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Mon, 21 May 2018

第121回 右から、左から? 登場の不思議

前号まで右横書き・左横書き、右回り・左回りのお話をしてきましたが、今号は人物が右から登場するか左から登場するかで意味が異なるというお話。シティのバンク駅近くのポールトリー1番地ビルには、エドワード6世、エリザベス1世、チャールズ2世、ビクトリア女王が、戴冠式パレードやその晩餐会でシティを訪れたときのレリーフがあります。左2枚が右向き、右2枚が左向き。それらはシティに入って来る場面、それとも出て行く場面か?

エリザベス1世の行進は右向き
エリザベス1世の行進は右向き

ふと、絵巻物を思い出しました。日本の絵巻は右から左に進行し、巻物の進む方向と同じ方向に進む動きや表現を「順勝手」、逆向きを「逆勝手」と呼びます。主人公が順勝手なら前進、逆勝手なら後退や帰還を表し、敵や予期せぬ人物は逆勝手で登場します。一方、英国の絵巻物は左から右に流れていきます。約70メートルにわたり、ウィリアム1世による英国征服の戦いを描いた、世界的に有名なバイユー・タペストリーは、ウィリアム征服王が順勝手に左から右に進行し、物語が展開されていきます。

英国の回転木馬は右回り
ビクトリア女王の行進は左向き

演劇にもこれに似た決まりがあるようです。日本では観客席から見て舞台の右側を「上手(かみて)」、左側を「下手(しもて)」と言いますが、創生期の舞台は日が当たるよう南向きに作られ、日が昇る東側を上位と考えて上手、西側を下手、と呼びました。登場人物の上手から下手への移動が順勝手とされ、主人公が順勝手に移動すれば前進、逆勝手なら帰還。予期せぬ事象は逆勝手から発生します。実は絵巻と同じく、英国の演劇も日本と逆向き。

英国の回転木馬は右回り
バイユー・タペストリーは 左から右に展開

英国では日本の上手となる舞台の右側を「プロンプター」、左側を「オポジット」と呼びます。プロンプターとは役者が台詞を忘れたときにその台詞を囁いてくれる補助係のことで、観客から見えないように舞台の右下に隠れていました。日本と逆に舞台の右側が下位、舞台の左側が上位。その由来は演劇発祥の宗教劇にあるようです。

英国の回転木馬は右回り
観客から見て右が上手、左が下手。上手→下手の動きが順勝手 

古い教会には祭壇に向かって左の福音書側に説教壇があり、宗教劇は福音書側を「聖」、対面の使徒書側を「俗」と設定して祭壇の前で上演されました。観客から見れば左が天国、右が世俗。神の教えを説く主人公は左から登場し、右から登場する人物を改心させます。やがて舞台は教会を離れ、劇場に移っても主人公は左から、悪役は右からの登場に。英語が左から右に読まれるように、左から右への順勝手が市民に浸透します。

英国の回転木馬は右回り
プロンプターの役割

さて、冒頭のシティのレリーフに話に戻しましょう。そう、右向きの順勝手ならシティに前進、逆勝手なら宮殿に帰還と察します。

英国の回転木馬は右回り
祭壇の左にある説教壇側が天国を示す

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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