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Fri, 29 March 2024

NHS 現役看護師が語るコロナ時代の医療

本記事に掲載の内容は執筆者個人の見解であり、組織の公式的な見解を示すものではありません。


ピネガー由紀
ピネガー由紀
大学病院で働く現役NHS看護師、フリーの医療通訳者。日本での看護師経験はなく、成人してから義務教育(GCSE)を経て、2013年マンチェスター大学看護学部卒。正看護師として、外科部門で病棟、手術前アセスメント、入院管理、学生指導などを担当。2020年4月から感染状況により新型コロナウイルス感染病棟に招集をされている。自身のYouTubeチャンネルでは医療英語や看護師の日常を発信。
YouTubeチャンネル:イギリス現役看護師Yuki

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NHS医師にまつわるよもやま話

4月から始まったこの連載も折り返し地点を過ぎました。今後も皆さんに少しでもNHSのこぼれ話をお伝えできればと思います。今回はNHSの医師について書いてみます。

皆さんは「英国には白衣を着ている医師は存在しない」ことをご存知でしょうか。「英国の医師は臨床現場で白衣も着用せずに、衛生管理は平気なの?」と、何度も日本人の方から聞かれてきましたが、その理由は国の指針によるものです。英国の臨床現場では肘より下は何も着用をしない「Bare Below the Elbow=BBE」が義務付けられていて、結婚指輪以外の指輪や腕時計などの着用はできません。もちろん白衣を含めた長袖着用も禁止です。これは医師に限らず看護師やその他の医療従事者も同じで「肘より下はいつでも洗えること」が目的であり、感染症コントロールのためのルールです。男性医は襟付きのシャツの着用が多いですが、ネクタイ着用も同じく感染症コントロールのため禁止。ネクタイなしでシャツを肘上までまくり上げる英国ドクターの姿に「スマートさに欠ける」という意見は少なくありません。また「医師が白衣を着用していないと箔が付かないのでは?」との意見もあり、一時期半袖の白衣着用の話も出ましたが、見た目上の理由と機能を考えて、結局ボツになりました。今皆さんが医療現場で見る英国ドクターの服装は、このような歴史を経ているのです。

次に混乱しやすい医師の呼び方についてです。GPの医師はほぼ「Dr」と呼ばれますが、大学病院では医師なのに姓ではなくファースト・ネームや「Mr, Mrs, Miss」と呼ばれる場合があり、混乱する患者さんも多くいます。

まず医師であっても研修医の期間はファースト・ネームで呼ばれ、研修後に最も上にランクされる医師がコンサルタントと呼ばれます。患者が治療や診察を受けるときに主治医となる医師で、コンサルタントになると苗字で呼ばれます。ところが内科と外科ではドクターの呼び方が違ってきます。

ややこしいのでボリス・ジョンソン首相の名前を例に説明してみましょう。研修医の間は患者、医師、看護師を含めた職員からは「ボリス」と呼ばれます。もしジョンソン氏が内科のコンサルタントになれば「Dr ジョンソン」で、外科医だと「Mrジョンソン」になります。女性外科医の場合には「Mrs, Miss, Ms」となります。これは英国人の患者さんでも知らない方が多く、「なぜ主治医の立場にある医師がDrではなくMrと呼ばれているの?」と聞かれることもあります。研修を修了した外科医に授与されるタイトルがMr, Miss, Ms, Mrsで、一般人につけるMrやMrsとは意味が異なります。ちなみに外科でも内科でもコンサルタントのさらに上にランクされるProfessorのタイトルを持つ医師がいます。彼らはそのまま「Professor」 、もしくはカジュアルに「Prof」と呼ばれます。

看護師やその他の医療者はランクに関係なくファースト・ネームで呼ばれます。私は患者さんから「Nurse」と呼ばれることもありますが、名前を覚えてもらうとうれしく感じます!もし今後皆さんが病院に行くときは、職業名より個人名で呼んでもらえるとスタッフも元気になります!

 
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