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Wed, 01 April 2026

LISTING イベント情報

欧州最高層ビル「ザ・シャード」がお披露目
写真: 小林咲子

72のフロアにオフィスやフラット、展望台など
欧州最高層ビル「ザ・シャード」がお披露目

ロンドン在住者ならば、数年前からロンドン・ブリッジ付近で高層ビルが建設中であったことに気付いていた人も少なくないのではないだろうか。「ザ・シャード」と呼ばれるこのビルは、現時点で欧州で最も高いビルであり、構想から12年を経て、このほどようやく外装工事が終了した。

「ザ・シャード」に関する情報

住所32 London Bridge Street, London SE1 9SY
建設費4億5000万ポンド(約553億5000万円)
総床面積311万平方メートル
設計者レンゾ・ピアノ
開発業者セラー不動産グループ(Sellar Property Group)
主な建設業者メイス・グループ(Mace Group)
展望台の入場料大人24.95ポンド(約3000円)子供18.95ポンド(約2330円)
(展望台は2013年2月オープン)

欧州最高層ビル「ザ・シャード」がお披露目

ロンドンの高層ビル

名称 高さ 場所 完工年
1ザ・シャード
(The Shard)
310メートル ロンドン・ブリッジ付近 2012年
2ワン・カナダ・スクウェア
(One Canada Square)
235メートル カナリー・ワーフ地区 1991年
3ヘロン・タワー
(Heron Tower)
230メートル シティ・オブ・ロンドン 2011年
48カナダ・スクウェア
(8 Canada Square)
199.51メートル カナリー・ワーフ地区 2002年
425カナダ・スクウェア
(25 Canada Square)
199.51メートル カナリー・ワーフ地区 2002年
6タワー42
(Tower 42)
183メートル シティ・オブ・ロンドン 1980年
730セント・メリー・アクス
(30 St Mary Axe)
(通称「ガーキン」
179.80メートル シティ・オブ・ロンドン 2003年
8BTタワー
(BT Tower)
177メートル グッジ・ストリート駅付近 1962年
9ブロードゲート・タワー
(Broadgate Tower)
161.25メートル シティ・オブ・ロンドン 2008年
10ワン・チャーチル・プレイス
(One Churchill Place)
156.34メートル カナリー・ワーフ地区 2004年

「破片」を意味するビル名

今月5日、ロンドン中心部のロンドン・ブリッジ近くで、欧州で最も高いビル「ザ・シャード(The Shard)」の外装工事完了を受けたお披露目式典が行われた。同ビルは、イタリア人の著名建築家レンゾ・ピアノ氏が設計した高さ310メートルの建物で、教会の尖塔や船のマストをイメージしたピラミッド型の形が特徴。全面ガラス張りになっており、使われたガラス板の数は、ビル全体で計1万1000枚に上ったという。

ビル名の「シャード」とは、ガラスや瀬戸物などの「破片」を意味する単語である。5日夜のお披露目式典では、ロンドン交響楽団の生演奏をバックに、ロンドン・アイやタワー・ブリッジなどのロンドンの名所に向けて同ビルからレーザー光線が放たれ、ビル全体がライトアップされた。

中東のカタール国が大部分を所有

「ザ・シャード」の建設計画は、ロンドンを拠点とするセラー不動産グループのアービン・セラー会長が、この場所にあった25階建てのビルの再開発を決定したことから始まった。その後、2007年の金融危機の影響で、一時は計画破綻の危機に直面したが、2008年初頭、中東のカタール国のカタール国立銀行、カタール・イスラム銀行などで構成されるコンソーティアムが出資に合意し、計画続行が可能になった。こうした経緯を経て、「ザ・シャード」は現在、95%がカタール国の所有となっている。豊富な石油と天然ガス資源に恵まれた富裕国であるカタール国は近年、ロンドンの高級不動産を数多く取得しており、デパート「ハロッズ」や、メイフェア地区に位置する米国大使館の建物などを所有している。

セラー不動産グループはまた、「ザ・シャード」のすぐ近くに、17階建てのオフィス・ビル「ザ・プレイス(The Place)」を開発中である。同グループは、これら2つのビルの建設のほか、ロンドン・ブリッジ駅の改装、駅周辺の整備などによって、このエリアを「ロンドン・ブリッジ・クォーター」と呼ばれる近代的な商業地区に生まれ変わらせる再開発計画を進行中だ。

フラットの価格は数十億円と推定

冒頭で述べたように、今回行われたのは「ザ・シャード」の外装工事の終了を記念した式典であり、内装工事は現在も続けられている。内装が完成した暁には、地上階から72階までのフロアに、オフィス、レストラン、ホテル、フラット(マンション)、展望台が入ることになる。セラー不動産グループのセラー会長は、2014年までに全フロアが埋まるとの見込みを明らかにしている。フラットの売却価格は、一戸当たり3000万〜5000万ポンド(約36億9000万円〜61億5000万円)に達すると推定されており、カタール国の王族が住むのではと推測する報道もある。展望台は、68〜72階の5フロアを占めることになり、2013年2月にオープン予定である。

歴史的建造物を保存し、伝統を残しながらも、日々新たに進化するロンドン。「ザ・シャード」は、そうした新旧の時代が混在するロンドンの新たなシンボルと言って良いだろう。展望台がオープンした際にはぜひ足を運び、地上200数十メートルからのロンドンの絶景を楽しみたいものである。

Renzo Piano

レンゾ・ピアノ。イタリア人建築家。1937年生まれ。ミラノ工科大学卒業。1971〜77年、建築家リチャード・ロジャース氏とともに、ロンドンで建築事務所を運営し、フランス・パリの文化施設ポンピドゥー・センターなどを手掛ける。1981年、レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップをジェノヴァに設立。これまでに、プリツカー賞、AIAゴールドメダルなど数々の賞を受賞。関西国際空港旅客ターミナルビルを設計したことでも知られる。1990年代に行われたドイツ・ベルリンのポツダム広場再開発計画では、通称ダイムラー・シティと呼ばれるエリアの再開発基本計画を担った。

(猫山はるこ)

 

金利不正操作で巨額罰金
バークレイズ銀行不祥事の背景とは

バークレイズ銀不祥事英銀大手のバークレイズが、先月27日、短期金利の国際的指標となる「ロンドン銀行間取引金利(Libor)」の不正操作により、英米の捜査当局から総額2億9000 万ポンド(約360億円) の罰金の支払いを命じられた。Liborは住宅ローンなどの設定基準として使われる金利で、私たちの生活に直結する存在だ。大手銀行への信頼をさらに損なわせる不正行為に、金融当局ばかりか政治家らも強い怒りを表明している。Liborの仕組みや不正の背景に注目した。

金利不正操作事件の経緯

2005年6月 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、このころからバークレイズ銀では、金融派生商品のパフォーマンスが自行に有利に働くようにLibor(ライボー、ロンドン銀行間取引金利)を極秘で操作していた。
2007年 8月9日 BNPパリバ社がヘッジファンド部門から資金を引き上げたことで、市場に信用不安が広がる。Liborが上昇する。
8月31日 バークレイズ銀がイングランド銀行の緊急融資枠を2週間で2度利用したことを認める。
9月 サブプライム問題で信用が悪化したノーザン・ロック銀で取り付け騒ぎ。バークレイズ銀の経営陣は、同行の財務状況が悪化していないことを示すために故意に低い金利をLiborの決定の際に申告していたとされる。
2008年 3月29日 米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が、複数の国際的な銀行が不当に低い金利をLibor用に申告しているとする記事を掲載する。
CFTCが内部告発者からの情報を受けてLibor不正操作に関わる調査を開始。
2009年10月 英金融サービス庁(FSA)が同調査に公式に参加する。カナダ、日本、欧州委員会と協力。
2011年4月20日 バークレイズ銀、RBS、ロイズ銀、HSBCなど12の大手投資銀行がLiborの不正操作を行ったとして、ウィーンを本拠地とする資産運用会社FTCキャピタルなどが訴えを起こす。
2012年6月27日 Libor不正操作で、バークレイズ銀が米英監督庁に対し、2億9000万ポンド(約360億円)の罰金を支払うことで合意する。
7月3日 バークレイズ銀のダイヤモンド最高経営責任者が辞任。前日にはエイギュアス会長が辞任予定を発表(後任者を指名後に辞任)。
7月4日 ダイヤモンド氏が下院・特別委員会で証言し、不正操作についてイングランド銀による暗黙の了解があったと示唆。

