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Thu, 19 July 2018

英国・ドイツで過ごす聖なる季節 - 欧州のクリスマスの伝統と今

キリスト教が生活に根付く欧州で、イエスの生誕を祝うクリスマスは1年の中でも特別なイベント。 シーズン目前の今号では、英国とドイツの過ごし方を徹底比較!その祝い方は国や地域によって様々だが、クリスマスにまつわる伝統文化や風習からは一様に、身近な人の幸せと平和を願う市民の顔が見えてくる・・・・・・。 (ニュースダイジェスト編集部)

クリスマス英国とドイツを徹底比較
クリスマスの過ごし方

クリスマスのスケジュール

UKクリスマス商戦開始のゴングが鳴り響き……

11月上旬には早くもクリスマス商戦が開始。日を追うごとに街は賑やか、華やかになっていく。学校が休みになると、ロンドンの劇場街ウェスト・エンドで子供向けのミュージカルや、クリスマスならではの大衆演劇パントマイムなどが増える。12月24日、クリスマス・イブは翌日の用意のためスーパーで買い物をする人の長い行列ができ、プレゼントの用意をしていなかった人が最後のショッピングに走る日。また、パブやレストラン、クラブなどで友人同士で過ごすことも。25日、クリスマス当日。あらゆる公共交通網がストップし、動いているのは特別料金のタクシーのみ。基本的にほぼすべてのショップやデパート、美術館などが閉まってしまう。人々は家族や親戚などと腰を据えて飲み食いし、午後3時ごろにテレビで放映されるエリザベス女王のクリスマスのスピーチを観たり、プレゼント交換をしたりと、地味で家庭的なクリスマスを過ごす人が多い。明けて26日はボクシング・デー(祝日)。元々は、クリスマスに忙しく働いた使用人たちをねぎらうための休日だった。教会が貧しい人たちのために寄付を募ったクリスマス・プレゼントの箱(box)を開ける日であったことからBoxing Dayと呼ばれるのだそう。現在ではバーゲン・セールの初日としても知られ、ハロッズなど有名デパートの前には朝から行列ができる。

ロンドンのクリスマス

UK4週間かけてクリスマス・ムードを盛り上げる

クリスマスの4週前の日曜の朝、4本のろうそくを飾り付けたアドヴェンツ・クランツ(リース)の1本目に火を点けて、クリスマスへのカウント・ダウンが本格的にスタートする。12月1日~24日まで、毎日1つずつ小さなプレゼントをもらえるアドヴェント・カレンダーも欠かせないアイテムだ。ドイツでは、「アドヴェント(降待節)」の1カ月こそが、クリスマスの醍醐味。そして、日本からの観光客の期待を裏切るように12月24日の午後から26日までのクリスマス本番は、街中が静まり返る。交通機関は間引き運行、一部地域では運休。店のシャッターは固く閉ざされ、クリスマス・マーケットも終わっているところがほとんど。皆、家族や大切な人たちと、温かい部屋の中で特別な時間を過ごしている。12月24日は、朝から教会を訪れたり、夕方から始まるプレゼント交換や食事を楽しむ「Bescherung(贈り物)」の時間の準備をする。意外にも、家庭用のクリスマス・ツリーの飾り付けもこの日に行うことが多い。25日の朝食も大切な家族の行事。レストランやホテルを予約する家庭もある。24、25、26日は、日本の三が日のような感覚で、親戚へあいさつへ行ったり、家でゆっくり過ごす。クリスマスには欠かせないクラシック音楽と言えば、バッハの「クリスマス・オラトリオ(BWV248)」。

ドイツのクリスマス

クリスマスの食事

英国TVで女王陛下のメッセージを聴きながらいただく

家族そろってのクリスマス・ディナーは、英国では25日の午後以降。それぞれの席にはクリスマス・クラッカーが置かれ、隣人と引っ張り合って、中から出てきた紙の王冠を被って食事をするのがお約束だ。テーブルに載るのは、メインがローストしたターキーかガチョウ。クリスマスにターキーを食べることが定着したのは17世紀ごろで、それ以前の中世の英国ではクマや白鳥などを食していたのだとか! ロースト・ターキーとその詰め物(スタッフィング)には赤いクランベリー・ソースか白いブレッド・ソースをかけるのが定番。ローストしたポテトやパースニップ、スェードなどの根菜類、色が変わるまでクタクタに茹でた芽キャベツが付け合わせに並ぶ。デザートはクリスマス・プディングやミンス・パイなどのドライ・フルーツを使ったリッチな菓子が伝統で、明かりを消した部屋に、ブランデーをかけ火を付けたプディングが運ばれるころにはパーティーも最高潮。切り分けたものにブランデー・バターやラム・バターをかけていただく。また、プディングを作る際にコインを1枚入れておき、食べていてそれが出てきた人には幸運が訪れるとも。シェリー酒、モルド・ワイン、シャンパンなどを手にしながらエリザベス女王のクリスマス・メッセージを聴いて、ハッピー・クリスマス!

