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Thu, 15 April 2021

第7回 Knowle - Birmingham
いよいよバーミンガムへ

21 October 2010 vol.1272

カヌー旅行の航路 - Knowle - Birmingham

漕いだり、歩いたり

7月3日。今日はバーミンガムまで行く。行き当たりばったりのいつもと違って、今日は最初から目的地を決めてみる。あと21キロ、ロック(閘門 - こうもん)は24カ所だから、大丈夫、着くだろう。艇をトゥパス(側道)へと引き上げ、目前の5連続ロックを歩いて越えた後、5キロ程を漕いで進んだ。

田園風景を眺めて、のんびりとパドルを回していたのだが、左折して西に向かった辺りから、ビルの密度が濃くなってきた。いよいよ、バーミンガムの都市圏だ。更に10キロ程進んで再びロックが5連続、少し間を空けてまた4連続と、漕いだり歩いたり忙しい。ロックの位置は地図を見れば分かるし、密集箇所はまとめて歩いてしまった方が速い。

ナロー・ボートの規格は、ちょうどロックの幅に合わせられている 写真:吉岡嶺二
ナロー・ボートの規格は、ちょうどロックの幅に合わせられている
写真: 吉岡 嶺二

河上に漂うカレーの匂い

とうとうバーミンガム市街地へ入ってきたようだ。橋の数が多くなってきた。舗装されたトゥパスが石岸に沿って切れ目なく続いているのだが、立体交差のガード下はこのトゥパスが上り下りの階段になっていたりしているので、橋で塞がれた水路を進むには、その都度、積荷を出し入れしながら段差のあるトゥパスで艇を持ち運ぶという、難行苦行となった。また運河の幅は細くなり、ロックの中は更に狭くなっているから、標準規格である7 フィート(約2メートル)幅のナロー・ボートは、船べりを両側の壁にこするようにして通過していく。

両側にそそり立ったレンガ造りのビルは、かつては紡績工場だったのだろうか、産業革命当時の面影がしのばれる。美しい景観とは言えないが、歴史を感じさせる雰囲気のあるところだ。カレーの匂いが漂ってきた。運河マップにも記載されているから、近くにカレー粉工場があるのかもしれない。バーミンガムには、当地発祥の「バルティ」というインド料理がある。早くからインド人が住み付き、コミュニティーを作っているようだ。後で街へ出掛けたときには、大勢の民族衣装を着た人たちに出会った。

駆け寄ってきた若者たち

最後の10連続ロックに差しかかったところで、若者たちが、奇声を上げて駆け寄ってきた。ガード下にたむろしていたようだ。見慣れぬカヌーに興味があるのだろう。悪意はないと思うが、過去の例もある。しかもビール瓶を持っている者もいるから要注意だ。カヌーに書き込んであるロンドンからの地名の後に、勝手にバーミンガムの文字を書いた。更に自己紹介のつもりだろう、自分の顔を指差して名前を書き入れた。一緒に写真を撮ったり、トゥパスの階段越えを手伝ってくれたり、彼らなりの好意を感じるのだが、完全に言葉が通じているわけではない。アリガトウを繰り返して別れてきた。

ロック群を越えて埠頭に着いた。第一目標にしてきたグランド・ユニオン運河の終点である。一息入れたいのだが、盛夏の土曜日、運河周辺はごった返している。街へ出ていく前に、どこか静かな場所にテント地を見付けることが先決だ。埠頭前のジャンクションから右に行けばマンチェスター及びリバプール方面、左へ行けばストラトフォード・アポン・エイボンである。左へ進んで、運河めぐりの遊覧船がびっしりと並んでいる水路を抜けた。更に漕ぎ進んでおよそ2キロ先、105ヤード(約95メートル)のトンネルを越えたところで、ようやく小さな草群が見付かった。今日はここで就寝することにする。


 
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吉岡 嶺二(よしおか・れいじ)
1938年に旧満州ハルビンに生まれる。早稲田大学卒業後、大日本印刷入社。会社員時代に、週末や夏休みを利用して、カヌーでの日本一周を始める。定年後は、カナダやフランス、オランダといった欧州でのカヌー旅行を行っている。神奈川県在住。72歳。
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