ロンドン・フィルム・フェスティバル 公式ウェブサイト
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父さんはいつだってファンタスティック！
Fantastic Mr. Fox

「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ダージリン急行」などで知られるウェス・アンダーソン監督が、ストップモーション・アニメに初挑戦。英国屈指の児童文学作家、ロアルド・ダールの「父さんギツネバンザイ」に、独特のユーモア溢れる世界観を重ねて映画化した。ジョージ・クルーニーとメリル・ストリープをはじめ、同監督作品の常連、ビル・マーレイやオーウェン・ウィルソンら豪華な面々が声の出演を果たしている。精巧な人形とセットは細部にわたりすべて手作りで、セリフはアニメの場面に合わせて実際の現場に赴き、録音したというこだわりようだ。

のどかで平和などうぶつ村で、家族とともにファンタスティックな毎日を送っていた父さんギツネ。ある時、動物的な本能に目覚め、金持ちのくせにケチで意地悪なボッギス、バンス、ビーンの3人の農夫たちから鶏をくすね、以来、夜な夜なそこから食べ物を調達するようになる。しかしある日、怒った農夫たちが父さんギツネを退治しようと一念発起し、巣穴を包囲してきたからさあ大変。危険はどうぶつ村全体に及ぶが、賢い父さんギツネのアイデアの下、近所の皆が一致団結。農夫たちの裏をかくファンタスティックな作戦を開始する。

（UK 2009 / 93分）

少年ジョン・レノンの多感な日々
Nowhere Boy

ダミアン・ハーストらと並ぶ「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の一人として、 斬新な写真や映像作品を生み出してきた実力派女性アーティスト、サム・テイラー＝ウッ ドの長編デビュー作で、若き日のジョン・レノンを描いた伝記映画。レノンの異父妹にあたるジュリア・ベアードの自叙伝を基に、今は亡き「ジョイ・ディヴィジョン」のヴォーカリスト、イアン・カーティスの半生を綴った映画「コントロール」で高い評価を得たマット・グリーンハルシュが脚本を担当した。レノン役には人気急上昇中の新鋭、アーロン・ジョンソンが扮している。

1955年、リバプール。15歳のジョン・レノンは、若さゆえの焦燥感にかられていた。5歳から叔母のミミに育てられていた彼は、ある日、母ジュリアと再会を果たす。彼女を通してロックに開眼したジョンは再び母を慕うようになるが、一方でそんな状況を快く思っていないミミは、ジュリアとの確執を深めていく。2人の「母」に挟まれ、えも言われぬ孤独感と平凡な家庭への憧れを心に抱きながら、ジョンはロックやアートの世界に逃避し、また没頭してゆく。そんな中、自分と相通じる感性を持つポール・マッカートニーに出会い……。

（UK 2009 / 95分）

痛ましくも美しい、黒人少女の再生物語
Precious

米国人作家で詩人、パフォーマーでもあるサファイアの小説「プッシュ」を、映画「チョコレート」のプロデューサーとしても知られるリー・ダニエルズ監督が映画化し、今年のサンダンス映画祭で大賞と観客賞に輝いた感動作。マライア・キャリーがほぼノー・メイクに近い姿でソーシャル・ワーカー役を好演しているほか、レニー・クラヴィッツも看護士役で登場している。

1987年、ハーレムに暮らす肥満の少女、プレシャス・ジョーンズは、読み書きができず、16歳にして中学校に通学中。家庭では父親から性的虐待を受け、2人目の子どもを身ごもっていた。さらに母親からも精神的、肉体的虐待を受け、行き場のない絶望的な毎日を送っていたが、1人の女性教師との出会いをきっかけに、新たな人生へ踏み出そうとする。

（USA 2009 / 109分）

16歳の少女が大人の階段を上る時
An Education

英有力紙で活躍する辛口ジャーナリスト、リン・バーバーの自伝に基づくドラマ。「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」の著者ニック・ホーンビィによる生き生きとウィットに富んだ脚本を、「幸せになるため のイタリア語講座」で知られるデンマークの女性監督ロネ・シェルフィグが丁寧に映像化している。主演のキャリー・マリガンも傑出。

1961年のロンドン。中流家庭に生まれ育った、平凡で真面目な16歳のジェニーは、オックスフォード大学入学を目指して猛勉強中だった。しかしある日、ふとしたきっかけから30代後半の男性デイビッドに見初められ、やがて2人は恋に落ちる。以来、大人の世界を垣間見ることになった彼女は、今までまったく想像しなかった人生を思い描くようになる。

（UK 2009 / 95分）

米軍に実在した、嘘のような超能力部隊
The Men Who Stare at Goats

英国人ジャーナリスト、ジョン・ロンスンのベストセラー・ノンフィクション小説「実録・アメリカ超能力部隊」を基にしたブラック・コメディー。ジャーナリスト役にユアン・マクレガー、米国の超能力部隊の一員にジョージ・クルーニーが扮する。クルーニーと共同で製作会社を設立、俳優としてのキャリアも長いグラント・ヘスロヴの監督デビュー作。

イラク戦争の現場に乗り込んだ英国人ジャーナリスト、ボブ・ウィルトンは、米軍の最高機密部隊に属するリン・キャサディという男に出会う。「地球第一大隊」と呼ばれるその部隊は、なんと武器ではなく、超能力を使っ て敵を制圧する愛と平和の軍隊だというのだ。この奇妙な構想に興味を抱いたウィルトンはキャサディと行動をともにするが……。

（USA 2009 / 90分）

てんやわんやな内部告発の実情
The Informant!