資料: 英新聞各紙

金融サービス庁が巨額罰金支払いを命じた主な金融機関

罰金対象罰金額時期罰金支払いの理由
バークレイズ銀行 5950万ポンド
(約74.4億円)
2012年
6月
銀行間貸出金利の操作未遂と不正報告
JPモルガン証券 3300万ポンド2010年
6月
顧客の資金を自社の資金として保管し、顧客保護を怠った
ゴールドマン・サックス証券 1750万ポンド2010年
9月
米証券監督機関によって詐欺罪で取り調べを受けていたことの報告を怠った
シティグループ・フィナンシャル・マーケッツ 1390万ポンド2005年
5月
ユーロ圏債権を大量に売却したことで価格を暴落させた

資料: BBC、FSA

渦中のバークレイズ銀行の前CEO
ボブ・ダイヤモンド

バークレイズ銀行の前最高経営責任者。雑誌「ニュー・ステーツマン」が選んだ「2010年の重要人物50人」の一人。米マサチューセッツ州生まれの60歳。両親は教師だった。現在は妻と3人の子供がいる。大学講師から転職し、1970年代末に米モルガン・スタンレー証券会社の債権トレーダーとして名を馳せる。92年に米投資銀行CS ファースト・ボストンに転職。バークレイズ銀行勤務は96年から。2008年、米リーマン・ブラザース証券会社が破綻した際に、その主要資産の買収で大きな役割を果たす。その後、バークレイズの投資銀行としての国際的地位が一段と上昇。昨年3月、最高経営責任者に就任。英国で最高額の報酬を得る企業トップと言われた。BBCによると、昨年の収入は給与、賞与、株オプションを含めて2000万ポンド(約25億円)に上る。7月3日に職を辞任。

大手銀へ注がれる批判

近年の世界的金融危機で、税金をつぎ込んで大手銀行を救済した英国では、国民の大手銀に対する見方は厳しい。その英国で、先月末、新たな不信の種ができた。300年の歴史を持つバークレイズ銀行が市場金利を不正に操作し、米商品先物取引委員会(CFTC)、米司法省、英金融サービス庁(FSA)によって、合計2億9000万ポンド(約360億円)の罰金の支払いを命じられたのだ。それぞれの監督庁にとっては過去最高の罰金額となる。

Liborをどう不正操作したのか

問題となったのは、国際的な短期金利指標であるロンドン銀行間取引金利(Libor、ライボー)やそのユーロ版Euribor だ。総額350兆ドル(約2京7877兆円) にも上る市場規模を持つ金融商品の指標として使われており、金融派生商品(デリバティブ)、住宅ローン、教育ローン、クレジット・カードの金利の基準になる。Liborの設定に際しては、まず複数の有力銀行が翌日の銀行間市場で借り入れる金利を英銀行協会BBA に申告する(実際の作業は金融情報会社トムソン・ロイターが行う)。この申告数値を基にトムソン・ロイターがLiborを計算し、関係者に情報を流して、BBAが計算方法の詳細を発表する形を取る。

バークレイズ銀では、2005~08年にかけて、トレーダーたちが自行や他行の金利担当者に連絡を取って、自分たちが取り扱う商品のパフォーマンス向上に都合が良い数値を申告するように調整していた。また2007~09年の金融危機のころ、故意に低い金利を申告し、いかにも財政状態が良好であるかのように見せかけていたという。

度重なる大手銀行の不祥事

不正操作疑惑は数年前から一部で報道されてきたが、金融業界の監督組織FSAは具体的な行動を取ることができないままでいた。Libor は具体的な取引ではなく、有力銀行が提示する呼び値をBBA がまとめる形をとってきたため、業界による「私的な活動」という面があったことや、Libor の設定行為がFSA による刑事捜査対象になっていなかったことが背景にある。Libor市場は「少数の有力銀行に」支配され、銀行の株主には、「金融機関の経営者を監督する機会はほとんどなかった」(「フィナンシャル・タイムズ」紙)のだ。こうした事態を受けて、BBAは今年3月から、Libor設定方法の見直し作業を開始している。FSA によると、不正操作はバークレイズばかりではなく、20行ほどのほかの銀行でも行われていた。今後、詳細が明らかになりそうだ。

銀行業界では、ここ数年にわたり不祥事が続いている。支払保障保険(関連キーワード参照)では、誤販売で複数の銀行が巨額の払い戻しを余儀なくされた。またLibor不正操作問題の発覚直後には、バークレイズを含む大手銀行による金利スワップ取引における誤販売が発覚している。

オズボーン財務相がLibor問題で金融街シティの「強欲体質」を指摘したが、業界内を刷新する大きな機会がいよいよ到来したともいえる。どこまで「改革」が進み、国民の信頼を取り戻せるのか。今後の進捗に注目したい。

Payment Protection Insurance(PPI)

支払い保障保険。金融機関からの貸付や負債の返済が失職、事故、病気、死などの理由でできなくなった場合のためにかける保険。一定の期間、支払いを肩代わりしてくれるなどの利点がある。近年、十分な説明をせずに買わせる例が続出して、金融機関に対する国民の信頼感を下落させる要因の一つとなった。現在では、金融サービス庁(FSA)の指導の下、不適切に販売されたと思う利用者は補償金を受け取ることができる。補償金の支払い総額は昨年1月時点では3600万ポンド(約45億円)だったが、今年4月には5億7050万ポンドに達している。

(小林恭子)

 

フォークランド諸島来年には住民投票の実施も
フォークランド諸島の領有権争いが再燃

英国とアルゼンチン間のフォークランド諸島の領有権問題が近年、再燃している。今年初めには、ウィリアム王子が空軍の軍務として同諸島に派遣され、アルゼンチンの反発を買ったというニュースなどもあったが、今回は、長い歴史を持つこの問題について探ってみる。

フォークランド諸島地図

フォークランド諸島に関するデータ

総面積 1万2173平方キロメートル
人口 2995人(2006年国勢調査の結果)
首都 スタンリー(Stanley)
公用語 英語
通貨 フォークランド諸島ポンド(英ポンドと等価)
君主 エリザベス2世
行政 外交、軍事以外はフォークランド諸島自治政府が担う。
英国の君主の代理人として、長官(Governor)が派遣されている。
国内総生産(GDP) 1億400万ポンド(2007年)
一人当たりGDP 3万4944ポンド(2007年)
主な産業 漁業、観光業、農業

Source: Foreign and Commonwealth Office

英国によるフォークランド諸島の領有に関するアンケート調査結果

英国によるフォークランド諸島の領有に関するアンケート調査結果

*2012年3月16~18日、英国人の成人1000人を対象に電話調査を実施した結果
Source: The Guardian / ICM Research

英国によるフォークランド諸島の領有に関するアンケート調査結果

1592年 航海中のイングランド人の船長、ジョン・デービスがフォークランド諸島を発見する。フォークランド諸島の発見を記した最も古い記録。
1690年 イングランド人の船長ジョン・ストロングがフォークランド諸島に上陸。フォークランド諸島への上陸を記した最も古い記録。
18~19世紀 フランス、スペイン、英国が、フォークランド諸島の様々な場所に入植する。
1816年 アルゼンチンがスペインから独立。
1833年 フォークランド諸島が英国の支配下に置かれる。以降、現在まで、同諸島は英国の領土であり続けている。
1845年 スタンリー(Stanley)が正式にフォークランド諸島の首都となる。
1965年 国連総会が決議第2065号を採択し、英国とアルゼンチンに、フォークランド諸島の領有権問題について平和的な解決策を探る交渉を行うよう促す。
1966年 国連の呼び掛けを受けて英国とアルゼンチンがフォークランド諸島の領権有問題について協議するも不調に終わる。
1982年 アルゼンチンがフォークランド諸島を占領。英国とアルゼンチンの間でフォークランド紛争が勃発し、英国が勝利する。
1990年 英国とアルゼンチンの国交が回復。

1833年から英国の領土

フォークランド諸島は、南太西洋のアルゼンチン沖に浮かぶ島々である。英国は、大英帝国時代の領土の名残である「海外領土」(「関連キーワード」参照)を、世界各地の14カ所に有しており、同諸島もその一つである。  

