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Mon, 04 November 2024

第276回 ロンドンの二つの港と米国入植(前編)

シティからロンドン東部を走るドックランズ線にイースト・インディア駅があります。かつてこの近くには東インド会社の東インド・ドックがありました。今は埋め立てられて高層マンションが立ち並んでいます。駅から南に進むとテムズ川沿いのヴァージニア埠頭に大きな記念碑があります。英米の国旗など四つの旗を従え、頑丈な花崗岩でできた記念碑の頂には、ブロンズ製の当時の航海計器アストロラーベが据えられています。

ヴァージニア入植記念碑のアストロラーベ ヴァージニア入植記念碑のアストロラーベ

記念碑のプレートには、1606年12月19日、米国ヴァージニア入植に向けて3隻の船が105名を乗せてここから出港したと書かれています。実はこの入植は大変苦労しました。もともと入植目的が金銀の発掘にあり、入植者のほとんどが英国に土地を持つ裕福な男性ばかりでした。ところが金銀を発見できず生存することに必死になってくると、その男性たちは土地を開墾したり街づくりを行うすべを持ち合わせていないことが分かりました。

ヴァージニア入植記念碑のプレート ヴァージニア入植記念碑のプレート

不幸にも何十年ぶりという干ばつが襲い、入植地は悲惨な状況になりました。そのため英国から4度も補給隊が支援物資を運びました。1609年の第三次補給隊は、当時発見されたばかりの北カリブ海ルートを使いました。そのルートは英国から大西洋沖に出てカナリー諸島手前のアゾレス諸島を越え、北緯37度で西に進みました。入植地が北緯37度にあるので早道と考えたからですが、途中、嵐に会いバミューダ沖で座礁します。

1606年の初回の航海ルート(赤字)と09年の北カリブ海ルート(青字) 1606年の初回の航海ルート(赤字)と09年の北カリブ海ルート(青字)

ところがバミューダ諸島は果実や野生ブタなど食物が豊富だったので補給隊は英国の植民地にしました。この座礁は1611年に発表されたシェークスピアの戯曲「テンペスト」の題材になりました。また、この座礁で九死に一生を得たジョン・ラルフがこっそりタバコの種子をヴァージニアに持ち込み、入植地を蘇らせました。一説によるとタバコ貿易で持ち込まれたミミズが入植地の落葉を分解して土地を肥沃に変えたともいわれます。

 入植地のタバコ栽培の様子 入植地のタバコ栽培の様子

ラルフが育てたタバコはそれまでにない甘みのあるものだったため、英国人の嗜好に合い、ヴァージニア・タバコが貴重な輸出品になりました。タバコ農園の開拓には多くの労働力が必要ですが、約7年の労務後に自由になれる年季奉公契約を使って、英国内の若者や囚人を募集しました。農園事業がさらに拡大して年季奉公労働者が不足すると、1619年から黒人の奴隷が投入されました。こうして英国の米国南部の植民地では、奴隷を使った農園経営が発展して行くことになります。

 年季奉公契約書の例 年季奉公契約書の例

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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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