と店舗数も少なく、基本的にお上品なエリアにしか見られないので、それ以外の地域に住んでいる人にはあまり行く機会がないかも。がんばれ、ウェイトローズ!


1 M&S
2 テスコ
2 ウェイトローズ
2 セインズベリー

環境への関心が高まる今のご時勢、スーパーもグリーン度を積極的にアピールしている。この分野の1位はM&S。ちょっとお洒落なオリジナル・ショッピング・バッグでも知られるM&Sは最近思い切ったエコロジー方針を発表した。それは、2億ポンド(約480億円)を投資し、今後5年の間に、二酸化炭素排出量0を目指すと言うもの。その直後テスコも対抗し、5億ポンド(約1200億円)を注ぎこんだ同様のプランを発表。ウェイトローズ(ジョン・ルイス・パートナーシップ)は2010年までに10%、セインズベリーは2008年4月までに5%、それぞれ二酸化炭素排出量を減らすことを目指している。計画倒れに終わらないよう、皆さんがんばってください、ということでM&S以外皆2位に付けておこう。いずれのスーパーマーケットも買物袋やクリスマス・カードのリサイクルを奨励するなど、環境保護に励んでいる。


1 ウェイトローズ
2 M&S
3 セインズベリー
3 テスコ

英国人の大好きな慈善事業。スーパーもただ商品を客に売るだけではダメなのだ。チャリティー度1位はウェイトローズ。ウェイトローズ基金を2005年に設立、対象商品の売り上げを寄付し、南アフリカの果物農家の人々がより良い労働環境を得ることが出来るよう貢献している。また、同社が展開するインターネット・プロバイダー事業では、経費を除く全ての収益がチャリティー団体(4つから選べる)に寄付されることになっている。2位はM&S。昨年はクリスマス時期にホームレス救済のためのプロモーションを行い、その売り上げから寄付を行っている。セインズベリーはより健康な子供を育成するため、学校に運動器具などを寄付しており、またテスコは、障害のある子供のためのチャリティーや地域を意識したチャリティー活動を行っているということで同点3位。いずれのスーパーでも多くのフェアトレード商品を扱っている。
 
M&S、ウェイトローズ、トリビア集
高級スーパーがより身近に!?

M&Sは90年代半ばまで、TVコマーシャルは利用しなかった。
M&Sの2代目経営者、サイモン・マークスと友人イズラエル・シエフのイニシャルもM&Sに当てはまる。
M&Sの創業者、マイケル・マークスはリーズのマーケットで全て1ペニーというストールを開いていた。
M&Sで見つけた「Chilli Rice Cracker Mix」は、かなーりスパイシーな揚げせんべい。しかしパッケージの「ローソン鶴巻店」って……? タイ製だし……(写真)
ウェイトローズで販売されているスシのメーカー、TAIKO FOODSはチャンネル4の人気番組、「ビッグ・ブラザー」のオフィシャル・スシ・サプライヤーである
ウェイトローズとジョン・ルイスの発行するクレジット・カード(パートナーシップ・カード)のオンラインでのアプリケーション・フォームのタイトル欄で選べるタイトルはDoctor、Reverend、Captain、Major、Lady、Lord等など計18種類。庶民には敷居が高い。(ちなみにM&Sのカードの場合はDr、Lady、Revなど計8種類)
ウェイトローズで見つけたこんなもの。本格的グルメな食品ばかりが陳列されているイメージのあるウェイトローズだが、グルメとは程遠い、アルデンテを真っ向から否定するふにゃふにゃの「缶スパゲティー」も販売されている。



各スーパーのオリジナル商品についてもいくつかピックアップして(やはり勝手に)比較検討。今回は、ドリンクからデザートまで£10で収まる
コースを設定して、値段、品質などを調査しました。ただし、美味しいと思う基準は個人的見解によるものなので、あしからず。

カバ
(スペイン産スパークリング・ワイン)

 
本当はシャンパンで試したいところだが、予算の都合で安い代替品で。バブリーなひと時をお手軽に過ごせるのはどれ?(いずれもアルコール度数は11.5%)
Cava Brut £3.99
(プロモーション価格。通常は£4.99) 

一番コストがかかっていそうなラベル。裏面にはワインの製造された場所やブドウの種類などがとび抜けて細かく記されている。ボトル取り扱いの注意事項も細かい。賞味期限は購入後6カ月との記載もある。最初注いだ時の泡に一番勢いがあり。すっきりとドライ。一番美味しい。
Cava Brut £4.49

今回の比較では購入価格が一番高い。モダンなデザインのラベル。時間を置いて観察すると、泡は一番長く続き、フレッシュさが持続していたが、肝心の味にちょっと何かが足りないような気も……。
Cava Brut £3.99

見た目が一番安っぽい。ワインについての情報も一番少ないが賞味期限は購入後2年という記載がある。他社の製品と比べて格段に泡の出が少ない。味はM&Sのものと似ていているがちょっと劣る気がする。
Cava £3.69

一番安い。ワインについての情報はM&Sに次いで詳しく載っている。賞味期限購入後1年、開封後2時間以内に消費という記載あり。フルーティーで飲みやすく、なかなか美味しい。最初は勢いよく立っていた泡は、時間と共に消えていった。
総評:味に関してはウェイトローズ以外それほどは変わりなし。見た目で言えばM&S、値段で言えばテスコだろう。
スシ
今や英国のスーパーでも気軽にSUSHIが買える時代。しかしあくまでSUSHIであり、寿司でも鮨でも決してないが、英国人が食べるスシを日本人の目で比較してみる。
Sushi Selection £2.90 250kcal

サバの燻製のにぎり、カニカマとアボガド、ツナのカリフォルニア・ロール2種、にんじんと大根など細巻き2種。ガリ、わさび、しょう油、お手拭つき。日本では考えられないスシ。でもご飯はこの中で一番美味しいかも。ご飯率58%と具の割合が多く、寿司と見なさなければそれなりに美味しい。ただやはり、野菜のスシは日本人にはムリがある。
Mini Akane Sushi Set £2.69 約250kcal

ミニ・サイズのスシ。サーモン、サーモン・トラウト、白身魚のすり身、卵焼きのにぎりが計6つときゅうり巻きが3つ。ガリ、しょう油付き。一番日本の寿司に近い。ご飯がちょっと硬めで、あまり味がついていないが、具とのバランスがよく食べやすい。一番美味しい。
Sainsbury's Sushi  £3.40 371kcal

サーモンにぎりが2貫、エビにぎり、サーモンとツナのカリフォルニア・ロール2種に、きゅうりやパプリカの野菜細巻きが3種入っている。ガリ、わさび、しょう油付き。にぎりのサーモンはひたすら薄っぺらい。カリフォルニア・ロールはハーブの利いたアジア風味というか、なんだか不思議な味がする。
Medium Sushi Pack £1.99 212kcal

スモーク・サーモンにぎり、エビにぎり、ツナのカリフォルニア・ロール、スモーク・サーモン細巻き2コ、きゅうり細巻き。ガリ、わさび、しょう油、箸付き。ご飯をやわらかく炊きすぎたのか、成型の圧力で半分モチ状態。でも、寿司飯っぽい味付けになっているのはすごい。値段から考えるとお買い得商品。
総評:ダントツでウェイトローズ。値段でテスコ。セインズベリーが一番いけてない。
クロワッサン
 
日々の食卓には欠かせないパン。「英国のパンは美味しくない」と言う日本人も多いが、クロワッサンで味比べ。おフランスの味に近いものはどれ?
New Croissant £0.72 80g

一番値段が高い。しかし、バターの層が細かく均一で、一番美しく見える。サクッと焼けていて、皮の部分は一番美味しい。中身もバターたっぷりなのか、しっとりしていて美味しい。ちなみにM&Sで作られる食品で卵を使用するものは全てフリーレンジの卵使用らしい。
All Butter Croissant £0.46 70g

一番安い! ツヤ出しの卵がたっぷりかかっていて(かけ過ぎ?)、テカテカして見える。中身も卵とバターたっぷりなのか、他社製品と比べて黄色い。外の皮が硬く、中身もスカスカしているというか、なんだかいまひとつバターが感じられず、正直一番美味しくない……。ちょっとがっかりの一品。
Croissant £0.55 75g

形はM&Sに似ているが、巻き方が左右均一ではない。見た目にシナシナ感がありサクサク度ではM&Sに及ばず。でも、中身はきめ細かくしっとりしており、バターが感じられて美味しい。
Jumbo Croissant £0.50 85g

ジャンボと銘打ってある通り、重さでは一番。パンの端は焼いた際、ほかのパンとくっついていた形跡があり、その部分の見た目とサクサク度が損なわれている。しっとりとしたバター感が美味しい。お値段を考えると一番?
総評:ウェイトローズ以外、だいたい同じ感じ。強いて言えばM&Sが味では勝る。値段を考えるとテスコだろう。
イワシ缶
 
アイデアによってはいろいろ使えるイワシ缶。安くて健康に良いオメガ3もたっぷり。どこで買ってもあまり違いが出そうにないが、どうだろう? パッケージには、かなり差アリ!
Portuguese Sardines In Tomato Sauce 
£0.62 170kcal(100g)


紙箱入り。水煮で比較したかったのだが、M&Sにはトマトソース煮しかないという。(やはりバリエーションが少ない!)そして高い。肝心の中身は、身が崩れやすい。個人的な好みの問題だろうが、あまり美味しくない。
Sardines In Brine
£0.35 142kcal(100g)


紙箱入り。なかなかかわいらしいパッケージである。そしてなんと言っても安い! 他社製品はイワシの皮が部分的に剥げていて見た目がちょっと悪いものが多かったが、ウェイトローズのものはキレイだった。ちょっとあっさり目で美味しい。
Sainsbury's Portuguese Sardines In Spring Water
£0.39 182kcal(100g)


これもレトロ調のお洒落な缶。他社製品の材料には塩が加わっているのに対し、こちらはイワシと水だけとなっている。そして、その分味がない。調理用に買うと良いのか?
Sardines In Brine £0.35 189kcal(100g)

実際ウェイトローズと並んで一番安いのだが、見た目に一番安っぽい。イワシが小さいためか(他社の製品が3匹入りのところ4匹入っていた)、身に締りがあって新鮮さを感じる。ウェイトローズより味が濃い気もするが美味しい。
総評:安さ、パッケージ、美味しさ揃ったウェイトローズがダントツでお勧め。
デザート
 
大型のウェイトローズには見た目にも美しいケーキを販売するケーキ・カウンターがあり、デザート勝負では圧勝になるが、あえて日持ちするデザート、プリン系で比べてみた。(いずれも2個入り、計240g)
2 Creme Caramel £1.65 205kcal(1コ)

パッケージは一番高級感がある。もちろんフリーレンジ卵使用。表面に近い部分(2ミリくらい)は、「す」が入っていて、舌触りが悪いが、全体的には滑らか、優しい卵味が美味しい。
Caramel Panna Cotta £1.25 336kcal(1コ)

イタリア製。とにかく濃厚。クリーミーで舌触りはいいが、かなり甘い。ちょっとクドイかも。セインズベリーの商品と比べて、糖分、脂肪、塩分、(当然カロリーも)全て上回っている。甘党の方にどうぞ。
Caramel Panna Cotta £1.25 304kcal(1コ)

イタリア製。カラメル・ソースの割合が一番多い。塩分は一番低い。クリーミーで、ウェイトローズの商品と比べるとさほど甘くなく美味しい。パッケージには「リサイクル紙を99%以上利用」との記載あり。
2 Creme Caramels £1.35 205kcal(1コ)

パッケージ表側に分かりやすく栄養表示アリ。原料の記載が一番大ざっぱ。M&Sより軽い感じだが、あまり大差はない。より滑らかな食感で美味しい。
総評:ヘルシー度でセインズベリーか? 美味しさはウェイトローズ以外それほど違いなし。

 

一時帰国にも本帰国にも、おみやげを欠かせないのが日本人の悲しい性。ハロッズやフォートナム&メイソンの高級紅茶もいいけれど、スーパーで、あげて楽しい、もらってうれしい、そしてちょっと差がつく(比較的安価な)おみやげを探してみよう。

M&S
Milk Chocolate Racing Cars £3.09 

車とチョコレートが好きな彼へ。スーパーカー型の缶にはカラフルな同型のチョコレートが7つ。かわいくて食べるのがもったいない!
ウェイトローズ
Chocolate Mini Eggs £0.59  

その他大勢の方へ。かわいらしい卵型のチョコレート。お求め安い価格なので、お配り用にどうぞ。
ウェイトローズ
Sardine al Limone £0.85  

ハイソな常備品として。かわいいパッケージに釣られて買ってしまいがちなイワシ缶。レモン風味でちょっとお洒落。
セインズベリー
ジェイミー・オリバー商品
Green Pesto £2.49 

料理初心者の彼へ。日本でもまだまだ人気の(?)ジェイミー・オリバー、オリジナル商品。混ぜるだけで美味しいパスタが作れるグリーン・ペストと、ミル付きの黒こしょう。この他にもいろいろあり。
テスコ
Charlie and Lola, But excuse ME THAT is my book £3.97  

お子様、および子供の心を忘れない大人の方々へ。スーパーで買えるおみやげは食品ばかりではない。テスコでは本も安く販売しているのです。個性的なイラストレーションで子供ばかりでなく、大人も楽しめる絵本。
テスコ
オーブン・グラブ £3.47

かわいく楽しく料理したい彼女へ。大型スーパーではキッチン、インテリア雑貨も豊富。安くてかわいい、そして実用的なおみやげを探してみよう。写真は日本ではちょっと珍しいダブル・オーブン・グラブ。
 

シックス・ネイションズを見なきゃいけない10の理由

シックス・ネイションズを見なきゃいけない10の理由


北半球最強の座を決定するラグビーの国際大会シックス・ネイションズ。その戦いの火蓋が2月3日、ついに落とされた。そういえば最近テレビで妙に多くラグビー選手を見かけるようになったなぐらいの印象しか持っていない方、今からでも遅くない!
本特集では、ラグビーなんか興味がない、そもそもラグビーのルールさえよくわからん!という人にまで観戦をお勧めする理由を列挙。シックス・ネイションズの魅力を知るための、徹底ガイドとして利用して欲しい。
(本誌編集部: 長野雅俊)

理由1:英国各代表チームが勢揃いだから

「シックス・ネイションズ」の名が示すように、本大会に出場するのは6カ国。その中では、英国を形成する4つの「国」であるイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド(アイルランド共和国との混成チーム)が参加国の半数以上を占めている。残りの2カ国は、英国とは何をやっても相容れないフランスに、昨年のサッカーのワールド・カップで優勝して欧州各国の嫉妬を集めたイタリア。この放っておいても闘争心ばかりが漲る組み合わせで総当り戦を行うという大会方式が、シックス・ネイションズならではの魅力となる。選手はもちろん、観客までもがそれぞれの御国のプライドを賭けた激しい戦いになること請け合いだ。

理由2:伝統ある大会だから

本大会はそもそも、1871年に行われたイングランドとスコットランドの代表チーム対抗戦が、後に慣習化したことに端を発している。1875年になってイングランドとアイルランド間でも代表戦が行われるようになり、続いて1881年にはイングランド対ウェールズ戦を開催、やがてこの4カ国で毎年総当り戦を行うようになった。1910年からは欧州大陸からフランスが参加。この頃からメディアでは「ファイブ・ネイションズ」という用語が使われるようになり、後に毎年行われる国際試合の大会名となる。2000年にはイタリアが参加して、現在の6カ国対抗戦の形式になった。

近年までアマチュアリズムの哲学を掲げてきた英国のラグビーでは、サッカーのようなプロ・リーグの発展が遅れた。そこで一般市民にとって、ラグビーを見る機会といえば国際大会のみ。しかもラグビーにおけるワールド・カップは、1987年の第1回大会まで存在しなかった。つまり、英国民にとっては長らくラグビー=シックス・ネイションズであったというわけだ。

理由3:英国各代表が妙なこだわりを持っているから。

優勝カップ6カ国対抗戦、といった本来の大会趣旨とは別に、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの英国を構成する4カ国には、大会中にどうしても勝ち取らなければならないタイトルがある。その主たるものが、イングランド対スコットランド戦の別称「カルカッタ杯」、イングランド対アイルランド戦の「ミレニアム杯」だ。さらにはウェールズも含めて自国以外の英国その他3カ国から勝利を収めると、「トリプル・クラウン」を達成したとして国中が大騒ぎとなる。つまり、たとえフランスとイタリアとの対戦に敗れ3位以下が決定的になったとしても、残りの3カ国に勝てればファンは万々歳、といった仕組みになっている。ちなみに欧州参加国含めたどのチームであれ、5カ国全てに対して勝利を収める完全優勝は「グランド・スラム」と呼ばれている。