フォークランド諸島は、1833年から英国の領土になっているが、アルゼンチンは長らくその領有権を主張しており、1982年には、この問題をめぐって、同国と英国の間で「フォークランド紛争」が勃発した。この争いは、当時のアルゼンチンの軍事政権が内政問題からアルゼンチン国民の目を逸らすために同諸島を占領したことで始まったが、英国の猛反撃に遭い、敗北した。

英企業の石油試掘で争い再燃

英国とアルゼンチン間のフォークランド諸島の領有権争いが近年、再燃している大きな理由の一つとして、同諸島の周辺の海で、英企業が石油の試掘を行っていることがある。同諸島周辺では、1998年に石油が発見されており、近年の原油高を受け、2010年より、複数の英企業が石油の試掘を再開している。こうした石油の試掘は、期待外れの結果に終わっているものも多いが、少なくとも1社は、既に大量の石油の発見に成功しており、2016年よりその汲み上げを開始する予定である。  

こうした事情を背景に、アルゼンチンは近年、同諸島の領有権を声高に主張し、様々な強硬手段を取るようになっている。例えば2010年2月には、アルゼンチンの領海を通って同諸島へ行く船舶に対し、アルゼンチンの許可を得ることを義務付けると発表。また、昨年末には、近隣諸国に、フォークランド諸島の旗を掲げた船舶の入港を禁止することを合意させた。

英国は交渉の意思ないとの立場

一方、英国は、国連憲章で認められた「民族自決」の原則に基づき、島民が現状維持を希望する限りは、フォークランド諸島は英国の領土として残るべきであるとの考えを示しており、この問題に関してアルゼンチンと交渉する意思はないとの立場を取り続けている。同諸島の住民は、大半が英国からの移住者の子孫であり、英国の領土として残ることを希望している。  

こうした中、フォークランド諸島自治政府は先月12日、同諸島が英国の領土として残るべきかを問う住民投票を来年前半に実施することを明らかにした。狙いは、今後も引き続き英領にとどまりたいという大多数の島民の考えをアルゼンチンに対して明確に伝え、同国の主張を一蹴することにある。住民投票実施発表の席で、フォークランド諸島議会のショート議長は、「フォークランド諸島の島民が、英国の領土として残りたいことに疑いはない」などと述べていた。一方、このちょうど2日後のフォークランド紛争終結30周年記念日には、米ニューヨークで国連の非植民地化特別委員会の特別会合が開かれ、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、同諸島がアルゼンチンの領土であるとの主張を改めて繰り返した。住民投票実施によって、アルゼンチンのこうした主張はもはや聞かれなくなるのか。行方を見守りたい。

各民族集団が、自らの意志に基づいて、その運命を決定できる権利。

Overseas Territories

英国が海外に有する領土で、全部で14カ所存在する。英国の女王を君主に頂くが、英国(the United Kingdom)の一部ではない。すべての海外領土には、女王の代理人として、「長官(GovernorまたはCommissioner)」が英国から派遣されている。また、海外領土はすべて、それぞれ独自の行政府と議会、法律を有している。フォークランド諸島以外の海外領土は、人口が100人にも満たないピトケアン諸島のような小規模な領土から、6万4000人もの人口を抱えるバミューダ諸島のような大規模なものまで様々である。英国の海外領土の総人口は24万4000人。

(猫山はるこ)

 

革命から内戦状態に突中
欧米・露中間の緊張高まるシリア情勢

シリア内戦状態にあるシリアに対する国連の停戦調停案が失敗したとみられる中、人道的理由から軍事介入に踏み込むべきだとの見方を示す欧米と、それを阻止したい露中間で緊張が高まっている。対欧米姿勢を強化する露中両国は、シリアを基軸とした中東地域における自国のプレゼンスを保ちつつ、シリアをリビアの二の舞にすることを避けたいようだ。

シリア情勢関係図

シリア情勢関係図

シリアの民族・宗派  参考資料: 外務省

民族
アラブ人 90%
クルド人 10%
アルメニア人
その他
宗派
イスラム教 90%
  スンニ派 74%
アラウィ派 16%
ドルーズ派
キリスト教 10%
 

アナン特使のシリア停戦調停案は失敗

ラドゥス国連事務次長は、12日、最近のシリア情勢に関して記者団から「シリアは内戦状態か」との問いに「そう言えるだろう」と答え、国連高官として初めて内戦状態にあることを認めた。4月、アナン国連・アラブ連盟合同特使(前国連事務総長)によるシリア停戦に向けた調停案の発表を受け、国連は監視団を派遣。しかし、同国情勢の沈静化が見られないまま、今月7日、アナン特使は自身が掲げた停戦調停案が失敗したことを認めることとなった。最近ではロバート・ムード団長が、国連シリア監視団の駐留期限であった7月中旬を待たずに活動を一時中断したと発表するなど、一連の計画は事実上既に崩壊してしまった恐れがある。

内戦での死者1万4000人超

シリアのアサド大統領は3日、同国が混迷に陥った原因は「国外から仕掛けられた戦争」であり、国際社会から支援されたテロリストが国内の宗派対立を煽っているとし、シリア政府が自国民を虐殺しているとする欧米に反論した。先月25日、中部ホウラで100人以上が大量殺害された事件をめぐり、国連が政府系民兵組織「シャビハ」の犯行であるとした一方、シリアの調査委員会は反政府勢力による犯行との見方を示している。  

シリアにおける最近の暴力激化と虐殺に対し、キャメロン首相は「残忍で吐き気を覚える」とし、国際社会は共同して民間人を守らなければならないと主張。英国に拠点を置く反シリア政府人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights(SOHR)」は、昨年3月以降シリアでの死亡者は1万4476人で、特に5月13日からの1カ月間の死亡者は2302人であったとしている。

欧米の軍事介入と露中の思惑

同じく内戦に揺れたリビアに比してシリアは民族・宗派関係が複雑であるほか、周辺諸国から孤立していたリビアの故カダフィ大佐とは違い、アサド大統領はイラン政府やレバノンのシーア派過激派組織「ヒズボラ」とも親しい。また、シリアにはリビアほどの天然資源も無いなど、国際社会が軍事介入を躊躇する理由があった。しかしここに来て、シリアに対する軍事介入を示唆し始めた米欧と、それをけん制する露中の間で緊張が高まっている。クリントン米国務長官はシリアに攻撃用ヘリを輸送しているとして、アサド政権を擁護するロシアを批判。一方のラブロフ露外相は、米国が反体制派に武器を供給していると反論に出るなど、米露の非難合戦が激化しているのだ。また、ファビウス仏外相は、飛行禁止空域の設定などを国連安保理に求める意向を示したが、これまで露中は、対シリア決議案に2度、拒否権を行使している。  

ロシアにとってシリアは、地中海地域における海軍基地の要であり、中東地域における最大の武器輸出国でもある。また中国はシリアの油田開発に3億ドル(約240億円)規模の投資を行うなど、露中両国ともアサド政権崩壊を望んでいないようだ。メキシコのロスカボスで開催された主要20カ国・地域首脳会議で、プーチン露大統領が「アサド大統領の辞任を決める権利はシリア国民にのみある」とし、対欧米姿勢を示したことで、シリア情勢をめぐる国際社会の協議が暗礁に乗り上げることが懸念される。

「Al-Shabiha」

アサド大統領の出身宗派イスラム教アラウィ派が主体の政権支持派民兵組織。「シャビハ」はアラビア語の「亡霊」が語源で、現代シリアでは「凶悪犯」や「ギャング」を意味する。1970年代、故ハーフェズ・アサド大統領の弟リファートの下で発足。シリア西部地中海沿岸ラタキア市を中心に、ギャング組織として密輸などを行い、地元における強引な用心棒代の取り立てなどで問題となった。2011年、同地で反政府デモの活発化を機に、私服の民兵組織として活動し始める。ナイフで喉を切り裂くなどその殺害方法が残虐で、アサド大統領の「暗殺部隊」として知られるようになった。

(吉田智賀子)

 

30回以上も政策を撤回・修正
イギリス政府による政策の「Uターン」について

英国政府のUターン保守党率いる連立政権である現政権は、政権発足以来、政策の「Uターン」を繰り返している。同じく保守党の首相であったサッチャー元首相が、自らを「信念の政治家」と呼び、自分が信じる道を頑固なまでに突き通したのとは対照的であり、多くの批判にさらされている。

