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Thu, 18 July 2019

第158回 祝・ウィリアム王子のご結婚 - 王室・皇室の意義

金銭では測れない価値


ウィリアム王子の結婚式は、
改めて王室の存在意義を示した
Picture by: Stefan Rousseau/
PA Wire/Press Association Images

テレビでウィリアム王子の結婚式の中継を観た。なぜトラファルガー広場を回らずにホース・ガーズを横切るのかとか (王室用地なので警備費が安くなる、との報道があった。経済が苦しい中、王室も楽ではないということだろう)、日本の皇太子ご夫妻も出席できれば良かったのにな、とか(震災で自粛、との報道があった。震災への援助に礼を述べ、国家の親交を 深める皇室外交のチャンスだったのではないか)、ぼんやり考えていた。景気も今一つ、震災やリビア空爆、紛争など大変なニュースが多い中で、とても気持ちの良い出来事であったと思う。読者の皆様の中にも、実際に沿道に行かれたりテレビを観たりした方が多いのではないか。

ところで、式の最後に「God Save the Queen」を列席者が歌ったが、一人だけ合唱に参加していない人がいた。言うまでもないが、歌われる対象である女王陛下である。テレビでははっきりと映っていたが、口をきりりと結ばれ、正面を向き、皆の賛歌を受けられていた。当然、 歌い終わった後の拍手にも直立不動。最高位にある女王陛下としての在位中のご苦労は並大抵ではなかろう。ダイアナ妃問題など数々の危機を乗り越えた厳しさと自信のある尊顔は、黄色のご衣裳とも相まって何とも言えない神々しさというか、美しさがあった。

いずれ国王としてこの重責を担わねばならないウィリアム王子は、まだまだ甘い顔をしておられるように思えた。女王と比べると、乗り越えてきた危機の規模と数が違うだろうから、当然かもしれない。 王室の価値は、やはり国家の危機時に発揮されるのだ。英国における女王陛下の 存在の重さを改めて感じるし、国の危機になれば、必ずや前面に出る存在が女王なのだと強く感じた。そうであってこそ、ご結婚のような祝事を国民はこぞって祝える。税金の無駄遣いとか結婚の経済波及効果なども問題になるが、危機時に発揮される国民の心のよりどころとしての意義は金銭では測れないし、測るとするならば莫大な価値になろう。

日本の皇室

同時に思うのは、震災後の日本の天皇皇后両陛下の活発な活動である。筆者は天皇制について特定の意見を持つ者ではないが、両陛下の活動には、目を見張るものがあると思う。

震災直後の陛下のお言葉では、その落ち着いた口調と、民を雄雄しいと表現されたことで、震災から立ち直ろうと努力する国民を励まし、自分もともにそこにあるという立場を示された。「雄雄しさ」 という言葉を民に用いるのは、天皇家が国民に対して、自らともに戦うという姿勢を示すときだそうだ。明治天皇は日露戦争開戦のとき、昭和天皇は第二次大戦に敗れて占領下にあったときに、戦後復興を願う御製でこの言葉を使われた。

さらに震災の避難者がいる東京や、被災地である宮城、岩手の慰問はもとより、 筆者がとても驚いたのは、皇居を東京電力の計画停電の第一区域と仮定して(実際は千代田区は計画地域停電外)、第一地域の停電時間帯には、暖房や照明など一切の電気を切られているとの報道である。 寒くないかとの質問に、セーターなどを着れば何でもない、と答えられたとのこと。 70代後半の天皇陛下が、である。パフォーマンスと批判するのはたやすいが、そう取る日本人は多分いないのではないか。

民主主義のあり方が問われる

日英ともに、危機時において、首相にはその正統性という点で、皇室のような国民統合の力を求めることは恐らくできない。一方で、精神的な統合性は危機時に国民の大きな力になるが、精神的な統合性だけでは現実に衣食住を確保できない。首相以下の政府は、衣食住=生活を安定させるために働く必要がある。日本の危機時において、天皇陛下はご自身の役割を果たされつつある。これに対して首相以下の公的機関は、もっと大胆に復興を担う役割が期待されているのである。

(2011年5月6日脱稿)

 
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