実力が拮抗しているから。

2000年から参加したばかりのイタリアを除いて、大会参加国の優勝回数に大きな開きはない。欧州のラグビー強豪国同士の実力が伯仲しているため、全試合において接戦が予想される。

各国の優勝回数(複数国による同時優勝を含む)

イングランド 35回
ウェールズ 33回
スコットランド 22回
フランス(1909年より参加、1932〜46年は不参加) 22回
アイルランド 18回
イタリア(2000年より参加) 0回

ラグビーの魅力を知る良い機会だから。

日本人の間ではラグビーはまだまだ馴染みが薄く、そのルールさえよく知らない人も多い。そこでラグビー初心者のために、基礎的なルールをここで解説。観戦中にはお手元に置いておき、「?」な場面になったら参照してほしい。

基本ルール

1.より多くの得点を決めたチームを勝ちとする。得点方法は以下の4つ。
■ 相手陣地のゴール領域(インゴール)にボールを置くトライ(5点)
■ プレー中に地面にバウンドさせたボールをキックしてゴールに入れるドロップ・ゴール(3点)
■ 重大な反則が起きた際に、反則を受けた側に与えられるペナルティー・キック(3点)
■ トライに成功したチームに与えられるコンバージョン・キック(2点)

2. ボールを前に投げたり落としたりしてはいけない(選手はボールを抱えて走ったり、蹴ったりすることでボールを前に進める)。


3. タックルで倒された選手は、すぐにボールを手放さなければならない。

ラグビーのポジション

ラグビーのポジション「前にボールを出してはいけない」というルール上、サッカーとは逆に主にフォワードが防御、バックスが攻撃の役割を担う。
ラグビーのポジション

フォワード(FW)

2 フッカー(HO)
スクラムを組んだ際に最前列中央に位置するポジション。ラインアウトの際にボールを投げ入れる役割になることも多い。

1・3 左右プロップ(PR)
「支柱」という名の通り、スクラム最前列の両側から押し込むプレーヤー。体が大きく重量のある選手が適役となる。

4・5 左右ロック(LO)
2列目からスクラムを押し込む役割を担う。長身選手が多く、ライン・アウトの際にジャンパー(味方に高く持ち上げられる人)になる傾向がある。

6・7 左右フランカー(FL)
スクラムに参加しつつ、バックス陣とも連携するかなり運動量の多いポジション。

8 ナンバー・エイト(No.8)
フォワードを統率する司令塔。

9  スクラム・ハーフ(SH)
スクラム内にボールを投げ込む、スクラムからボールを取り出して周りにパスを出す役割を担う。小さいながらも敏捷で、頭脳的なプレーヤーが多い。

バックス(BK)

10  フライハーフ(FH)
バックスの司令塔。さらにはチーム全体を指揮する役目を負うことが多い。

12・13 左右センター(CTB)
フィールド中央を力づくで突破することを本業とする。

11・14 左右ウイング(WTB)
ボールを持って両サイドを駆け抜けるのが役目の、俊足の選手にピッタリのポジション。

15 フルバック(FB)
最終ラインで待ち受ける防御の要。サッカーのゴール・キーパーのような役割を持つ。

ラグビーのグラウンド

ラグビーのグラウンド

用語解説

オフサイド
サッカーと同様、ボールを持っている味方のプレーヤーより前にいたプレーヤーが、ボールに触れるなどしてプレーに参加すること。ラグビーの場合は、ボールの落下地点よりいったん10メートル戻ってから再びプレーへの参加が認められる。

シンビン
重大な反則を犯した選手が、10分間限定で退場する罰則措置。

スクラム
お互いのFWが組み合う、ラグビーではお馴染みの光景。スクラム形成時は、足でのみボールの操作を許される。

ダイレクト・タッチ
自陣22メートル・ラインより前で蹴ったボールが、バウンドせずに直接タッチラインの外に出ること。ダイレクト・タッチと認められた場合は、蹴った地点から最も近いタッチライン上で相手チームによるラインアウトで試合が再開する。

ドロップ・アウト
相手チームによって蹴り込まれたボールを、守っているチームがインゴール内でボールを地面に着地させたり、相手チームが蹴ったボールが自陣デッドボールラインより外に出ること。試合は中断され、守っていたチームによるキックでゲームが再開する。

ノーサイド
80分の試合時間が終了したことを意味する。フェアプレー精神を尊重するラグビーにおいては、試合終了後は「敵サイドも味方サイドもない」という思想からこの名が付いた。

ホイール
スクラムが90度以上回転すること。スクラムの組み直しとなる。

ライン・アウト
ボールがタッチラインから外に出た際に、ボールを出した選手の反対側の選手がゴールラインと平行な線に投げ入れてプレーを再開すること。

理由6:個性豊かなチームばかりだから。

各国代表チームは国々で異なるラグビー文化や選手層、そして監督の方針を反映して、それぞれ独自のプレー・スタイルを持っている。ここではそういった各国の戦況分析と、今大会での注目すべき選手を紹介しよう。



イングランド

フランス

アイルランド

ウェールズ

スコットランド

イタリア

理由7:英国はラグビーの母国だから。

ラグビーとサッカーという、共に英国で生まれかつ現代まで支持を集めるこの2大球技は、元々は同じ「フットボール」を母体としている。

19世紀前半、イングランドにあったいくつかの名門パブリック・スクールの生徒たちは、休み時間や放課後になると決まって「フットボール」に興じていた。この時点ではまだ近代フットボールは確立されておらず、学校ごとに設定された独自のルールの下でプレーしていたという。ただ注目すべき点は、当時の「フットボール」では、どの学校においても蹴り上げられたボールを手を使って捕球したり、そのままつかんで走ったりするのが許されていた、ということだ。

やがてこれらパブリック・スクールの生徒たちは大学に進学した際、「フットボール」の共通したルールが存在しないため他校出身者同士で試合ができない、という問題に直面した。そこでケンブリッジ大学の生徒は1839年、統一したルール・ブックの作成に取り掛かる。同じ頃、イングランド北東部ラグビーに位置するパブリック・スクールのラグビー校では同校独自のルールブックを文書の形でまとめ始めたことから、同校のルールも段々と世に広まっていった。

やがて主流となっていったケンブリッジ大学派とラグビー校派の2つのルールをさらに統一しようと、ロンドン全体の「フットボール」を管轄するアマチュア・クラブ協会が乗り出した。しかしここで問題となったのが、「ハッキング」と呼ばれる選手が手に持ったボールに対する膝蹴りに対する見解。危険なので一切禁止すべきとするケンブリッジ大学派と、膝蹴りこそがこのスポーツの最大の魅力とするラグビー校派の主張はお互い相容れないままに決裂した。

やがてケンブリッジ大学派が推進した「フットボール」が近代サッカーのルールとして1863年に制定され、もう一方がラグビーとなって発展したのだ。おもしろいのは、この時点に至ってもケンブリッジ大学派、ラグビー校派のどちらにおいても手を使うことについては異議が出ていなかったこと。スローイン、ゴール・キーパーなど、近代サッカーにおいていまだに手を使うことが許されるのは、こういった歴史の名残りだという。

虚構のエリス少年?

ラグビーの歴史を語る際に必ず出てくるのが、ラグビー校出身の実在の人物ウィリアム・ウェブ・エリス少年の物語。「サッカーの試合に熱中していた彼が、興奮した余りに思わずボールを手に持って突進してしまった事件がラグビーの原型となった」という、少年のひたむきさとラグビーへの情熱を表した美しきエピソードとして語り継がれている。

しかし実際のところ、この事実を裏付けるさしたる証拠はないという。ましてや前述の通り、そもそもエリス少年が生きていた18世紀前半の「フットボール」では、まだ手を使うことが許されていたのだ。

ではなぜ彼の「伝説」がここまで広まったのだろうか。これに関しては膝蹴りをめぐって分裂したサッカーとラグビーが、お互い本家本元を争う中で創作された疑いが強いようだ。実際エリス少年の物語は、両者の分裂が決定的になった1863年以降になってから聞かれるようになった。美しきラグビー誕生秘話の裏には、そんな政治的な事情が潜んでいたのだ。

理由8:ラグビー・ファンは良い人が多いから。

ラグビーを好きな人、というとマッチョで強面のイメージばかりが先行するが、実はラグビーのファンは結構マナーが良い。アウェーのファンを競技場の隅っこに追いやった上に相手側のファンを罵倒し続けるサッカーと違って、ラグビーでは観客席がホームとアウェーに分かれていないので、小競り合いなども滅多に発生しない。むしろ試合会場では「良し、ナイス・プレー」といった好意的な掛け声が目立つなど、上品に応援するのが特徴。また「ノーサイド」というラグビー用語が象徴するように、試合終了後には他国のファンと一緒に飲みに出掛けたり、電話番号を交換したりして新たな交流を深める、といった光景もよく見られるはず。プロ化が進むまでは代表選手たちまでもが試合後に対戦相手と一緒に杯を交わし、歌のコンテスト、飲み比べ大会を行うのが「義務」でさえあったという。今でも残るそんなラグビー独特のフレンドリーさって、なかなか良いものだ。

理由9:ついでに言えば、ラグビーってちょっと気品が高いから。

大男たちが激しく体をぶつけあう、猛々しいイメージを持つラグビー。しかし英国においては高貴なスポーツとしての顔も持っており、「サッカーは凶悪な人間による紳士のスポーツ、ラグビーは紳士がプレーする凶悪なスポーツ」という言い回しもあるほど。この点について、ラグビー博物館の館長を務めるジェッド・スミス氏に話を聞いてみた。

ジェッド・スミス氏かつてラグビー選手には、2つの階層が存在しました。1つは、イングランド北部の労働者階級に属する兼業選手。彼らには生活がかかっているので、試合出場の際に給料の支払いを要求しました。それに反発しアマチュアリズムを標榜したのが、オックスフォード大学やケンブリッジ大学に代表されるエリート階級であり、こちらが後の英国におけるラグビーを先導することになります。

一方、サッカー界は依然エリートによって牛耳られながらも、草の根レベルでは労働者階級を受け入れたことで大衆的スポーツとして認知されるようになりました。日本では、ラグビーというと野蛮なスポーツというイメージを持つ人が多くいるみたいですが、英国では高貴な趣味なのです。ほんの20年ぐらい前までは、若い娘さんが婚約者としてサッカー選手の男性を紹介すれば親は顔をしかめるが、ラグビー選手だったら胸をなで下ろす、そんな時代だったのです。チーム・プレーの要素が強く、仲間との一体感を得ることができるということで、現在でもパブリック・スクールにおける体育の授業ではラグビーの指導が奨励されています。

ラグビー博物館ラグビー博物館
イングランド代表のホームグラウンドであるトウィッケナム・スタジアムに隣接する博物館。「フットボール」がラグビーとサッカーに分化していくまでの過程や、各代表の過去の記録を残した貴重な映像資料を閲覧できる。

Museum of Rugby
Twickenham Stadium
Rugby Road, Twickenham TW1 1DZ
開館時間: 火〜土10:00〜17:00、日11:00〜17:00
料金: £10(学生£7)
Tel: 0870 405 2001
www.rfu.com/microsites/museum

理由10:なんせ2カ月間も楽しめるから。

各国会場を渡り歩きながら試合が開催されるシックス・ネイションズの今後の日程は、以下の通り。BBC1でもテレビ生中継されるので、週末のパブは歓声で湧き上がること間違いなしだ。

2月10日(土) 13:30 イングランド対イタリア
ロンドン、トウィッケナム・スタジアム
15:30 スコットランド対ウェールズ
エディンバラ、ムレイフィールド・スタジアム
2月24日(土) 15:00 スコットランド対イタリア
エディンバラ、ムレイフィールド・スタジアム
17:30 アイルランド対イングランド
ダブリン、クロークパーク・スタジアム
20:00 フランス対ウェールズ
サン・ドニ、スダテ・ドゥ・フランス
3月10日(土) 13:30 スコットランド対アイルランド
エディンバラ、ムレイフィールド・スタジアム
15:30 イタリア対ウェールズ
ローマ、スタディオ・フラミ二オ
3月11日(日) 15:00 イングランド対フランス
ロンドン、トゥウィッケナム
3月17日(土) 13:30 イタリア対アイルランド
ローマ、スタディオ・フラミ二オ
15:30 フランス対スコットランド
サン・ドニ、スダテ・ドゥ・フランス
17:30 ウェールズ対イングランド
カーディフ、ミレニアム・スタジアム

www.rbs6nations.com

ラグビースタジアム

*掲載当時の情報です

 

極楽スパでリラックス

極楽スパでリラックス

 

年末年始のバタバタがようやく落ち着き始めるこの時期には、今まで溜まった疲れが一気に出てくることもありがち。今回はストレス社会に生きる現代人のためのオアシス、スパ特集をお届けします。スパというと女性向けという印象がありますが、疲れの溜まり具合に性別は関係ありません。癒しを求める紳士のために今回は男性用スパも取り上げたので、男性読者も必読です。極楽度100%保証付。(本誌編集部: 筒井和美)






英国で唯一温泉水が湧きあがる場所、バース。ここには、キングス・スプリング、クロス・スプリング、ヘルタリング・スプリングという3つの源泉があり、その歴史は紀元前8000年頃まで遡ることができる。遥か昔にはローマ人たちが遊興にふけり、中世には歴代の王侯貴族たちが保養に訪れ、シェークスピアの文献にまで現れる由緒正しき保養地として繁栄を極めた。 第二次大戦後には負傷した兵士たちがここで傷を癒し、1948年にはバースでのスパ治療がNHSに正式に認められるようになった。しかし1976年、NHSがスパ治療への財政的支援を停止したことからバースのスパは財政難に陥り、1978年には市内各地のスパがとうとう閉鎖に追い込まれてしまった。「バース」とは名ばかり、実際に入浴できる温泉はなく、昔の栄光を見学するだけのスパとなってしまっていたのだ。そんな窮地を救ったのが、ナショナル・ロッタリーによる補助金だった。

1997年11月13日、ナショナル・ロッタリーが778万ポンド(約17億円)を再開発資金として提供することを発表し、バースの街は歓喜に沸いた。それから、約9年の歳月を費やして2006年8月にようやく完成したのが、このテルメ・バース・スパ。新しく完成したニュー・ローマン・スパは、プールが3つ(内1つはトリートメント用のプライベート)に、アロマセラピーを施したスティーム・ルームが備え付けられていたモダンなスパ・リゾートだ。目玉はなんといっても40種以上のミネラルを含んだ「天然の温泉」。ここでは毎日約100万リットルもの湯が湧き出しているのだ(源泉は45℃だが、スパでは36℃程度に薄められている)。屋上には、バースの絶景を眺められるプールがある。 ここで、プカプカ身体を浮かばせながら空を眺めているとまさに極楽。ストレス解消にもってこいの場所だ。

  • 水着着用必須。訪問時には水着をお忘れなく。
  • トリートメント・ルームは2フロアあるので、当日受付で実施場所の確認を忘れずに。
  • ニュー・ローマン・バスより規模の小さいクロス・バスも一般開放されています。

Thermae Bath Spa

Hetling Pump Room,
Hot Bath Street, Bath BA1 1SJ
Tel: 01225 33 5678(問い合わせ)
01225 33 1234(予約)
www.thermaebathspa.com
営業時間: New Royal Bath 9:00-22:00(最終入場は20:00)、Cross Bath 10:00-20:00(最終入場は18:30)
最寄駅: Bath Spa駅(ロンドン、Paddington駅から約1.5 時間)

トリートメント一例と料金:

スパ・セッション(スパ利用のみ)
New Royal Bath 2時間£20、4時間£30、1日£50、Cross Bath 1時間30分£12 *レンタル料金: タオル£3、スリッパ£2、バスローブ£4(持ち込み可)
スパ・パッケージ
テルメ・テスター(2時間のスパ・セッション、バック・マッサージなどのセット)£65、テルメ・トリート(4時間のスパ・セッション、軽食、ホット・ストーン・マッサージのセット)£85
各種トリートメント
フル・ボディ・マッサージ£48(50分)、アロマ・マッサージ£50(50分)、リフレクソロジー£48(50分)、インディアン・ヘッド・マッサージ£38(30分)、タイ・マッサージ£50(50分)、ボディ・コクーン£48〜、ドライ・フローテーション£35〜、ワツ£60(50分)


