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Tue, 18 June 2019

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第29回 22歳の国籍選択とアイデンティティー

英国育ちの息子が日本の大学へ進学して以来、英国に住む日本人ママ友たちから度々受けた質問があります。それは子供の国籍問題。国際結婚をした日本人の子供は、現行の日本の法令では20歳までは重国籍ですが、22歳になるまでに国籍の選択をしなければなりません。

息子は私たち日本人夫婦の間に生まれたので、例え出生地が英国でも英国籍はなく、重国籍でもありませんでした。

重国籍を認めない日本において、海外で暮らす日本人が高齢になって日本へ帰国した場合、22歳以上で外国籍を持つ子供が日本で親と共に長期間暮らすことを望むのであれば、日本在住のためのビザを取得しなければなりません。

子供が小さいころは考えもしませんでしたが、日本に暮らす自分の親が高齢となり、介護を必要とする年齢になってくると、おのずと自分の老後をどこでどうやって過ごすのかという問題が頭をよぎることも増えてきます。子供の国籍問題についても、子供が20歳を迎えるころのママ友同士の間では、意外とシビアな問題となってくることもあるのです。

我が家では、息子が日本の大学受験を考え出したころから、英国市民権の取得の必要があるのではと思い始めていました。大学卒業後、もし日本で就職し結婚でもしたら、英国を離れてわずか2年で失効するという永住権をそのまま維持するのが困難となる場合が多いだろうと判断したからです。

また私たち夫婦にしても、日本にいる親の介護などで長期間、英国を離れる可能性もあります。その間にもし永住権が失効したら、現在の英国の移民法下で再びアーティスト・ビザから永住権を取得するという作業は、年齢的にも条件的にも無理な話だろうと容易に想像できました。

7歳から英国で育った息子のアイデンティティーを判断するのは難しいのではと思われるかもしれませんが、息子にとっては英語が母語であり、成長期に過ごした故郷は紛れもなく英国。親から見ても、そのアイデンティティーが日本人としてよりも、英国人としての方が強く感じられることが多々ありました。そのため、持って生まれた環境ではなく、親の都合で英国育ちとなってしまった息子が将来、この英国で自由に働き暮らせるように、日本へ発つ前に英国籍を取得させることにしたのです。

「日本人」であった息子に英国の市民権を取得させ、日本へ「英国人」として留学して早くも4年の歳月が過ぎました。大学の4年間は、「(大学生活が)忙しいし、(英国へ)帰るお金がもったいないよ」という、またしてもケチな理由で一度も英国に戻らず、日本で過ごした息子。日本の大学特有の「体育会系」サークル活動で青春を謳歌し、新卒採用の就職活動を体験しました。ですが、すっかり日本になじんだようにみえても、4年ぶりに英国に戻れば、すぐに現地校の懐かしい友人たちの中にとけ込んでいきます。その様子を見ていて、息子の英国市民権取得は、親から息子へのプレゼントだったような気がするのは、親の勝手な思い込みでしょうか。

次号は最終回ですが、英国パスポートを持ち、外国人として日本の就職活動に挑んだ息子の体験を通じて、海外留学生の日本での就職事情をお伝えします。

 
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小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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