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Wed, 09 October 2024

英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

不況で若年層の失業率が上昇 - 16〜24歳の約100万人が職なし

16〜24歳の約100万人が職なし
不況で若年層の失業率が上昇

英国では、2010年度第3四半期のGDPがマイナス成長に転じるなど、景気回復にはまだ長い道のりがあることを実感させられる日々が続いている。こうした経済情勢の中、特に大きな打撃を受けているのが若者である。若年層の失業率は現在、20%を超えており、改善への展望も見えていない。

英国における16〜24歳の失業者数の推移(単位:人)

女性 男性 全体
2008年11月~2009年1月 32万4000 50万4000 82万8000
2009年11月~2010年1月 36万7000 54万8000 91万5000
2010年2月~4月 36万7000 55万7000 92万4000
2010年5月~7月 39万0000 52万5000 91万5000
2010年8月~10月 40万6000 53万7000 94万3000
2010年11月~2011年1月 41万4000 56万0000 97万4000

Source: ONS

* これらの失業者には、仕事をしていないが、積極的に仕事を探していないなどの「非活動(inactivity)」に分類される者は含まれない。ただし、仕事を探しているフルタイム学生は含まれる。

イングランドにおける16〜24歳の
「ニート」の数の推移(単位:人)

人数 16~24歳の人口全体に
占めるニートの割合
2000年第4四半期(10~12月) 62万9000 12.3%
2001年第4四半期 66万4000 12.6%
2002年第4四半期 65万9000 12.2%
2003年第4四半期 66万7000 12.1%
2004年第4四半期 74万4000 13.2%
2005年第4四半期 83万7000 14.6%
2006年第4四半期 80万7000 13.8%
2007年第4四半期 78万1000 13.1%
2008年第4四半期 85万4000 14.2%
2009年第4四半期 89万5000 14.8%
2010年第4四半期 93万8000 15.6%

Source: Department for Education


イングランドで「ニート」が100万人

国民統計局(ONS)が今月中旬に発表したところによると、2010年11月〜2011年1月における16〜24歳までの若年層の失 業者数は、前期比3万1000人増の97万4000人と、過去最高を記録した(*)。この時期の「16歳以上すべて」の失業率が8.0%であったのに対し、「16〜24歳」の失業率は20.6%にも上っており、これも統計開始以来、最高の数字となった。

一方、教育省は2月下旬、いわゆる「ニート(Neet)」の若者の数を発表した。就労しておらず、教育、職業訓練も受けていない「ニー ト」の状態にある16〜24歳の若者の数は、2010年第4四半期(10〜12月)に、イングランドだけで93万8000人に達した。第4四半期の数字としては、2005年に同省が統計を開始して以来、最も高い数字であった。これは、イングランドの16〜24歳の15.6%が 「ニート」であることを意味する。

(*) この数字には、仕事をしていないが、積極的に仕事を探していないなどの「非活動(inactivity)」に分類される者は含まれない。ただし、仕事を探しているフルタイム学生は含まれる。

政府が若者の就労・教育支援策廃止

若年層の高失業率の背景には、経済の先行きが不透明な中、仕事の経験が浅く、スキルも十分でない若者の雇用に企業が消極的であるなどの事情がある。このように、厳しい経済情勢による打撃を特に強く受けているのが若年層であるわけだが、保守党・自民党の連立政権は、公共支出削減策の一環として、前労働党政権が実施していた若者向け学業・就労支援プログラムの一部を廃止しており、若年層を更なる苦境に追い込んでいるとして批判されている。

まず、連立政権は最近、義務教育後も教育を受け続ける低所得家庭出身の若者に対する補助金である「教育継続手当(EMA)」を廃止した。更に、半年以上にわたって失業している18〜24歳の若者 を対象とした雇用対策プログラム「未来の雇用創出ファンド」についても、廃止を決定した。また、昨年の大きなニュースであったイングランドの大学授業料限度額引き上げの決定も、特に低所得家庭出身の若者から高等教育の機会を奪い、彼らの将来の選択肢を狭めるものであるなどとして非難されている。

一方、連立政権による若年層の雇用支援策には、民間企業での「アプレンティスシップ」の奨励などがある。「アプレンティスシップ」とは、仕事の現場で働きながら職業技術を身につける仕組みであるが、ビンス・ケーブル・ビジネス・革新・技術相は2月上旬、「アプレンティスシップ」の実施を目的としたブリティッシュ・ガス、BTなどの大手企業に対する補助金を増額し、2011年度で14億ポンド(約1820億円)を拠出する旨を明らかにした。

「失われた世代」生むとの声

このまま景気低迷が続き、若者の雇用環境が改善しなければ、日本の就職氷河期と同様、職にあぶれた若者たちの「失われた世代」が生み出されると警告する声は少なくない。昨年5月の総選挙後からこれまでの連立政権の最重要政策は財政赤字削減を目的とした 公共支出削減であったが、経済成長支援、雇用支援にも重点を置くよう求める声は高く、今後の政策に期待がかかる。

New Deal

前労働党政権の目玉政策の一つであった就労支援プログラム。1998年開始。当初は、若者の雇用対策プログラムとして開始されたが、後に若年層以外にも対象が拡大された。雇用・年金省は2008年、「ニュー・ディール」は開始から 10年で計180万人の就労を支援したと述べていた。2009年10月、英国内の多くの地域で、「ニュー・ディール」は、「フレキシブル・ニュー・ディール」と呼ばれる新プログラムに移行した。連立政権は今年夏、これを更に「シングル・ワーク・プログラム」と呼ばれる新たなスキームに移行させる計画である。

(猫山はるこ)


 

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