ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Sat, 09 November 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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英国のアイコン、赤い電話ボックス

英国のアイコン、赤い電話ボックス

英国で暮らし始めて3日後、日本に住む友人に電話をかけました。まだ携帯電話も買っておらず、コインを山ほど用意して、赤い電話ボックスにある公衆電話から電話をかけ、数十分話をしました。20年前はこんなふうに、当時はまだ公衆電話はロンドンのあちこちで使用することができました。

その後、プリペイド式の携帯電話を購入し、公衆電話を使うことはほとんどありませんでした。いつごろだったでしょうか。携帯電話のチャージがなくなってしまい、当時はまだ街の中で気軽に携帯のチャージをできる場所もなくて、久しぶりに公衆電話を使おうとしたら、それは電話ではなく、お金を引き下ろすためのATMが置かれていました。そのときは公衆電話がなくなっていたことに驚きましたが、その後、携帯電話のチャージにはポータブルのチャージャーを持ち歩くようにしたこともあり、今ではもう街中で公衆電話を探すこともなくなりました。 

とはいえ、英国内ではダブルデッカー・バスと並んでアイコン的存在ともいえる赤い電話ボックスは、今でも街でよく見掛けます。でも、その内部は公衆電話ではなく、件のATMのように、別の用途として使われています。私の住むブリストルの隣、世界遺産の街バースでは、電話ボックスのガラスを取り払い、そこから花が飛び出している美しいフラワーボックスとなっています。いかにも英国らしい写真が撮れるスポットなので、日本から友人が来たときには、必ずといっていいほどそこで撮影をしています。また、先日イースター・ホリデーに出掛けた英南西部デヴォンの古い村では、電話ボックスの中に古本がたくさん並べられていて、誰でも自由に借りることができる、無人のライブラリーとなっていました。


このように古い公衆電話ボックスを新しい目的に使うことは、BTによる「Adopt a Kiosk」というスキームによるものです。これは、電話ボックスのある地元のカウンシルやチャリティー団体などに、人々の役に立つ形であれば古い電話ボックスの再利用を認める、というものだそう。ちょうど昨年、英国での電話ボックスの100周年を記念して、1ポンドで再利用ができる、という形で募集をし、すでに5000件以上の赤い電話ボックス再利用が行われたそうです。中でも、このところよく目にするのが「Defibrillators」、日本語ではAED(自動体外式除細動器)と呼ばれる、心肺蘇生のための機器で、現在英国内で1000近いAEDが設置されています。なお、X2 Connectという会社のサイトでは、BT K6というタイプの赤い電話ボックスのオリジナルを購入することができます。価格は1750ポンドから。こちらは世界中への配送が可能だそうですよ。

 
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マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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