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Sun, 18 November 2018

第73回 クロックは聞くもの、ウォッチは見るもの

シティのフリート・ストリートには「英国の時計の父」トマス・トンピオンとジョージ・グラハム師弟の住居兼時計店を示すプラークがあります。もともとクロックはラテン語の「clocca=鐘」が語源。中世において時計は教会の鐘、つまり皆が音で聞くものでした。でも、この2人が機械式時計の小型化を進めると、時計は持ち運び可能かつ手元で見るものに。時計は公衆が受動的に「聞く」ものから、個人が主体的に「見る」もの=ウォッチに変わっていきます。

トンピオンとグラハムの
時計店跡
トンピオンとグラハムの時計店跡

鍛冶屋のせがれであるこのトンピオンが懐中時計を発明したと聞くと驚いてしまいますが、実は科学者のロバート・フックと親しい仲で、望遠鏡やゼンマイ時計の制作を依頼されていました。17世紀の英国にとって正確な緯度を計測することは航海上の重要問題、かつ科学者の関心事。緯度計測には精度の高い天体望遠鏡と時計を作ることが必須とされました。

トンピオンの肖像画
トンピオンの肖像画

正確な時計作りから国の繁栄が始まったというのに、現在の街角時計は狂っているものが多いですね。でもビッグ・ベンの時計だけは正確。気になるのは毎年3月と10月の最終日曜日午前1時または2時に始まる夏時間と冬時間の切り替え。どうやってあの大きい時計を調整するのでしょうか。そこで寅七、実地見学をしてきました。前日の晩の午後9時45分の鐘が鳴り終わると塔内の職員が作業開始。午後10時、時計の表面の電燈が突然消され、脱進機の外された長い分針がグルグル自動で回り出し、午前零時を指してピタリと停止しました。

もし、シンデレラがその場にいたら顔面蒼白です。移行後の時刻に合わせて午前零時から時計の針が動き出しますが、まだ表面は暗く、鐘も鳴りません。塔内ではまだ点検作業が続きます。そして移行時刻の午前2時。パッと電燈が点いて鐘が鳴り始め、無事に復旧。何時間も時計を止めて調整しているのかと思いきや、毎年2回、わずかな時間でこのような調整作業が行われているのです。鐘の鳴らない静かな夜、魔法をかけられたビッグ・ベンが眠るわずかな時間。

ビッグ・ベン
ビッグ・ベンの時計、午後10時までは通常稼働

ビッグ・ベン
午後10時に電燈が消え、分針がグルグル回り出す

ビッグ・ベン
午前零時を指して止まり、移行時刻がくるまで睡眠

そうそう、ビッグ・ベンの鐘のメロディーは私たちが子供のころに聴き慣れた、学校に流れるチャイムと同じです。1955年、大田区立大森第四中学校の井上先生が使い出し、日本全国の学校に広まったそうです。道理でこの鐘の音は甘い郷愁を誘うわけです。「花の雲、鐘は聖ポールかビッグ・ベンか」(芭蕉に追いつけない寅七)。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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