今年も税年度末が迫ってきました。本税年度分の節税対策をしっかり行えるよう、今月は節税効果のある金融商品とその仕組みについて勉強してみたいと思います。
高率(40%)で納税していて、嫌になります。払った税金が戻ってくる方法やお勧めの節税商品はありますでしょうか。
英国で最も広範に利用されている節税商品は、年金と言えると思います。会社の年金や個人年金(ステークホールダー年金を含む)への拠出金は、本人の最高税率にて税額控除が適用されます。例えば、年収が6万ポンド(約710万円)ある方は、4万2475ポンドを超える収入に対して40%の納税をしています。この方が一括で1万ポンドの年金拠出をする場合、本人が払う拠出金は事実上、6000ポンドのみです。1万ポンドと6000ポンドの差額が税金還付となります。
もう少し詳しくそのシステムを説明してください。
通常、本人が年金拠出を行う場合、拠出金額は20%の基礎税率を差し引いた額となります。この場合、前例に倣いますと、本人の支払う額は8000ポンドですが、年金拠出金は1万ポンドとなります。通常は年金プロバイダーが税金還付の手続きを行い、差額の2000ポンドが本人の年金プランに加えられるようになっています。また年金拠出金の旨をタックス・リターン (確定申告)に加えることにより、更に2000ポンド((高税率40%−基礎税率20%)x1万ポンド)が、銀行送金や小切手の形で本人に還付されることになります。このような仕組みによって、年金拠出金は1万ポンドですが、本人が実際に支払うのは税額分を引いた6000ポンドとなります。
確かに節税には良さそうですね。年金に拠出することで不利となることはありますか。
資金の引き出しの時期や金額に一定の制限があることが挙げられると思います。英国政府は定年後の蓄えを増やす目的で上記のような税的特典を供与していますので、積み立てた資金は「年金」として生涯かけて受け取ることが基本的な前提となっています。つまり、定年年齢(55歳以上)にならない限り年金を受け取ることはできませんし、定年時には、年金基金(貯まった金額)の25%までを非課税一時金として受け取ることができますが、残りの基金は生涯の年金として少しずつ長期にわたり受け取る形になります。尚、年金受け取り前に本人が死亡した場合、また不治の病で余命12カ月以内と宣告された場合は、55歳前であってもその時点の年金基金を非課税で受け取ることができます。
過去に本コラム(2008年6月12日、6月19日発行号掲載)にて英国の年金制度について詳しく説明しておりますので、バックナンバーをご参照ください。
資金の引き出しに制限がなく、税金が戻ってくるスキームはないのでしょうか。
ベンチャー・キャピタル・トラスト(VCT)やエンタープライズ・インベストメント・スキーム (EIS)がそうしたスキームに該当すると思います。こちらは未上場会社の株式(EIS)や、そうした株式を運用する投資信託(VCT)への投資スキームです。潜在的成長力はあるが規模が小さい上場前の会社に投資資本を集める目的で政府が推奨しています。最高の税額控除率は30%で、投資の最短期間は前者が3年、後者が5年です。また投資による譲渡益は、課税繰り越しができるようになっています。こちらは高リスク投資ですので、検討に際しては専門家に相談なさることをお勧めします。
ほかに税金還付の方法はありますか
ギフト・エイドを利用したチャリティーの寄付金には、本人の最高税率にて税額控除を受けることが可能です。税額控除の仕組みは、前述の年金とほぼ同じです。寄付金の80%を払い込むと、チャリティーが20%の税金還付を受けられる形となっています。高率納税者の方は、タックス・リターンにより更に20%の税金還付が得られます。昨年に発生した東日本大震災への寄付をギフト・エイドにて行った高率納税者の方は税金還付が受けられますので、その旨をタックス・リターンに掲載するようにしましょう。
ISAを友人から勧められました。仕組みを説明していただけますか。
ISAとは、Individual Savings Accountの略で、利子や譲渡益が非課税**の貯蓄・投資口座です。毎年一定額まで(本税年度の限度額は一人1万680ポンド)積み立て可能で、口座内の利子・利益は複利で増えていきます。限度額の半分までCash ISA(銀行預金)にて積み立てでき、Stock & Shares ISA(投資信託や株式などの運用商品)は限度額からCash ISA金額を引いた額まで投資可能です。すなわち、Cash ISA の限度額は5340ポンドで、Stock & Shares ISAはCash ISAを限度額まで積み立てている場合は5340ポンドまで、Cash ISAを全く利用していない場合は1万680ポンドまで積み立て可能です。ISAは銀行、証券会社、またインディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザーが扱っています。
