ニュースダイジェストの制作業務
Tue, 09 August 2022

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして18年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。日本での雑誌編集を経て2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して

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あきらめとスモール・トークが肝心

あきらめとスモール・トークが肝心

先週、ロンドンの日本国英国大使館に行った帰りのことです。パディントン駅で地下鉄を降り、電車の駅ターミナルに向かって階段を上がり切ったとき、目の前に見えたのは、駅構内にあふれかえる人、人、人。

普段から遅延だけでなく、突然運休などもある英国なので、一つ早めの電車に乗れるよう、出発予定時刻よりかなり前に駅に到着したのですが、なんだか悪い予感がします。案の定、電車の行き先と出発時刻を知らせる電光掲示板には、全て「キャンセル」「遅延」との表示が出ています。まずは何が起こっているのかを知るために、周りを見渡し、駅員らしき制服を着た人を見つけて近寄りました。大勢の人に囲まれている駅員の説明によれば、人身事故があって、すでに1時間半以上、イングランド西部に向かう列車が全てストップしていて、復旧の見通しは全く分からない、とのことでした。

以前、「Unexpectedな英国鉄道」でご紹介したように、私を含め、英国では「電車が時刻表通りに動けばラッキー」くらいに思っている人が少なくないと思います。とはいえ、今回は数十分の遅れどころではないこともあり、多くの駅員さんがターミナルのあちこちに散らばって、次から次へと来る質問に答えています。

ただ、私の見たところ、怒っている人は誰もいません。私がしたように、まずは「一体何が起こったの?」と、状況を聞くのが最初の言葉。そして、スタッフが原因を説明した後に、復旧の見込みは立たないから、地下鉄で別の駅まで行き、そこから迂回路をとって別ルートの電車で西を目指す方法もあるし、このままここで復旧を待つという選択がある、と説明を続けます。それを聞いて「僕はそちらのルートを取る」と走り去る人も何人かいました。一方で、周りにいる人たちと「やれやれ」と言いながらも、お互いに「今日は○○に行っていた」だとか、「こうなったらパブで1杯やるしかないな」などと、スモール・トークを始める人たちも。私も、折り畳み自転車を持っている隣の人と「さすがにサイクリングでブリストルまでは帰れないよね」などとお互いに笑い合いました。


あるデータによると2022年1~3月の間に英国の鉄道が時刻通りに到着した確率は72.4パーセント。やっぱり英国の電車は遅れることも少なくないことが分かります。でも、人々が怒り出したりしないのは、「電車はどうせ時間通りには動かない」というあきらめなのか、全てをジョークにして、見知らぬ同士でも気軽にスモール・トークをして時間をつぶせるからなのか、さらに、英国の人々の生態観察を続けてみたいと思います。

 
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