現政権がこれまでに行った
政策のUターン(一部)


2010年8月 国が承認した保育園などで5歳以下の子供に毎日無料で牛乳を配布する制度を廃止するとの計画を撤回。
2010年11月 イングランドとウェールズにおける強姦事件の裁判で、原告のみならず、被告も匿名で公判を行うようにするとの計画を撤回。
2010年12月 小・中学校、特別支援学校(養護学校)が協力し、生徒のスポーツへの参加を奨励することなどを目的とするイングランドのプログラム「スクール・スポーツ・パートナーシップ(SSP)」を廃止するとの計画を修正。
2010年12月 慈善団体「ブックトラスト」による子供に無料で本を配布するプログラム「ブックスタート」への補助金配布を取りやめるとの計画を撤回(しかしこの2カ月後の2011年2月には、補助金額を半減することを新たに発表)。
2011年2月 イングランドにある政府所有の森林を売却するとの計画を撤回。
2011年2月 失業が1年以上続いた場合、住宅手当の支給額を10%削減するとの案を撤回。
2011年6月 イングランド及びウェールズで行われる刑事事件の裁判で、被告が早期に有罪を認めた場合、刑を半減するとの案を撤回。
2011年11月 18歳以下の若者・子供の犯罪・再犯防止などを役割とするイングランド・ウェールズの公的機関「青少年犯罪対策委員会(Youth Justice Board)」を廃止するとの計画を撤回。
2011年12月 居住型介護施設に入所している障害者生活手当(Disability Living Allowance)の受給者への同手当支給額を減額する案を撤回。
2012年5月 2012年秋より、イングランドの公立学校に、教育基準局(Osted)が予告なしで訪問し、監査を行うとの計画を撤回。
2012年5月 静止型ホリデー用トレーラーハウスに20%の付加価値税(VAT)を課税する計画を「5%のVATを課税する」に修正。
2012年5月 スーパーマーケットやパン屋などで販売されているパイ類などの温かい食品(hot food)に付加価値税(VAT)を課するとの案を修正。
2012年5月 慈善団体などへ寄付をした場合、税額控除を受けられる制度について、控除できる金額に上限を設けるとの計画を撤廃。

政府のUターンに関する世論調査結果

「政府は最近、温かい食品やホリデー用トレーラーハウスへのVAT課税案などについて、方針を変更しました。次の言葉のうち、これらの問題への政府の対処を最も良く表現するものを2つか3つ選んでください」

政府のUターンに関する世論調査結果

パイ類などへのVAT課税案を修正

最近、政府の動向に関する報道でよく使われている言葉が「Uターン」である。これは、「政府が、一度実施すると決めた政策を、撤回または変更すること」を意味する。保守党と自由民主党の連立政権である現政府は、5月28日、3月に発表した2012年度予算で明らかにしていた、「スーパーマーケットなどで販売されているパイ類などの温かい食品(hot food)に付加価値税(VAT)を課す」との案を修正した。全国のパン屋などからの強い反対を受けての決定であった。同じく5月末にはまた、同様に2012年度予算に盛り込まれていた静止型ホリデー用トレーラーハウス*へのVAT課税案、慈善団体などへの寄付金の税額控除に関する案がそれぞれ修正・撤回された。

*移動型ではなく、長期間同じ場所に置かれるタイプのトレーラーハウス(キャラバン)で、休暇滞在用などに使われる。

「政府は無能」との批判

現政権による「Uターンぐせ」は、今に始まったことではない。2010年5月の政権発足以降、現政府が政策の撤回・変更を行った回数は、実に30回ほどに上る。例えば2011年2月には、イングランドにある政府所有の森林を売却する案を撤回。同案に対しては、田園地方の保護を訴える団体などを含めた多くの人から反対意見が噴出していた。これ以外にも、保育園などでの5歳以下の子供への牛乳の無料配布制度や住宅手当などに関する政策について、過去2年の間、次から次へとUターンが繰り返されている。こうした経緯と、特に前述したように5月末のわずか4日間で2012年度予算に含まれた3つもの政策についてUターンを行ったことで、政府は現在、「無能」との批判にさらされている。こうした声に対し、キャメロン首相は、「我々は、間違いを認め、方針を変更する勇気を持っている」などと述べ、一連のUターンを正当化している。

「望ましいUターン」を求める声

一方、こうした批判とともに、「同じUターンであれば、『英国にとって望ましいUターン』をすべき」との声もある。これはつまり、政府の経済政策を、財政赤字解消を目指すこれまでの緊縮財政の方針から、インフラ投資などの経済成長促進策に焦点を当てる方針に転換するべきであるとの意見である。実は既に、こうした声に応えるかのように、クレッグ副首相は最近、「フィナンシャル・タイムズ」紙上のインタビューで、今後、経済政策の重点を経済成長促進にシフトさせることで政府の上層部が合意したことを明らかにしている。  

英国経済は、2011年の第4四半期と2012年第1四半期に2期続けてマイナス成長となり、再び景気後退入りした。また、5月中旬に国民統計局(ONS)が発表した統計では、今年3月時点での1年以上の長期失業者の数が88万7000人と、1996年以降で最悪を記録したことが分かった。現政府のこれまでの経済政策が期待通りの効果を上げていないこと、国による積極的な経済成長支援策が必要であることに賛同する人は少なくないと思われ、副首相が明らかにした政府の方針が本当に実行されるのであれば、今度はそれが「Uターン」をしないことが望まれるであろう。

「The lady's not for turning」

マーガレット・サッチャー元首相が、政権初期の1980年に、イングランド南部ブライトンで開かれた保守党の党大会での演説で述べた言葉。「私は政策のUターンをしない」という意味。当時、同元首相が推進していたインフレ抑制策に反対し、Uターンをすることを期待する人々に向けて述べたもので、あくまで自らの政策を追求する姿勢を明確にした。このときの演説の原稿を執筆したのは脚本家のロナルド・ミラー氏で、この有名な台詞は、1940年代に初演されたクリストファー・フライ氏脚本の劇のタイトル「The Lady's Not For Burning」をもじったもの。

(猫山はるこ)

 

開幕まであと1カ月半
BBCによるロンドン五輪の放送予定を紹介

オリンピックロンドン五輪の開催まで、あと1カ月半を残すところとなった。主催国の公式放送局となったBBCは、すべての競技を放送すると宣言。いつでも、どこでも、好きなときに競技の模様を視聴できるよう準備しているという。普段はあまりスポーツに興味がないという人でも、つい自国チームを応援してしまうのが五輪大会だ。今週は、BBCの放送がどのように行われるかについて注目した。

BBCによるロンドン五輪の報道予定表

放送期間 2012年7月27日~8月12日
放送媒体 テレビ、ラジオ及びウェブサイト(www.bbc.co.uk/sport
放送時間 9:00〜深夜が中心
放送内容 すべての五輪競技の生中継及び関連情報

チャンネル名番組名時間内容
BBC1
BBC1 HD
オリンピック・ブレックファスト
Olympic Breakfast
6:00-9:00 前日の競技のハイライト、本日の競技予定、ニュースほか
オリンピックス2012
Olympics 2012
9:00-22:35 競技の現場からのリポート、その日に注目すべき選手の紹介
オリンピックス・トゥナイト
Olympics Tonight
22:40-0:00 歴代のスポーツ選手をゲストに呼び、その経歴を振り返る
オリンピック・スポーツデイ
Olympic Sports Day
0:15-翌1:00 前日の競技の様子をまとめる
BBC2 オリンピックス2012
Olympics 2012
13:00-13:45
18:00-19:00
22:00-22:40
BBC1で定時のニュース番組が放映中に五輪報道を継続
BBC3 オリンピックス2012
Olympics 2012
9:00-23:00 その日行われた競技の印象深い場面を紹介する
ニュース専門局 BBCニュース
BBC News
24時間 テレビのチャンネルとウェブサイトを通じて、一日中、五輪の話題を報道する

( 資料: BBC )

