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Tue, 11 December 2018

企業年金の自動加入制度について

2012年に開始された自動加入年金制度はほとんどの企業に定着しているようです。被雇用者には恩恵があり、雇用者側にとっては順守しなければならない法制です。今回は双方の立場からこの年金制度をおさらいしてみましょう。

最近、英国子会社に社長として赴任しました。企業年金の自動加入制度とは何ですか。

自動加入制度(Automatic Enrolment = A.E.)は企業年金に関する法律で、雇用者は各社の年金スキームを設定し、一定の条件を満たしている社員を自動的に加入させなければなりません。一定の条件とは社員が、①英国居住者、 ②22歳以上で国民年金受給年齢未満、③月収833ポンド超、であることです。またほとんどの場合双方とも拠出金を払うことになります。

会社は既に社会保険料(National Insurance Contributions = NIC) を払っていますが、追加の義務ということですか。

はい、そうです。会社と社員が給与に応じて支払うNICは主に国民医療制度(NHS)や国民年金の財源になっています。英国では現在厚生年金制度がないので、A.E.による企業年金が社員にとって、もう一つの定年の蓄えとなるよう設定されました。

拠出金はいくら払わなけばならないのですか。

英国で広範に利用されている確定拠出型年金(日本の401K年金に類似)に関しては、法制最低拠出金が下記表のように設定されています。留意点は、法制最低金額が設けられているのは雇用者と合計額のみということです。現在、会社が5%拠出していれば社員は拠出する必要はありません。しかし会社が2%出しているなら、合計が5%でなければならないので、必然的に社員が3%を払います。言い換えると、会社は全額払う義務はないため、社員が3%払わなければ年金を継続できないことになります。

A.E. 法制最低拠出金:給与に対する割合

 雇用者被雇用者Total
~2018年4月5日 1% ~ (1%) 2%
2018年4月6日~
2019年4月5日
2% ~ (3%) 5%
2019年4月6日~ 3% ~ (5%) 8%

*Certification set 2 base(Basic pay に対する%)

それでも、社員にとっては加入した方が得なのですよね。

基本的にそうと言えると思います。社員が拠出金を払えば会社も拠出金を払いますし、社員の拠出金には税額控除が適用されますので、実際の支払いは基本税率20%差し引き後の80%で済みます。前例では、3%×80%=2.4%が社員の支払い、残り0.60%は税額控除として本人の年金基金に追加されます(年金会社が手続きします)。従って、社員が2.4%払うと合計拠出金は5%になります。来年4月からは4%払うと合計8%に、倍になることになります。ただし、年金は定年まで(現行早くて55歳)引き出すことができませんし、受け取る年金の25%は非課税ですが、それ以外は本人の税率にて課税されますのでご留意ください。

社員が、興味がないので年金加入したくないと言っています。手続きしないでよいでしょうか。

いいえ、会社の義務は「自動加入させること」ですので、必ず加入させなければいけません。社員は年金脱退(Opt-out といいます)はできますが、それは一度加入してからのみです。また、会社は社員の脱退手続きの補助をしてはならず、必ず社員がすることになっています。Opt-out期間は加入から1カ月間で、払った拠出金は社員と会社に返金されます。

何カ月か過ぎてOpt-outしたらどうなりますか。

拠出金はいつでも停止ができますが、1カ月のOpt-out期間後は、蓄積された年金基金は返金されず定年まで運用されます。

以前Opt-outしたのですが、資金に余裕ができたので加入したいと思っています。大丈夫でしょうか。

はい、このことを「opt-in」といいまして、雇用者に書面にて告げることにより可能となります。Opt-out から12カ月が経っていれば雇用者は一定の条件を満たしている社員を必ず加入させる義務があります。12カ月以内は雇用者のオプションです。

弊社はいままでDirectorが1人だけの会社でしたが、新入社員を雇う予定です。いつからA.E. をしなければなりませんか。

新入社員の雇用日です。ただ、義務開始日を3カ月まで延ばすのは可能です。ただし、その間社員が加入したいと希望したら加入させなければならないので、早急に年金制度を設立なさることをお勧めします。

うちの会社は A.E.開始以来順調に年金管理できているようなので特にすることはないですよね。

雇用者には、自動再加入(Automatic Re-enrolment)という義務がありまして、A.E.施行日から3年毎に(Opt-outしたなどの理由により)年金に加入していない社員をまた自動加入させる義務があります。なお、全社員が加入していても、諸事項を含んだ当法制義務完了の申告である法令遵守の宣言(Declaration of Compliance)を行わなければなりません。

一度Opt-outしたのですが、将来また年金に自動加入されることになりますか。

はい。無論、加入後以前と同様の手続きをすれば Opt-out はできます。無駄なようですが、長い人生で個人的・金銭的環境は変化しますので、今加入する意思がなくても、将来(特に年齢が上がると)加入したくなるかもしれません。Automatic Re-enrolment は3年毎に自動的に年金加入する機会を提供しているとも言えると思います。

※ 次回のマネー教室は12月20日に掲載致します。
当コラムは2018年10月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。

 
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和枝ドゥルーリー APFS© 和枝ドゥルーリー APFS
日本人ファイナンシャルアドバイザー(CFP)。十数年間の米英系投資銀行勤務を経て、FAとして独立。日英両方の資格を有する。大手独立系FA会社に所属。
E-mail: info@kazuedrury-ifa.co.uk
Web: www.kazuedrury-ifa.co.uk

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