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Thu, 15 April 2021

第10回 Wootton - Stratford - upon - Avon
シェイクスピア劇場でゴール

11 November 2010 vol.1275

カヌー旅行の航路 - Knowle - Birmingham

牧場の牛たちに見送られて

7月6日。いよいよ最終日だ。最終目的地であるストラトフォード・アポン・エイボンまでは残り11キロ、17カ所のロックを越えれば着く。

今回のカヌーの旅における最後の宿泊地となったテントの前には、水路を隔てて牧場が広がっている。昨夕はこの牧場に佇む牛の背のシルエットが、地平線に向かって伸びているところを狙ってシャッターを切ったのだが、今朝は牛たちが水際ぎりぎりまで降りてきている。彼らの面をなでるようにして漕ぎ出した。

また出発直前に、一人の男性がフットパスを伝ってこちらにやってきた。ヘルシンキから来て、ハイヤー・ボートを借りて旅しているのだそうだ。そして、次はぜひともフィンランドへと招待された。社交辞令としてもうれしい話だ。もうあちこち行ける年齢ではないけれど。

これでは野次馬ならぬ、「野次牛」だ 写真:吉岡嶺二
これでは野次馬ならぬ、「野次牛」だ
写真: 吉岡 嶺二

かくしてジャパニーズ・コンクエストも終わりに

「カレーの濱邊に立てば、ドーバーの白い絶壁が見える。これは侵略者にとっての誘惑だ」。学生時代に読んだアンドレ・モーロワの「英國史」の書き出しである。また1998年から2002年にかけて「建て増し住宅方式」にて少しずつ達成した北海道一周の航海記の中で、函館側から本州下北半島の崖を眺めて感じたことを綴った際に引用した一節でもある。

ついでにもう一つ、「シニアの方々に対して、夢と元気を配達する」。これは定年退職の挨拶状に書いた宣言だ。挨拶状には続けて、「①残っている沖縄本島と北海道の北半分を漕いで、日本5大島周航を完結する。②北米5大湖から大西洋へ。③そして……」と、おこがましくも書いておいた。あれから9年、①②は済み、未定だった③も欧州縦断になって終わった。そして英国に来てしまった。今回の旅も、間もなく終わろうとしている。

そしてフィニッシュ

10キロ程一直線に南下して、ストラトフォード・アポン・エイボンに入った。ゴール・イン後、艇を郵送してしまえば、ごく普通のバック・パッカーの一人に変身できる。ヒースロー空港からの帰国便は15日の朝出発だから、まだ残り1週間以上もある。スコットランドへ行こうか、イングランド南西端のランズ・エンドがいいかと考えていたが、実際には計画倒れになってしまい、コッツウォルズからオックスフォードを経由してロンドンに帰ることになった。

13時。ついにエイボン河に合流し、自然河川の清流に乗り入れた。この地では一つの約束をしておいた。敦子さん、という日本人女性が運転するナロー・ボート「キャプテン・プーク」号とのランデブーである。航海に出ていると聞いていたので、うまく日程が合うかどうかは分からないが、同地が誇る観光名所であるシェイクスピア劇場とホーリー・トリニティー教会の間にある係留所に停泊していることが多いという。縦列に並んでいるボートを一つずつ当たっていけば見付かるだろう。

それで、フィニッシュだ。


延12日間の航海日誌の抜粋を読んで頂き、ありがとうございました。フィニッシュの後、今夏の旅のクライマックスが2つもきました。もう2週、ぜひ読書の旅を続けていただくようお願い致します。
 
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吉岡 嶺二(よしおか・れいじ)
1938年に旧満州ハルビンに生まれる。早稲田大学卒業後、大日本印刷入社。会社員時代に、週末や夏休みを利用して、カヌーでの日本一周を始める。定年後は、カナダやフランス、オランダといった欧州でのカヌー旅行を行っている。神奈川県在住。72歳。
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