この日受けたのは、ワツという聞きなれないトリートメント。ワツはカリフォルニアに住む指圧師によって編み出されたと言う水中の指圧(Water Shiatsuが語源らしい)のことだそう。トリートメントは、昔から医療施設として使用されてきたという地階のプール、ホット・バスで行われる。天窓から降り注ぐ日差しが爽やかな直径10メートル程のこの円形プールはワツ専用。1度に施術を受けられるのは1人で、施術中はこのプールに他の人が立ち入ることはないという。なんて贅沢。
担当のセラピスト、ジョアンナさんは、いかにもセラピストといった感じの柔らかい雰囲気の女性。ジョアンナさんからワツの説明を受けた後ホット・バスに入り、彼女の腕に頭を乗せ身体を水中に浮かせる。それから後はすべてセラピストまかせ。水中で、まるで揺りかごで揺られているような浮遊感を全身に感じながら受ける軽い指圧マッサージが最高に心地良かった。身体よりも心に効きそうなトリートメントで本格的なマッサージとはまた違うが、この水中を漂う海藻感覚がなんとも深いリラクゼーションに導いてくれるのだ。施術後は、ただただ脱力。出されたハーブ・ティーを抱えたままの放心状態が続き、しばらく現実に戻れませんでした。
バースの街を一望できる屋上のルーフ・スパ、異なったエッセンシャル・オイルが用いられた4つのブースがあるスティーム・ルームもおすすめです。男女比は半々ぐらい。年齢層の幅も広く、老若男女のスパといった感じです。

スパという言葉はよく聞くけれど、いまいちその実態がつかめていない人も多いのではないでしょうか? スパの語源には、ラテン語の「水による健康」を意味する「Sanitas Per Aquas」や「水による癒し」を意味する「Solus Per Aqua」の頭文字という説やベルギー南東部の温泉地「Spa」からという説など様々ないわれがあります。しかし、どれも水や温泉に関る治療施設を意味することには変わりありません。正確に言うとスパは温泉施設のこと。だけど現在では、プール・サウナなどの簡易温泉施設にセラピーなどのメニューが付いたものをスパと呼ぶことが多く、リラクゼーション、ストレス・ケア、メディテーション、自然療法、ビューティー・トリートメント(エステ)を提供する場所として知られています。最近ではス
パ・キュイジーヌという言葉も生まれ、スパの「食」分野への進出も始まっています。「身体、精神の両面を癒し、生活をトータルでサポートする場所」、これが現代のスパの解釈と言えるでしょう。



英国生まれの自然派化粧品エレミスが手掛けたエキゾチックなスパは、ドアを開けたその瞬間から、時の流れが止まったような静寂さに包まれる空間。静けさの中にほのかに漂うエッセンシャル・オイルの香りに嗅覚が刺
激され、五感が研ぎ澄まされるような体験を味うだろう。中は、バリ、チベット、ポリネシア、日本、モロッコ、タイをテーマとした空間に分かれており、それぞれの部屋で雰囲気はガラリと変わる。カップルで入れるサウナがあるモロッカン・スィートは特に人気があり、数カ月先まで予約が詰まっているとのこと。赤いシルクでデコレートされたセンシュアルなバリニーズ・スィートもおすすめ。

ここで受けられるトリートメントはかなりの数に上り選択の幅が広いが、一度くらいは、各種トリートメントがセットになったエレミス・ディ・スパ自慢の「リチュアル」を試して、ゴージャスな気分に浸りたい。

Elemis Day Spa

2-3 Lancashire Court, London W1S 1EX
Tel: 0870 410 4210(英国外からは、+44 (0)20 7499 4995)
www.elemis.com
営業時間: 月〜木9:00-21:00、金・土9:00-20:00、日10:00-18:00
最寄駅: Bond Street駅
トリートメント一例と料金: アロマ・ストーン・セラピー£90(75分)、ディープ・ティシュー・バック・マッサージ£50(30分)、ハワイアン・ウェーブ・フォー・ハンズ・マッサージ(ロミロミ)£140(75分)、アロマ・スパ・オーシャン・ラップ/フロート£90(75分)、ウェルビーイング・マッサージ£70(60分)、タイム・フォー・トゥー(カップルズ・リチュアル)1人あたり£90(60分)、クレオパトラズ・リチュアル£115(90分)、トリ・エンザイム・リサーフェーシング・フェイシャル£70(60分)


古くなった角質を肌表面に押し上げ、肌の新陳代謝を促すという「トリ・エンザイム・リサーフェーシング・フェイシャル」に挑戦しました。ニキビ痕、シミが気になる人に最適の
3つのエンザイム(酵素)を用いたトリートメントだそうです。
ビックリしたのは、フェイシャルなのに足からマッサージが始まること。これは全身のバランスが顔にも繋がるという理論に基づいているとのこと。気分がくつろいだ所で、まずは最初のエンザイム(バジル)で顔をクリーニング。その後は、ペパーミントのエンザイムを塗りしばらく置くのですが、神業のような指の動きが心地良い。少し肌がヒリヒリしたけれど、これは普通でまったく問題ないとのこと。
このエンザイムが働いている間、腕、首、肩を念入りにマッサージしてくれたのですが、これがもう最高。力加減が絶妙で、身体がとろけるような極楽気分を味わいました。寒くないようにと、マッサージが終わった部位から大きなタオルに包んでくれる心遣いもさすが(終了時には蚕のようになっていました)。この後、あまりの気持ち良さに少しウトウトしてしまったのか、気付いた時には、3段階最後のエンザイム(レモン)を浸透させ終わった後。
老廃物が取り除かれた肌は、ツルツルピカピカで、触るとふんわり。ゆったりとしたトリートメントで肌が生き返ると、気分まで優雅になるのはどうしてなんでしょう。男性客が40%とのことで、ウェイティング・ルー
ムにカップルが多かったのが印象的でした。


読者プレゼント
トリ・エンザイム・リサーフェーシング・フェイシャル

トリ・エンザイム・リサーフェーシング・フェイシャルの発売を記念して、フェイシャル・ウォッシュ、リサーフェシング・セラム、リフレッシング・ナイト・クリームの3点が含まれたフェイシャル・セット(£200相当)を1名様にプレゼントします。プレゼント応募方法はこちらをご覧下さい。エレミス製品の詳細、あるいはご購入についてはこちらまで。Tel: 01278 727830、www.timetospa.co.uk



英国初のジェントルマン専用スパ。散髪、髭剃りと言った床屋的な作業から、男性のためのマニキュア(爪の手入れ)、日焼け用のサンベッドそして全身マッサージといったトリートメントまで、ここ一軒でグルーミングのすべてが済んでしまう画期的な場所だ。
男性専用と言っても、ジムの様な男くささはなく、ダンディズムが溢れる高級感漂うスペースとなっている。また、スパのトリートメントを受けている間に、アイロンがけやシュー・ポリッシュなどのサービス(無料)を利用できるのも男性向けならではの嬉しいサービスではないだろうか。
忙しい男性のために、15分でトリートメントを受けられる「The Pit Shop」というサービスも提供。店内ショップの男性用スキンケア用品、ヘアケア用品の品揃えは圧巻。

The Refinery

<メイフェア店>
60 Brook Street, London W1K 5DU
Tel: 020 7409 2001 最寄駅: Bond Street駅
<ハロッズ店>
Knightsbridge, London SW1X 7XL
Tel: 020 7893 8332 最寄駅: Knightsbridge駅
<シティ店>
38 Bishopsgate, London EC2N 4AJ
Tel: 020 7588 1006 最寄駅: Liverpool Street / Bank駅
営業時間: 月・火10:00-19:00、水〜金10:00-21:00、土9:00-18:00、日11:00-17:00
www.the-refinery.com
トリートメント一例と料金: 髭デザインとウェット・シェーブ£40、スポーツ・セラピー・マッサージ£83、トラディショナル・マッサージ£40〜、リファイナリー・バランシング・ボディ・トリートメント£115(90分)、リファイナリー・アンティ・エイジング・フェイシャル£120、ワックス£25〜


4人ほどの若い女性スタッフが笑顔で迎えてくれた後、個室に赴き、まずは「リファイナリー・シグニチャー・フェース・アンド・ボディ・トリートメント」を受ける。上半身裸になった後、うつ伏せで背中、そして仰向けで顔のオイル・マッサージ。毎朝急いで冷たい水でバシャバシャするだけの顔を、丁寧にネットリと洗ってもらって、申し訳ない気持ちになる。それから特別な装置で顔に蒸気を吹きつけられ、柔らかくなった皮膚から毛穴の汚れの掃除。毛穴の汚れがないと褒められたが、こんなことで評価される男性って世界にどれだけいるのだろうか。首のマッサージは最高で、平日の昼間に一切のストレスから解放されるなんて、ちょっと贅沢過ぎかもと罪悪感さえ覚えたぐらいだ。次に「エグゼクティブ・マニキュア」を試す。爪をきれいに整え、普段はほったらかしの甘爪も引っかいてピカピカにしてくれる。ただし、マニキュアはなし。ちょっと期待していたので尋ねてみたら「ノット・フォー・メン!」と一笑された。
男性専用スパと聞いて、どんな人が通うのだろうと想像が膨らんだが、待合室にいたのは、アルマーニのスーツを着た恰幅の良い初老の男性を始め、ビシッとスーツで決めたビジネスマン風の男性がほとんどだった。ここは、むしろ紳士クラブ的な役割を持った場所なのかも知れないと思った。


読者オファー スパ・デビューはいかが?

英国ニュースダイジェストの(男性)読者は、通常£120の「The Refinery Anti-Ageing Facial」を20%オフで体験できます(全店共通)。予約の際に「Eikoku News Digest Offer」とお伝えください。

NEWS! ザ・リファイナリー日本支店オープン
来月、旧防衛庁跡地に開業予定の東京ミッドタウン、ガーデンサイド(港区赤坂九丁目)に待望の日本支店がオープンします。日本支店は、シュウ・ウエムラ氏の総合プロデュースによる美と健康と文化の聖域「shu sanctuary- シュウ・サンクチュアリ」内に設置され、バーバリング、スキンケア、スパ・トリートメントなどのグルーミング・サービスをワンストップで提供する場所となる予定。日本への出張時に利用してみてはいかが?






名門ホテル、マンダリン・オリエンタルご自慢のラグジュアリーなスパ。一歩足を踏み入れると、そこは街中の喧噪が嘘のように静寂が漂う空間だ。究極のリラックスを提供するに相応しい禅をテーマとしたスッキリとしたインテリアは、日本人建築家デュオAZUMIによるデザイン。室内はキャンドル・ライトで薄暗く照らされ、そこにいるだけでスーッと気持ちが静まるのが実感できる。
この空間にいるだけでも癒し効果がありそうだが、オープン当初から数々の賞を総なめにしているというこのスパのトリートメントの実力は侮れない。東洋と西洋のエッセンスを効果的に融合させた各種トリートメント・プログラムは極楽そのもので、トリートメント後はほど良い脱力感を体験できるはず。時にはこんなラグジュリアスなスパで思いっきり自分を甘やかしてみては?

Mandarin Oriental Hyde Park

66 Knightsbridge, London SW1X 7LA
Tel: 020 7838 9888 www.mandarinoriental.com
営業時間: 毎日7:00-22:00(トリートメントは7:30-21:30)
最寄駅: Knightsbridge駅
料金: アーリー・エナジャイザー£85(月〜金7:00-9:00のみ予約受付)、バリニーズ・マッサージ£150(1時間20分)、ハーフ・デイ・プログラム<オリエンタル・リチュアル>£275、フル・デイ・プログラム<バランシング・リチュアル>£350



水の力を徹底的に利用したハイドロセラピー(水治療法)が充実しているスパ。英国で最も素晴らしいスパに贈られる「デイ・スパ・オブ・ザ・イヤー」を何度も受賞していることからも、その実力がうかがえよう。6つの温泉プールの中でも、幻想的なインテリアが施されたフローテーション・プールは是非試して欲しい場所。21種類のミネラル成分を含む死海の塩を利用したこのプールにフワフワと体を漂わせると、日頃のストレスがスーと消えていくから不思議だ。アンチ・エイジングなど各種ビューティー・トリートメントのほか、関節炎、筋肉痛、リハビリなど体調に合わせたトリートメントを提案してくれるので、男性にもお勧めしたい。メディテーションなど心に働きかける講座も提供しており、心身共にリフレッシュできること請け合い。

Nirvana Spa

Mole Road, Wokingham, Berkshire RG41 5DJ
Tel: 01189 89 7575 www.nirvanaspa.co.uk
最寄駅: Winnersh駅(ロンドン、Paddington駅から約1時間)
営業時間: 毎日<デイ>8:30-17:00 、<イブニング>17:30-22:15(金〜日は10:45まで)
料金: <フローテーション・エクスペリエンス>デイ・パッケージ£99(月〜木)、£125(金〜日)、イブニング・パッケージ£59(月〜木)、£69(金〜日)*各種トリートメントは別料金。トリートメントを含むパッケージも有。



ウェストミンスター区の運営する公共スパ。自治体運営とはいえ、ターキッシュ・ホット・ルームズ(ターキッシュ・バス)が3つ、ロシアン・スティーム・ルームが2つにフィンランド式サウナと冷水プールがある本格派。インテリアもアール・デコ・スタイルを取り入れたエレガントなものなので、優雅な気分を味わえるはず。曜日によって、男性専用、女性専用、カップル専用と分けられているので、予約時の確認を忘れずに。ボディ・スクラブ、全身パック、マッサージなどの各種トリートメントは別料金(要予約)で受けられる。

読者オファー ダイジェストを持参すると25%オフ!

この記事が掲載された「英国ニュースダイジェスト」を持参された方には、入場料が25%オフになります。有効期限は2007年2月28日(水)まで。

Porchester Spa

The Porchester Centre, Queen's Way, London W2 5HS
Tel: 020 7792 3980
最寄駅: Bayswater/Queensway/Royal Oak駅
営業時間: 毎日10:00-22:00(火・木・金は女性のみ、月・水・土は男性のみ)
料金: 3時間£ 20.35( カップルは2人で£28.25)
*ウェストミンスター区住民やスパ・メンバー(月会費£59)には割り引き制度有。各種トリートメントは別料金。



お気に入りのバス・グッズを揃えただけで、自宅がスパに早変わり。ゆっくりできる週末などに、自分を思い切り甘やかしてみては? おすすめバス・グッズを紹介します。


REN
Moroccan Rose Otto Bath Oil £22.50(140ml)

夜明けに摘んだバラの花びらから抽出した最高級のローズ・オットーを含んだバス・オイル。お風呂にこのオイルを一滴たらしただけで、芳しいバラの香りが匂い立つ。お値段が張るけれど、それだけの価値有り!
★★★★★

The Sanctuary Bath & Bodycare
Lomi Lomi Relaxing Floral Bath £9.95(500g)

ハワイをイメージしたサンクチュアリーの新製品。甘いフローラルの香りに包まれたゴージャスなバス・タイムが体験できる花びら入りのバス・ソルト。湯船に浮かぶ花びらを眺めると優雅な気分に浸れること請け合い。
★★★

Molton Brown
Seamoss Stress Relieving Hydrosoak £16.00(300g)

死海の塩に海藻成分、収れん効果のあるセイヨウトチノキ成分を混ぜたバス・ソルト。個性的な匂いは好みが分かれそうだけど、身体から毒素を取り除くデトックス効果は絶大。
★★★



The Sanctuary Bath & Bodycare
Body Wash £4.25(250ml)

忙しい朝こそ大切にしたいシャワー・タイム。このボディ・ウォッシュを使えば、慌しい朝のバス・ルームがスパに早変わり。エッセンシャル・オイルの香りに包まれ気分はゆったり、セサミ&ホホバ・オイル入りのモイスチャー・カプセルで肌もしっとり。
★★★

REN
Seaweed and Sage Body Wash £13.00(200ml)

肌の活性化に働きかける海藻成分とセージ、ジェラニウム、ローズマリーなど、気分を明るくしてくれるエッセンシャル・オイルを配合したボディ・ウォッシュ。ハツラツとした気分になりたい朝のシャワー・タイムに。
★★★★


The Sanctuary Bath & Bodycare
Sento Invigorating Detox Scrub £9.95(400ml)

日本の銭湯からヒントを得たというこのSentoシリーズは、デトックス効果のあるワサビ成分(?)、肌をしっとりさせる酒など「和」の素材にこだわっている。シトラスの爽やかな香りに包まれながらスクラブして、体ピカピカに。
★★★★

Bodyshop
Spa Wisdom Africa Spa Salt Scrub £14.00(350ml)

モイスチャライジング効果大のガーナ産シア・バター、ザンビア産のビーワックスなどを使用したスクラブ。古くなった角質を塩が優しく掃除し、きれいになった肌をシア・バターとビーワックスが潤す。懐かしいフローラルの香りに癒されそう。
★★★