イギリスのクリスマス:女王のメッセージ、ローストターキー、クリスマス・プディング

ドイツ肉とシュトレンとグリュー・ワインと

クリスマスのメイン・イベントとなる12月24日のディナーのメイン・ディッシュは、ガチョウや鴨のロースト、いつもよりもご馳走感のある牛肉料理が人気で、北部ではコイ料理(カルプフェン・ブラウ)が定番という地域もある。「ソーセージとジャガイモ・サラダ」と、いつものメニューでクリスマスを祝う家庭も。アドヴェント期間中は、焼き菓子もいっぱい。家庭で作るクッキー「プレッツヒェン」、香辛料の効いた「レープクーヘン」やジンジャー・ビスケットの「シュペクラティウス」、三日月型の口溶けなめらかなアーモンドのビスケット「バニラキプフェル」など、家庭でも職場でも、常時、焼き菓子やチョコレートに手を伸ばせるような「ヴァイナハツ・テラー」で来客をおもてなし。ドイツのクリスマス・ケーキ「シュトレン」は、ドライ・フルーツとマジパンたっぷりのどっしりとした焼き菓子。薄くスライスして、クリスマスまで少しずつ食べ進めるのだが、だんだんと味がなじんでいくのが分かる。クリスマスの代表的な飲み物はあつあつの「グリュー・ワイン」。凍てつくような寒さがこたえる夜のマーケット探索で身体を温めるには、これが一番。温かいアイヤープンシュ(エッグノック)も、お試しあれ。カップはデポジット制だが、屋台や街ごとにデザインが違うので、色々集めるのも楽しい。

ドイツのクリスマス

クリスマス・プレゼント

英国寝る前に靴下を吊るして

英国ではファーザー・クリスマスと呼ばれているサンタクロース。子供たちはクリスマス・イブに大きな靴下(英語ではクリスマス・ストッキング)を吊るし、サンタとトナカイがやって来てくれるのをワクワクして待ちながらベッドに入る。靴下の横にはサンタ用にミンス・パイやシェリー酒、トナカイのためにはニンジンを用意するが、子供が寝た後、「サンタ」がこっそりそのミンス・パイを一口だけ食べたり、ニンジンをかじったりする。朝起きた子供は、一目散にプレゼントへ。彼らにとっては、この瞬間こそがクリスマス! だろう。その一方で、家族や親戚、恋人など大人同士のクリスマス・プレゼント交換は、商業主義が幅を利かせており、義理でプレゼントをそろえることもしばしば。総じて毎年のプレゼント選びに頭を悩ませる人が多い。また、カラフルな包装紙があちこちで売られ、自力でプレゼントを包むのが基本。そのため、時々セロテープだらけの工作のようなプレゼントに遭遇することもあるのは、ご愛嬌だ。サイズの合わない服や気に入らないプレゼントをもらった人のために、返品サービスを行う店もあるなど、夢のない合理性がみられるのはちょっと残念。一方で、ホームレスの人々のために、ボランティアによってクリスマス・ランチが供されるなどの、チャリティー活動も静かに行われている。

英国のクリスマス

ドイツプレゼントをもらうチャンスが2度来る!

12月に入ると毎日、アドヴェント・カレンダーで小さな贈り物を楽しむドイツだが、12月のプレゼント攻勢はそれだけに留まらない。12月6日は、紀元270年ごろ、貧しい者たちに施しを与えたとされる聖人ニコラウスの日。サンタクロースのモデルとなった人物とも言われており、子供たちはこの日、靴下を下げてニコラウスからのプレゼントを待っている。一部地域では、クネヒト・ループレヒトという強面の従者も、ニコラウスと一緒に子供たちの前に現れ、良い子にはプレゼントを、悪い子にはクネヒト・ループレヒトからのお仕置きがあるという、日本の「なまはげ」的な演出も。そして、24日の夜には、クリストキント(幼児キリスト)というクリスマスの天使からプレゼントが贈られる。24日に来るのが、クリストキントだったり、ヴァイナハツマン(いわゆるサンタクロース)だったり、地域や家庭によって違いがあるのもドイツの特色だろう。質素な倹約家というイメージのあるドイツ人だが、この時期は財布のひもがゆるくなる。ドイツ小売業連盟(HDE)は、今年の1人当たりのプレゼントの予算は昨年から40ユーロアップし、500ユーロになると予想している。大切な人へプレゼントを準備するのは、楽しみでもあり、プレッシャーでもあるようで、近年はデパートや通販の商品券の人気も高まっている。