五輪放送の歴史

開催年 開催都市 出来事
1936 ベルリン
(ドイツ)
ベルリン近辺の有線テレビで五輪が初めてテレビ放送された。放送時間合計は138時間。16万2000人が視聴。
1948 ロンドン
(英国)
家庭のテレビ受信機を通しての放送が開始。放映権に関する枠組みが確立する。合計で64時間の放送を視聴できたのはロンドンから80キロ圏内の視聴者のみ。
1952 ヘルシンキ
(フィンランド)
放送権交渉が開始される。
1956 メルボルン
(オーストラリア)
放送権交渉が決裂し、米国を含む数カ国で放映が不可に。
1956 コルティナ・ダンペッツォ
(イタリア、冬季)
冬季五輪が初めてテレビ放映される。
1958 五輪憲章に放送権の支払いについての要項が明文化される。
1960 ローマ
(イタリア)
18の欧州諸国で五輪の生放送が開始。数時間後には米国、カナダ、日本で放送。
1964 東京
(日本)
衛星放送を使って海外に映像を送ることが可能に。
1968 メキシコ・シティー
(メキシコ)
カラー放送とスローモーションの動画撮影が始まる。
1972 札幌
(日本、冬季)
NHKがほかの放送局に映像を流す方法を導入。主催国の公式放送局が「ホスト・ブロードキャスター」となる仕組みが確立。
1984 ロサンゼルス
(米国)
テレビ及びラジオ放送権を156カ国が取得。25億人が五輪放送を視聴。
1992 アルベールビル(フランス、冬季)
バルセロナ(スペイン)
開催国の五輪公式放送局がケーブル及び衛星放送局に五輪放送権を提供する方式が導入される。
1994 リレハンメル
(ノルウェー、冬季)
冬季大会が初めてアフリカ諸国で放映される。
1996 アトランタ
(米国)
214カ国で五輪が放映される。
1998 長野
(日本、冬季)
オーストラリアで生中継が開始。オン・デマンド及び3D高画質での放送が初めて開始。
2000 シドニー
(オーストラリア)
220カ国で、37億人が五輪放送を視聴。
2002 ソルトレーク
(米国、冬季)
ホスト・ブロードキャスターが、初めて冬季五輪競技のすべてを生中継。
2004 アテネ
(ギリシャ)
アゼルバイジャンでの生放送が開始される。一部の国ではインターネットでの中継放送を実施。
2006 トリノ
(イタリア、冬季)
冬季大会では最長時間となる、1000時間にわたる生中継放送が行われる。高画質での放送開始。携帯電話での視聴が可能に。
2008 北京
(中国)
高画質での5000時間にわたる生中継の実施記録を作る。世界中での放送時間の総計は6万1700時間。67億人が視聴。デジタル・メディアを通じての放送が始まる。
2010 バンクーバー
(カナダ、冬季)
220の国・地域にて235の放送局が放映。37億人が視聴。世界中での放送時間の総計は3万1092時間で、生中継は44%。

( 資料: 「Olympic Marketing Fact File 2012」 )


すべての競技を生中継

ロンドンは、この夏、7月27日から8月12日まで開催される第30回夏季五輪競技と、8月29日から9月9日まで開催される第14回夏季パラリンピック競技の主催地となる。19世紀末に始まった近代オリンピックの開始後、ロンドンが夏季五輪大会の主催国となるのは、1908年、1948年に続いてこれで3回目。一つの都市が夏季五輪を3度開催するのは初めてだ。  

そんな名誉ある大会を「私たちの生涯で最大のスポーツ・イベント」と定義するのは、BBCの編集幹部ロジャー・モージー氏である。BBCは、すべての競技を生中継する予定。その放映時間は総計で2500時間にも及ぶ見込みだ。デジタル時代の技術やメディア環境を使って、視聴者が「いつでも、好きなときに、好きな競技を視聴できる」体制を整えるという。

ストリーム放送や専用アプリも

BBCによる五輪報道の中心になるのは、テレビのチャンネルではまずBBC1だ。原則として五輪報道を常時行い、定時のニュース番組が放送される時間帯には代わってBBC2が五輪番組を放映する。BBC3も独自の五輪番組を常時放映する予定だ。  

BBC1がそのときに扱っていない競技を視聴したり、後で視聴したいときには、デジタル・テレビ用リモコンの「レッド・ボタン」を押し、BBCが設置した五輪専用の24の高画質チャンネルの中から視聴したい競技種目を選択することが可能。有料テレビのスカイや、ケーブル・テレビのバージン・メディア、あるいはフリービュー、BTビジョンなどの利用者は、こうしてオン・デマンド視聴を楽しむことができる。

インターネットにつながった、いわゆる「スマート・テレビ」やコンピューターを利用する場合は、BBCのスポーツ・サイト(www.bbc.co.uk/sport)が便利だ。同サイトでは競技映像のストリーム放送を実施し、生中継の動画は巻き戻しすることも可能。スマートフォン及びタブレット向けの専用アプリも用意されている。  

さらに、ラジオ好きの人には五輪開催期間に限って放送される「ラジオ・ファイブ・ライブ・オリンピック・エキストラ」がお勧めだ。BBCはまた「London 2012」という特設サイトを立ち上げ、五輪に関わるニュース、スポーツや芸術、地域の情報などを掲載している。開催まで待ちきれない人は、5月19日に始まった聖火リレーの様子を生中継しているウェブサイト(www.bbc.co.uk/torchrelay)を閲覧してはどうだろうか。

パラリンピック放送はチャンネル4で

夏季五輪後に開催されるパラリンピックの放送は、民放局チャンネル4が担当する。「モア4」などのデジタル・チャンネルやオンライン・サイトを用いて、合計で150時間が放送に割かれる予定だ。パラリンピック用サイト(http://paralympics.channel4.com)では、競技の同時ストリーミング放送が視聴できるほか、全選手に関わる情報やパラリンピックで実施されるスポーツの関連情報などが発信される。五輪開催中は、まさに「いつでも、どこでも」と実感できるような、デジタル時代の様々なツールを駆使した報道を楽しむことができそうだ。

Pierre de Coubertin

ピエール・ド・クーベルタン。近代オリンピックの創立者、フランスの教育者(1863〜1937)。芸術家の貴族の家庭に生まれる。自らもボクシング、フェンシング、乗馬などのスポーツを嗜み、1887年よりスポーツ復興運動を開始。94年にオリンピック競技大会復活会議を開催、国際オリンピック委員会の会長に就任。同年、近代オリンピックの最初の大会がアテネで開催された。その後、女性の競技参加に反対を示したため論争を招き、1925年に会長職を辞任。37年にジュネーブで死去した。オリンピックが国際イベントとして発展する素地を作った功績が世界中で広く認められている。

(小林恭子)

 

8000人のランナーが英全土を走る
五輪の聖火リレーについて

オリンピックいよいよ開会まで2カ月を切ったロンドン五輪。購入していたチケットが届き、胸をワクワクさせながらその日を待っている人も少なくないだろう。今回は、日々の報道などを通して、大会が間近に迫っていることを実感させてくれる聖火リレーについて取り上げる。

聖火リレーのルートに入っている英国の名所(一部)

通過日 名所の名前
5月19日 ランズ・エンド岬
(イングランド南西部) 
ランズ・エンド岬イングランド南西部の端。
英国での聖火リレーのスタート地点
5月29日 スノードン山
(ウェールズ)
スノードン標高1085メートルのウェールズの最高峰
6月4日 ジャイアンツ・コーズウェー
(北アイルランド)
ジャイアンツ・コーズウェー火山活動で形成された石柱が立ち並ぶ名所
6月16日 エンジェル・オブ・ノース
(イングランド北部)
ハドリアヌスの壁(同)
エンジェル・オブ・ノースエンジェル・オブ・ノースは、ゲーツヘッド地方に建つアンソニー・ゴムリー氏による大彫刻作品。ハドリアヌスの壁はローマ時代の遺跡
7月12日 ストーンヘンジ
(イングランド南西部)
ストーンヘンジウィルトシャー州に位置する環状の巨石群。世界的に有名な先史時代の遺跡
7月13日 ダードル・ドア
(イングランド南部)
Durdle Door海に突き出した石灰岩の崖が、海水で侵食され、アーチ型になったもの
7月20日 ロンドン塔
(ロンドン)
Tower of London11世紀にウィリアム征服王が建造を開始した古い城。監獄、処刑場として使われたことで知られる
7月27日 ハンプトン・コート宮殿
(ロンドン)
Hampton Court Palaceヘンリー8世の時代に建てられた城。聖火リレー最終日はここからスタートし、五輪スタジアムへ向かう

