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Thu, 25 April 2019

第36回 政治家なら、まずはジョークで

麻生太郎首相の「夜の豪遊」が話題になっている。麻生首相は、高級レストランやホテルのバーなどを毎夜のように飲み食べ歩く。そんな姿が「庶民の感覚」から外れているのではないか、という指摘だ。

自分のカネをどう使おうと、まったくの自由だ。真っ当な政治を行うなら、どこで何を食べようと、とやかく言う筋合いでもあるまい。ただし、首相ともなれば、問答に、ある程度の品格も必要だろうと思う。

過日の「夜の豪遊」を巡る首相と記者のやり取りでは、首相は最後の方で、質問した女性記者に対し、こう迫ったそうだ。

「(自分の)周りには30人の新聞記者がいる。警察官もいる。(ホテルなどよりも)安いところに行って営業妨害と言われたら何と答える?今聞いてんだよ。答えろ」

麻生首相が経済財政担当大臣だった2001年ごろ、私は、何度か会見に出席したことがある。「逆質問」はすでに、麻生氏の得意技として知られていたし、実際、「君の意見はどうなんだ?」と、よく問うてきた。「議論」と、大臣としての「説明責任」が、ごっちゃになっているとしか思えなかったが。

それにしても、逆質問で問い詰めるような姿勢は、一国の首相として、いかにも大人げない。女性記者相手にすごんでみせるのも、どんなものか。首相たる者、そこは余裕を見せ、しゃれたジョークで切り返してもらいたかった。

欧米の首脳は、よくジョークで記者を切り返す。

私が一番好きなのは、ゴルバチョフ氏が1985年に旧ソ連共産党書記長に就任したときの会見だ。日本でもニュース番組で放映され、とても興味深く見た。おぼろげな記憶に基づくと、やり取りはこうだった。

米国人記者「書記長、あなたは共産党の中で最も急進的な考えの持ち主だと聞いています。しかし、重要な決定に際し、あなたを支配する強大な支持者(共産党)に相談しないわけにはいかないでしょう?その支配を超えて決断ができるのですか?」

ゴルバチョフ「君ね、なんだってこんなところで、妻の話を持ち出すんだ?それに、いったいどうやれば、ライサ(妻の名)をコントロールできるっていうんだ?」

英国では、ブレア首相が2006年の労働党大会で放ったジョークが気に入っている。

ブラウン財務相(現首相)が党大会の演説で「首相のために働くのは名誉だ」と言ったところ、首相夫人のシェリーさんが、即座に「そんなのうそ」と吐き捨てた、というのである。近くにいた新聞記者がこれを聞き、「シェリーとブラウンの不仲」を書き立てた。党大会はこの話題で持ちきり。すると、ブレア首相は翌日の演説で、こんなジョークを飛ばした。

「At least I don't have to worry about her running off with the bloke next door」

少なくとも私は(首相官邸の)隣に住む野郎(財務相)と妻が駆け落ちするんじゃないかなんて心配しなくていいわけだ……。会場は大爆笑。聴衆は立ち上がり拍手を続けた。

日本では、当の麻生首相も就任直後、国連総会でジョークを使った。演説中、通訳の機器が故障した直後のことだ。

「It's not a Japanese machine, I think. No?」

出来はいまひとつのような……。

傑作は何と言っても、2000年夏の沖縄サミットでの森喜朗首相(当時)である。森首相がクリントン米大統領を出迎えたときの会話だ。

首相「Who are you?」

大統領「I'm Hilary's husband」

首相「Me, too」

英語が大の苦手の森氏は、事前に側近から「総理、最初はHow are you? です。相手はFine, and you? などと応じるので、そしたらMe, tooですよ」と繰り返し聞かされていた。ところが、森氏はHowとWhoを間違えてしまった。一方の大統領はWho are you? といきなりジョークが来たので、とっさにジョークで返したつもりだったらしい。

ただ、当時、沖縄での取材時には、この話は聞かなかった。どこか憎めない、森氏のキャラクターが生み出した都市伝説かもしれない。

 
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高田 昌幸:北海道新聞ロンドン駐在記者。1960年、高知県生まれ。86年、北海道新聞入社。2004年、北海道警察の裏金問題を追及した報道の取材班代表として、新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。
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