The Sanctuary Bath & Bodycare
Body Lotion £4.50(250ml)

甘くリラックスできる香りが1日中持続するので、このローションをつけた日は心なしか穏やかな日が過ごせそう。セルライトに効くジンジャー成分が入っているのに期待。
★★★★

The Sanctuary Bath & Bodycare
Lomi Lomi Relaxing Body Oil £7.95(250ml)

しっとりするのにベタつかず、サラサラの肌触りになるボディ・オイル。ハワイの花々をイメージした香りも芳しくリラックス効果大。バス・ソルトとお揃いで使いたい
★★★★


The Sanctuary Bath & Bodycare
Rasul Mud £5.95(200ml)

週末など時間のある時に使いたい全身泥パック。お風呂にお湯をためている時に、全身に行き渡るようにパックし、後はそのままお風呂にドボン。デトックス効果有り。
★★★★
RMK
RMK Clear Jelly Sheet £32(6回分)

保湿成分たっぷりの美容液をジェル状に固めたぷるぷるのシートマスク。モチモチの弾力あるみずみずしい肌になること保証。ほのかなミントの香りが、スパでのリラックス感をもたらしてくれる。
★★★★
1)お風呂に入る前やシャワーを浴びる前には、タオル、バスローブなどをラジエーターにかけるなどして充分に温めておきましょう。入浴後クリームなどで肌を潤おわせ、暖かいバスローブに身を包むと、自宅でボディ・ラップ気分。余裕があれば、ソックスも温めてさらにポカポカ感をアップ。

2)シャワーを浴びる直前に熱めの温度でシャワーをしばらく流し、スティームが充分に上がった所で床に好みのアロマ・オイルを3〜4滴撒きましょう。バス・ルーム全体に、エッセンシャル・オイルの香りが漂い、気分もリフレッシュ(気分を明るくしたい時は、バーガモット、ジェラニウム、オレンジなどのオイルを。逆にリラックスしたい時は、ラベンダー、ジャスミンなどを選びましょう)。





フラワー・ショップ、ギフト・ショップも備えたサロン。全面ガラス張りの明るい店内には、マッサージ用のチェアが並べられ、気持ち良さそうにマッサージを受ける人の姿が見受けられることも。これらのエナジャイジング・チェア・マッサージは10分10ポンドからあり、ちょっと疲れた時に気軽に寄れるのが魅力。奥では、ストーン・セラピーなどの本格的トリートメントを行っている。

Relax

65-67 Brewer Street, London W1F 9UP
Tel: 020 7494 3333 www.relax.org.uk
営業時間: 10:00-21:00
トリートメント一例と料金: アロマセラピー・マッサージ£40(30分)/£65(60分)、タイ・マッサージ£35(30分)/£60(60分)、インディアン・ヘッド・マッサージ£35(30分)/£60(60分)、リフレクソロジー£35(30分)/£60(60分)、ラ・ストーン・セラピー£82(75分)、エナジャイジング・チェア・マッサージ(クイック・マッサージ): £10(10分)〜



スパなどのサロンより敷居が低いので、疲れた時に気軽に立ち寄れるのが嬉しいリフレクソロジーの店。お値段も25ポンドからと良心的。経験豊富なリフレクソロジストが揃っているので、店を出る頃には疲れが溜まっていた足が軽くなること請け合い。65ポンドから出張サービスの依頼も可能(詳細はTel: 07958 088 044)。

Reflexions

<Whiteleys店>
First Floor, Whiteleys Shopping Centre, Queensway, London W2 4YH
Tel: 020 7792 9492
<Chelsea店>
250 Kings Road, London SW3 5UE
Tel: 020 7349 9475
www.reflexions.demon.co.uk
営業時間: 毎日12:00-20:00
トリートメント一例と料金: ハーフ・アワー・イントロダクション£25(Whiteleys)/£27(Chelsea)、ワン・アワー・リフレクソロジー・セッション£40(Whiteleys)/£43(Chelsea)、ヘッド・ネック・ショルダー・マッサージ£27(Whiteleys)/£29(Chelsea)、ワン・アワー・フル・ボディ・マッサージ£55(Whiteleys)/£60(Chelsea)


店内にはマッサージ・チェアが幾つも並んでいて、日本で見られる足裏マッサージ店のよう。備え付けのリフレクソロジー用の椅子はぐらぐらと不安定だけど、一旦腰をかけるとセラピストが椅子の位置調整をしてくれ、座ったままで横になれて快適。肝心のマッサージは、ソフト・タッチでちょっと物足りなさを感じたが、終了時には、ガチガチだった首が少し楽になったような気がしたのは思い過ごしだろうか? 予約なしでもOKなので、何かと重宝しそうな感じ。


 


スパのメニューで聞きなれないセラピー名やマッサージ名を見て不安を覚えたりしたことはありませんか? そんな方のためによく見られるメニューについての解説です。*スパ・サロンによって微妙な違いが見られることがありますので、施術を受けられる前に、何が含まれるのか必ず確認しましょう。


アロマセラピー

植物から抽出したエッセンシャル・オイルを用いたトリートメント、マッサージ。症状に合わせたオイルを選ぶことで効果が期待できる。

タラソセラピー
海水、海藻、海泥などを使用したフランス生まれの自然療法。海のミネラルがたっぷり含まれたパックなどがオススメ。

アーユルヴェーダ
サンスクリット語で「生命の科学」を意味するアーユルヴェーダは、インドで現在も信頼されている民間医学。ヨガ、瞑想などで精神面もサポートし、病気になりにくい身体を作るのが目的。トリートメントでは、デトックス効果のあるアビヤンガ・マッサージなどが代表例。

リフレクソロジー
身体に点在する反射域を刺激して、身体のバランスをとるセラピー。反射域は手にもあるが、足の反射域を刺激するフット・マッサージがほとんど。



スウェディッシュ・マッサージ
(ディープ・ティシュー・マッサージ)

少量のオイルを用いて、揉む、擦る、叩くなどの手技(比較的強い力)を組み合わせたマッサージ。筋肉の痛みの解消に適している。

タイ式マッサージ
指圧とストレッチを組み合わせたマッサージ。マッサージというよりは「2人でするヨガ」といった方が的確かも? ゆったりとした動作が深いリラックスを誘ってくれる。

ホット・ストーン・マッサージ
(ストーン・セラピー)

表面がツルツルとした石を50〜60度ぐらいに温め、この石をオイルを塗った体の上を滑らせるマッサージ。ツボに石を置くことで、全身の緊張を和らげる働きもある。

バリニーズ・マッサージ
指や手のひらを用い、長くゆったりとしたストロークを用いて円を描くような動きで全身をほぐすオイル・マッサージ。単純なマッサージなので、どこで受けてもハズレは比較的少ない。

ロミロミ・マッサージ
かつては王族のみが受けられたというハワイ伝統のマッサージ。腕と肘を使ったゆったりとした動きで全身の凝りをほぐす。ロンドンでロミロミを受けられるところはまだ少ない。

 

ベアトリクス・ポターの生涯を描いた映画「Miss Potter」のロケ地を訪ねる

ベアトリクス・ポターの生涯を描いた映画 「Miss Potter」のロケ地を訪ねる

ベアトリクス・ポター Miss Potter

「ピーター・ラビットのおはなし」などで日本でも有名な絵本作家ベアトリクス・ポターの生涯を描いた映画「Miss Potter」が1月初旬に英国で公開された。日本人の間で特に根強い人気があるピーター・ラビットの作者だけに、今年9月に予定されている日本での同映画公開後には、彼女が生活の拠点とした湖水地方への旅行が日本でブームになるとも言われている。そこで今回は一足お先に、映画のロケ地と合わせてポター縁の地をご紹介。多彩な経歴を持つ彼女の魅力もたっぷりとお伝えします。(本誌編集部: 長野雅俊)

映画「Miss Potter」(邦題:ミス・ポター)映画「Miss Potter」(邦題:ミス・ポター)
「ピーター・ラビット」で有名な絵本作家ベアトリクス・ポターの半生を追った物語。ポターを米女優レニー・ゼルウェガーが、その婚約者を英俳優ユアン・マクレガーが演じる。ポターが実際に過ごした湖水地方の各名所をロケ地として使用し、またピーター・ラビットを始めとするキャラクターがCG映像で描かれるなど、家族全員で映像美を楽しめるファミリー映画。

1スクリーン全体に映し出される絶景
ターン・ハウズ
Coniston and Tarn Hows

ターン・ハウズ「Miss Potter」では、湖水地方ならではの美しい風景のカットがストーリーの合い間で効果的に使われている。その1つが、1929年にポターが購入したターン・ハウズと呼ばれる小さな湖と、その周りを囲う広大な敷地。遠景には山々が連なっており、その他の観光スポットとは一線を画した険しいぐらいの野性味溢れる景色が広がっている。この辺りまで来ると観光客の数もぐんと減るので、湖水地方のまた違った顔を発見することができるかもしれない。特にターン・ハウズを取り巻く周囲約2.5キロの散歩道はのどかで美しい。
Coniston and Tarn Hows
Tel: 015394 41533(ツーリスト・オフィス)
www.conistontic.org

2未来の夫の事務所
ザ・ラム・ストーリー
The Rum Story

ザ・ラム・ストーリー後にポターの夫となる事務弁護士ウィリアム・ヒーリス氏の事務所として撮影に使用されたのは、ちょっと意外な場所。ここはかつてラム酒貿易で栄えたホワイトヘブン地区の歴史をテーマとしたエンターテイメント施設なのだ。施設内にはこのラム酒貿易で莫大な資産を築いたジェファーソン一家のオフィスがあるのだが、「Miss Potter」撮影のためにわざわざ改築が施されたという。かつては貿易に関わる作業について細かい指示を出し、また労働者たちの監視を行ったといういわば司令塔が持つ独特の気高い雰囲気が、当時の事務弁護士が働いた事務所の再現に一役買っている。
The Rum Story
Lowther Street, Whitehaven, Cumbria CA28 7DN
Tel: 01946 592933 
www.rumstory.co.uk

3ポターが庭を耕す場面を撮影
ユー・トゥリー・ファーム
Yew Tree Farm

Yew Tree Farmロンドンの実家を離れて湖水地方に住まいを移したポターが、ヒル・トップと呼ばれる自宅の庭で楽しそうに農作業を行うシーンがある。その撮影が行われたのがこのユー・トゥリー・ファーム。実際ここは、地元の再開発計画から守るためにポターが購入した農場の1つであった。さらにはこの敷地を使って当時はまだ珍しかったB&Bの経営に乗り出し、アフタヌーン・ティーがたしなめる喫茶室まで作ったという。当時の面影はそのまま残っており、敷地の狭さから撮影が見送られた本物のヒル・トップに代わってロケ地としての役割を見事果たした。
Yew Tree Farm
Coniston, Cumbria LA21 8DP 
Tel: 015394 41433 
www.yewtree-farm.com

4ポターが1人佇む湖
ダーウェント湖
Keswick & Derwentwater

ダーウェント湖「Miss Potter」のストーリー後半で、レニー・ゼルウィガー演じるポターが湖畔で佇む姿を捉えたシーンが度々出てくる。このロケ地に多く使われたのが、湖水地方の巨大な国立公園の一部となっているダーウェント湖。実際この界隈には、ポター自身が41歳になるまで家族と一緒に休暇を過ごした別荘があった。ポターはこの地において目にした木々や庭、その他の風景を描いた多数のデッサンを残しており、特に「ベンジャミン・バニーのおはなし」や「ティギーおばさんのおはなし」などの物語の舞台として知られている。
Keswick & Derwentwater
Tel: 01768 772645(ツーリスト・オフィス) 
www.keswick.org

5ロンドンと湖水地方をつなぐ高架橋
セトル・カーライル・レイルウェイ
Settle-Carlisle Railway

セトル・カーライル・レイルウェイロンドンに住んでいた幼き頃のポターが湖水地方へと家族旅行に出掛ける時、また大人になったポターが両地間を移動する際と、2回にわたって大きく映し出されるのが高架橋。英国北部の田園地帯という見晴らしの良い風景の中を、蒸気機関車が走っていく姿は圧巻だ。ロケ地として使われたのは、今でも運行を続けるセトル・カーライル・レイルウェイの線路上。イングランド中央部のリーズからスコットランド近郊カーライルまで北上しながら、英国の田舎に残る美しい風景を車窓に次々と映し出す、希少な路線である。
Settle-Carlisle Railway
Tel: 0845 748 4950 
www.settle-carlisle.co.uk

6ポターの代名詞
ヒル・トップ
Hill Top

ヒル・トップこちらはポターが湖水地方での生活の拠点とした本物のヒル・トップ。家の庭には、彼女が描いた物語の場面そのままの光景が残っている。
Hill Top
Near Sawrey, Hawkshead, Ambleside,
Cumbria LA22 0LF
Tel: 015394 36269 
www.nationaltrust.org.uk

7物語の世界を再現
ベアトリクス・ポターの世界
World of Beatrix Potter

ベアトリクス・ポターの世界絵本に登場するキャラクターの展示するなど、絵本の中の世界をできるだけ忠実に再現した博物館。小さなお子さんなどは、ここに来ればまず間違いなく喜ぶはず。
World of Beatrix Potter
Bowness on Windermere,
Cumbria LA23 3BX 
Tel: 015394 88444

8貴重な資料を保存
ベアトリクス・ポター・ギャラリー
The Beatrix Potter Gallery

ベアトリクス・ポター・ギャラリー小さい頃に受けた英才教育のお陰で、風景画の教養と技術も持ち合わせていたポター。ここでは絵本の世界とはまた一味趣の違った水彩画などが展示されている。
The Beatrix Potter Gallery
Main Street, Hawkshead, Cumbria LA22 0NS
Tel: 015394 36355 
www.nationaltrust.org.uk

9ポターがこよなく愛した別荘
リンデス・ハウ・カントリー・ハウス
Lindeth Howe Country House

リンデス・ハウ・カントリー・ハウス当時ヒル・トップに住んでいたポターが購入した別荘。ここで「カルアシ・チミーのおはなし」や「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」を描いたとされる。
Lindeth Howe Country House Hotel
& Restaurant

Lindeth Hill, Longtail Hill, Windermere LA23 3JF Windermere
Tel: 015394 45759 
www.lindeth-howe.co.uk

ロンドンのロケ地

40歳を過ぎてから湖水地方に引っ越すまでは、ロンドンの実家を生活の拠点としていたポター。このため「Miss Potter」のストーリー前半では、ロンドンで撮影されたシーンも多い。

ポターが通った印刷所
ザ・タイプ・ミュージアム
The Type Museum

ザ・タイプ・ミュージアムまだコンピューターが存在しない時代。当時そのままの状況を保存したこの博物館において、印刷所を訪れたポターが厳しく注文を付けるシーンが撮影された。
The Type Museum
100 Hackford Road SW9 0QU
Tel: 020 7735 0055
www.typemuseum.org

Osterley House親友との出会い
オスターレイ・ハウス
Osterley House

ロンドン郊外にあるチューダー朝建築の別荘。後に婚約するウォーンの姉ミリーと絵を観賞しながら、「女性は結婚するべきではない」と誓い合う場面のロケ地として使用された。
Osterley House
Jersey Road, Isleworth, Middlesex TW7 4RB
Tel: 020 8232 5050

Nigel Williams初版本が並んだ本屋
ナイジェル・ウィリアムズ
Nigel Williams

ポターが自作の絵本が陳列されているのを発見し、興奮するシーンが撮影された古本屋。この通りには、古本屋が多く軒を連ねている。
Nigel Williams
25 Cecil Court, Charing Cross Road
WC2N 4EZ
Tel: 020 7836 7757 
www.nigelwilliams.com

馬車が駆け抜ける道
ハイド・パーク
Hyde Park

ハイド・パーク19世紀の英国を舞台とした「Miss Potter」では、上流階級出身のポターが馬車を使って移動する場面が多く見られる。これらの撮影の大半が行われたのが、ご存知ハイド・パーク。
Hyde Park
Ranger Lodge, Hyde Park W2 2UH
Tel: 020 7298 2100
www.royalparks.gov.uk/parks/hyde_park

ロケ地マップ
湖水地方への行き方
ロンドンのユーストン駅からオクスンホルム・レイク・ディストリクト駅まで約3時間30分。現地には公共の交通機関が少ないので、車がなければツアーを申し込むのが無難。

