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Thu, 15 April 2021

第1回 London - Cowley
なんでこんなところに憧れて来たのか

9 September 2010 vol.1266

カヌー旅行の航路 - Cowley

ロンドン動物園前から出発

欧州運河カヌー旅行の一環として、英国へ漕ぎに来た。全航程300キロの航海日誌の抜粋を、こうして連載にして皆様に読んでいただけることになった。どうぞ宜しくお願い致します。

6月25日、本誌編集部の長野さんに見送られて、リージェント運河のロンドン動物園前から漕ぎ出した。運河に並行するトゥパス(側道)を、歩いてついてきてくれる長野さんと言葉を交わしながら3キロ程進んで、リトル・ベニスに到達。実はロンドンに着いて早々の一昨日、パディントン駅近くにある、リトル・べニスの英国運河局(British Waterway)を訪ねて、航行に必要なライセンスを申請し、ロック(閘門)の扉を開閉するために必要な「ウィンダラス」と呼ばれる道具を購入しておいた。当初はこのリトル・ベニスから出発する予定だったのだが、宿に近いリージェンツ・パークで折りたたみ式のカヌーを組み立て、カートに乗せて公園内を引いていき、ロンドン動物園前から出発してリトル・ベニスへと向かうことにしたのである。

運河の旅が始まった 写真:吉岡嶺二
ナロー・ボートと交わりながらの、英国での運河の旅が始まった
写真: 吉岡 嶺二

産業革命の道を行く

同日の12時に、おびただしい数のナロー・ボートが係留されているリトル・ベニスの船溜まりから、グランド・ユニオン運河へと漕ぎ出した。「18〜19世紀の初頭にかけて勃興した産業革命」を支えた道である。中学時代の社会科の教科書を思い出すが、普段は退屈に感じてばかりの学校の授業だというのに、その記述にだけは、妙に興奮したことを覚えている。イングランド北部の石炭や毛織物を運んだ水路は、鉄道の発展に伴い衰退するも、現在は安全なレジャー・ルートとして人気が高い、と聞き期待して来たのだが、しばらくは薄汚れた裏道の気配が続いていく。なんでこんなところに憧れてはるばる英国まで来たのかと、気分が乗らないままにパドルを回して進む。

西へ西へ、20キロ程進んで、T字型のジャンクションに突き当たった。左折すればテムズ河、「6M12L」の水路標識が立っている。「テムズ河まで6マイル、ロック数12カ所」の略記である。昨年まで3シーズンに分けて漕いできた、フランスのセーヌ河やオランダのライン河の河幅は広かった。ロックも大きかった。テムズ河はどんなだろうかと思い、昨年マルセイユに着いた後、ロンドンに偵察に来た。その際に、テムズ河も良いがグランド・ユニオン運河はどうですか、とのアドバイスを現地在住の人から得た。それで運河地図を買い、詳しく調べてやって来たのである。

ロックの開閉が少し不安

右に曲がって、すぐにマリーナが見えてきた。広大な船溜まりには、びっしりとナロー・ボートが集まっている。フランスでは、あちこちのマリーナで一宿一飯の恩義に預かってきた。英国でも、と期待をしたのだが、どうも様子が違う。ほとんどの舟は居住者用で、マリーナのキャプテンは常駐していないようだ。仕方ない、パスだ。そのまま進んで最初のロックでパドルを止めた。その脇にある芝生の空き地に、テントの設営もできた。

明日はあのロックの扉を開いて進むことになる。一昨日、ロンドン市内のカムデン・ロックを見に行った。オーストラリアのキャンベラから来たという老夫妻が、このロックを見事に越えていった。だがその様子を見る限り、「バランス・ビーム」という、木製の押し棒の操作が重労働のようだ。さて、どうなるか。


 
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吉岡 嶺二(よしおか・れいじ)
1938年に旧満州ハルビンに生まれる。早稲田大学卒業後、大日本印刷入社。会社員時代に、週末や夏休みを利用して、カヌーでの日本一周を始める。定年後は、カナダやフランス、オランダといった欧州でのカヌー旅行を行っている。神奈川県在住。72歳。
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