「ニューヨーク・タイムズ」紙をはじめとする有力紙やビジネス誌などで活躍し、ベストセラー著作も多い米国人ジャーナリスト、カート・アイヒェンヴァルトによる傑作同名ノンフィクション小説を、スティーヴン・ソダーバーグ監督がスリリングなダーク・コメディー作品に仕上げた。主演のマット・デイモンは体重を約15キロ増量して役に臨んでいる。

90年代初頭、大手穀物商社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドに務める将来有望な社員、マーク・ウィテカーは、社会正義のため、国際的な企業不正の密告者になろうとしていた。FBIと手を組み、自社が秘密裏に行っている史上最大の価格操作の実情を暴こうとするマークだったが、スパイ行為を進めるうちに精神的な混乱を来し、自分自身を見失い始める。

（USA 2009 / 109分）

ティーンエイジャーの不安と衝動
The Scouting Book for Boys

2006年にBAFTA映画賞の短編部門で大賞に輝いて以来、TVの単発ドラマなどで経験を積んだ弱冠29歳の新星、トム・ハーパー監督による長編デビュー作。脚本にはChannel4のドラマ「Skins」などで知られるジャック・ソーン、主役に「This is England」のトーマス・ターグースと、現在、英国で最も注目されている若き才能が結集している。

ノーフォークのキャラバン・パークで暮らす十代のデイビッドとエミリーは、お互いを信頼し合う、仲の良い兄妹のような存在。しかしある日、エミリーは父親から遠く離れた地へ引っ越すことを知らされる。嫌がるエミリーは洞窟に隠れて姿を消すことを思い立ち、エミリーと離れたくないデイビッドは彼女を手伝うが、事態は思いがけない方向へと進んでゆく。

（UK 2009 / 92分）

愛と執着の境界線を探って
Gigante

2004年のウルグアイ映画「ウィスキー」に端役で出演して以来、ミュージシャンとして活動する傍ら、映画製作に携わってきたアドリアン・ビニエスが脚本、監督を務め、今年のベルリン国際映画祭で銀熊賞、新人監督賞、アルフレド・バウアー賞の3冠受賞を達成した大注目作。初監督作で主要3部門を受賞するのは、同映画 祭始まって以来の快挙となる。

ウルグアイのスーパーで夜間警備員として働く35歳のハラは、その大柄な体型に似合わず内気な性格で、1人でいるのが好きだった。そしてある日の夜勤中、警備室のモニターに映る清掃員のジュリアを見てたちまち彼女に恋したハラは、以来、モニター越しにジュリアの姿を追い、さらに勤務時間外にも彼女の後をこっそり付けて回るようになる。

（Uruguay-Germany-Argentina-Netherlands 2009 / 90分）

終末世界に生きる父と息子の絆
The Road

映画「ノーカントリー」の原作者として知られる米作家コーマック・マッカーシーによる、ピューリッツァー賞受賞の同名小説を基にしたSFスリラー。オーストラリア出身のジョン・ヒルコート監督が、原因不明の天災に見舞われ廃墟となった世界の恐るべき姿を、緊迫感あふれる映像で描き出している。私生活でも子煩悩なヴィゴ・モーテンセンが父親役を熱演。

凍えるような寒さで空はどんよりと暗く、辺り一面、灰と煤（すす）にまみれた荒涼の大地。街は完全な廃墟と化し、道には山のような数の死体が転がっている。もはやカニバリズムさえも横行する終末の世界に生き残った父と幼い息子は、温暖な土地を求めて南へ向かっていたが、無法地帯の路上では生存をかけた壮絶な争いが繰り広げられており……。

（USA 2009 / 111分）

己の運命は己で切り開く
Kamui カムイ外伝

白土三平による不朽の名作コミック「カムイ外伝」が、「血と骨」の崔洋一監督によって満を持しての実写映画化。現在、引く手あまたの宮藤官九郎が同監督と共同脚本で参加、人間味あふれるアクション時代劇が完成した。主役のカムイには、現在、最も脂が乗っている若手俳優の一人、松山ケンイチ。またヒロインのスガル役は世界的に活躍中の小雪が演じる。

江戸時代、階級社会の最下層で育ったカムイは、力をつけて自由を手に入れるため忍の道に入る。強靭な意志と肉体により、やがて剣の達人となるが、掟に縛られ、理不尽な殺戮を繰り返す世界に嫌気がさし、そこから抜け出す。以来、裏切り者として以前の仲間から追われながらも旅を続けていたカムイは、道中で侍に追われる半兵衛という漁師を助けるが……。

（日本2009 / 120分）

「嬉しくて哀しい」大人のファンタジー
Air Doll 空気人形

業田良家の傑作短編コミック「ゴーダ哲学堂 空気人形」に感銘を受けた是枝裕和監督が、9年越しで完成させたラブ・ファンタジー・ドラマ。香港を代表する映画監督、ウォン・カーウァイの作品などでも知られる国際派カメラマンのリー・ピンビンによる映像が、美しく繊細な物語をいっそう際立たせている。心を持ってしまった空気人形を、韓国人女優のペ・ドゥナが好演。

古アパートで持ち主の秀雄と暮らす空気人形は、ある朝、突然「心」を持ってしまう。秀雄が仕事に出掛けると、慣れない手つきで身支度を整え、街へと繰り出す。そして、訪れる先々で様々な人と心を通わせてゆく。そんなある日、レンタル・ビデオ店に足を踏み入れた空気人形は、そこで働く純一という若者に出会い、密かに思いを寄せるようになる。

（日本 2009 / 116分）