これまでに行われた五輪の聖火リレー

開催年 開催都市 聖火ランナー
の数(人)
走行距離
(km)
聖火リレーで通過した国・地域
1936 ベルリン
(ドイツ)
3331 3187 ギリシャ、ブルガリア、ユーゴスラビア、オーストリア、チェコスロバキア、 ドイツほか
1948 ロンドン
(英国)
1416 3365 ギリシャ、イタリア、スイス、 ルクセンブルク、ベルギー、英国ほか
1952 ヘルシンキ
(フィンランド)
3372 4725 ギリシャ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド
1956 メルボルン
(オーストラリア)
不明 4912 ギリシャ、インド、タイ、シンガポール、インドネシア、オーストラリア
1960 ローマ
(イタリア)
1529 1863 ギリシャ、イタリア
1964 東京
(日本)
10万1866* 7487 ギリシャ、トルコ、レバノン、イラン、パキスタン、インド、ビルマ、タイ、マレーシア、香港、台湾、日本
1968 メキシコ・シティー
(メキシコ)
2778 2500 ギリシャ、イタリア、スペイン、カナリア諸島、エルサルバドル、メキシコ
1972 ミュンヘン
(ドイツ)
6000 5532 ギリシャ、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ユーゴスラビア、ハンガリー、オーストリア、西ドイツ
1976 モントリオール
(カナダ)
1214 775 ギリシャ、カナダ
1980 モスクワ
(ソ連)
5000 4915 ギリシャ、ブルガリア、ルーマニア、ソ連
1984 ロサンゼルス
(米国)
3636 1万5000 ギリシャ、米国
1988 ソウル
(韓国)
2万899** 1万5250 ギリシャ、韓国
1992 バルセロナ
(スペイン)
1万448 6307 ギリシャ、スペイン
1996 アトランタ
(米国)
1万2467 2万6875 ギリシャ、米国
2000 シドニー
(オーストラリア)
1万3300 2万7000 ギリシャ、グアム、パラオ、ミクロネシア、サモア、ニュージーランド、オーストラリアほか
2004 アテネ
(ギリシャ)
7700 7万8000以上 ギリシャと、過去のすべての夏季オリンピック開催都市を含め、5大陸を回った。
2008 北京
(中国)
2万1800 13万7000 カザフスタン、トルコ、ロシア、英国、フランス、米国、インド、タイ、インドネシア、日本、韓国、ベトナムほか
2012 ロンドン
(英国)
8000 1万2800 ギリシャ、英国

(*) 国際オリンピック委員会(IOC)のホームページによると、1964年の東京五輪のランナーの数がこのように多く記録されているのは、同大会では、1キロごとに1人の聖火ランナーと2人の控えランナー、20人の付き添いがついて聖火リレーが行われたため。
(**) 護衛も含む。

Source: International Olympic Committee(IOC)


初の聖火リレーは1936年

2012年ロンドン五輪の開幕に向けて、英国全土を巡る聖火リレーが行われている。先週末にはマン島に、更に今週初めには北アイルランドに達したが、金曜日(8日)には英国本島に戻り、今度はスコットランドを旅する予定である。  

五輪の聖火の起源は、古代ギリシャのオリンピアで行われた古代オリンピックに遡さかのぼる。古代オリンピックでは、神々の世界から火を盗んで人類に与えたギリシャ神話の神プロメテウスを称え、大会期間中を通して、主神ゼウスの妻ヘラの神殿で火がともされ続けていた。五輪の競技場の一角で大会期間中、火をともし続けるというこの習慣は、1928年のアムステルダム五輪で復活し、更にナチス政権下のドイツで1936年に実施されたベルリン五輪で、初めて聖火リレーが行われた。以降、現在に至るまで、聖火リレーは、五輪に欠かせない行事として続けられている。

1日に110人が300メートルずつ走る

今回のロンドン五輪でも、伝統に則ってオリンピアのヘラ神殿跡で採火式が行われた後、聖火は、5月19日にイングランド南西の端であるランズ・エンド岬に到着した。これを、7月27日の五輪開会式までの70日間で、8000人のランナーが、8000マイル(約1万2800キロメートル)の距離を走り抜いた末、ロンドン東部ストラトフォードの五輪会場に届けることになる。一般人の聖火ランナーの多くは、ロンドン・オリンピック組織委員会(LOCOG)などが行ったコンペティションで、チャリティー活動などの功績を認められ、選ばれた人たちである。1日に走るランナーの数は110人ほどで、それぞれのランナーに割り当てられた距離は平均300メートルであるという。

聖火リレーのルートは、まさに英国の津々浦々を巡るものであり、LOCOGによると、「英国の全人口の95%の人が、居住する場所の10マイル(約16キロメートル)以内を聖火リレーが通過することになる」そうである。イングランド北部に残るローマ時代の遺跡であるハドリアヌスの壁や、同南西部の古代遺跡ストーンヘンジなど、英国の多くの名所を通過する点も興味深い。

トーチはデザイン大賞受賞

また、聖火リレーのトーチ(たいまつ)は、ロンドン東部を拠点とするデザイナーであるエドワード・バーバー氏とジェイ・オスガービー氏がデザインしたものである。素材に軽量のアルミニウム合金を使い、表面には、8000人の聖火ランナーを表現するため、8000もの穴が空けられている。そのため、長さは80センチもあるが、重さは800グラムに抑えられている。このトーチは、今年4月、ロンドンのデザイン・ミュージアムから、「2012年デザイン大賞」を受賞している。

聖火リレーが行われることの利点は、何と言っても、その経過を追う日々の報道などを通して、五輪開催に向けて人々の気持ちを高めることができる点であろう。いよいよあと7週間後に迫ったロンドン五輪。英国各地を駆け抜けてオリンピアの火を届ける聖火ランナーたちを応援しながら、開催の日を心待ちにしたい。

1936 Summer Olympics

1936年にナチス政権下のドイツ・ベルリンで開催された夏季五輪大会。ヒトラー総統は、五輪を、ナチス政権の権威を見せつけ、また古代ギリシャ人がドイツのアーリア人の先祖であることを印象付ける機会として捉えていたと言われる。聖火リレーのアイデアを考えたのは、同大会の事務局長であったカール・ディエムという人物。聖火は、1936年6月30日にオリンピアのヘラ神殿跡で行われた採火式で点火された後、ハンガリー、オーストリア、チェコスロバキアなどを通過し、ドイツに到着した。このときのトーチは、2度の大戦でドイツの兵器を製造したクルップ社が作った。

(猫山はるこ)

 

エジプト国旗2012年エジプト大統領選挙
暫定軍政の思惑と新生エジプト国家

エジプトに訪れた「アラブの春」から約1年4カ月、北アフリカに位置するアラブの大国は、民主化第2幕となる大統領選挙を迎えた。しかし、大統領選挙の立候補者を選出するプロセスでは、軍の影響力を今後も維持しようとする暫定軍政の画策が見え隠れしている。

2012年エジプト大統領選挙立候補者13名

旧政権勢力

アハメド・シャフィクアハメド・シャフィク
ムバラク旧政権の最後の首相だが、数カ月で辞任。旧政権内では常に反対勢力であったと主張。各知事に対し、革命で命を落とした市民の名を各地の通りの名前とするよう提案。

アムル・ムーサアムル・ムーサ
経済と、国家の安定を政策の中心に据える。元アラブ連盟事務局長。ムバラク旧政権で10年間外務大臣を務めた。社会正義を唱えるリベラル派として、旧政権との距離を取る。

フサム・ハイラッラー
民主平和党。元エジプト軍空挺部隊長。1976年に退軍、2005年まで諜報機関に所属。

アブドゥラ・アルアシャル
カイロ・アメリカン大学教授(国際法)、元外相補佐。



イスラム勢力

モハマド・モルシモハマド・モルシ
ムスリム同胞団系「自由公正党」党首。同党擁立候補者であったハイラト・シャーテル氏の失格を受け、予備候補であったモルシ氏が代わって立候補することになった。

アブドゥル・モネイム・アブルフトゥーハアブドゥル・モネイム・アブルフトゥーハ
ムスリム同胞団元幹部。大統領選への出馬表明以降、同胞団での活動を一時停止された。自由と正義の推進、教育の強化、アラブ諸国からの投資の受け入れなどを提唱。