去年の8月に5000ポンドまで積み立てたCash ISAを、最近になって下ろしました。税年度前にまた5000ポンド分のCash ISAを利用できますか。
残念ながら不可能です。Cash ISAの積み立て限度額は一税年度(本年は2011年4月6日より2012年4月5日まで)につき5340ポンドまでなので、たとえ一度下ろしていても、再度5000ポンドを預金しますと1万ポンドを積み立てたことになります。従い、本税年度分利用できるCash ISAは残り340ポンドのみとなります。ISAは非課税で利子が利子を生む複利運用が可能ですので、できる限り引き出さない方が利点が大きくなります。ところで、Cash及びStock & Shares ISA両方ともそれぞれ利用できる金融機関は一つのみです。残りの340ポンドの預金は、昨年8月までに5000ポンドを積み立てた銀行で行うことになります。
銀行利子がとても低いので、Stock & Shares ISAに挑戦してみたいと思います。お勧め商品はありますか。
投資商品はご本人の許容リスク(長期の資産価値増加を目指すため、どれくらいの短期的潜在的損失に耐えられるか)により選択するべきです。高リスク・高リターン(利回り)と言われるように、短期的な変動が大きい資産ほど利回りが高い傾向にありますが、投資商品は元本保証でないということをじっくり理解した上で始めるようにしましょう。下端の表は独立系投信データ会社のTrustnetに掲載された、過去6カ月間に英国で人気を集めた投信の例です。
下表の中でも上から2つの投信の利回りは魅力的ですが、この利回りは保証されているのですか。
いいえ、そうではありません。投資信託は様々な公社債や株式にて運用されおり、それらから発生する配当や利子を投資家に分配しています。株式の配当は変化しますし、運用されている資産も市場情勢に応じて常時入れ替えが行われているので、投資信託の配当は変化します。しかし、上から2つの投信は魅力的な利回りを投資目的の一つにしていますので、常時できるだけ魅力的な配当利回りを提示するよう運用されています。また、魅力的な配当を分配しつつ長期的に資産価値を上昇させることも目指しています。
英国で人気を集める投資信託
| 投資名 | 運用対象 | 直近配当 利回り |
リスク | 1年間 上昇率 |
3年間 上昇率 |
5年間 上昇率 |
| Invesco High Income | 英国高配当優良株式 | 3.82% | 中・高 | 10.3% | 36.0% | 14.4% |
| M&G Strategic Corporate Bond | 英国公社債 | 4.27% | 低・中 | 9.80% | 43.1% | 53.6% |
| Aberdeen Emerging Market | 新興国株式 | 0.50% | 高 | -5.2% | 98.8% | 96.7% |
データ:www.trustnet.co.uk 2012年1月16日付
Junior ISAが始まったと聞きました。
Junior ISA(子供用の非課税口座)は昨年11月に開始されまして、2011年1月3日以降、また2002年8月以前に誕生した18歳未満の子供を対象とした口座です。子供一人に付きCash とStock ISAを一つずつ利用することができますが、合計限度額は1税年度に付き3600ポンドとなっています。両親を始めどなたでも、該当する子供のJunior ISAに資金を供与することが可能です。Junior ISA内の資金は子供のものですが、18歳になるまで引き出しはできません。
今回ご説明いただいた商品の申し込み締め切りはいつですか。
基本的には税年度終了日の4月5日ですが、申し込み受領の確認、また申込書の不備などを訂正する時間の余裕を持って、3月末までには提出された方が良いと思います。
* 2011/12年税年度より、生涯保証された年金などの収入が年2万ポンド以上であれば、年金資金を部分的または全部引き出すことが可能になりました。
** 株式配当の際に源泉徴収(10%)される税金は還付されません。
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当コラムは2012年1月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。ご自身のファイナンシャル・プランニングに関しましては専門家にご相談なさることを強くお勧めいたします。また、本稿で引用されているウェブサイトは情報提供のためであり、推奨ではありません。その内容に関し弊社・アドバイザーは一切の責任を負いません。



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