湖水地方で高まる「日本熱」

レニー・ゼルウィガー撮影のため、2006年に湖水地方を訪れた
際のレニー・ゼルウィガー

2006年12月4日付の「ガーディアン」紙は、日本市場をめぐってコッツウォルズ地方と激しい競争を繰り広げている湖水地方が、まさに千載一遇の機会として日本人旅行者の受け入れ準備を進めていると報じた。同紙によると、現地を訪れる旅行者の約6%が日本人であり、その数は年々増大しているだけに期待は大きいようだ。

また同年8月6日付の「デーリー・テレグラフ」紙は「日本人の侵略に備えるピーターラビットの里」との見出しを掲げて、各旅行関係者たちが、日本語での挨拶とお辞儀の仕方についての勉強が奨励されていると報道。さらに日本独特の過剰包装、「芸術的」とまで呼べるほど整然とした列を成して順番待ちする慣習について学ぶセミナーも開かれているという。

「ベアトリクス・ポターの世界」館長であるリチャード・フォスター氏は「今年は、改めてベアトリクス・ポターの偉大さと湖水地方の固有性とを再認識してもらうには絶好の機会。日本で映画が公開される2007年後半から2008年にかけては、さらに大忙しとなりそう」と喜びを隠せない。彼を始めとする多くの旅行関係者が、映画効果に期待をかけているようだ。

取材協力: 英国湖水地方ジャパン・フォーラム www.kosuichihou.com
カンブリア観光局、Momentum Pictures

 

西邨まゆみさんインタビュー

西邨まゆみさんインタビュー

「She keeps me happy, and healthy」。 世界のスーパースター、マドンナが絶賛し、絶大な信頼を寄せている日本人女性がいる。マドンナ家に住み込み、一家の台所を仕切るプライベート・シェフ、西邨まゆみさんだ。最近は日本のメディアからも声がかかるようになり、また新しい家族も増えて(昨年10月、マドンナがアフリカから養子を迎えたのはご存じの通り)多忙な日々を送る西邨さんが、スケジュールの合間を縫って本誌のインタビューに応じてくれた。(取材・文: 武智 陽子、インタビュー写真: 佐藤 友子)

「私のシェフは日本人よ」。2005年末、マドンナが8年ぶりの来日時に出演した日本のテレビ番組でこんな発言をし、注目を浴びた。

48歳の「ポップの女王」の、年齢を超えた完璧な肢体、驚異的な行動力や強靭な精神に、普段どんな生活をしているのかと興味が沸くところだが、彼女が実践するのは「マクロビオティック」という生活法である。このマクロビオティック(通称マクロ。最近の日本ではマクロビと呼ばれることも)の基本とされるのが「正しい食事」であり、その食事を毎日彼女と彼女の家族のために作っているのが西邨さんだ。

ピンチヒッターからお迎えシェフへ

「そもそもマドンナの家で働くようになったきっかけは、まだ赤ん坊だった彼女の長男の離乳食作りだったんです。普段の住み込みシェフが10日間、休暇を取る際の代理を探していて。私は当時クシ・インスティテュート(米国にあるマクロの教育機関)で料理講師をしていたので、ほんの短期出張のつもりで」。

アレルギーのあった息子の体質改善のため、マクロに興味を持ったマドンナが、数多くの代理シェフ候補の中から西邨さんを選んだのは、「実際に自分の子をマクロで育てた経験があったのが私だけだったからかも」と西邨さん。そう、彼女は22歳の娘と18歳の息子(現在2人とも米国で生活中)の母でもあり、自身のマクロ歴でもマクロでの子育て歴でも、マドンナの大先輩なのだ。

そしてその後、西邨さんがマドンナ一家のレギュラー・シェフとして再採用されたのは、西邨さんがマクロビオティックに関して、ベテランでありながら、非常にフレキシブルで現代的な考え方を持っていたからではないかと思われる。

マクロビオティックとは?

ここで「マクロビオティックとは何か」について、簡単に説明しておこう。

マクロビオティックとは、古代ギリシャ語の「macro」(大きな)、「bio」(生命の)、「tic」(方法)を合わせた造語で、言葉通り「長く有意義に生きる方法」を指す。その方法とは「宇宙の法則に従って生きること」であり、これを実践するには「正しい食事」が最も重要であるというのが基本概念だ。この言葉を最初に使ったのは、桜沢如一(1893〜1966)という日本人だが、その理念は古代からある中国の陰陽説や、仏教の「身土不二」(人間の体は生まれ育った土地と切り離せないもの)の考えに基づいている。反戦活動家であった桜沢は「世界平和は食生活を改善すれば実現する」と信じ、自論を広めるにはまず西洋からスタートすべきと考えて活動の拠点をパリに置き、弟子を各国に派遣した。その弟子の1人、米国に渡った久司道夫氏が現地でマクロをさらに体系的に整理し、大学や国連に研究機関が置かれるほど重要な地位に押し上げる。久司氏はノーベル平和賞候補に上がり、マクロの食事法は米政府の「国民に推奨する食事法」に認定された。

具体的にどんな食事法か。基本は前述の陰陽の法則と身土不二。万物には陰と陽の性質があり、食べ物も然りであるから、陰陽のバランスを考えた食事が大切と考える。日常の食事は、玄米や雑穀、野菜、豆、海草が中心。砂糖、化学調味料、乳製品、肉は避け、なるべく自分の生活する土地の近くで穫れた有機栽培の食材を使う。つまり伝統的な日本の食事スタイルに近い。さらに具体的に「何をどのくらい食べたらよいか」については、14ページをご参考に。

運命の出逢い

話を西邨さんに戻そう。

彼女がマクロと出逢ったのは約25年前。愛知の三河湾に浮かぶ小さな島で育ち、将来は実家の旅館の経営を手伝うつもりで名古屋にある短大の商業科へ進むが、実は勉強が好きでなく、学校をサボりヒッピー仲間とたむろする毎日。60年代に米国西海岸で始まったヒッピー文化 —— 体制を嫌い自由を愛し、精神世界に傾倒し、自然志向に走る、といった若者文化の影響を日本の若者も受けていた時代だ。その仲間の1人と恋に落ち、米国の大学に進んだ彼が一時帰国した際に結婚、卒業後の本帰国を待ちながら遠距離新婚生活をスタートさせた(2002年に離婚)。この夫が米国でマクロにハマる。そして彼の絶賛する桜沢如一の著書を日本で読んだ西邨さんも同様に「ハマった」。

「実際にマクロの食事を試して体調が変わったことも事実ですが、それ以上にこのマクロというのは、私が幼い頃から抱いてきた、自分は一体どこから来たのか、とか、人はなぜ戦争をするのか、といった疑問に答えてくれる気がしたんです」と西邨さん。夫の留学していたボストンに、久司道夫夫妻の経営するマクロの学校(クシ・インスティテュート)があると聞き、これは天の定めとばかり、即荷物をまとめてボストンへと旅立った。

チョコレートに衝撃

マクロの学校に入るにはまず英語が必要とボストン大学の語学コースをとったはいいが、貯金が底を尽き始め、途方に暮れていた頃、久司道夫氏の書生と親しくなった夫に付いて久司家に遊びに行ったのを機に、一家の住み込み料理人の座を得る。

「ちょうど前の料理人が辞めて、新しい人を探していて。ハイ、私料理できます! って。料理なんて自己流でやっていただけなのに、無謀ですよね(笑)。ついでに、一生懸命働く代わりに久司先生の学校で勉強させてもらう、というさらに無謀な約束までとりつけました」。

かくして、西邨さんの本格マクロ生活がスタートする。

「アメリカのマクロ見て何がびっくりしたって、チョコレートを使っていたこと。私、日本では桜沢先生の本に従って、和食を基本にした厳格なマクロをやってましたから。それに何というか、食べ物を制限してストイックに生きることに変な憧れがあったので、アメリカのマクロ実践者が、楽しそうにチョコレート・ケーキを食べているのを見て、衝撃を受けました」。だが考えてみれば、そのケーキにはマクロで不要な食べ物とされる砂糖や乳製品は入っておらず(甘味にはメープル・シロップや米飴を使用)、マクロの原則に背いてはいない。伝統的な食事スタイルがなかった米国だからこそ、和食に近いマクロの食事を抵抗なく受け入れたが、同時に伝統に縛られない柔軟性も持っていた。また実際、桜沢如一が理想とした食材が「すべて簡単に手に入るわけではない」という事情もあった。だから原則は守りながら、自分たちに合った形でマクロを実践していたのだ。

このことが後の西邨さんのマクロのスタイルに大きな影響を与えることになる。その後香港生活も体験し、現在はマドンナ一家と共にロンドンをベースにしているわけだが、それぞれの地で、それぞれの人や、時代に合ったやり方があると考えるようになった。

「最初にマクロが提唱された頃と世代は完全に変わっています。生活が慌しくなり、女性が社会に出るようになった今、昔と同じように料理をするには無理があります。それに食事情も豊かになって、昔の教科書にある料理だけでは飽き足らない。特にマクロの食事は和食が基本なので、外国人にはそのままだと続けにくいの」。

マクロでは1日1杯の味噌汁を奨励しているが、日本人なら毎日飲んでも飽きない味噌汁も、外国人だとそうはいかない。だから西邨さんは味噌汁にコリアンダーなどのハーブを入れ、新しいスープにしてしまう。誰かがどこかで食べたイタリアンがおいしかったといえば、マクロ式でソックリ料理を作る。食事の後に必ずデザートが必要な西洋人のために、砂糖を使わなくてもおいしいお菓子を考案。そのお菓子に、マクロでは推奨されていない卵を「ま、たまにはいいじゃない」と入れてしまうことも。つまり前述の通り、彼女のこの「フレキシブルで現代的なマクロ」に、西洋人のマドンナは惹かれたのではないだろうか。

ちなみに西邨さんは、ガン患者の食事指導にも長く携わった。大病という絶望を抱えている人に、少しでも楽しい食事を、と考えてきた経験がまた、このまゆみ流マクロにつながっているのかもしれない。

女性は実践的、男性は論理的

西邨さんの、マクロに対する柔軟な考え方は、彼女が最近頻繁に受ける質問への答えにもなっている。それは「マクロは一般人には続けにくいのではないか」という質問だ。

マクロが一般に興味を持たれるようになった理由の1つに、マドンナを始め、トム・クルーズ、シャロン・ストーンといったセレブがこぞってマクロを賞賛したということがある。美や健康に人一倍気を遣う彼らがやっているのだからいいに違いない。だが同時に、こういったセレブは大抵専門のシェフを雇える、つまり経済的余裕のある人たちでもあるから、実はマクロは手間もお金もかかるものなのではないかと。

けれども西邨さんのように、いろいろなマクロのやり方があるのだと考えれば、この疑問は解消する。

「セレブのようにできる人はやればいいし、できない人はできる範囲でやればいい。揃えられる材料を揃えればいいし、時間がなければ手抜きもアリ。頑張り過ぎて続かないより、頑張り過ぎないで続ける方がずっといい。『宇宙の法則に従って生きる』というのは、シンプルに生きる、ということ。気楽にやりましょうよ。それにセレブは生活の都合上シェフを雇っているけれど、本当は他人に料理を任せるのでなく、自分や家族など、近い人のために料理を作ることが大切なの。日々の体調の変化を読み取って調整できるから」。

女性の方が男性より実践的、ということも西邨さんは強調する。逆に男性は女性に比べ論理的。「陰陽の法則で、女性は陰性、男性は陽性が強い、ということにも関係してくるんですけど。桜沢先生や久司先生はマクロを論理的に整理することでその素晴らしさを広めたから、女性である私の役目はそれを実践しながら、時代に合わせて変えていくことかな、と。これはマクロに限らずすべてに言えること。学問でも組織でも体制でも、男性が確立してきたものが多いけれど、それを体験しながら改良していくのは、女性の方が得意なはず。女性の皆さん、どんどん前に出ましょう!」。

ただ1つのゴールを目指して

マクロと出逢い、その道を進むと決めて以来、西邨さんが目指してきたものはただ1つ、「マクロを世界に広げて、人類の平和を実現させる!」。マクロの父、桜沢如一の夢をそのまま継いでいる。途方もなく大きな夢に思えるが、西邨さんは、着実に一歩ずつ前進している。マクロを勉強し、今度はそれを教える立場になり、我が子の通う学校でマクロ・ランチを販売する、ということもやってのけた。マドンナのシェフになったのは「有名人に実践してもらうことで、マクロが一層広まることを期待して」。2005年末には初の著書を出版。次のステップは、と聞くと「そうね、マドンナのおかげで私も少しメディアに注目してもらえるようになったので、便乗して(笑)あと数冊本を出したいです。それから、今まで食が専門だったけれど、マクロのもっと根本的な『宇宙の法則』について、英語で講義してみたい。そうそう、自然農法も普及させたいので、指導できる人たちと1年ごとに、必要とされる国を移動していくのもいいわね」……とプランは尽きない。

これからも世の中は変わっていくから、西邨さんのたどるルートも、それに合わせて変わるのだろう。けれどもどんなルートをたどろうとも、「人類の平和」という最終ゴールはもちろん、変わらないはずだ。

撮影協力: The Montcalm Hotel Nikko London

西邨(にしむら)まゆみ
1956年生まれ。82年に渡米し、マクロビオティックの世界的権威である久司道夫氏の元で学ぶ。83年よりクシ・インスティテュート・ベケット校の設立に参加、開校後同校の料理講師及び料理主任に就任し、同時にガン患者への食事指導も行う。2001年マドンナの世界ツアー、ガイ・リッチー(マドンナの夫で映画監督)のヨーロッパ撮影ロケに参加以来、マドンナ一家のプライベート・シェフとして、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークを中心に、彼らに付き世界中を駆け巡る。05年12月に初の著書「小さなキッチンの大きな宇宙」を上梓、日本での講演やメディア出演なども増えてきた。

「この世にあるすべての物や事象は、陰と陽の性質を持つ。完全な陰、完全な陽、完全な中庸(陰と陽の中間)は存在しない。1つの物の中にも陰の部分と陽の部分が存在し、その構成は時間の流れとともに絶えず変化している」。これは古代中国の陰陽論を基にしたマクロの原則。では陰陽それぞれの性質はというと、以下の表の通り。

食べ物の陰陽はと言うと、例えば陰性が強いものとして砂糖、バター、化学調味料、ソフトドリンク、陽性が強いものとして肉類、卵、チーズなどが挙げられる。体が陰や陽に偏りすぎると病気になるので、なるべく中庸に近い玄米や野菜類、豆類を中心とした食事をしましょうというのがマクロの食事法。この陰陽のバランスと栄養を考慮して、何をどれぐらい食べたらよいか、ということを示したのが、「マクロビオティック標準食」の図。円をお皿に見立て、1食分の食べ物の割合を考えると分かりやすい。

米国や最近の日本ほど、まだマクロがポピュラーではない英国。食材を揃えるのも難しいのでは? と思いがちだが、「私は近所で、何の苦もなく買い物しています」と西邨さん。本来は自分の住まいの近所で獲れた、オーガニック食材を使うのが理想だが、「それにこだわって食材の種類が少なくなってしまうよりは、こだわりすぎないで種類をたくさん揃えるほうがいいですね」。ちなみに西邨さんがよく買い物するのは以下の場所。

 

「野菜、魚などその度に買うナマモノは、あまりローカル栽培やオーガニックにこだわりすぎなくていいけれど、料理の基本となる調味料、主食の穀物、乾物などは、必ず『いいもの』を使ってほしいですね」。毎日使うものだけれども1度買えば長期保存できるから、買える時に買っておけばOK。

  • 塩: 精製していない海塩。グレーっぽいものより白い色のもの。サラサラタイプよりしっとりタイプ。
  • 酢: 玄米酢。梅酢でもよい。
  • 梅干し: 無添加、オーガニックのもの。ペーストでもよい。
  • みそ、しょうゆ: 昔ながらの製法で作った無添加のもの。
  • 玄米、雑穀、そば、うどん、パスタなどの主食: オーガニック素材、麺類は全粒粉で作ったもの。
  • しいたけ、海草、豆類などの乾物: オーガニックのもの。
  • メープル・シロップ、ブラウン・ライス・シロップ: どうしても甘いものがやめられない、という人は砂糖代わりに。

もっとマクロビオティックを知りたい人に、西邨さんがお勧めする本。

<マクロの理念を知る本>

  • 「新食養療法」桜沢如一 日本CI協会
  • 「マクロビオティック健康法」久司道夫 日貿出版社
  • 「マクロビオティック入門」久司道夫、増田忠士(構成)かんき出版

<レシピを含む本>

  • 「Modern-Day Macrobiotics」Simon G. Brown, Carroll & Brown Publishers
  • 「The Hip Chick's Guide to Macrobiotics」Jessica Porter, Avery Publishing Group

<西邨さんの半生とマクロの基礎が分かる本>

  • 「小さなキッチンの大きな宇宙」西邨まゆみ、武智陽子(構成)カナリア書房

病気でなければ健康? 病気なら不健康?— マクロでは、健康の条件として以下の7つを挙げている。マクロを実践していない人にとっても、これは大いにうなずけるところがありそうだ。あなたも自分に照らし合わせて考えてみては?