ムハンマド・サリム・アルアッワ
イスラム系弁護士、国際仲裁委員。「アルワサト党」の支持を受けている。



無所属

ヒシャム・アルバスタウィシ
左派「タジャンム党」立候補。ムバラク旧政権における上訴法廷副裁判官。2005年の議会選挙で旧政権の選挙不正に対する反対勢力として台頭し、国民的英雄に。

アブアリズ・アルハリリ
左派「社会主義大衆同盟党」の共同創立者。社会主義者、労働活動家としての顔を持つ国会議員。1976年に最年少国会議員として当選した。

ハムディン・サバヒ
国家主義を提唱する「アルカラマ党」共同創立者。

カリド・アリ
最年少の立候補者。人権擁護活動家、労働弁護士。

マフムド・フサム
現職の警察官。1958年に警察学校を卒業。

ムハマド・ファウジ
元警察官。南方エジプト警察捜査部に勤務。



在英エジプト人にも投票呼び掛け

5月23、24両日のエジプト大統領選挙に先駆け、在英エジプト大使は、5月11〜17日の在外投票を行うよう在英エジプト人に呼び掛けた。英国には25万人程度のエジプト人がいると見られており、そのうち6250人が在外投票登録を済ませていたが、実際の投票数は数千であった模様。今回の大統領選挙で、これまで国家統治を担ってきた軍最高評議会の暫定軍政から民政移管が完了し、6月21日には新大統領が誕生する予定だ。  

中東地域で発生した一連の民衆蜂起「アラブの春」の波に乗り、昨年1月25日、エジプト市民は首都カイロの中心地タハリール広場に集結し、ムバラク大統領の退陣を求める大規模デモを実施した。少なくとも850人の死者を出したとされるこのエジプト革命は、後に「追放の金曜日」と呼ばれる2月11日、30年近くに及んだムバラク独裁政権をついに崩壊させた。

イスラム勢力を敵視する暫定軍政

しかし、昨年11月以降、暫定軍政に懐疑的な市民は、軍政の即時退陣を求めて軍勢力と激しい衝突を続けてきた。軍政は、新大統領及び新政権が誕生した段階ですべての権力を引き渡すとしているが、多くの専門家らは、米国から巨額の軍事援助を確保するなどして軍は今後も政治介入を継続するだろうとの見方を示している。また今般の大統領選挙においても、大統領選立候補者23人中、スレイマン前副大統領やムスリム同胞団が擁立するシャーテル氏などを含む10人を選挙管理委員会が失格とするなど、軍政の思惑が色濃くにじむ情勢となった。  

これら失格の措置は、現在、エジプト人民議会で圧倒的多数を占める穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団系「自由公正党」と、厳格なイスラム教サラフィー主義(右記「関連キーワード」参照)を打ち出す「光の党」による更なる政治力の拡大及びイスラム系大統領の誕生を阻止したいとする軍政の策略である可能性が高い。またイスラム勢力が大統領という実権を掌握し、エジプトがイスラム原理主義国家として誕生することは、英国を含む欧米諸国も避けたいシナリオであろう。

民意を反映した新生エジプト国家とは

13人の大統領選挙立候補者の中で最も有力なのは、旧政権勢力で世俗派のムーサ氏(元アラブ連盟事務局長)とシャフィク氏(旧政権元首相)そしてイスラム勢力のアブルフトゥーハ氏(ムスリム同胞団元幹部)とモルシ氏(自由公正党党首)の4人である。エジプト各メディアは、上位2位と見られるシャフィク氏とモルシ氏が6月16、17日の決選投票に進む公算が高いと報じた。

軍政は、欧米型民主主義でもイスラム原理主義でもない、軍の影響力が継続可能な国家の形成を目指しているように見える。旧政権下におけるエジプトの選挙は、野党議員逮捕や賄賂などによる選挙妨害、票の操作などが蔓はびこ延り、有権者の意向は反映されてこなかった。もし、今回の大統領選挙が不正選挙に終わったとすれば、軍政に対する批判が高まり、また「アラブの春」の意義が問われ、民主主義の誕生を夢見て命を落とした多くの革命参加者の遺族などの憤りと悲しみは深まることになる。

Salafism

サラフィー主義。厳格なイスラム原理主義運動を指す。18世紀、サウジアラビアの宗教改革家ムハンマド・ビン・アブドルワッハーブが、イスラム教唯一神アラーの絶対性を説くサラフィー運動を展開したことから、ワッハーブ運動やワッハーブ主義とも呼ばれる。エジプト革命後に発足したエマド・アブデル・ガフォール党首率いる「光の党」は、エジプト国家へのシャリア法(イスラム法)導入を提唱する過激派勢力であり、国内における少数派キリスト教徒などに対する襲撃事件にも関与していると見られるなど、異教徒や外国人に対する排他的な思想を展開している。

(吉田智賀子)

 

クイーンズ・スピーチで政府法案を発表

15の法案と4つの法案の草案が明らかに
クイーンズ・スピーチで政府法案を発表

クイーンズ・スピーチ政府が国会に提出する法案の内容が発表される伝統儀式が「クイーンズ・スピーチ」。今年のクイーンズ・スピーチは、最近の数々の失策や地方選での惨敗を受け、政府が起死回生を図る機会となるかと注目されたが、果たしてその内容はどのようなものであったのだろうか。

クイーンズ・スピーチで発表された
法案の名前

  • 銀行改革法案(Banking Reform Bill)
  • 児童・家族法案(Children and Families Bill)
  • 犯罪・法廷法案(Crime and Courts Bill)
  • 名誉棄損法案(Defamation Bill)
  • 選挙登録・事務法案(Electoral Registration and Administration Bill)
  • エネルギー法案(Energy Bill)
  • 企業・規制改革法案(Enterprise and Regulatory Reform Bill)
  • 欧州連合(条約改正に関する決定承認)法案
    (European Union (Approval of Treaty Amendment Decision) Bill)
  • 食料小売店規定・仲裁機関法案(Groceries Code Adjudicator Bill)
  • 上院改革法案(House of Lords Reform Bill)
  • 司法・安全法案(Justice and Security Bill)
  • 年金法案(Pensions Bill)
  • 公共サービス年金法案(Public Service Pensions Bill)
  • 少額寄付法案(Small Donations Bill)
  • 水道法案(Water Bill)(法案の草案)
  • 高齢者ケア・支援法案(Care and Support Bill)(法案の草案)
  • 通信データ法案(Communications Data Bill)(法案の草案)
  • 地域公共機関監査法案(Local Audit Bill)(法案の草案)

上記の法案の分野別内容( 一部)

経済・産業 「公正取引局」と「競争委員会」を合併し、「競争・市場局(Competition and Markets Authority)」を設置する。
企業幹部の報酬額の承認・不承認を問う株主の投票の結果に拘束力を持たせる。
雇用紛争解決に関する制度を改革する。
民間部門による環境保護事業に融資する「グリーン投資銀行(Green Investment Bank)」を設置する。
上院改革 上院の全議員または一部の議員を公選制とする。議員の任期は15年とする。
家族・子供 育児休暇(parental leave)の制度を柔軟化する。子供の母親が、自分の育児休暇の権利を子供の父親に譲ることを可能にする。
親のいないエスニック・マイノリティーの子供などがより早く里親を見つけることを可能にするための改革を行う。子供と同じ人種の里親を探すことよりも、より早く里親を見つけることに重点を置く。
国民年金 国民年金支給額を、すべての受給者について、2015年より一律化する。
国民年金受給開始年齢を、2028年までに67歳に引き上げる。
銀行改革 金融サービス部門の規制を強化する。
英国で小売サービスを提供する銀行について、小売部門と投資部門を分離する権限を財務省に与える。
選挙制度 個人単位の有権者登録制度を導入する(現在は世帯ごとの登録)。
犯罪・裁判 組織的な重犯罪、インターネット犯罪の取り締まり、国境警備などを目的とする機関として、 「国家犯罪対策局 (National Crime Agency)」を設置する。既存の機関である「組織的重犯罪対策局(Serious Organised Crime Agency)」に代わる組織となる。
限定的な場合に限り、裁判所でのテレビ・カメラでの撮影を許可する。
小売 大手小売業者がサプライヤー(商品供給業者)を公正に扱う旨を定めた規定を策定する。
通信に関する
データ
テキストや電子メールなど通信に関するデータを収集することを警察及び諜報機関に許可する。
欧州 経済危機に陥ったユーロ加盟国の救済措置が今後新たに実施される場合、英国がこれに 参加するかどうかを決定する権限を国会に与える。