ドイツのクリスマス

クリスマスの風景

英国クリスマス・ツリーの露店が街角に現れる

クリスマス・イルミネーションが街を飾るころ、街角ではクリスマス・ツリーにする生のモミの木が売られ始める。手ごろなサイズのものを買い求め、時に2人掛かりでモミの木を担いで帰る人々は心なしか皆にこやか。ツリーの飾り方に特に決まりはないようで、デパートなどで売られるオーナメントを付ける家庭、ライトだけの家庭と様々。玄関ドアには赤いリボンを付けたヒイラギのリースを打ちつける。白っぽい実の付いたヤドリギ(ミスルトゥ)の枝を室内に逆さに吊るすのは、ケルトのドルイド信仰からきており、元々は魔除けだったそう。だがどう変化したのか、「ヤドリギの下に立つ女性は男性からのキスを拒めない」など、ロマンティックな習慣となって、別名クリスマス・キッシング・ボールとも呼ばれている。また、ロンドン中心部のトラファルガー・スクエアには巨大なツリーが飾られるが、そのモミの木は毎年ノルウェーからやって来る。これは第二次大戦時に英国がノルウェー軍を援護したお礼に送られたのが最初だと言う。ツリーは十二夜に当たる1月6日の公現祭の夜直前まで飾られる。これを過ぎて飾るのは不運を呼ぶとされ、クリスマスが過ぎたら早々に始末してしまう家庭も。道端に無造作にうち捨てられたツリーは物悲しさを誘うが、これもまたこの時期の見慣れた風景の一つであることには違いない。

トラファルガー・スクエアのもみの木とミスルトゥ(ヤドリギ)

ドイツドイツ全土が大小のクリスマス・マーケットで彩られる

ドイツのクリスマスの風景は、クリスマス・マーケットなしには語れない。大都市のマーケットだけでも2500以上を数え、自治体の大小を問わずドイツ全土にマーケットが立っている。一番有名なニュルンベルクの「クリストキンドレスマルクト」は、毎年200万を越える訪問者を数えるほどの人気だ。ドイツの冬を明るくロマンティックに彩るマーケットは、長い冬を越すために必要不可欠な市民の心の支えでもある。マーケットや教会には、キリスト生誕の馬小屋を人形で再現した「クリッぺ」も出現する。家庭用のミニチュア・サイズのものもあり、ジオラマのような本格的な装飾をほどこす人も。くるみ割り人形やスモーク人形、クリスマス・ピラミッドなど、木製のクリスマス用装飾品は職人の手仕事が光る品質の良さから、国内外で根強い人気を誇る。また、クリスマス・ツリー発祥の地と言われるドイツではこの時期、約3000万本のツリー(生の木)が出荷される。伝統的なオーナメントは、りんご。そしてりんごを模したガラスや陶器で出来た球体(クーゲル)。ツリーは1月6日の公現祭までリビングや庭に飾られる。その後は、英国と同様、道端に放置され、ごみ収集業者が回収。2階より上の階の住人がツリーをバルコニーや窓から投げ捨てるのも許されているとのこと。頭上注意!

クリスマス・マーケット、クリッペ、くるみ割り人形

クリスマス休戦の奇跡「1914年12月25日」
Christmas Truce / Weihnachtsfrieden

クリスマスは奇跡を起こす時間。誰もが幸福と平和を想い、「クリスマス・キャロル」のスクルージが最後に心を入れ替えたように、隣人にとって少しでも良い人間でありたいと願う。それは、絶望の中で迎えた1914年のクリスマスでも同じだった。

1914年7月に勃発した第一次大戦は、短期決戦を想定していたドイツの目論見が外れ、また、「クリスマスは故郷で過ごせるだろう」という兵士たちの願いむなしく、フランス・英国との西部戦線、ロシアとの東部戦線ともに泥沼の持久戦に突入していた。

12月24日、西部戦線。塹壕(ざんごう)の中で夜を明かそうとしていた英国兵は、ドイツ語で歌われる「きよしこの夜」を耳にする。戦場で声を発することは、敵に自分の居場所を知らせる危険な行為。すぐに攻撃を受けることになりかねないが、このときは違った。銃弾のかわりに、英語で歌う声がドイツ兵に届いたのだ。戦争に疲れきっていた両軍の兵士は、武器を置き、顔を出す。お互いの距離を縮め、ついには一時的な休戦が実現したのだ。

とても奇妙なクリスマスだった。数時間前まで互いの命を奪い合う激戦を繰り広げていた者たちが、一緒にクリスマス・ツリーを飾り、戦友の遺体を共同で埋葬。さらには、友人に語るように自分の妻や恋人を自慢し合い、たばこの火を交わし、プレゼント交換まで始めた。ドイツ兵と英国兵によるサッカーの試合が行われた記録もある。

「クリスマス休戦」は、西部戦線の各地に広がり、一部では数日間の休戦が実現した。世界に向けて休戦を提案した人物は、当時のローマ教皇ベネディクトゥス15世。ドイツ軍はこの提案を承諾し、戦場で決死の覚悟で敵兵に呼び掛けたのだった。

当時の写真が残っている。そこには、違う軍服を着た、同じ人間が並んでいる。

その後、4回のクリスマスを戦下で迎えたが、二度と奇跡は起こらなかった。犠牲者1500万人とも推定される第一次大戦は、1919年にベルサイユ条約が締結され、ようやく終結。世界は、その未曾有の被害を前に不戦の誓いを立てたが、それが守られなかったことを、私たちは知っている。

クリスマス休戦

 
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