  • 疲れないこと(疲れを感じてもすぐに回復できること)
  • 適度な欲求を持つこと
  • よく眠ること(長時間ではなく、深く短く眠れること)
  • 良い記憶力を持つこと
  • 腹を立てないこと
  • 朗らかで、機敏であること
  • 感謝の気持ちを忘れないこと
 

英国クルマ今昔物語

英国クルマ今昔物語

英国で生活する上で、移動に欠かせないのがクルマ。街で見かけるクルマは、質実剛健を地で行くドイツ車や日本車、ラテン系デザインで薄暗いこの国に明るさを添えるフランス車が多数を占めているが、誰が見てもすぐにそれと判る「ミニ」や映画007にも登場した「アストン・マーチン」などの英国車もしっかりとニッチでカッコいい世界を押さえている。また、テレビで放映される自動車レースでは、フェラーリやアウディなど欧州大陸の自動車メーカーの活躍に交じり、要所々々で英国のモータースポーツの人材が登場する。こうした構図からは、英国人が綿々と作り上げてきた「英国車ブランド」の意味合いを汲み取ることが出来るかもしれない。量産大衆車メーカーは消滅してしまった英国であるが、今尚記憶に残る英国の名車とともに、英国車の歴史を振り返ってみよう。(執筆: イーストン)

 


英国の自動車ブランドといえば、高級車ジャンルではロールス・ロイス、ベントレー、ジャガーなど、SUV(多目的自動車)ではランドローバー、オープン型スポーツカーではTVRなど有数の有名ブランドがあり、現在でもロンドンの高級オフィス街メイフェアにディーラーが軒を連ねている。いずれも、日本人に人気のある高級車、メルセデス・ベンツやBMW(共にドイツ車)などとは一線を画す存在感を示しているが、その歴史はどのようなものだったのだろうか。


 

我々の自動車に搭載されているガソリンを使用した内燃機型エンジンは、その原型が19世紀中頃に発明され、20世紀初頭の量産型自動車メーカーの誕生に備え、度重なる改良が重ねられたと言われている。しかし、この発明の歴史に英国人の名前は登場しない。ここ英国でようやく自動車メーカーが登場したのは、1900年代に入ってからのことだ。米国では、ビッグ・スリーの一角であるフォードが世界初の量産ラインによる乗用車生産を開始した頃である。フォードの小型車「T型」(写真1)が世間を席巻していたが、英国自動車産業の華、ロールス・ロイス社(1904年設立)は、それとは一線を画す高価な量産車「シルバーゴースト(1906-1925)」(写真2)を生み出した。大柄ながら軽量化された車台の採用により並外れた信頼性と静粛性を実現したことからその名前が付けられたということからも分かるように、ここに英国の高性能・高級車志向の原点を見出すことが出来るだろう。

 

第一次大戦(1914-18)後まもなく、「ル・マン24時間耐久レース(1926-現在)」が始まった。このレースは、今日では世界3大レースのひとつと言われ、フランスはル・マンで開催される伝統あるレースとなっている。当時、自動車の量産開始から20年余りを経た各メーカーにとって、このレースが自動車技術を磨くための絶好の機会となっていたことは、想像に難しくない。そして、それは現代のモータースポーツの位置づけと何ら変わりないものだったに違いない。英国からはベントレー社(1919年設立)の「スピード6」などがこのレースで活躍し、第二次大戦(1939-45)までに開催された16回のレースのうち5勝している。英国車合計では6回優勝していることから、英国人が高性能車の開発に引き続き力を注いでいたことがうかがわれる。しかし、その頃の英国車の影響力は高級車だけではなく、1970年代以降は消滅の一途を辿ることになる大衆車にも及んでいた。ロールス・ロイス社と同時期に登場したオースティン社(1905年設立)が製造した小型乗用車「オースティン7(1922-39)」は、後発だったわが国の日産自動車やドイツのBMWなどが技術移転を受ける際のベース車両となったという。こうして成長期を迎えた英国自動車産業は、第二次大戦前夜には20社近くのメーカーがしのぎを削るに至っていた。


第二次大戦で中断していた英国の量産車製造は、大戦後間も無く再開され、1960年初頭まで特色あるクルマを生み出していくことになる。発売後、世界中の農場や戦場、アフリカなどのオフロードで重宝されてきたランドローバー社(1948年設立)の「ディフェンダー(1948-現在)」(写真3)もこの時期に誕生している。このクルマは、ローバー社(1901年設立)のチーフ・デザイナーが、米軍が使用していたジープをヒントに設計したものだ。今では、殆どすべての自動車メーカーがSUV(多目的乗用車)を販売し、日常生活の中にも浸透しているが、似たり寄ったりで選択に困る場合もあるだろう。そんな時は、他社とは一線を画すユニークな「ランドローバー・ブランド」のSUVを検討する価値があるかもしれない。

1950年代も終わりに近づくと、オースティンやモーリス(1910年設立)など数社の統合会社BMC社(1952-66)から小型国民車「ミニ(1959-2000)」(写真4)が発売される。1950年代といえば最初の石油危機が勃発した時期で、ガソリンの燃費効率が悪い大型車の販売が滞っていた。「ミニ」はそのような問題を打破するために設計されたといわれているが、そのモダンなデザインと高性能さが受け、2000年10月に販売が終了するまで、多くのファンを生み、多様なバリエーション・モデル体系を構築している。いろいろな理由でクルマ好きを封印してきたお父様方の心をくすぐるアイテムと言えるだろう。

「ミニ」の登場と時を同じくして、ロールス・ロイス社は大型高級車シリーズをモデルチェンジした「ファントムV(1959-68)」(写真5)を発表。このクルマは、V型8気筒・排気量6リッターの超大型エンジンを搭載し、約10年の間に500台余りのみが生産された希少モデルだ。「ファントム・シリーズ」は、先に紹介した「シルバーゴースト」の後継車として位置づけられドイツのBMWグループ傘下に入った(2003年)後もロールス・ロイスの代名詞となっている。

やや後発だったジャガー社(1922年設立、45年に社名をジャガーに変更)からは、スポーツカー「Eタイプ(1961-74)」(写真6)が発売されている。ジャガー・ブランドは、XJシリーズのような高級車クラスもラインナップしているが、この「Eタイプ」はデザインと価格の両面で当時の業界を驚愕させた革命的なクルマといわれている点で特筆すべき存在といえよう。実際、今日のヨーロピアン・スポーツカーのデザイン面で与えた影響は大きく、米フォード・グループ傘下に入った(1990年)後もジャガーのフラッグシップであるXKシリーズへと受け継がれている。

 

日本の自動車メーカーが1950年代から70年代にかけて高度成長を謳歌する一方で、英国車は停滞期を迎え、かつては20社近かったメーカーも、徐々に統合されていった。すでに7つのブランドを統合していたBMC(British Motor Corporation)社は、急激な販売不振からジャガーと統合しBMH(British Motor Holdings、1966-68)を形成、それでも不十分であったために、2年後には、ローバー社とレイランド社を巻き込んだ大統合劇
が繰り広げられ、BLMC(British Leyland Motor Corporation)社(1968-1986)の誕生に至っている。しかし、BLMCはその後勃発する石油危機を乗り越えることができず、国営化の道をたどることとなる。この間、グループ内で重複するモデルの整理統合がなされたため、かつての英国車ブランドのうち、ローバー・ブランド以外の大衆車マークは消滅してしまう。


もっとも1980年代の後半になると、元気のない英国の自動車産業に外資系から救いの手が差し伸べられるようになった。米フォードは、多くの英国ブランドを手中に収め、フォード・プレミアム・カー部門を形成するに至る。こうして、ブランド・バリューのある英国車たちは、外資系メーカーの商品構成を補う形で新たな家主を見つけ、ブランド名をそのままにクルマ作りを続けることが出来たのである。

一方、大衆車を製造するローバー部門は、外資系メーカーとのシナジー効果が少ないという理由から、買い手が見つからず、2005年にはついに生産ラインの停止に追い込まれてしまった(その後、中国のメーカーに買収されることが決まったが、ローバーの商標はフォードが引き継いだため、事実上、歴史から消滅したと言っていいだろう)

今も数多くの英国車ブランドが認知されているが、それらはすべて大衆車以外のジャンルである。また、それらは世界有数の欧米メーカーには無い特徴を備えているが故に生き残っていると言えるだろう。

 

こういった生き残り組の英国車は、ユーザーの立場からみれば、高価であったり、日常生活において実用性に劣っていたりと、購入するには大いに頭を悩ませなければなければならないクルマたちばかりである。だからこそ、英国に生活するわずかな期間だけでも、思い切り英国車ブランドに悩まされてみてはどうだろうか。日本に居ては、そういったクルマに悩むことすら忘れてしまうかもしれないのだから。

 


ジェームズ・ボンドとアストン・マーチン

英国人男性の憧れと言えば、ジェームズ・ボンド。そして、そのボンドの愛車として有名なのがアストン・マーチンだ。映画007シリーズ「ゴールドフィンガー(1964年)」ではアストン・マーチン社(1913年設立)の「DB5(1963-65)」が、主人公ジェームズ・ボンドの駆る「ボンド・カー」として初登場している。同ブランドは、当時から高出力スポーツカーとして名高く、「DB5」には直列6気筒・排気量4リッターのエンジンを搭載、282馬力を発生した。その後も「リビング・デイ・ライツ(1987年)」に、英国発のスーパーカーといわれる「V8-Vantage(1977-89)」(V型8気筒、5.3リッター、315馬力)が、「ダイ・アナザー・デイ(2002年)」では「V12-Vanquish(2001-)」(V型12気筒、5.9リッター、430馬力)が登場している。このような速くてかっこいいアストン・マーチンは、サッカー選手のデービッド・ベッカムを始めとする多くのセレブリティが所有していることでも有名だ。


日本車との意外なつながり

オースティン社の「A30(1951-56)」を見てみよう(写真右上)。日産自動車が1963年に発売を開始した「初代ブルーバード310型」(写真右中央)との関係がわかるだろうか。日産自動車は戦後、技術的な遅れを取り戻すため、オースティン社と技術提携を結び、1953年から「A40」、1955年からは「A50」を生産した。そして10年後の1963年に満を持して登場したのが「初代ブルーバード310型」だった。このほか、いすゞ自動車は英国のヒルマン社(1907-76)から「ミンクス(1932-66)」の提供を受け、その名も「いすゞヒルマンミンクス」(写真右下)として販売していたが、これはすでに忘却の彼方の出来事となってしまった。その後、日本車メーカー各社は、高度成長期(1950〜70年代初頭)を通じて独自の道を歩んでいくため、古き良き時代の英国車の面影は無くなってしまうが、「A30」のようなルーツがあったことは記憶にとどめておきたい。


戦後最盛期を象徴するル・マンでの活躍

世界3大レースのひとつ「ル・マン24時間耐久レース(1926-現在)」は、戦後間も無く再開された。英国車では、ジャガー「Dタイプ(1954-57)」などが活躍し、戦後10年間で6勝を挙げている。しかし、1959年の勝利を最後に英国車メーカーは勝利から遠ざかり、1988年に再びジャガーが勝利するまでに30年もかかった。こうした記録からも、英国自動車業界の戦後の浮き沈みを窺い知ることが出来るだろう。

 

 

モーガン社(1910年設立)は、クラシック・タイプの手作りスポーツカー「プラス8(1956-2004)」(写真7)で有名だ。見た目のクラシックさとは裏腹に、その性能は軽量ボディにV型8気筒・4リッターの大型エンジンを搭載し、スーパーカー並みの速さをも兼ね備えている。その後は、4シーターのクラシック・タイプ「ロードスター(2004〜現在)」に引き継がれ、斬新なデザインのスポーツカー「エアロ8(2000〜現在)」(写真8)と共にユニークなブランドとしての存在感もキープしている。

ブリストル社(1948年設立)も、手作りを続けるメーカーであるが、高性能志向はモーガンの更に上を行くスーパーカー・メーカーだ。「ファイターT(2004〜現在)」(写真9)は、昨年、市販車のエンジン出力記録を塗り替え、1012馬力という金字塔を打ち立てたことで紙面を賑わせた。エンジンは米クライスラー社のV型10気筒をベースに開発したものというから、そのチューニング力と、ボディやシャシーの設計力に秀でているというべきだろう。価格はおよそ35万ポンド(約8000万円)、生産されるのは年間20台のみという希少モデルだ。

モーガンもブリストルも所有するには極端すぎるという場合には、TVR社(1947年設立)のスポーツカー(写真10)という手もある。TVRは、2シーター・スポーツカーの製作に情熱を燃やすオーナーたちによって、様々な名車を送り出してきた。V型8気筒4リッターのエンジンを2シーターの
オープンカーに搭載し、野太い排気音で近づいてくる姿はカッコよく、1990年代後半にはロンドンのシティ近辺でも数多く見かけることが出来たので、その勇姿を覚えている方もいるだろう。90年代後半以降のモデルでは、扱いやすい直列6気筒エンジンが搭載され、スマートさが加わったと言
われている。しかし、2004年にロシア人実業家が買収して以来、販売台数が下降、組み立て工場も英国からイタリアへと移転される運命を辿っているため、英国車としてのプライドが持続するかどうか注意が必要である。

 

小型の2シーター・スポーツカーに惹かれる方は、「ロータス(1952年設立)」の動向が気になるかもしれない。1970年代の日本でスーパーカー・ブームを経験している男性にとっては、車高の低いフォルムの「ヨーロッパ(1966-75)」(写真11)が記憶に残っているのではないだろうか。かつて、モータレースの最高峰であるフォーミュラー・ワンでも活躍したロータスは、今日でも2シーター・スポーツカー「エリーゼ」や「イクシージ」を製造し、一般道路用とモーター・スポーツ用のクルマを提供している。また、往年の名車「ヨーロッパ」の名を冠せられた「新・ヨーロッパ」(写真12)が発売され、更に今年2007年には「新型エスプリ」が発表されるというから、男女を問わずロータス・ファンの気持ちに火が点いてしまうこと間違いなしである。もうひとつ忘れてはならないメーカーに、ロータスからすべての権利を買い取って、かつての「ロータス7」の製造を続けているケータラム社(1973年設立)がある。週末に郊外へドライブに行くと、必ず1度はすれ違う気になるクルマ、と記憶されている読者もいるかもしれない。今では、各種ラインナップを揃え、年間約500台を生産している数少ない純英国メーカーでもある。部品を購入して自分で組み立てることもできるので、プラモデルに夢中になった少年時代を持つ男性にとっては夢のようなクルマに違いない。

 

ロンドン北方にあるシルバーストーン・サーキットでは、ロータス・イクシージでトレーニングを受けることが出来る(半日コースで155ポンド〜)。しかも、半日集中トレーニング・コース(275ポンド)なら日本人インストラクターがいるので、言葉の心配いらず。爽快で質の高いアドバイスを受けながらのドライビング体験ができること確実(事前に、インストラクターの中納さんに直接予約要)。その他、ケントにあるブランズハッチ・サーキットでもフォーミュラ車などのドライブ体験ができる。

Silverstone Circuit
Northamptonshire, NN12 8TN
Tel: 0870 458 8270
www.silverstone.co.uk/html/dr_lotus.php
*中納さん連絡先: Tel: 01908 690 010(日本語でOK)
または、http://formulaford.jp/school

Brands Hatch Circuit
Fawkham, Longfield, Kent, DA3 8NG
Tel: 0870 850 5015
www.motorsportvision.co.uk


毎年6月にチチェスター近郊の私邸内で開催される超ビッグ・イベント。ヒル・クライム(上り坂)のタイム・トライアルとなっているが、実際は、有名なドライバーがフォーミュラ車から二輪車までを含むクルマを駆り、パフォーマンスを見せてくれるショー・レース的要素が強い。パドックと称されるテントを訪れれば、それらの名車とメカニックの姿を間近に見ることが可能だ。運が良ければ、新旧のF1ドライバーと写真に収まることができるかもしれない。人気イベントなので、今すぐチケットを予約しても早すぎることはない。特に観客席を確保したい場合は、2月頃には予約終了となってしまうので急いだ方が良いだろう。9月に開催されるクラシック・カーのレース、グッドウッド・リバイバルにも注目したい。