「児童・家族法案」や「年金法案」が発表される

5月9日、国会の審議期間が新たに開始され、恒例の「クイーンズ・スピーチ」が国会議事堂で行われた。クイーンズ・スピーチとは、その日に始まる審議期間中に政府が国会に提出する予定である法案の概要を女王が読み上げる儀式である。今回は、15の法案と、4つの法案の草案が発表され、育児休暇制度の柔軟化を図る「児童・家族法案」、国民年金の支給額の一律化を目指す「年金法案」などが含まれていた。

「経済成長促進策ない」との声

国会

今回のクイーンズ・スピーチに関して最もよく聞かれる意見の一つは、「経済成長促進策が盛り込まれていない」というものである。保守党と自由民主党の連立政権である現政府は、次回総選挙までの財政赤字解消を目指し、公共支出削減を含む緊縮財政を実施している。しかし、今年4月下旬には、2012年第1四半期の国内総生産(GDP)が前期に続いてマイナス成長となり、英国が再び景気後退(リセッション)に突入したことが国民統計局(ONS)の発表で明らかになったことで、「政府の経済政策が功を奏していない」などの批判の声が上がった。このような状況であるにも関わらず、今回発表された法案のうち、企業と経済成長支援に直接結び付くものは、雇用紛争解決に関する制度改革などを内容とする「企業・規制改革法案」のみであると指摘されている。  

こうした事実に対し、野党労働党のミリバンド党首は、「(クイーンズ・スピーチで発表された政府の政策は)求職中の若者や、不況で打撃を受けている家族に対し、何一つ与えない」と述べ、糾弾している。

高速鉄道建設計画も盛り込まれず

しかし、この点については、「政府の実行する主要な経済成長促進策は、新法を必要としない。今回発表された法案が首尾一貫性のない小規模な法案の寄せ集めのようになっているのは、政府が経済対策に集中すべき今の時期に、困難な立法作業に煩わされないため」と説明する向きもある。それでも、例えば政府が既に承認しており、多くの雇用創出が見込めるロンドン〜バーミンガム間を結ぶ高速鉄道建設計画を実行するための法案が含まれていなかったことについては、「政府の経済成長プランに疑問を抱かせるもの」であるとの声も聞かれる。また、前述した柔軟な育児休暇制度の導入を図る法案に関しても、「企業にとっては負担であり、現在の英国の経済状況を考えると、今の段階での立法化は賢明ではない」との意見が産業界から出ている。  

クイーンズ・スピーチの1週間前に行われた地方選で、保守党と自由民主党はどちらも惨敗を喫し、「政府の経済政策への有権者の反発が示された」などと指摘された。この直後、オズボーン財務相は、メディアで、「政府は経済再建に全力を注ぐ必要がある」と発言していた。今回発表された法案からは、この発言から読み取れるような政府の意気込みは感じられなかったが、政府が今後、国民の支持を取り戻すには、英経済の再生に成功するしか道はなく、次の総選挙まであと3年であることを考えると、時間はあまり残されていない。

House of Lords

上院。下院とともに、英国の二院制を構成する。今回のクイーンズ・スピーチで発表された法案のうち、最も大きな関心を集めている法案の一つは、公選制の導入による上院改革を目指す「上院改革法案」である。上院の現在の議員数は約800人で、その構成は、1999年の改革で残された世襲議員、聖職者、政府または上院議員任命委員会から任命を受けた一代貴族である。上院改革は、連立政権を構成する2党のうち主に自由民主党が推進しているが、特に一部の保守党議員が強く反対しており、立法作業は困難を極めると予測されている。

(猫山はるこ)

 

ヒースロー空港混乱は誰のせい?入国審査待ちに長蛇の列

入国審査入国審査待ちに長蛇の列
ヒースロー空港混乱は誰のせい?

海外からの訪問客を受け入れる英国の玄関口とも言えるヒースロー空港で、入国審査を待つ旅客たちの長蛇の列が問題となっている。中には3時間近く待たされる場合もあるとの事態を受けて、空港当局は入国管理を担当する人員を増加させたが、状況は改善していない模様。なぜこんなことになったのだろうか。

ヒースロー空港の年間利用度

Source: UK Airport Statistics

ヒースロー空港の年間利用度

ヒースロー空港への乗り入れ乗客国籍別内訳

Source: International Pax Traffic

スタンプヒースロー空港への乗り入れ乗客国籍別内訳

入国審査に3時間の行列

ロンドンのヒースロー空港で、先月、入国審査の待ち時間が2〜3時間にも達する状況に陥った。長蛇の列に並んだ乗客は、待ち時間のあまりの長さにしびれを切らし、審査官に向かって野次を飛ばしたり、皮肉を込めてゆっくりと手を叩いたりしたと言われている。また乗客の多くは、食事を取ることはおろか水分を摂取する機会さえ提供されず、立ったままで待たされたという。

英国の空港での入国審査を受ける対象には、大きく分けて2つの区分けがある。英国と、「欧州経済地域(European Economic Area, EEA)」と呼ばれる、欧州連合加盟諸国にほか数カ国を加えた国々のパスポート保持者が一つ。もう一つは、日本を含むそれ以外の国のパスポート保持者だ。今回、大きな影響を受けたのは主に後者だった。7月末から開催されるロンドン五輪では海外から多くの関係者や旅行客が押し寄せると予想されており、「この状況では五輪に対応できない」と野党労働党議員らが声を上げている。

責任のなすり合いに発展

このような事態を引き起こした原因について見解が分かれたことも、混乱に拍車を掛けた。グリーン移民問題担当閣外相は、4月30日、下院において、「主として悪天候による飛行ダイヤの乱れ」が理由と発表。また「メディア報道は数字を誇張している」として、EEA 以外の旅客の場合、待ち時間は1時間半、英国及びEEAの場合はこれより「はるかに少ない時間だ」と述べた。  

この発表は、空港を運営するBAA側にしてみれば、天候の変化を予測できなかった自分たちの責任のみが問われたと解釈し得る内容であった。そこでBAAは、独自の調査結果を発表する。まず、入国審査を担当する内務省所属の英国国境隊が掲げた、「EEA以外の国のパスポート保持者の審査の95%を45分以内に終了する」という目標が、4月は達成できなかったと報告。さらに、最長の待ち時間は同30日に発生し、ターミナル4で3時間待ちというケースが発生したと伝えた。言い換えれば、BAAは、入国審査の管理者つまり政府に責任があるとの見解を示したのである。大手航空会社BAなどを傘下に置くインターナショナル・エアラインズ・グループの最高経営責任者ウィリー・ウォルシュ氏も、報道された待ち時間は誇張されているとする政府の説明は「おかしい」と指摘している。

大幅人員削減の影響か

「エコノミスト」誌によると、ヒースロー空港における待ち時間長期化の理由の一つは、パスポート・チェックの厳格化だ。2007年、過度の混雑状態となった場合、チェックを簡素化することを政府や関連団体の当局が認めたとされるが、半年前にこの対応が「杜撰(ずさん)な国境管理」であるとして政治問題に発展。以来、徹底したパスポート・チェックが行われるようになった。  

だが最も大きな原因は、人員削減だ。政府は各省庁に2015年までに20%前後の歳出削減策を課しており、国内に勤務する入国管理官約8500人は、15年までに5000人にまで削減される予定という。観光客が殺到すると見込まれるロンドン五輪を控えながら、省庁の歳出削減策や人員不足による悪影響の可能性が空港運営に影を落とす状況となっている。

UKBA

「英国国境局」の英名の略称。内務省に所属する国境管理のための機関として2008年に発足。職員数は約2万3500人、年間予算額は約22 億ポンド(約2830億円)。2015年までに同職員を約5000人削減する予定となっている。主な業務は、①海外でのビザ発行や外国から英国への入国審査、 ②パスポート確認や税関での物品の流入を国境地点で管理(同傘下の英国境隊(UK Border Force)が担当)、 ③難民申請の処理、不法滞在者の強制送還、など。国境局の活動は、同局から独立した調査官が監視役として検証する体制となっている。

(小林恭子)

 
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