Goodwood House
Goodwood, Chichester, West Sussex PO18 0PX
Tel: 01243 45 5000
6月22日(金)〜24日(日)9:00〜(レース終了まで)
入場のみ: £25〜47(子供無料)
スタートライン・スタンド席£45〜82(子供は約半額)
www.goodwood.co.uk/fos


ソールズベリーの西に位置する英国最大の自動車博物館。外見的にはビューリーにやや劣り寂れた感じもするが、一度館内へ立ち入れば、その品揃えには圧倒されること間違いなしだ。ヨーロッパの赤いクルマばかりを一堂に集めたコーナーでは、英国とイタリアの名車を堪能できる。敷地内にはショート・サーキットを併設しており、イベントの無い日には、自分のクルマを走らせることも可能だ。

Haynes International Motor Museum
Sparkford, Yeovil, Somerset BA22 7LH
Tel: 01963 44 0804
毎日10:00-16:00
ファミリー(大人2名&子供3名)£22
www.haynesmotormuseum.com


マナーハウスと併設されるビューリー自動車博物館は、サウスコースト「サザンプトン」近郊にあるテーマ性の高い施設だ。1890年代の車から最近のレース・カーまで幅広く取り揃え、映画007に登場した様々な自動車を展示するコーナーもある。施設内には、モノレールやラジコン・コーナーなどもあり、奥様やお子様連れにも優しい。また、春から夏にかけては「オート・ジャンブル」や「ボート・ジャンブル」と呼ばれる催し物が定例となっており、大陸からの出展者もいる賑やかな雰囲気を楽しむことも可能だ。今すぐ、ホームページをチェックしてみよう。

Montagu Ventures Ltd.
John Montagu Building, Beaulieu, Brackenhurst, Hampshire SO42 7ZN
Tel: 01590 61 2345
毎日10:00-17:00
ファミリー(大人2名&子供3名)£40
www.beaulieu.co.uk

 

欧州のあったか料理で温まろう

欧州のあったか料理で温まろう

日本に負けないくらい寒い欧州の冬。ならば「食べて体を内側から温めよう」ということで、新年1号目は食べることが大好きなダイジェストの各国編集部が、現地ならではのあったか料理をご紹介します。あったか料理を極めた偉人の物語から、新年のパーティーにぴったりの欧州各地あったかレシピの紹介、そして懐かしき日本各地の鍋一覧まで総ざらい。ホカホカになるまでたっぷりとご堪能ください。(本誌各国編集部)

あったか料理を愛した偉人たち

肉食文化の欧州では、焼いたり、あぶったり、ぐつぐつと煮込んだりして作る料理に関するエピソードに事欠かない。歴史に名を残してきた偉人たちにまつわるものはその中でも最たるものであり、ある者は独自レシピを編纂し、ある者は料理そのものに自身の名を残し、またある者は調理を終えた後、その命を絶った。ここでは、あったか料理を愛したそんな偉人たちの物語を追う。

「大食漢」と呼ばれたイングランド王
リチャード2世 (1367~1400)

リチャード2世英国の「あったか料理を愛する人」代表は、14世紀のイングランドを支配したリチャード2世。彼は下層階級から莫大な税金を徴収する一方、自身は華麗な服装に身を包み道化師と戯れながら、毎晩のように1万人に及ぶゲストを招待して宴を催す、中世における典型的なお祭り好きの王として知られていた。当時英国で一番のグルメでもあった彼は、宮殿内に2000人もの料理人を雇用。後の歴史家からは「キリスト教圏にある王の中では、歴史上一番の大食漢」と呼ばれるほどだった。

そんな彼が最も愛したメニューの1つが、「ハーブとニンニクを使ったハトのシチュー」と題されたあったか料理。205種類に及ぶ王家レシピを彼自身が編纂した英国史上初の料理本には、この料理について以下のような記述がある。「まずはパセリ、タイム、ニンニクをハト肉にまぶす。そして脂分を落としてハト肉をこんがりと焼く。ハト肉をお鍋に移してショウガ、酢と砂糖を混ぜてゆで上げる。ハト肉を取り出し残りの湯にサフランを入れてぐつぐつと煮込み、パン粉をまぶしたら特製スープの出来上がり。ふた切れのトーストされたパンを添えれば、おかず要らずの完璧なスープである」。

ちなみにリチャード2世は1399年、敵対する各地諸侯たちによって構成された反乱軍に捕らえられ、身柄を各地に移され拷問を受けた後に最後は餓死してしま う。「歴史上一番の大食漢」であった王としては、何とも皮肉な運命と言っていいだろう。

あったか料理を残し命を絶った宮廷料理人
フランソワ・ヴァテール (1631~1671)

フランソワ・ヴァテール1671年4月、太陽王ルイ14 世が隆盛を極めるフランス。重職から外された年老いた英雄コンデ大公は、国王に再び取り入ろうとシャンテ ィイ城において後世に伝わる 3日3晩の饗宴を開いた。この時ヴァテールは、料理人としてコンデ公に仕えていた。

フランス代表ヴァテールを一躍有名にしたエピソードが、2日目の料理でヴァテールを天才と絶賛した国王がコンデ公とヴァテールを賭けたトランプ・ゲームだった。ゲームに勝った国王は、彼をヴェルサイユの宮廷料理人として召し抱えることに成功する。しかし、ヴァテールは忠誠を誓ったコンデ大公に我が身を売られたことを深く悲しみ、さらには晩餐のメイン料理であった鶏のローストがテーブル2つ分足りないという予想外の出来事に打ちひしがれることになる。極めつけは宴3日目の朝、晩餐の材料となる魚が届かない。理想としていた完璧な料理を出せないことに絶望し自らの運命を決意、シャンティイ城の自室にて自害して果ててしまう。程なくして魚が届いたことを知らずして……。

彼の最後を飾った宴で出されたあったか料理が、鶏のローストだった。フランスでは一般的に、1Lの水にタイム、セージ、ローズマリー、ベイリーフを入れ水から煮出す。最後に多目の塩を加え、火を止めて十分に冷まし、そのマリネ液に鶏丸ごと1羽とスライスしたニンニクを漬け込むこと1時間。それを180度のオーブンで約1時間焼く。300年前の宴に思いを馳せて味わって見るのも一興か。

写真)映画「ヴァテール」で宮廷料理人ヴァテールを演じたフランスの 俳優ジェラール・ドパルデュー。

あったか料理に名を刻む鉄血宰相
オットー・フォン・ビスマルク (1815~1898)

ビスマルクドイツ代表は19世紀に統一ドイツ初代の首相であり、鉄血宰相として世界史の教科書などでもすっかりお馴染みのオットー・フォン・ビスマルク。いかめしい顔付きからはなかなか想像がつきにくいが、かなりの美食家だったようだ。朝夕食はそれぞれ5品のフルコース・メニューで、朝食には卵16個、夕食には生牡蠣を一度に175個も食べ、「軽い」昼食でもキャビアや燻製うなぎをメインに食べていたというから、64歳で体重124キロを超え、医者から厳しいダイエット を申し渡されたというのも無理はなかろう。

その美食ぶりを象徴するかのようにビスマルク・ニシン(Bismarck-Heringe)など500以上の料理にビスマルクの名前が冠されているが、その内の1つにビスマルク・ラグー*(Bismarck-Ragout)がある。角切りにした牛、豚、羊肉をセロリやジャガイモ、タマネギ、キャベツといった野菜や牛の骨髄をタイムなどのハーブや塩コショウで味付けし、約2時間近く煮てアツアツを楽しむシチューは、元来バイエルン州に伝わる典型的な農夫の料理。だがビスマルクが長い闘病生活後にこのシチューを嬉々として平らげたことから、この名前で呼ばれるようになった。

戦争に明け暮れ、ストレスの多い政界に身を置き、美食を重ねつつも83歳まで生きたビスマルク。栄養バランスの取れたこのシチューなくしては、平均寿命50 歳の当時にこのような長命ぶりを発揮することは難しかったかもしれない。

*ラグーとは、数種類の野菜や肉を強い香辛料入りのソースで煮込んだフランス風のシチューのこと


欧州あったか家庭料理レシピ

イギリス

じっくり時間をかけるほどおいしい
オックステイル・シチュー Oxtail Stew

オックステイル・シチュー

オックステイルとは、その名のとおり牛の尾のこと。以前は雄牛のみを指していましたが、現在は性別を問わず、子牛を含む牛全般の尾肉を意味します。オックステイルは牛肉よりも安く手に入るため、昔は生活に苦しむ人々の胃袋を満たすものでした。しかし最近、コラーゲン(ゼラチン質)や筋肉の繊維質などを多く含むその栄養価の高さや、豊富な脂肪分から抽出される香り高いストックなどが注目され、再び人気のメニューとなっています。調理法としては、肉自体が非常に硬いため、スープやシチューなどのロング&スロークックが最適。英国の長く寒い夜、身体を芯から温めてくれるウインター・ミールの一品です。

 
 
材料(4人分)
オックステイル
(関節で切ったもの)
約1.3kg
(3lbs)
タマネギ(細かく刻んでおく)
大1個
スープ・ストック
(ビーフまたはチキン)
2カップ
ニンニク(細かく刻んでおく)
1片
ニンジン、セロリ、パースニップ、
ターンニップなどの野菜
(乱切りにしておく)
あわせて
2~3カップ
レーズン
1/2 カップ
バター
1/4カップ
タイム
1枝
1カップ
小さじ1
ローリエ
1枚
赤ワイン
2カップ
小さじ1
コショウ
小さじ半
 
 

1オーブンを170度に温め、オックステイルに軽く塩コショウをふっておく。ダッチ・オーブン(鋳鉄製の鍋)に油を熱し、オックステイルを入れ、肉の全体に焼き色をつける。タマネギの1/4を加え、透明になるまで炒める。 1
   
2別の鍋にスープ・ストック、赤ワイン、水を温め、これをオックステイルの鍋に加える。塩コショウを加え、中火で周りがぐつぐつとなるまで煮込む。 2
   
3鍋にしっかりと蓋をして、オーブンに入れる。3時間後、一旦オーブンから取り出し、残りのタマネギ、野菜、レーズン、トマトピューレ、ニンニク、タイム、ローリエを加え、よくかき混ぜてオーブンに戻し、さらに1時間煮込む。 3
   
4オーブンから取り出し、2、3分おいて、表面に浮いてきたあくを取り除く。 4

イギリス

旬の味覚を楽しもう
ポットロースト・パートリッジの
サヴォイ・キャベツ添え
Roast Partridge with Cabbage

ポットロースト・パートリッジのサヴォイ・キャベツ添え

英国で人気の狩猟鳥のひとつ、パートリッジ(ヤマウズラ)。パートリッジには英国原産のグレイ・レッグと17世紀にフランスから持ち込まれたレッド・レッグの2種類があり、小さいながらも独特の味と香りを持つグレイ・レッグの方が好まれています。脂肪分が少ないので、ロースト(特に若い鳥)、シチューまたは蒸し煮などに最適。一旦炒めてその味と肉質を引き締めてから鍋でローストするので、このレシピはマッシュド・ポテトやゆでポテトが付け合わせとしてよく合います。ただパートリッジ自体はそれほど大きな鳥ではないので、ひとり頭で1羽を用意しましょう。

 
 
材料(4人分)
パートリッジ(ヤマウズラ)
(ももと胸にさばいておく)
4羽
スモーク・ベーコン
150g
エシャロット(皮をむいておく)
16個
ニンジン(拍子木切りにしておく)
2本
チキン・ストック
150ml
サヴォイ・キャベツ
(外側から2~3枚を取り除き、
中身を8等分にくし切りしておく)
1個
ムキ栗(水煮)
200g
ニンニク(みじん切りにしておく)
1片
オリーブ・オイル
大さじ1
ローリエ
2枚
小さじ1
黒粗引きコショウ
適量
 
 

1オーブンを160度程度に温めておく。鍋にオリーブ・オイルを熱し、パートリッジの表面全体の色が変わるまで炒める。 1
   
2パートリッジを鍋から取り出し、同じ鍋でベーコンを炒める。さらにバター、エシャロット、ニンニク、ニンジン、ローリエを加え、野菜がしんなりするまで中火で炒める。 2
   
3パートリッジを鍋に戻し、ストック、塩小さじ1、黒コショウをたっぷりと加える。鍋にふたをしてからオーブンに入れ、20~30分煮込む。その間に、 別の鍋に塩を少々入れたお湯を沸騰させ、キャベツ を入れ2~3分ゆで、流水にさらしておく。 3
   
4オーブンから鍋を出し、パートリッジを鍋から取り出して、温かい場所に置いておく。鍋にキャベツと栗を加え、出汁を1~2回上からかけ、キャベツに完全に火が通るまで5分ほど直火で煮込む。キャベ ツ、野菜を皿に盛り、その上にパートリッジを乗せて出来上がり。 4

フランス

ワイン風味豊かな鶏肉料理
コック・オ・ヴァン coq au vin

コック・オ・ヴァン

コック・オ・ヴァンとは直訳すると「雄鶏のワイン」、つまりワイン仕立ての鶏肉料理のこと。赤ワイン(黄ワインの場合もある)とキノコを使っていることが特徴です。料理名の通り肉のコクと獣肉に近い触感がある雄鶏を使うのが理想ですが、入手困難な為、今回雄鶏は肉屋でも手に入るブレス産の鶏を使います。ブレス産の鶏は唯一産地統制(AOC)に従った飼育法を実地しており、十分に屋外で運動させるので筋肉が発達して肉の色ツヤ、風味が絶品です。圧力鍋で調理すると効率が良いのですが、出来上がった後にふたを外して弱火でさらに30分ほど煮込むとソースの味わいが深くなります。付け合わせにはローストしたポテトかパスタが合います。

 
 
材料(4人分)
雄鶏(またはブレス産鶏)
1羽
ニンジン
5本
タマネギ
中4個
ニンニク
2片
マッシュルーム
中20個
ラルドン(ベーコン)
100g
バター
少々
ローリエ
2葉
料理用赤ワイン
1L
ワイン・ビネガー(あるいはバルサミコ)
20cc
小麦粉
少々
塩、コショウ
適量
 
 

1まずは材料を下ごしらえ。ニンジン、タマネギ、マッシュルームは食感が残るようザックリと切る。8つに切り分けた鶏肉は塩コショウをかけて小麦粉をまぶす。 1
   
2細かく刻んだニンニク少々とバターを熱し、小麦粉をまぶした鶏肉の表面を焼き、焦げ目をつける。ローリエの葉も同時に炒めるとなお良い。 2
   
3ラルドンを刻んだニンニクと一緒にバターで炒め、下ごしらえした材料を合わせて軽く炒める。この時、あくまでも馴染ませる程度に軽く。その後②の鶏肉とローリエを合わせて赤ワイン1Lとワインビネガー20ccを注ぎ、圧力釜では20分、厚手の鍋なら1時間30分じっくりと煮込む。出来上がったら必ず火を止め一度冷ますこと。そうすることで食材の中にソースが滲み込み、うまみが増す。 3

フランス

「酸っぱいキャベツ」の煮込み料理
シュークルート Choucroute

シュークルート

シュクルートの語源はドイツ語の「Sürkrüt」から来ており、意味は「酸っぱいキャベツ」。一般に知られるレシピでは白ワインで煮込みますが、酸味が弱くしっかりした味わいに仕上がるビールで煮込む方法を今回は御紹介します。ポイントは豚肉の塩抜きをしっかり行うことと、シンプルな料理だけに素材の持ち味を生かした控えめの味付けにすること。キャベツは本来じっくりと発酵させるのですが、家庭料理では時間がかかりすぎるので、市販の缶詰か、お総菜屋さんで量り売りの物を購入するとお手軽。あとは材料をすべて合わせてコトコト煮るだけ、東フランスの家庭風にジャガイモを一緒に煮付けることで全体に味が染み渡りさらに食が進むこと請け合いです。

 
 
材料(4人分)
シュークルート(キャベツの酢漬け)
1缶
タマネギ
2玉
クル・ドゥ・ジロル(丁子)
2個
ジュニエーブル(ねずの実)
好みで適量
ブーケガルニあるいはローリエ
2葉
ジャガイモ
8個
プティ・サレ(豚肉の塩漬け)
500g
フランクフルト・ソーセージ
4本
モンベリヤー・ソーセージ
2本
ビール
2L
ラルドン(ベーコン)
塊で200g
コショウ
適量
 
 

1まずはプティ・サレの下準備。豚肉を一昼夜真水に浸して塩抜きする。 1
   
2缶詰めのシュークルートとローリエ、丁子を刺したタマネギを鍋に空け、ビールを注いで加熱する。 2
   
3皮をむいたジャガイモとプティ・サレ、ソーセージ、ラルドンを入れる。ふたをして中火で2時間ほど煮て、すべての食材に十分に火が通れば出来上がり。粒マスタードと共にいただく。 3

ドイツ

体の芯から温まるポテト・グラタン
カルトッフェルアウフラウフ Kartoffelauflauf

カルトッフェルアウフラウフ

ドイツ料理と言えば、やっぱりジャガイモとソーセージ。でも実はドイツの1人当たりのじゃがいも消費量は、東欧諸国の半分、英国と比べても6割程度なのです。しかし、季節や庶民の生活に根付いた料理の多様性ということでは、さすがドイツ。夏は酸味の効いたサラダ、冬は風物詩でもある、芋をすって焼くライベクーヘンがあります。付け合わせにしても、ゆでる、炒める、揚げるはもちろん、パンケーキ風、テニスボール大の団子など枚挙にいとまがありません。そして、寒い冬のおすすめメニューが、今回ご紹介するカルトッフェルアウフラウフ。体の芯から温まるホクホクのグラタンです。

 
 
材料(4人分: 直径25cm型)
ジャガイモ
800g
おろしたチーズ
100g
ベーコン・ビッツ
40g
ニンニク
大4片
牛乳
150ml
生クリーム
150ml
バター
少量
塩、コショウ
少々(控えめに)
 
 

1まずは下準備。オーブンを200度に温め、耐熱皿にバターを塗り、底にチーズを少量敷く。ニンニクはつぶしておく。写真のようなニンニクおろし器がない場合は、細かく刻むか、スライスにしてもよい。 1
   
2皮をむき、3ミリ厚に切ったジャガイモを並べる。ジャガイモの各層に、つぶしたニンニクとチーズをちらす。 2
   
3ジャガイモを並べ終わったら(3~4段)、一番上に残りのチーズとベーコン・ビッツを乗せる。そして、牛乳と生クリームと塩コショウを混ぜたものを上からひたひたになるようかけ、オーブンへ。 3
   
4待つこと約45分。溶けたチーズに焼き色がついたら表面をアルミホイルで覆い、さらに20分で出来上がり。熱いうちに食卓へ。 4

ドイツ

隠して食べた水餃子
マウルタッシェン Maultaschen

マウルタッシェン

南西部シュワーベン地方の料理でこんな言い伝えがあります。「昔々、戦争が続き、食べるものも着るものもない厳しい冬。修道院の猟師が幸運にも森で1匹の野獣を仕留めました。これは神様からの贈り物に違いない。猟師は喜びました。しかし、折しも断食の季節。カーニバルの後から復活祭までの40日間、ドイツでは粗食に努め、ご馳走を食べてはいけないことになっています。どうしたものかと悩んだ猟師は、小麦粉の生地の中に肉を隠して食べることを思いつきました……」ドイツのスーパーではレトルトでも売っているけれど、手作りの味は格別。寒くて外で遊べない子供たちとわいわい言いながら作ると楽しい料理です。ひき肉の代わりに、細かく刻んだほうれん草を入れたり、余りものを活用したりしてもおいしく出来上がります。

 
 
材料(4人分)
生地:
1個
 
少々
  小麦粉
200g
 
小さじ1
 
50ml
フィリング: タマネギ
大1/2個
  マッシュルーム
100g
  ランドイェーガー
(四角い棒状のソーセージ。
サラミでも代用可)
60g
  豚ひき肉
200g
  パン粉
60g
 
1個
  パセリ
少々
  コショウ、ナツメグ
少々
  バター
20g
スープ:
1.5L
  市販ブイヨン
1L
 
 

1まず生地作り。卵、酢、塩、水を混ぜ合わせ、小麦粉を加えてこねる。まとまったらラップでふたをし、30分寝かせておく。 1
   
2その間にフィリングの準備を。タマネギ、マッシュルーム、ランドイェーガーはみじん切りにし、タマネギとマッシュルームはバターで炒める。冷めたら残りの材料を加えてよくこね合わせる。 2
   
3生地を薄く伸ばし、お椀などで丸く型抜きする。12×12cmくらいの四角に切り分けてもOK。中央にフィリングを乗せ、半分にたたむ。合わせ目は水をつけて閉じ、フォークでしっかり押さえつける。 3
   
4湯を沸かし、ブイヨンを溶いたものの中に、③で出来たマウルタッシェンを入れて10分間ゆでる。器に盛り、仕上げにパセリを散らして出来上がり。 4

 

 

欧州人が語る日本のお鍋
日本人にとってのあったか料理といえば、やはり鍋料理。 地域によって様々なバラエティがあるため、思わず故郷の風景と共に郷愁を掻き立てられてしまう人もいるはず。ここではこれら懐かしき日本の郷土鍋を振り返ると共に、日本のお鍋に一家言ある欧州の一般市民にインタビュー。鍋料理を通して見える日本像に迫ってみます。

クレイグ・ウィットニーさん「お鍋を食べる 日本人が好き」
クレイグ・ウィットニーさん
(ロンドン在住)
まだ日本で英語教師として働き出したばかりで、すべての出来事を新鮮で刺激的に感じていた頃に、英語学校のスタッフ一同揃っての鍋パーティーが開催されたんです。その時に日本の鍋料理を初体験したのですが、とても寒い季節に子供のように皆一緒になって、しかもあんなに楽しそうに料理を食べる日本人ってなんて素敵なんだろうって思ったんですよね。


ゼビア・セルナンデスさん「鍋の親善大使を しています」
ゼビア・セルナンデスさん
(ロンドン在住)
日本の鍋料理については、日本に行く前に旅行ガイドブックで勉強しました。日本に着いて間もなくして、知り合いの家で念願のちゃんこ鍋を初めて食べたのです。あんなに社交的な料理ってなかなかないですよね。英国に戻ってからは、鍋の親善大使となって、日本には「NABE」という身も心も温まる、冬のシチューがあるんだって宣伝しているんです。


ヴォルフガンク・ズルゲスさん「猫舌の私には不利」
ヴォルフガンク・ズルゲスさん
(デュッセルドルフ在住)
ガスコンロを使って室内で火を使うことについて安全性の面で気になったこともありましたが、暖房設備が整っていない日本の冬に体を温めるには鍋料理が一番ですね。色々な具材が入っている栄養満点のこの料理は、日本文化が誇るものの1つではないでしょうか。ただ私は猫舌なので、冷ましている間に他の人に大好きな具(すき焼きの肉)をどんどん取られてしまうのが悔しいです。


イングリット・シューレンベルク「準備が簡単だかららくちん」
イングリット・シューレンベルクさん

(ヘンネフ在住)
主婦にとって鍋料理の良いところは、具材を切って並べておくだけという簡単な準備だけで済むという点ですね。きっと皆で料理を作りながら食べるところに鍋料理の楽しさがあるからでしょう。あとはそれぞれの家庭に「鍋奉行」がいて、味付けから、どのタイミングで食べるのかまで仕切ってくれるという点も面白い。西洋では滅多に見られない食文化だと思います。


オリビエ・ドランさん「家族で鍋をつついた思い出」
オリビエ・ドランさん
(パリ在住)
僕は母親が日本人なので、日本食はフレンチ以上になじみ深い食物です。中でもやはり、冬になるといつも思い出すのが日本の鍋料理。一番印象に残っているのは、すき焼きとしゃぶしゃぶですね。すき焼きは豪華な鍋料理だし、家族一緒に鍋を囲んでつっついた思い出があります。しゃぶしゃぶはフランスにはないポン酢やごまだれを使って食べたのが印象に残っています。


マリ・エスピタリエさん「おでんだけは特別」
マリ・エスピタリエさん
(パリ在住)
私は日本食が大好きで、梅干し、梅酒、そして鍋料理に目がありません。何度か夫と一緒に日本に行っていますし、フランスでもたまに日本食を食べに行きます。数ある日本の鍋料理の中でも一番思い出に残っているのはおでんですね。他にも様々な鍋料理を食べましたが、日本にしかない食材で作られているおでんは特別。非常に新鮮な食体験として記憶しています。



ジンギスカン鍋(北海道)
羊肉を使った焼肉料理の一種。中央部分がやや盛り上がった鋳物のジンギスカン鍋を用いることからその名が付いた。2004年に北海道遺産に認定され、当地の郷土料理としてのイメージが強いが、今や全国区になっている。始まりは大正時代に軍隊、警察などの制服の素材となる羊毛を自給しようとした「綿羊百万頭計画」で、羊毛だけでなく羊肉の消費アップも狙って料理法 を模索する中で誕生したとされる。肉と一緒に焼くモヤシやタマネギ、ニンジン、ピーマンなどの野菜には肉汁の旨みも染み込み、ボリュームたっぷりの一品だ。


きりたんぽ鍋
秋田県で鍋といえばこれ。練った米を秋田杉から作った棒に巻き付けて焼き、棒を抜いてちくわのような形になった「きりたんぽ」を鶏としょうゆベースのスープに入れてキノコや野菜と一緒に煮る。元々はきこりたちが山作業の折に残り飯を長い棒に巻き付けて、味噌をつけて焼いて食べたのが始まりだという説もあれば、秋田の伝統的な熊猟師であるマタギがごった煮の鍋におにぎりなどを入れて食べたのが発祥ともいわれる。スープには比内鶏という秋田産の鶏肉を、きりたんぽには新米のあきたこまちを使うこだわり派もいる。
写真提供: mitsuka.jugem.jp


芋煮
サトイモをメインにコンニャクやネギ、牛肉、マイタケなど季節のキノコをしょうゆベースで煮込む鍋料理。最上川舟運が盛んだったころ、酒田から船で運ばれてきた塩や干し魚などの物資が下ろされ、人足の手でさらに内陸部に運ばれていったが、船頭たちが人足を待つ間の退屈しのぎに始めたのが由来とされている。当初は牛肉ではなく、運ばれてきた棒ダラなどの干魚と一緒に煮たという。県内各地の河原で開かれる芋煮会は秋の風物詩としてすっかり定着した。おいしさの決め手は隠し味として入れる地酒らしい。


アンコウ鍋
アンコウは頭部に餌となる魚をおびき寄せる突起物がある深海魚の1つで、体全体が柔軟性に富んでおり、調理する場合は下あごをフックにかけてつるし、口から水を入れ胃をふくらませてさばく特殊な方法を用いる。肉の他に、皮、胃、肝臓、卵巣、えら、ヒレが食用にされ、一般的に「7つ道具」と呼ばれている。アンコウ鍋は、この7つ道具に野菜と味噌を加えて煮込んだ鍋料理で、茨城や千葉の浜料理だったが、後に食通で有名な芸術家、北大路魯山人が賞賛した珍味の1つとして広まり東京などでも食べられるようになった。


ほうとう
甲州には水田が少なく、お米は貴重な食べ物で、代わりによく食べられたのがこの「ほうとう」。麺を平たく打った、ひもかわうどんと野菜を一緒に味噌仕立ての汁で煮込んである。武田信玄の陣中食に起源があるという説もあるが、その由来は中国から禅宗とともに渡ってきた「飩(はくたく)」から。生麺を味噌仕立ての汁にカボチャ、ジャガイモ、ニンジン、ネギ、シイタケ、白菜、鶏肉などの具と一緒に煮込めば出来上がり。山梨県では「風林火山」ののぼりが飲食店の店頭に立っていれ ば、「ほうとうあります」を意味する。


湯豆腐
寒い冬には、昆布を敷いた鍋に一口大に切った豆腐を入れ、程よく温まった所を引き上げ熱々の湯豆腐を肴にクイッと1杯。江戸時代の料理本「豆腐百珍」では、「湯やっこ」として紹介され最上級である「絶品」にランクされている。材料は豆腐、水、昆布と非常にシンプルな料理だけに、それぞれの素材に最高級品が求められる。特に良質の水を使うことが絶対条件で、京都の湯豆腐が名高いのもそれが所以である。通常、しょうゆ、酒、みりん、だし汁などを合わせたもの、もしくはポン酢しょうゆなどで食べられ、薬味にはネギ、ユズ、ダイコンおろしなどが用いられる。


うどんすき
うどんの本場関西の寄せ鍋風高級料理の1つ。大阪の堺にある和食と麺類料理の老舗料亭「美々卯」の主人・薩摩平太郎が1928年頃に考案したとされており、「うどんすき」という呼称は「美々卯」の登録商標であったが、後に全国の飲食店で同様の料理法が提供されるようになり、美々卯と他店で訴訟が起こった。しかし、現在では一般名詞化している。「うどんすき」は「うどん入りすき焼き」を短縮させた呼び名で、元々は鍋料理の1つである「すき焼き」の残り汁に野菜とうどんを入れ煮込んだ物だったが、現在では立派な高級鍋料理として認知されている。


いのしし鍋
いのしし年である2007年を祝うにはぴったりの、いのししの肉を使った鍋料理。起伏に富んだ山の中で頑丈に育ったいのししが多数生息する、兵庫の丹波地方で生まれた。またこの地域には明治時代に陸軍部隊が駐屯しており、彼らがその後全国に口コミで伝えたことから今では神奈川県などの地域でも郷土料理として支持されている。体が温まりやすく、煮れば煮るほど柔らかくなり、濃厚な味を出すことなどがいのしし肉ならではの特徴。赤いいのししの肉を薄切りにして皿に盛り付けると、まるで牡丹の花のように見えることから 「ぼたん鍋」との別名がついた。


もつ鍋
鳥獣肉の内臓を意味する「もつ」を主材料として用いた鍋料理。好みによって、しょうゆや噌味のスープで煮込んで食べる。本来はお饅頭を販売していた福岡市内の「万十屋」が、物資不足に悩んだ終戦直後に生活費を稼ぐために始めた料理だという。栄養価が高いのに値段が安いことと、もつをくちゃくちゃと噛む食べ方が庶民に受け、やがて福岡の郷土料理として広く知られるようになった。作り方はお湯で余計な脂を落としてからもつをお好みのスープの中に入れ、キャベツやニラを入れるだけ。最後はちゃんぽん麺を入れて食べると2度美味しい。


だんご汁
「ほうちょう」とも呼ばれる、九州、特に大分の郷土料理として認知されている鍋料理。通常は小麦粉で作った団子を一晩寝かし、これを引き伸ばして麺のようになったものを鍋に入れて食べる。多くの場合、その他の具としてはゴボウ、ニンジン、サトイモ、ネギなどの野菜と豚肉が豊富に入っており、豚汁によく似ている。調理が簡単なことから一般家庭の夕食としては重宝がられ、またご飯にもよく合うため、全国の庶民に愛されるようになった。ちなみに大分では、この団子にきな粉と砂糖をまぶせたお菓子「やせうま」も人気がある。


その他お鍋の数々
おでん おでん
ご存じ冬定番の煮物料理。室町時代に出現した田楽と呼ばれる食物が原型で、この「田楽」の「でん」に「お」が付けられて「おでん」との呼称が定着した。関西では「関東炊き」ともいう。
しゃぶしゃぶ しゃぶしゃぶ
中国大陸で元々は羊肉を使った料理だったが、日本人向けに牛肉をつかうようになり現在の形になった。ちなみに、「しゃぶしゃぶ」という名称は1952年に大阪の「スエヒロ」が命名した物。
常夜鍋 常夜鍋
昆布と日本酒が入った出汁がおいしい鍋料理。毎晩続けて食べても飽きない、という意味を込めてこの名がつけられた。 写真提供: www.mizkan.co.jp
すきやき すきやき
すき焼きの語源は、鍋の代わりに農具の鋤(すき)の金属部分の上を火にかけ、肴や豆腐を焼いて食べたことに端を発しているという。後に現代のような鍋物に姿を変えた。
ちゃんこ鍋 ちゃんこ鍋
明治時代に考案された、大相撲の力士が食べる鍋料理。特定の味付けはないが、味噌仕立てや塩などが定番。最近はカレーやキムチ味なども人気らしい。
写真提供: www.nagatanien.co.jp
水炊き 水炊き
昆布や鶏などの出し汁を入れた鍋で野菜や魚介類、豆腐などを煮こんだ鍋物。ぽん酢やたれにつけて食べるのが常。締めはごはんやうどんを入れて、最後の一滴まで味わい尽くす。写真提供: kitchenhime.blog21.fc2.com
寄せ鍋 寄せ鍋
出し汁に野菜や魚介類など様々な具材を入 れて煮込む。地方ごと、家庭ごとに味付け や材料が異なり、自由な発想で味のハーモ ニーを楽しむことができる。写真提供: www.amitatsu.jp
 
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